2024/11/08

Transgene社とNEC、頭頸部がんに対する個別化ネオアンチゲンがんワクチンTG4050の有効性を支持する新たな免疫データを取得

日本電気 株式会社 

Transgene社とNEC、頭頸部がんに対する個別化ネオアンチゲンがんワクチンTG4050の有効性を支持する新たな免疫データを取得

~「米国がん免疫療法学会2024」で発表~

2024年11月8日
Transgene SA
日本電気株式会社

  • 両社は米国がん免疫療法学会(SITC 2024)で第一相臨床試験の24ヵ月の追跡調査のデータを発表しました。本データにおいて、頭頸部がんに対する標準的な補助療法終了後の追加治療として、TG4050の投与を受けたすべての患者さんの無再発が維持されたことを示しました。
  • TG4050は特異的かつ持続的な免疫反応を誘導しました。現在、第I相臨床試験での有望な結果に基づき、第II相臨床試験の患者登録が行われています。

がん治療向けウイルスベース免疫治療のデザインおよび開発を手掛けるバイオテクノロジー企業Transgene SA(トランスジーン、以下 Transgene社、注1)と日本電気株式会社(以下 NEC、注2)は、頭頸部がんの術後補助療法の追加療法として、個別化ネオアンチゲンがんワクチンTG4050を投与した無作為割付(注3)第I相臨床試験を実施し、本試験の追跡調査データ(中央値24.1カ月)を米国がん免疫療法学会の年次総会(Society for Immunotherapy of Cancer (SITC) 2024 Annual Meeting)で11月9日にポスター発表します。

TG4050について

TG4050は、Transgene社のmyvac®プラットフォームに、最適ながん抗原を選択するNECの最先端AIを活用して開発したワクチンです。

今回発表したデータ:頭頸部がんの再発状況と免疫応答の状況について

標準治療後の補助免疫療法としてTG4050を投与した16人の患者さん全員が、中央値24.1カ月の追跡調査後も無再発状態を維持しました。一方、観察対照群の患者さん16人のうち3人で再発を確認しました。頭頸部がんの患者層が標準的な手術および術後補助療法を受けた場合、24カ月以内に約30%が再発すると予想されており、より有効な術後補助療法には高い医療ニーズがあります。

また、TG4050を投与された患者さん全員において、標的として選定したネオアンチゲンに対する免疫応答が検出されました。これは、TG4050がde novo反応とamplified反応(注4)の両方に強力な免疫原性(注5)を有することを示しています。また導入期とブースト期にあたる7カ月以上にわたり、免疫応答の持続が確認できました。

なお、治療に関連する有害事象は、引き続き軽度から中等度でした。

各者のコメント

中央値24.1カ月の追跡調査の時点で、TG4050の臨床および免疫反応データの確証を得られたことは非常に心強いことです。頭頸部がん患者さんの術後補助療法の領域では、依然として高い医療ニーズがあります。TG4050は「局所進行性の頭頸部扁平上皮がん患者」において、腫瘍抗原に対する免疫応答を誘導し、再発を予防する可能性を示しました。

Institut Curie, Head of the Department of Drug Development and Innovation (D3i), and Principal Investigator, Pr. Le Tourneau

私たちのネオアンチゲンワクチンTG4050を投与された患者さん全員が、中央値24.1カ月の追跡調査期間を経てもなお無再発状態を維持していることを確認し、非常に心強く感じております。今回の結果と長期間免疫反応が持続していることを踏まえ、現行の治療法では依然として再発のリスクが大きい患者さんに対し、TG4050が有益となる可能性があると確信しています。現在、これらの有望な結果をさらに証明することを目的に、第II相臨床試験の患者登録を国際的に進めているところです。

Transgene社, Chief Medical Officer, Dr. Emmanuelle Dochy

今回の結果は、Transgene社との提携の強みと、NEC独自の最先端AI(人工知能)/ML(機械学習)モデルを使用することで、がん患者さんに個別化アプローチを開発する当社の能力を実証しています。今回、TG4050を個別化免疫療法として用いることのメリットを裏付ける、強力で説得力のある臨床データセットを構築することができました。NECは今後も、AIをベースとした新たな治療法を世界中の患者さんに届けるという使命に取り組んでまいります。

NEC 執行役 Corporate EVP 兼 CTO 西原基夫

なお本内容は、ポスター発表時にSITC 2024のウェブサイトで、またTransgene社のウェブサイトで閲覧できるようになります。

これらの有望なデータに基づき、無作為割付第I相試験は現在患者登録中の頭頸部がんの補助療法設定における無作為割付第I/II相試験(NCT04183166)に拡大されました。

