一般品比で約1.3倍の沿面距離を確保。表面実装タイプでも樹脂ポッティングによる絶縁処理が不要に
車載機器向けSiC SBD「SCS2xxxNHR」
ローム株式会社(本社:京都市)は、端子間の沿面距離(*1)を伸長して絶縁耐性を高めた、表面実装タイプのSiCショットキーバリアダイオード(以下、SBD)を開発しました。オンボードチャージャー(OBC)など車載機器向けの「
SCS2xxxNHR」8機種をラインアップしており、2024年12月からはFA機器やPVインバータなど産業機器向けの「SCS2xxxN」8機種も販売を開始する予定です。
新製品は、従来のパッケージ下部にあったセンターピンを取り除き、独自の形状を採用したロームオリジナルのパッケージとすることで、沿面距離を一般品の約1.3倍となる最小5.1mmに伸長しました。沿面距離を長く確保することで端子間のトラッキング(沿面放電)(*2)を抑制できることから、高電圧アプリケーションにおいて基板へデバイスを表面実装する際、樹脂ポッティング(*3)による絶縁処理が不要です。
SCS2xxxN(HR)のTO-263-2Lパッケージ
耐圧は650Vと1200Vの2種類を揃えており、xEV(電動車)で広く用いられる400Vシステムのほか、将来的に採用拡大が見込まれる、より高電圧なシステムにも使用できます。また、TO-263パッケージの一般品及び従来品と共通のランドパターンに実装できるため、既存の回路基板への置き換えが可能です。さらに、車載機器向けの「SCS2xxxNHR」は車載信頼性規格AEC-Q101*4に準拠しています。
SiC SBDのパッケージ形状比較
新製品は、2024年9月からサンプル出荷(サンプル価格1,500円/個:税抜)を開始しています。生産拠点は、前工程がローム・アポロ筑後工場(福岡県)、後工程がROHM Korea Corporation(韓国)です。インターネット販売も開始しており、チップワンストップ(TM)、コアスタッフオンライン(TM)などから購入することができます。
今後もロームは、SiCを用いた高耐圧なSBDの開発に取り組み、市場ニーズにあった最適なパワーデバイスの提供を通じて、自動車や産業機器の省エネルギー化や高効率化に貢献していきます。
ニュースリリース:
https://www.rohm.co.jp/news-detail?news-title=2024-11-12_news_sbd&defaultGroupId=false
背景
近年、普及が加速するxEVに搭載されるOBCなどにはパワー半導体が不可欠であり、発熱が少なく高速スイッチング性能と高耐圧性能を兼ね備えるSiC SBDの需要が高まっています。特に、小型かつマウンターで実装可能な表面実装(SMD)パッケージ品は、アプリケーションの生産性向上につながるためニーズが加速しています。しかし一方で、高電圧の印加などによるトラッキングが生じやすいことから、より長い沿面距離を確保したデバイスが求められています。
ロームはSiCのリーディングカンパニーとして、高電圧なアプリケーションに対応できる耐圧性能と、実装性の高さを兼ね備える高性能なSiC SBDの開発に取り組んできました。そして今回、パッケージに独自形状を採用することで最小5.1mmの沿面距離を確保し、高い絶縁性能を備える本製品を開発しました。
製品ラインアップ
車載機器向け「SCS2xxxNHR」8機種と産業機器向けの「SCS2xxxN」8機種
アプリケーション例
車載機器
- オンボードチャージャー(OBC)
- DC-DCコンバータ など
産業機器
- 産業ロボット用ACサーボ
- PVインバータ
- パワーコンディショナ
- 無停電電源装置(UPS) など
インターネット販売情報
販売ネット商社
チップワンストップ(TM)、
コアスタッフオンライン(TM)
それ以外のネット商社からも順次発売していきます。
販売品
車載機器向け「
SCS2xxxxNHR」は販売中
産業機器向け「SCS2xxxxN」は2024年12月から順次販売開始予定
1個から購入可能
「EcoSiC(TM)(エコエスアイシー)」ブランドについて
EcoSiC(TM)は、パワーデバイス分野においてシリコン(Si)を上回る性能で注目されている、シリコンカーバイド(SiC)素材を採用したデバイスのブランドです。ロームは、ウエハ製造から製造プロセス、パッケージング、品質管理方法に至るまで、SiCの進化に不可欠な技術を独自で開発しています。また、製造工程においても一貫生産体制を採用しており、SiC分野のリーディングカンパニーとしての地位を確立しています。
EcoSiC(TM)ブランド
EcoSiC(TM)は、ローム株式会社の商標または登録商標です。
用語説明
*1) 沿面距離
デバイスのパッケージ表面に沿った2つの導電体(端子)間の最短距離のこと。半導体設計では、電撃や漏電、半導体製品の短絡(ショート)を防ぐため、沿面距離や空間距離の確保による絶縁対策が必要である。
*2) トラッキング(沿面放電)
導電体である端子に高電圧を印加した際に、絶縁物であるパッケージの表面を伝わって放電が起こる現象。本来導通してはならないパターン間に放電が発生するため、デバイスの絶縁破壊を引き起こす。パッケージの小型化により沿面距離が短くなるほど生じやすい。
*3) 樹脂ポッティング
デバイス本体やデバイスと回路の電極接続部をエポキシ剤などの樹脂を用いて封止し、電気的な絶縁を行うこと。デバイスの保護や防水、防塵など、耐久性や耐候性の向上にも効果を発揮する。
*4) 車載信頼性規格「AEC-Q101」
AECはAutomotive Electronics Councilの略で、大手自動車メーカーと米国の大手電子部品メーカーが集い、策定した車載電子部品の信頼性規格。Q101は、ディスクリート半導体部品(トランジスタ・ダイオード等)に適用される規格である。
注) 「チップワンストップ(TM)」、「コアスタッフオンライン(TM)」は、各社の商標または登録商標です。