2021/12/16

水処理膜や水処理関連サービスなどの市場を調査

株式会社 富士経済 

水処理膜や水処理関連サービスなどの市場を調査

―2030年予測(2020年比)―
●水処理膜の世界市場 3,695億円(63.5%増)
~海水淡水化需要の拡大や環境規制の強化により好調に推移~
●クラウド型上下水道遠隔監視・制御システムの国内市場 72億円(41.2%増)
~コスト削減ニーズの高まりや災害時のBCP対策としても注目され市場拡大~

総合マーケティングビジネスの株式会社富士経済(東京都中央区日本橋小伝馬町 社長 清口 正夫 03-3664-5811)は、新興地域を中心とした人口増加や都市化、工業化の進展により安定した水資源の確保に対するニーズが高まっていることから注目される水処理関連の市場を調査した。その結果を「2021年版 水資源関連市場の現状と将来展望」にまとめた。

この調査では、水処理膜3品目、水処理薬品・副資材7品目、水処理装置・プラント9品目、水処理関連サービス3品目の市場を調査・分析し、将来を展望した。

◆注目市場

●水処理膜

 

 

2021年見込

2020年比

2030年予測

2020年比

MF膜/UF膜

世界市場

569億円

106.2%

884億円

164.9%

 

国内市場

39億円

105.4%

44億円

118.9%

MBR用膜

世界市場

586億円

106.5%

941億円

171.1%

 

国内市場

36億円

105.9%

41億円

120.6%

RO膜/NF膜

世界市場

1,282億円

109.2%

1,870億円

159.3%

 

国内市場

62億円

105.1%

70億円

118.6%

合 計

世界市場

2,437億円

107.8%

3,695億円

163.5%

 

国内市場

137億円

105.4%

155億円

119.2%

【MF膜/UF膜】

世界市場は、2020年は新型コロナウイルス感染症の影響により、需要回復が早かった中国以外の地域は厳しい状況となった。2021年は中国の好調に加え、北米でも需要が回復しつつあることから市場は前年比6.2%増が見込まれる。今後は中東を中心とした海水淡水化の前処理需要の増加、水質規制や排水再利用の義務化などの規制強化を背景に排水処理用途が伸長するとみられる。

国内市場は、2020年は需要の中心である浄水場でプロジェクトが中止になったことなどから新規、リプレース需要が共に急減し、市場は縮小した。2021年は遅延していた案件が少しずつ動き始めたこともあり、需要回復がみられる。今後は膜ろ過浄水場の需要や工業用水、純水製造における膜処理需要の増加が期待される。

【MBR用膜】

世界市場は、特に水資源の乏しい中国や北米などを中心に急拡大している。2020年は新型コロナ流行の影響により、民需を中心にプロジェクトの中止や延期がみられたことから市場は縮小した。2021年は中国、北米を中心に需要が回復しており、市場は前年比6.5%増が見込まれる。

国内市場は、食品工場などの民需が中心である一方、下水処理場への導入やリプレース案件が徐々に増加している。規制強化やCSR対応の観点から、排水の高度処理やリサイクルに力を入れる企業も多く、市場は緩やかに拡大していくとみられる。

【RO膜/NF膜】

海水淡水化に使用される中高圧タイプのSWRO膜、かん水の脱塩やその他工業用途などに多く用いられる低圧タイプのBWRO膜に分類される。

世界市場は、2020年に前年比7.8%減となった。SWRO膜はコロナ禍においても事業を継続する案件が多かったことや大型海水淡水化案件の急増などにより伸長したものの、BWRO膜は新型コロナ流行の影響を受け、電力や石油精製などのエネルギー分野、鉄鋼、鉱山、石油化学などの重化学工業分野の需要が大幅に減少したことから市場はマイナスとなった。2021年は、2020年下半期から需要が回復している中国や、2021年に入り経済活動が回復しつつある米国は堅調な伸びが予想される一方、欧州や中東は新型コロナ流行の影響により、需要回復には時間を要するとみられる。今後は中東やアジアなど、新興地域における大型海水淡水化需要や排水リサイクル、産業用水に高品質な水を求めるニーズの増加から、市場拡大が期待される。

国内市場は、産業用途や下水の再利用化などに用いられるBWRO膜が中心となっている。産業用途では、半導体やディスプレイなどの電子産業分野での需要は旺盛で、純水や超純水製造用途が伸長したものの、新型コロナ流行の影響を受け、エネルギー分野や重化学工業分野が大幅な需要減となったことから2020年の市場は縮小した。2021年以降、需要は徐々に回復し市場は堅調に拡大するとみられる。

●クラウド型上下水道遠隔監視・制御システム

 

2021年見込

2020年比

2030年予測

2020年比

国内市場

55億円

107.8%

72億円

141.2%

上下水道施設や下水道中継ポンプ場、マンホールポンプ場、雨水ポンプ場、農業用水処理場などの各種施設や設備の稼働状況を、各種通信回線を通じて遠隔制御・監視できる機器およびソフトウェア、サービスを対象とする。

