2024/10/29

Gartner、IT部門およびユーザーに影響を与える、2025年以降の重要な展望を発表

ガートナージャパン 株式会社 

2024年10月29日

Gartner、IT部門およびユーザーに影響を与える、2025年以降の重要な展望を発表

Gartner IT Symposium/Xpo (10月28~30日開催) において、AI旋風が世界のあらゆる側面をどのように巻き込んでいるかについての見解をGartnerのアナリストが解説

ガートナージャパン株式会社 (本社:東京都港区、以下Gartner) は、 開催中の「Gartner IT Symposium/Xpo」において、2025年以降の戦略的展望のトップ10を発表しました。Gartnerの今回の重要な展望では、人間のみが長期にわたる影響をもたらし得ると大部分が想定していたであろう領域に対して、生成AI (GenAI) がどのように影響を及ぼしつつあるかを探っています。

ディスティングイッシュト バイス プレジデント 兼 Gartnerフェローのデーブ アロン (Dave Aron) は、次のように述べています。「どこへ行こうとも、AIの影響を避けられないのは明らかです。人間のAI活用が進化するにつれて、AIも進化しています。人間がもはや追い付けないという地点に到達する前に、AIがどれほど人間を向上させられるかを理解しなければなりません」

2025年以降の展望トップ10は次のとおりです (図1参照)。

図1. 2025年以降の展望トップ10

出典:Gartner (2024年10月)

2027年までに、新しい従業員契約の70%に、本人のペルソナのAI表現に関するライセンス条項と公正使用条項が含まれるようになる。
大規模言語モデル (LLM) には終了日が設定されていないため、企業のLLMが収集した従業員の個人データは、雇用期間中だけでなく退職後もLLMの一部として残ることになります。

このことは、そうしたデジタル・ペルソナの所有権が従業員にあるのか、それとも雇用主にあるのかを問う公共の議論につながり、最終的には訴訟に発展する可能性もあります。すぐに訴えられないよう企業を守る目的で公正使用条項が使用されるものの、議論が巻き起こることになるでしょう。

2028年までに、テクノロジへの没入がデジタル中毒や社会的孤立という形で人々に影響を及ぼし、結果として、組織の70%がアンチデジタル・ポリシーを取り入れる。
2028年までに、約10億人がデジタル中毒の影響を受け、それが生産性の低下、ストレスの増加、不安やうつ病などのメンタルヘルス疾患の急増につながると、Gartnerではみています。さらに、デジタルへの没入はソーシャル・スキルにも悪影響を及ぼし、そうした傾向の影響を受けやすい若年世代では特にそれが顕著になります。

アロンは次のように述べています。「デジタルへの没入がもたらす孤立は、従業員の分断につながり、企業は従業員による生産性の著しい低下を目の当たりにするでしょう。組織は、デジタル・デトックスのための期間を従業員に義務付け、勤務時間外のコミュニケーションを禁止し、『対面での会議』『電子メールを使わない金曜日』『ランチ休憩はデスク外で過ごす』といったアナログ的な手段を強制的に復活させなければなりません」

2027年までに、医療機関の70%は、テクノロジ契約に感情AI関連の利用規約を含めることになる。さもないと、数十億ドル規模の金銭的損害のリスクを負う。
医療従事者の業務負荷が増大した結果、離職者が増え、患者の要求が増大し、臨床医の燃え尽き症候群率が上昇し、ひいては共感の危機 (エンパシー・クライシス) が生じています。患者データの収集などの作業に感情AIを活用することで、医療従事者の時間を解放し、業務負荷の増大に伴って生じる燃え尽き症候群やフラストレーションを軽減できるようになります。

2028年までに、大企業の40%は、利益追求の名目で従業員の気分や行動を操作/測定するために、AIを導入する
AIは、職場でのやりとりやコミュニケーションについてセンチメント分析を行うことができます。これにより、全体的なセンチメント (感情) を、望ましい行動に確実に整合させるためのフィードバックが提供され、動機と意欲のある労働力を得られるようになります。

アロンは次のように述べています。「従業員が自主性やプライバシーの侵害を感じ、不満や信頼低下につながる可能性があります。AIを活用した行動テクノロジの潜在的なメリットは膨大ですが、企業は士気や忠誠心への長期的なダメージを避けるために、効率性の向上と、本格的な従業員ウェルビーイング対応を両立させなければなりません」

2028年までに、S&P対象企業の30%は、「xxGPT」といった生成AIのラベル付けを行って自社ブランディングを再構築しながら、新たな売り上げを追求する。
CMO (最高マーケティング責任者) は生成AIを、新しいプロダクトとビジネスモデルの両方を立ち上げることができるツールと見なしています。また、生成AIを活用すると、プロダクトの市場投入を速めることで新たな収益源を生み出すと同時に、より優れたカスタマー・エクスペリエンスを提供し、プロセスを自動化できるようになります。生成AIを巡る競争が激化するにつれ、企業は自社の業界に合わせて調整した特別なモデルを開発することで差別化を図りつつあります。

2028年までに、企業における情報侵害の25%は、外部の攻撃者や悪意ある内部関係者によるAIエージェントの悪用に起因するものになる。
目に見えないアタック・サーフェスが既に存在していますが、AIエージェントはそれを急増させるため、企業には新たなセキュリティ/リスク・ソリューションが必要になるでしょう。そのようなアタック・サーフェスが増えることで、企業は、悪意ある活動を行うAIエージェントを作成する人物 (知識のある外部の攻撃者や不満を持つ従業員) からビジネスを保護する必要に迫られることになります。

