環境測定分析統一精度管理調査に関する令和3年度調査結果の取りまとめについて
環境省令和4年3月25日
水・土壌 大気環境
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環境省では、環境測定分析の信頼性の確保及び精度の向上等を目的として、環境測定分析統一精度管理調査を実施しています。今般、令和3年度環境測定分析検討会において、令和3年度の調査結果を取りまとめましたので、お知らせします。
<令和3年度調査結果の概要>
(1)調査項目
(a)基本精度管理調査
【模擬排水試料(一般項目等)】
COD、BOD(硝化抑制有り)、TOC、全燐、ふっ素及びその化合物、ほう素及びその化合物
(b)高等精度管理調査
【模擬水質試料(ノニルフェノール等)】
<詳細項目> ノニルフェノール、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸及びその塩(LAS)
【模擬大気試料(模擬PM2.5粒子)(無機元素)】
<詳細項目> ニッケル、亜鉛、鉄、鉛、アルミニウム、及びカルシウム、
<参照項目> マンガン、銅、ナトリウム、及びカリウム
(2)参加分析機関数
公的機関137、民間機関370、計507機関
(3)分析・調査結果
(a)基本精度管理調査
【模擬排水試料(一般項目等)】
室間精度CV(※)は、BOD(硝化抑制有り)(21.2%)を除いて2.79~7.76%と良好でした。
昨年度のBODの分析結果のばらつきが試料中の窒素化合物によるものであったかを調べるため、本年度のBODは硝化抑制有りで実施しましたが、本年度のばらつきは前年度と同程度となりました。硝化抑制の実施が、ばらつきの低減に効果を示さなかったことから、前年度(及び本年度)のBODにおけるばらつきの原因の特定には至りませんでした。
(b) 高等精度管理調査
【模擬水質試料(ノニルフェノール等)】
ノニルフェールについては、室間精度CVが従前の調査において大きな値となる傾向があり、本年度においても同様に27.1%と大きな値となりました。
LASについては、室間精度CVは合計値で11.8%、同族体で12.5~16.9%と概ね良好でした。
【模擬大気試料(模擬PM2.5粒子)(無機元素)】
詳細項目については、室間精度CVはアルミニウム(27.9%)を除いて、6.29~9.25%と良好でした。アルミニウムにおいては、前処理操作に原因があると考えられ、詳細な検討の必要性が示唆されました。
参照項目については、室間精度CVは、6.10~9.65%と良好でした。
※ 「室間精度CV」は、参加分析機関間のばらつきを表す変動係数を示す。
(4)その他(指摘事項等)
棄却された回答の多くは計算違いや不適切な操作が原因と思われるものであり、情報共有を含めた確認体制の再点検が重要です。また、日常的な装置の点検やバリデーション(検量線の傾き、検量線の直線性、装置検出下限値等の確認)を実施すれば防げると思われるケースも散見されました。
分析においては、分析対象である試料(性状、共存物質等)に関する情報を共有したうえで、適切な前処理及び測定方法を選択し、最適化された分析条件を一定にしたうえで、得られた測定値について生データを含めて慎重に確認することが非常に重要です。
なお、調査結果については、測定分析統一精度管理調査ウェブサイトに掲載しています。
(https://www.env.go.jp/air/tech/seidokanri/report/index.html)
(参考) 環境測定分析統一精度管理調査の背景
我が国においては、大気汚染防止法、水質汚濁防止法等の法令に基づいて、環境基準の設定や汚染状況の監視、工場・事業場に対する排出規制、公害防止・環境保全に係る国・地方の各種計画等の策定等、様々な施策が実施されています。
環境測定分析は、これらの法令の施行や制度・施策の実施のための基礎であり、地方自治体や民間の環境測定分析機関において測定分析に携わっている技術者が、これを支えています。
環境測定分析の方法は、法令等によって公定法として規定されています。しかし、試料の採取・保管・前処理から、測定分析機器・薬品等の管理・調整・操作に至るまで、公定法に規定されていない細部を含めて、測定分析に携わる技術者の技能・経験・考え方が、データの精度に大きな影響を及ぼします。
環境測定分析の精度が確保されなければ、上記の法令や制度・施策の実効性が損なわれ、環境行政への社会の信頼を揺るがす事態となります。また、誤った測定分析データにより適切な排出規制が行われず、適切な対策が講じられなかった場合には、それによって失われた環境の修復に多大な費用・労力と長い年月を要し、大きな社会的・経済的損失を招くこととなります。
こうした背景から、環境省では、「環境測定分析統一精度管理に関する調査」を毎年度継続して実施し、環境測定分析機関による測定分析の精度の向上及び信頼性の確保を図っています。
本調査は、最近では500前後の環境測定分析機関が参加する我が国でも有数規模の調査です。
また、長期的な計画に基づいて、幅広い試料や項目を対象とするとともに、試料ごとに統計的な分析・評価を行い、その評価結果などについても明らかにしています。
調査結果については毎年度「調査結果説明会」等を開催し、分析上の留意点や分析結果に関して分析機関に技術的な問題点等をフィードバックしています。
またウェブサイトにおいても、環境測定分析の精度向上に資する情報などを提供しています。
(https://www.env.go.jp/air/tech/seidokanri/index.html)
連絡先
環境省水・大気環境局総務課環境管理技術室
- 代表03-3581-3351
- 直通03-5521-8297
- 室長鈴木延昌(内線 6554)
- 室長補佐森山真人(内線 6574)