職員の高齢化や上下水道事業の収益性悪化、市町村合併などにより担当一人当たりの管理対象施設が大幅に増加するなど、様々な課題を抱える水道・下水道事業者の管理効率化やコスト削減ニーズの高まりにより、市場は拡大してきた。全国的に災害が多発する中でBCP対策として注目されているほか、2020年以降は新型コロナ流行の影響により人の移動が制限される中で、遠隔監視ニーズがさらに高まっていることから市場拡大が期待される。また、今後人口が減少し水道事業や下水道事業の広域化や民営化が進むことで、各地に点在する施設の管理効率化やコスト削減ニーズの増加が予想され、取得データの仕様の標準化や予兆保全への活用など、運営・維持管理におけるデータ活用が進むとみられる。

●EDIスタック(電気再生式イオン交換装置)

 

2021年見込

2020年比

2030年予測

2020年比

世界市場

131億円

104.8%

178億円

142.4%

EDI(Electro Deionization)は電気再生式のイオン交換装置で、純水・超純水製造装置などの水処理装置を構成する部材であり、一般的なイオン交換樹脂単独によるイオン交換樹脂法に比べ、樹脂の再生に薬品を使用しない、メンテナンスが容易、省スペース化が可能などのメリットがある。

エレクトロニクスや製薬分野のほか、発電所での純水・超純水製造装置の需要が中心となる。地域別では、欧州や北米は堅調に推移しており、中国やアジアなど新興国での需要増加が市場をけん引している。特に、2020年は中国や台湾、韓国などのエレクトロニクス分野が好調で、市場は前年比7.8%増となった。今後は、引き続き中国などのエレクトロニクス分野向けが伸長するほか、インドなどの新興国では、電力需要の高まりに伴い発電所での需要増加が期待される。

◆調査結果の概要

■水処理関連の国内市場

 

2021年見込

2020年比

2030年予測

2020年比

水処理膜

137億円

105.4%

155億円

119.2%

水処理薬品・副資材

1,403億円

102.0%

1,378億円

100.1%

水処理装置・プラント

972億円

101.8%

993億円

104.0%

水処理関連サービス

657億円

106.7%

757億円

122.9%

【水処理薬品・副資材】

大口需要家である浄水場や下水処理場における処理水量の減少や国内製造業の縮小、環境負荷低減を目的としたケミカルレスの流れや薬品を用いない競合技術の普及、薬剤利用量やタイミングの最適化を図るモニタリング技術の開発などにより、緩やかに縮小している。2020年はコロナ禍において、官需では大きな影響はみられなかったものの、民需では工場の稼働率が一時的に低下したことや、オフィスビルや商業施設、プール・温浴施設などでの利用が減少したことから多くの品目がマイナスとなり、市場は前年比3.0%減となった。

【水処理装置・プラント】

官需・民需ともリプレース需要が中心であり、新設案件は減少しているため市場は横ばいから微減で推移している。2020年はエレクトロニクスや製薬分野向けが好調な純水製造装置/システムや超純水製造装置/システム、紫外線照射装置などは伸長したものの、新型コロナの影響により住宅着工件数の影響を強く受ける浄化槽や、食品・飲料分野の影響を強く受ける嫌気処理システムなどが減少したことから、市場は前年比1.2%減となった。また、オゾン発生装置や超微細気泡散気装置、脱水機など官需が中心の品目では新型コロナ流行の影響は限定的であった。

【水処理関連サービス】

純水・超純水供給サービス、クラウド型上下水道遠隔監視・制御システム、地下水利用システム/サービスを対象とする。

水処理関連サービスは、新規ユーザーから得られる売上に加え、既存ユーザーからの利用料収入などが一定の割合を占めるため、ユーザー数の増加に伴い堅調な市場拡大が予想される。最も市場規模の大きい純水・超純水供給サービスは、半導体やFPDなどエレクトロニクス分野が主な需要先となり、着実にユーザー数が増加しているものの、生産拠点が国内から海外へと移っていることなどから今後伸びは鈍化するとみられる。一方、クラウド型上下水道遠隔監視・制御システムや地下水利用システム/サービスは、コスト削減ニーズの高まりや災害時のBCP対策としても注目されていることから今後も堅調な伸びが期待される。

◆調査対象

水処理膜

・精密ろ過膜(MF膜)/限外ろ過膜(UF膜)

・逆浸透膜(RO膜)/ナノろ過膜(NF膜)

・MBR(膜分離活性汚泥法)用膜

 

水処理薬品・副資材

・ボイラ・冷却水用薬品

・高分子凝集剤

・EDIスタック

・水殺菌・消毒用薬品

・活性炭

(電気再生式イオン交換装置)

・無機凝集剤

・イオン交換樹脂

 

水処理装置・プラント

・純水製造装置/システム

・紫外線照射装置

・嫌気処理システム(UASB/EGSB) 

・超純水製造装置/システム

・超微細気泡散気装置

・海水淡水化装置・プラント 

・オゾン発生装置(オゾナイザ)  

・浄化槽

・脱水機

水処理関連サービス

・クラウド型上下水道遠隔監視・制御システム

・地下水利用システム/サービス

・純水・超純水供給サービス

 

※網掛け部分は国内市場に加え世界市場も調査した

2021/12/16

上記の内容は弊社独自調査の結果に基づきます。 また、内容は予告なく変更される場合があります。 上記レポートのご購入および内容に関するご質問はお問い合わせフォームをご利用ください、 報道関係者の方は弊社グループ広報部(TEL 03-3664-5697)までご連絡をお願いいたします。

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