過酷な宇宙環境での曝露実験において当社電子材料の耐久性を実証
パナソニック ホールディングス2023年10月12日
製品・サービス / プレスリリース
過酷な宇宙環境での曝露実験において当社電子材料の耐久性を実証
~今後の航空宇宙、情報通信分野等の技術革新に電子材料で貢献~
パナソニック インダストリー株式会社(本社:大阪府門真市、代表取締役 社長執行役員・CEO:坂本真治)は、「スペースデリバリープロジェクト~RETURN to EARTH~」[1](Space BD株式会社主導)に参画し、国際宇宙ステーション(ISS)「きぼう」の船外実験プラットフォーム[2]上で当社の電子材料製品の宇宙曝露[3]実験を実施しました。2023年3月から約3ヵ月間の宇宙滞在(宇宙曝露実験期間:2カ月)を経て宇宙より帰還した材料の性能評価を行いましたが、重要3項目(詳細は一次評価内容参照)において、大きな性能変化は検出されず、過酷な宇宙環境にも耐えうる品質であることが確認されました。
宇宙空間は微小重力・高真空・宇宙放射線・低温~高温の大きな温度変化などの現象が同時に起こる、非常に過酷な環境であり、地上での再現実験が困難です。そのため、今回の実験では、当社が開発した電子材料製品を実際に宇宙空間に曝露させ、その影響を確認することが目的です。
今回の評価結果から、当社電子材料の高い品質と優れた耐久性が実証された結果となりました。引き続き、詳細な材料特性評価を進めて参ります。
当社は、これまで長年培ってきた技術開発力に、今回の宇宙曝露実験を通して得られた知見を活かすことで、「業界最高の低伝送損失」を誇る電子材料のさらなる技術進化を図ってまいります。これにより、地上における高速通信ネットワークの技術革新にとどまらず、今後さらに宇宙開発をはじめ、第6世代移動通信システム(6G)の実現を支える空飛ぶ基地局(HAPS[4])など過酷な環境対応が求められる非地上系ネットワーク機器の技術開発を下支えすることで、より良い未来と豊かな社会の実現に貢献しつづけてまいります。
宇宙曝露実験前後のサンプル
(左が実験前・右が実験後)
宇宙曝露実験サンプルの内訳
【評価の内容と今後の予定】
■一次評価内容(詳細)
(1)外観観察:色調変化、電子顕微鏡観察
全サンプルとも変化なし
実例:MEGTRON6 R-5775(K)の外観写真
色調に変化なし
実例:MEGTRON6 R-5775(K)の表面の電子顕微鏡画像(倍率3,000倍)
実験前後で変化なし。クラックや空隙等の異常無し。
実験前
実験後
(2)電気特性:比誘電率(Dk)・誘電正接(Df)
全サンプルとも変化なし
実例:MEGTRON6 R-5775(K)の電気特性
平衡型円板共振器法、実験前後各2サンプルの測定平均値
(3)化学分析:FT-IR赤外分光
全サンプルとも変化なし
実例:MEGTRON6 R-5775(K) FT-IRスペクトル(ATR法)
実験前後でスペクトルが一致し、変化なし
■二次評価内容(今後の評価予定)
(4)熱分析:ガラス転移温度、熱膨張係数、分解温度
(5)断面観察:樹脂/ガラスクロス界面密着、ガラスクロスの劣化分析
■宇宙曝露実験 経緯と今後の予定(以下、日本時間)
2023年3月15日 | ISSに向け打上げ完了(ミッション名:SpaceX CRS-27) |
2023年3月21日 | ISS船外実験プラットフォームに設置、宇宙空間へ曝露開始 曝露実験終了、ISS船内に回収 |
2023年6月30日 | 補給船にて地球に帰還(ミッション名:SpaceX CRS-28) NASA・JAXA等の関係機関での検品 |
2023年8月25日 | 実験サンプルが当社に帰還 宇宙空間曝露前・後での材料特性の変化を評価開始 |
2023年度末 | 二次評価(他の材料特性評価)予定 |
■宇宙曝露実験における当社実験サンプルの設置場所
■宇宙曝露実験 当社対象商品
低伝送損失多層基板材料「MEGTRON」シリーズ
高周波基板材料「XPEDION」シリーズ
高耐熱・低膨張多層基板材料「HIPER-V」
フレキシブル基板材料「FELIOS」シリーズ
半導体パッケージ基板材料「LEXCM GX」シリーズ
二次実装補強材アンダーフィル「LEXCM DF」シリーズ
対象商品についてはこちら<宇宙曝露実験特設サイト>
