植物による有用タンパク質の大量生産技術を開発

2024/10/01  国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構 

バイオものづくり分野の実証基盤「植物バイオファウンドリ」を整備

 NEDOの「カーボンリサイクル実現を加速するバイオ由来製品生産技術の開発」(以下、本事業)で、千代田化工建設株式会社は現在、植物を用いて有用タンパク質を生産する、新規基盤技術の実証設備の建設を進めております。植物を用いることで、ワクチンなどの医薬品や、再生医療等製品、化粧品、機能性食品など多様な製品をアニマルフリーで安価に生産できる技術であり、二酸化炭素(CO2)の排出抑制効果も期待できます。
 この実証設備を、さまざまな企業の植物バイオものづくりの実用化開発に利用できるよう整備し、国内初の「植物バイオファウンドリ」として機能させる計画です。
 なお、本内容を2024年10月9日から11日にパシフィコ横浜で開催される「BioJapan2024」のNEDOブースおよび千代田化工建設ブース内に展示します。

図1 実証設備 鳥瞰図

1.背景
 植物や微生物などの生物を用いて物質を生産する技術(バイオものづくり)は、従来の化学プロセスに比べ、省エネルギーであるとともに、原料を化石資源に依存しないため、炭素循環型社会の実現や持続的経済成長に導くものづくりへの変革を期待できます。一方で、バイオによるものづくりを実現させるためには、石油由来製品に比べて生産効率が低いことやバイオ製品の物性が劣ることなどの課題解決が必要となっています。
 このような背景からNEDOは2020年度から本事業※1を実施しており、その一環として2022年度から、千代田化工建設は、株式会社ニッピ、国立研究開発法人産業技術総合研究所、国立大学法人大阪大学生物工学国際交流センターと共同で、「植物による高度修飾タンパク質の大量生産技術の開発」(以下、本開発)に取り組んでいます。本開発は、複雑で高度な修飾を必要とする機能性タンパク質を、植物(タバコ葉)を用いて生産する技術で、安価かつ安定的に供給するシステムを開発するものです。

図2 本事業の開発内容

2.本事業の成果
 本開発では、ベンチスケール~パイロットスケールの生産が可能な実証用設備の建設を進めており、来春に稼働開始予定です。今後はこの設備を「植物バイオファウンドリ」として機能させ、様々な企業が開発する有用物質製品について、プロセス開発やサンプル製造を行い、実用化に向けたサポートを提供します。

【植物バイオファウンドリ概要】
 ・建設場所: 千代田化工建設 子安リサーチパーク内
 ・設備規模: 延床面積 約490m2(生産エリアおよび開発エリア含む)
 ・完工時期: 2025年1月末(予定)
 ・期待される機能: さまざまな企業の植物バイオものづくりの研究開発をサポートし、
           円滑な社会実装化に貢献すること
 ・植物バイオファウンドリとしての提供サービス(予定)
   ・植物を用いた物質生産の試験受託
   ・植物を用いた物質生産のプロセス開発
   ・ラボスケールからベンチ・パイロットスケールへのスケールアップ検討
   ・パイロットスケールから商用スケールまでのスケールアップ検討
   ・フィージビリティスタディなど

図3 建設中の実証設備

3.今後の予定
 今回の開発テーマである、植物を用いた有用タンパク質の大量生産化について、検証実験を進めた後には、さまざまな企業の植物バイオものづくりの実用化開発に利用していただけるよう、各種サービスの充実に努め、バイオものづくり産業の発展に貢献します。
 NEDOは、このような産業用物質生産システムの実証例を増やしていくことで、バイオ由来製品の社会実装加速や新たな製品・サービスの創出、さらに日本のバイオエコノミー活性化へ貢献します。これにより、2050年カーボンニュートラルへの道筋を示し、バイオものづくり分野における温室効果ガスの排出量削減に貢献します。
 なお、本内容を2024年10月9日から11日にパシフィコ横浜で開催される「BioJapan2024」のNEDOブースおよび千代田化工建設ブース内に展示します。

【注釈】
※1 本事業
 事 業 名:カーボンリサイクル実現を加速するバイオ由来製品生産技術の開発
 事業期間:2020年度~2026年度(予定)
 事業概要:カーボンリサイクル実現を加速するバイオ由来製品生産技術の開発


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