2022/06/17

世界初 「光で駆動する巨大イオンチャネルたんぱく質」を藻類から発見~深部脳領域の新たな診断・治療法の開発への応用に期待~

科学技術振興機構(JST) 

令和4年6月17日

東京大学
名古屋工業大学
香川大学
科学技術振興機構(JST)

世界初 「光で駆動する巨大イオンチャネルたんぱく質」を藻類から発見

~深部脳領域の新たな診断・治療法の開発への応用に期待~

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ポイント

  • 幅広い種類の藻類が光エネルギーを使ってイオンを輸送する、巨大イオンチャネルたんぱく質「ベストロドプシン」を藻類が持つことを世界で初めて発見しました。
  • ベストロドプシンは光を捉えるロドプシンと、イオンを輸送するベストロフィンから成り、さらにベストロドプシン同士が集まることで大口径のイオンチャネルを持つ、巨大な複合体を形成することを発見、光に応答してイオンチャネルが開き、陰イオンが輸送される一連のメカニズムを解明しました。
  • 本成果は、光遺伝学(オプトジェネティクス)分野への応用や、視覚再生医療、心疾患治療のための新たな分子ツールとしての利用が期待されます。

東京大学 物性研究所の井上 圭一 准教授、名古屋工業大学 大学院工学研究科およびオプトバイオテクノロジー研究センターの古谷 祐詞 准教授、神取 秀樹 特別教授、香川大学 医学部の藤原 祐一郎 教授らの研究グループは、イスラエルおよびドイツの研究グループとの国際共同研究により、海洋などの水圏環境にすむ幅広い種類の藻類が、太陽光で駆動しイオンを輸送する機能を有する、巨大なたんぱく質を持つことを世界で初めて発見しました。

これは動物の視覚や植物の光合成といった既知のものとは異なった、生物による全く新しい太陽光の利用法の存在を明らかにしたものです。この新しいたんぱく質は、われわれヒトを始めとする動物のほか、微生物などが幅広く持つ、光を感知するためのたんぱく質である「ロドプシン」と、細胞の多様な場所でイオンを輸送するイオンチャネルたんぱく質の1つである「ベストロフィン」の2つが融合した形の分子であり、新たに「ベストロドプシン」と名付けられました。

今後、このベストロドプシンは体の奥深くまで届く長波長光で駆動するという特徴を生かすことで、光でうつ病やてんかんなど脳神経が関わる疾患の発生原因を調べ、さらにそれらの治療法の開発が期待されている光遺伝学分野への応用や、視覚再生医療や光による心疾患治療のための新たな分子ツールとしての利用が期待されます。

本研究成果は、米国東部夏時間2022年6月16日に「Nature Structural & Molecular Biology」に掲載されます。

本研究は、文部科学省日本学術振興会(JSPS) 科学研究費助成事業(学術変革領域研究(B)「低エネルギー操作」における「超音波・磁場感受性レシーバ分子開発と筋組織形成促進技術への応用(研究代表者:井上 圭一、課題番号:JP20H05758)」、特別推進研究「光遺伝学を支えるロドプシンの作動メカニズムの解明(研究代表者:神取 秀樹、課題番号:JP21H04969)」、新学術領域研究「高速分子動画」における「時間分解構造解析を補完する精密顕微分光計測(研究代表者:久保 稔、研究分担者:古谷 祐詞、課題番号:JP19H05784)」)、および科学技術振興機構(JST) 戦略的創造研究推進事業(CREST「光の特性を活用した生命機能の時空間制御技術の開発と応用(研究総括:影山 龍一郎)」における「細胞内二次メッセンジャーの光操作開発と応用(研究代表者:神取 秀樹、課題番号:JPMJCR1753)」、CREST「新たな光機能や光物性の発現・利活用を基軸とする次世代フォトニクスの基盤技術(研究総括:北山 研一)」における「超短赤外パルス光源を用いた顕微イメージング装置の開発と生命科学への応用(研究代表者:藤 貴夫、研究分担者:古谷 祐詞、課題番号:JPMJCR17N5)」、さきがけ「生命機能メカニズム解明のための光操作技術(研究総括:七田 芳則)」における「光OFF型オプシンによる高感度かつ自然な視覚再生(研究代表者:永田 崇、課題番号:JPMJPR1888)」)、さきがけ「量子技術を適用した生命科学基盤の創出(研究総括:瀬藤 光利)」における「構造基盤に立脚した色認識機構および色覚情報伝達機構の解明(研究代表者:片山 耕大、課題番号:JPMJPR19G4)」)による支援を受けて行われました。

<プレスリリース資料>

  • 本文 PDF(583KB)

<論文タイトル>

“Rhodopsin-bestrophin fusion proteins from unicellular algae form gigantic pentameric ion channels”
DOI:10.1038/s41594-022-00783-x

<お問い合わせ先>

  • <研究に関すること>

    井上 圭一(イノウエ ケイイチ)

    東京大学 物性研究所 准教授
    Tel:04-7136-3230
    E-mail:inoueissp.u-tokyo.ac.jp

    古谷 祐詞(フルタニ ユウジ)

    名古屋工業大学 大学院工学研究科/オプトバイオテクノロジー研究センター 准教授
    Tel:052-735-5127
    E-mail:furutani.yujinitech.ac.jp

    神取 秀樹(カンドリ ヒデキ)

    名古屋工業大学 大学院工学研究科/オプトバイオテクノロジー研究センター 特別教授
    Tel:052-735-5207
    E-mail:kandorinitech.ac.jp

    藤原 祐一郎(フジワラ ユウイチロウ)

    香川大学 医学部 教授
    Tel:087-891-2095
    E-mail:fujiwara.yuichirokagawa-u.ac.jp

  • <JST事業に関すること>

    保田 睦子(ヤスダ ムツコ)

    科学技術振興機構 戦略研究推進部 ライフイノベーショングループ
    〒102-0076 東京都千代田区五番町7 K’s五番町
    (CREST担当)
    Tel:03-3512-3524 Fax:03-3222-2064
    E-mail:crestjst.go.jp
    (さきがけ担当)
    Tel:03-3512-3526 Fax:03-3222-2064
    E-mail:prestojst.go.jp

    嶋林 ゆう子(シマバヤシ ユウコ)

    科学技術振興機構 戦略研究推進部 グリーンイノベーショングループ
    〒102-0076 東京都千代田区五番町7 K’s五番町
    Tel:03-3512-3531 Fax:03-3222-2066
    E-mail:crestjst.go.jp

  • <報道担当>

    東京大学 物性研究所 広報室

    Tel:04-7136-3207
    E-mail:pressissp.u-tokyo.ac.jp

    名古屋工業大学 企画広報課

    Tel:052-735-5647 Fax:052-735-5009
    E-mail:pradm.nitech.ac.jp

    香川大学 医学部総務課 広報法規・国際係

    Tel:087-891-2008
    E-mail:kouhou-mkagawa-u.ac.jp

    科学技術振興機構 広報課

    〒102-8666 東京都千代田区四番町5番地3
    Tel:03-5214-8404 Fax:03-5214-8432
    E-mail:jstkohojst.go.jp

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