https://pages.industrial.panasonic.com/ja/embd/jp/aero/space_exposure_experiments?utm_campaign=EMBD_2023_space&utm_medium=release231012&utm_source=release231012
【参考情報】
■展示会出展
CEATEC 2023(シーテック 2023)
(Combined Exhibition of Advanced Technologies)
主催:一般社団法人電子情報技術産業協会(JEITA)
会期:2023年10月17日(火)~20日(金)
開場:幕張メッセ(千葉県千葉市美浜区中瀬2-1)
https://news.panasonic.com/jp/topics/205333
■学会報告
第67回宇宙科学技術連合講演会(通称:宇科連)
主催:一般社団法人 日本航空宇宙学会
会期:2023年10月17日(火)~20日(金)
会場:富山国際会議場、ANAクラウンプラザホテル富山
<講演情報>
講演番号:3K01(オーガナイズドセッション「民生技術の宇宙転用」内)
講演タイトル:「基板材料・実装補強材料の宇宙適用に向けた宇宙曝露実験の計画」
発表日時:2023年10月19日 9:30~9:50
https://branch.jsass.or.jp/ukaren67/
■関連情報
-
プレスリリース(2022年6月22日発信)
航空宇宙用最先端電子材料開発に向けた宇宙曝露実験を実施
https://news.panasonic.com/jp/press/jn220622-1 -
航空宇宙用の最先端電子材料が宇宙曝露に向け出発(2023年3月16日発信)
https://news.panasonic.com/jp/topics/205063 -
<宇宙曝露実験>最先端電子材料がSpaceXと共に出発、宇宙ビジネスへの新たな挑戦
https://www.panasonic.com/jp/industry/technology/space-exposure-experiments.html
【お問い合わせ】
パナソニック インダストリー株式会社 電子材料事業部
https://industrial.panasonic.com/cuif/jp/contact-us?field_contact_group=2201
【パナソニック インダストリー株式会社 電子材料のご紹介】
https://industrial.panasonic.com/jp/electronic-materials
【パナソニック インダストリー株式会社】
https://www.panasonic.com/jp/industry
■Space BD株式会社
【用語説明】
[1]スペースデリバリープロジェクト
Space BD株式会社が主導。ISS「きぼう」日本実験棟にある中型曝露実験アダプタ(i-SEEP)に搭載する小型簡易曝露実験装置(ExBAS/JAXAと共同開発)を活用したプロジェクト。対象品の選定・打上げ・地上回収までの様々なサポートを実施。
[2]国際宇宙ステーション(ISS)「きぼう」日本実験棟の船外実験プラットフォーム
地上から約400 km上空に位置する国際宇宙ステーション内「きぼう」日本実験棟の船外にある、宇宙空間にさらされた実験スペース。科学観測、地球観測、通信、理工学実験および科学実験等が可能。
[3]宇宙曝露
微小重力、宇宙放射線、高真空など宇宙環境特有の空間にさらすこと。地上ではこれらの環境を同時に再現することは難しい。
[4]HAPS
High-Altitude Platform Station:高高度プラットフォームの略。上空約20 kmの成層圏に飛行させた無人航空機にLTEや5G等の通信基地局を搭載し、広域エリアに通信サービスを提供するシステムの総称。災害にも強く、上空を含む3次元空間エリアへの通信サービスの提供を実現できる点から山岳部や離島など通信ネットワークが未整備の場所や地域を広くカバーし、情報格差解消の一助となることが期待されている。
記事の内容は発表時のものです。
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- パナソニック インダストリー株式会社
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