ポスター詳細

アブストラクト番号:650
タイトル:Randomized phase I trial of adjuvant individualized TG4050 vaccine in patients with locally advanced resected HPV-negative head and neck squamous cell carcinoma (HNSCC)
発表者:C. Le Tourneau – Institut Curie
発表日:11月9日

以上

  • 臨床試験について
    TG4050は、HPV陰性頭頸部がん(NCT04183166)の患者さんを対象とした第I相臨床試験で評価されています。本臨床試験では、手術を終え、補助療法を受けている間に各患者さんに合わせた個別の治験薬が設計されました。半数の患者さんには補助療法の終了後、直ちにTG4050を投与し、残り半分の患者さんには、標準治療の追加治療として、再発後にTG4050を投与しました。この無作為割付臨床試験は、再発リスクの高い患者さんに対するTG4050の治療効果を評価するものです。第I相臨床試験では国際的に実施され、32名の評価可能な患者さんで行われています。現在、第II相臨床試験の患者登録を進めているところです。
  • myvacについて
    myvac®は、Transgene社が固形がんをターゲットに開発したウイルスベクター(MVA-Modified Vaccine Ankara)ベースの個別化免疫療法プラットフォームです。myvac®由来の製品は、患者さん自身の免疫システムを刺激し、患者さん自身のがん特有の遺伝子変異を用いて腫瘍を認識・排除するようにデザインされています。Transgene社は、バイオエンジニアリング、デジタル・トランスフォーメーション、確立されたベクター化のノウハウ、独自の製造能力を組み合わせた革新的なネットワークを構築しています。Transgene社はmyvac®の開発のためにBpifranceより「Investment for the Future」基金を獲得しています。myvac®の最初のプロダクトであるTG4050は、現在臨床試験で評価中です。
  • TG4050について
    TG4050はTransgene社のmyvac®テクノロジーとNECのAIをベースとする個別化免疫療法です。このウイルスベースの治療用ワクチンは、NECのネオアンチゲン予測システムによって特定・選択されたネオアンチゲン(患者さん毎に異なる変異)をコードします。予測システムは20年以上にわたって培われたAIの専門知識に基づいており、正確に最も抗原性の高い配列の選択と優先順位付けを可能にする独自のデータによって訓練されています。TG4050は患者さん固有のネオアンチゲンに基づき、腫瘍細胞を認識し排除することができるT細胞反応を引き起こすことを目的として、患者さんの免疫システムを刺激するよう設計されています。 この個別化免疫療法は患者さん毎に開発、製造されるものです。
  • NECのネオアンチゲン予測システムについて
    ネオアンチゲン予測にはNECが開発したグラフベース関係性学習を利用し、標的ネオアンチゲンを予測するために、複数の生物学的データを学習させています。頑健なT細胞応答を引き起こす可能性を計算するため、NEC独自のHLA結合能および抗原提示能AIツールを含む機械学習アルゴリズムを用いて、標的ネオアンチゲンは慎重に求められます。これにNEC OncoImmunityが加わり、今後もNECは世界トップクラスのネオアンチゲン予測パイプラインの強化に務め、世界中の患者さんのために個別化がん免疫療法の治療効果を最大限に引き出すことを目指します。詳細は以下をご覧ください。
    NECのAI創薬事業:https://jpn.nec.com/solution/ai-drug/
    NEC OncoImmunity:https://www.oncoimmunity.com/
  • (注1)

    本社:フランス・ストラスブール、CEO:Alessandro Riva
    Transgene社について:https://www.transgene.fr/

  • (注2)

    本社:東京都港区、取締役 代表執行役社長 兼 CEO:森田隆之

  • (注3)

    無作為割付:被験者を目的治療群(治験薬を投与して効果を調べる群)と対照群(対照薬などを投与する群)のどちらに割り振るかをランダムに決定する手法のことです。無作為化により、被験者を恣意的に特定の治療群に割り振るといったバイアスを無くし、公平に評価できます。

  • (注4)

    de novo反応とamplified反応:de novo反応は、個別化がんワクチン投与によって新たに誘導されたネオアンチゲン特異的免疫応答のことを示します。一方、amplified反応は、個別化がんワクチン投与前から患者さんに存在する免疫応答で、個別化がんワクチン投与によって増強されたネオアンチゲン特異的免疫応答のことを示します。

  • (注5)

    免疫原性:抗原などが体内で免疫応答を引き起こす能力のことです。

NECの創薬事業について

URL:https://jpn.nec.com/solution/ai-drug/

本件に関するお客様からのお問い合わせ先

NEC AI創薬統括部
E-Mail:contact@aidd.jp.nec.com

NECは、安全・安心・公平・効率という社会価値を創造し、
誰もが人間性を十分に発揮できる持続可能な社会の実現を目指します。
https://jpn.nec.com/brand/

この企業のニュース

業界チャネル Pick Upニュース

注目キーワード