アロンは次のように述べています。「企業は、AIエージェントの脅威に対する軽減機能の実装を待ってはなりません。リスクやセキュリティ侵害の軽減機能をプロダクトやソフトウェアに組み込むことは、侵害を受けた後に追加するよりもはるかに容易です」

2028年までに、CIOの40%は、AIエージェントのアクションの結果を自律的に追跡/監督/抑制する「守護エージェント」の利用を求めるようになる。
AIエージェントに対する企業の関心は高まっていますが、新たなレベルのインテリジェンスが追加されるたびに、プロダクト・リーダーの戦略計画において新たな生成AIエージェントが登場し、急速に拡大しようとします。「守護エージェント」は、セキュリティ監視、可観測性、コンプライアンス保証、倫理、データ・フィルタリング、ログ・レビューをはじめとする、AIエージェントのメカニズムに関する数多くの概念に基づいて構築されています。2025年末までに、複数のエージェントを搭載したプロダクトのリリース数は、より複雑なユースケースを伴いながら着実に増えていくでしょう。

アロンは次のように述べています。「短期的には、AIエージェントのセキュリティ関連の攻撃が、新たな脅威領域となるでしょう。ガードレール、セキュリティ・フィルター、人間による監視、あるいはセキュリティの可観測性をさらに実装したとしても、確実に一貫してAIエージェントを適切に使用するには不十分です」

2027年までに、Fortune 500企業は、5,000億ドル分のエネルギー経費をマイクログリッドへとシフトし、それによって慢性的なエネルギー・リスクとAIによる需要を緩和する。
マイクログリッドは、エネルギー・システムで発電、蓄電、負荷をつなぐ独立した電力ネットワークであり、特定の地域や施設のエネルギー・ニーズを満たすために、単独で、あるいはメイン・グリッドと連携して稼働できます。

これにより、日常的なオペレーションに競争優位性が生まれ、将来のエネルギー・リスクも軽減されます。運営支出 (OPEX) の一部をエネルギーに費やしているFortune 500企業は、上昇する公共料金を払い続ける場合よりも優れたリターンをもたらすマイクログリッドへの投資を検討すべきです。

2026年末までに、組織の20%は、AIを活用して組織構造をフラット化し、現在の中間管理職の半数以上を廃止する。
AIを導入して人間の中間管理職を廃止する組織は、短期的には労働コストの削減という形で、長期的には福利厚生コストの節約という形で、そのメリットを得られるようになります。また、AIを導入すると、残った従業員の「タスク」「レポート作成」「パフォーマンス・モニタリング」を自動化/スケジュール設定することで生産性の向上や管理範囲の拡大が可能となり、残った管理職は、より戦略的で、拡張性に優れ、付加価値の高い活動に集中できるようになります。

一方で、AIの導入は、組織に課題ももたらします。例えば「雇用に不安を感じる従業員が増える」「管理職が直属の部下の増加に過剰な負担を感じる」「残った従業員が変化を起こすことや、AI主導のやりとりを受け入れることに消極的になる」といったことが挙げられます。さらに、メンタリングや学習パスが途切れ、多くの若手従業員が自身の成長の機会が少なくなることに苦しむことになりかねません。

2029年までに、世界の取締役会の10%は、AIガイドを使用して、ビジネスにとって重要な経営判断に異を唱える。
AIが生み出す知見は、経営幹部の意思決定に広範な影響を及ぼすようになり、取締役会メンバーは経営幹部の意思決定に異を唱える力を得られるようになります。これにより、周囲が擁護できない意思決定も多々あるような「破天荒なCEO」の時代は終わりを迎えるでしょう。

アロンは次のように述べています。「影響力の強いAIの知見は、最初のうちは、取締役会メンバーの多数派の意見を反映していない少数派の報告書のように思われるでしょう。しかし、AIの知見が効果的であると証明されるにつれて、ビジネス成果を高める意思決定支援データの獲得を競っている経営幹部陣の間に受け入れられていくでしょう」

Gartnerのサービスをご利用のお客様は、レポート「Gartner’s Top Strategic Predictions for 2025 and Beyond: Riding the AI Whirlwind」で詳細をご覧いただけます。
日本で提供しているサービスについては、こちらよりご参照ください。https://www.gartner.co.jp/ja/products

日本のITエグゼクティブ向けのニュースや最新情報は、GartnerのXFacebookでも案内しています。最新のプレスリリースや記事、ウェビナー情報については、ニュースルームよりご参照ください。

Gartner IT Symposium/Xpoについて

開催中のGartner IT Symposium/Xpo (10月28~30日) では、「今日をリードし、明日を形作る」をテーマに、テクノロジ・イノベーション、経営幹部のリーダーシップ、ビジネス戦略の3つのトラックからなるプログラムをご用意しています。主要な17のトピック領域における最新のテクノロジ、戦略、そしてリーダーシップに関する知見を提供し、CIOとリーダーシップ・チームにとっての最重要課題を取り上げます。コンファレンスのニュースと最新情報は、Xでご覧いただけます (#GartnerSYM)。

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