2023/09/29

高熱伝導性ダイカスト金型用合金粉末を商品化

山陽特殊製鋼 株式会社 

2023 年 9 月 29 日

3D プリンター用金属粉末 NOVASHAPE(R)シリーズ
高熱伝導性ダイカスト金型用合金粉末を商品化
~ダイカスト成形時のサイクルタイム短縮と大型金型の 3D 造形に寄与~


山陽特殊製鋼株式会社(代表取締役社長 宮本 勝弘)は、ダイカスト成形のサイクルタイム短縮や大型金型の 3D造形を可能とする、高熱伝導性ダイカスト金型用 3D プリンター粉末のラインナップを商品化しました。

これら当社の新商品を 3D プリンタ―によるダイカスト金型の造形に使用することで、ダイカスト成形時に金型を効果的に冷却することが可能となり、サイクルタイム短縮による生産性向上や金型の長寿命化が期待できます。

また、高い熱伝導性と優れた造形性の双方を実現したことで、大型金型への 3D 造形適用も可能となります。

当社は、本開発商品を 10 月 4 日から 6 日にかけて幕張メッセで開催される第 10 回高機能金属展(メタルジャパン)に出展するほか、10 月 19 日から 20 日に同志社大学で開催される粉体粉末冶金協会第 132 回講演大会で発表するなど、今後の採用拡大に向けて積極的にPRしてまいります。

ダイカスト金型への 3D 適用時の課題
大型造形と高熱伝導化の両立
・JIS-SKD61:造形時に割れが発生し大型化が困難
・マルエージング鋼:熱伝導性が低く金型冷却が不十分
⇒従来から使用されている合金では両立が困難

3D 造形プロセスの特徴
微小領域毎に材料が急速に溶融・凝固
・材料全体に高い焼入効果
・急冷による材料の脆化抑制効果
⇒従来は焼入性や脆化防止に必要だった合金 元素を削減可能

新合金の開発コンセプト

従来の鋼種をベースに 3D 造形プロセスの特徴を活かした合金設計
S-MECTM40D:JIS-SKD61 溶製材の焼入性確保に必要とされていた合金元素を削減し、熱伝導性を向上
S-MECTM34D:S-MECTM40D をベースに、3D 造形時の材料変形を制御した合金設計で造形性を向上
S-MECTM24M:マルエージング鋼の脆化防止を目的に添加されていた合金元素を削減

■従来合金の課題

ダイカストとは、高温のアルミニウム合金溶湯を金型に高圧で流し込むことで部品を成形するプロセスです。金型の表面温度と冷却能が、部品の生産性や品質に影響を及ぼすため金型内部には冷却用水管が設けられています。金型製造への 3D 造形適用で、冷却用水管の設計自由度が大幅に高まってダイカスト成形中の金型を効果的に冷却することが可能となりますが、ダイカスト金型に広く用いられている熱間工具鋼 JIS-SKD61 は3Dプリンターでの造形時に割れが発生しやすく、また、3D プリンタ―での造形性に優れたマルエージング鋼は熱伝導性が低いため、ダイカスト成形中の金型冷却が不十分になるという課題がありました。

これらの課題を克服するため各社で新合金の開発が進められていますが、金型の熱伝導性や構造がダイカスト製品の生産性や品質に大きく影響するため、より熱伝導性が高く 3D での造形性に優れた材料が求められています。

■新合金の開発コンセプト

当社は、3Dプリンターでの造形が材料を急速に溶融・凝固するプロセスであることに着目し、従来添加されていた各種合金成分の必要量を 3D プリンター用に最適化することで、従来材料の限界レベルを超える熱伝導性と優れた 3D 造形性の双方を実現したダイカスト金型用合金粉末を商品化しました。

JIS-SKD61 改良タイプ

「S-MECTM40D」:一般的に鉄鋼材料の熱伝導性は材料に含まれる合金成分の量が多くなるほど低下しますが、ダイカスト金型に広く使用されている JIS-SKD61 は、金型使用時に必要とされる硬さを確保するため焼入れ性を高める合金元素が多く添加されています。

当社は、3D造形が材料を急速に溶融・凝固するプロセスで、熱源が照射された微小領域ごとに焼入れ効果が得られるため、JIS-SKD61 より合金元素を低減できることに着目しました。これにより、金型使用時に必要な硬さと 3D プリンターでの造形性を確保しつつ、熱伝導性を損なう合金成分を削減して類似鋼種中で最高水準の熱伝導性を実現しました。

設計思想 熱伝導性を損なう合金成分の量を削減
特性 類似鋼種中で最高水準の熱伝導性:40W/(m・K) ※JIS-SKD61 の 1.7 倍

「S-MECTM34D」:「S-MECTM40D」をベースに、材料のマルテンサイト変態温度(焼きが入って硬くなり始める温度)を制御することで更に造形性を向上させ、JIS-SKD61 の 1.4 倍の熱伝導性を有しながら、大型サイズの造形を可能としています。

設計思想 マルテンサイト変態温度を制御
特性 大型造形に対応(直径 180mm の大型サイズも可能)

マルエージング鋼改良タイプ

「S-MECTM24M」:マルエージング鋼は、3D 造形の大型化に有利ですが、熱処理により脆くなることを防ぐために必要な合金元素を多く含むことから熱伝導性は JIS-SKD61 に比べて著しく劣ります。

当社は、3D プリンターの急冷プロセスがマルエージング鋼の熱処理による脆化を抑制できるため、合金成分が削減できることに着目しました。これにより、優れた機械的性質と 3D 造形性を確保しつつ従来のマルエージング鋼の 1.4 倍、JIS-SKD61 と同等の熱伝導性を達成しました。また、一般的なマルエージング鋼は特定化学物質であるコバルトを含有しており、その粉末の取り扱いには特定化学物質障害予防規則で義務付けられる除塵装置設置等の健康障害防止措置が必要ですが、当社は、コバルトフリーでその優れた特性を実現しています。

設計思想 脆化防止を目的に添加されていた合金元素を削減
特性 従来のマルエージング鋼の 1.4 倍の熱伝導性

■お客様の 3D 造形開発をトータルでサポート

当社は、高品質の金属粉末を製造できるガスアトマイズ設備に加えて、金属3Dプリンターを 2 基、非破壊検査装置(X 線 CT スキャン)を 1 基保有しています。これらを活用して3Dプリンターでの造形に最適な金属粉末の成分開発、材料特性を十分に引き出すための造形条件の確立、造形体の内部評価をスピーディーに行える開発体制を整え、試作用粉末の提供やお客様の3D造形開発のトータルサポートを積極的に推進しております。

今後も 3D プリンタ―用金属粉末「NOVASHAPE(R)シリーズ」の新商品や技術の開発に注力し、材料・技術を通じたお客様の競争力向上に繋がるソリューションを提供してまいります。

以上

≪お問い合わせ先≫ 山陽特殊製鋼株式会社 総務部広報グループ (TEL:079-235-6002)

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