2024/06/28

脂質構造を母乳に近似させることによって、乳児用ミルク哺乳時の「脂肪の便排泄の増加」を回避できる可能性を発見~国際学術誌Nutrientsに掲載~

明治ホールディングス 株式会社 

2024 年 6 月 28 日

脂質構造を母乳に近似させることによって、乳児用ミルク哺乳時の「脂肪の便排泄の増加」を回避できる可能性を発見~国際学術誌Nutrientsに掲載~

明治ホールディングス株式会社(代表取締役社長 CEO:川村 和夫)は、株式会社 明治(代表取締役社長:松田 克也)、学校法人順天堂 順天堂大学(学長:代田 浩之)、国立大学法人 東京大学(総長:藤井 輝夫)、学校法人東邦大学(学長:高松 研)との共同研究により、乳の主な脂質であるトリグリセリド(TG)※1の構造を母乳により近似させることによって、乳児用ミルク哺乳時の「脂肪の便排泄の増加」を回避できる可能性を見いだし、その結果が国際学術誌 Nutrientsに掲載されました。 (Nutrients 2024, 16(11), 1558; https://doi.org/10.3390/nu16111558

研究成果概要
日本の乳児を対象とした観察研究において、乳児用ミルクに含まれるパルミチン酸(PA)※2のTG 中 sn-2 位※3結合比率を 50%以上にすることによって、乳児用ミルクの哺乳時の「脂肪の便排泄の増加」が回避されることを示す結果が得られました。具体的には以下の通りです。

●PA の TG 中 sn-2 位結合比率が 50%未満の乳児用ミルクでは、哺乳量に伴う便中 PA 濃度の増加を認めました。
●同比率が 50%以上の乳児用ミルクでは、哺乳量に伴う便中 PA 濃度の増加を認めませんでした。

研究背景と今後の活用
母乳中の脂質は、PA の 70%以上が TG の中央の位置(sn-2 位)に結合した「特長的な構造」を有しています。これにより、母乳栄養児では、消化管内での難溶性けん化物※4の生成とそれに伴うエネルギー吸収効率の低下や便の硬化が回避されると考えられます。これまでに、乳児用ミルク中 PA の sn-2 位結合比率を従来の標準的な 10%前後から 40%程度まで高めることによって、乳児用ミルク哺乳時の便への PA 排泄の抑制が認められていました。一方で、母乳哺乳時との比較では、便への PA 排泄が増加することも認められていました。本研究では、同比率を母乳の約70%により近い 50%以上に高めることによって、乳児用ミルク哺乳時の PA 排泄の増加を回避できる可能性を見いだしました。今回得られた結果は、乳児のより良い成長・発達に役立つ知見となることが期待されます。

【発表の内容】
■タイトル:Infant Formula with 50% or More of Palmitic Acid Bound to the sn-2 Position of Triacylglycerols Eliminate the Association between Formula-Feeding and the Increase of Fecal Palmitic Acid Levels in Newborns: An Exploratory Study

■発表者:Hiromichi Shoji 1, Hiroko Arai 2, Satsuki Kakiuchi 3, Atsushi Ito 3, Keigo Sato 4,5, Shinji Jinno 4,5, Naoto Takahashi 3, Kenichi Masumoto 2, Hitoshi Yoda 2 and Toshiaki Shimizu 6 1 順天堂大学小児科、2 東邦大学医学部新生児学講座、3 東京大学小児科、4 株式会社 明治、 5 明治ホールディングス株式会社、6 順天堂大学大学院医学研究科小児思春期発達・病態学

■目的
乳児用ミルクに含まれるパルミチン酸(PA)の sn-2 位結合比を 50%以上に高めることにより、
乳児用ミルクの哺乳時の便中 PA の増加が回避されるかを評価しました。

■方法
日本で市販されている乳児用ミルク各銘柄の PA の sn-2 位結合比を調査し、同比率が 50%以上である乳児用ミルクを高 sn-2 PA ミルク、50%未満である乳児用ミルクを低 sn-2 PA ミルクと分類しました。順天堂大学、東京大学、東邦大学で出生した健康な乳児 149 児を対象に、生後1か月健診の 1 週間前から前日の間に哺乳した乳児用ミルクの銘柄と量を調査しました。また、生後 1 か月健診前日に採取した乳児の便を回収して、便中総 PA 濃度およびけん化 PA 濃度を測定しました。便中総 PA 濃度、またはけん化 PA 濃度を高 sn-2 PA ミルクと低 sn-2 PA ミルクの哺乳量から説明する重回帰分析モデル※5を作成し、各変数の相関の大きさを評価しました。

■結果
便中総 PA 濃度およびけん化 PA 濃度は低 sn-2 PA ミルクの哺乳量と正の相関を認めた一方で、高 sn-2 PA ミルクの哺乳量との相関の大きさは0に近く、有意な相関を認めませんでした。

■考察・結論
本研究の結果から、PA の sn-2 位結合比を 50%以上に高めることにより、乳児用ミルクの哺乳時の便中 PA の増加が回避されると考えられます。

■備考
本研究は、一般財団法人 糧食研究会※6より助成金を受けて実施されました。

公式ページ(続き・詳細)はこちら
https://www.meiji.com/pdf/news/2024/240628_01.pdf

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