2024/01/04

早河洋会長、篠塚浩社長 2024年「年頭挨拶」

株式会社 テレビ朝日ホールディングス 

2024 年 1 月 4 日

早河洋代表取締役会長「年頭挨拶」

テレビ朝日グループの皆さん、あけましておめでとうございます。年明け早々、大きなニュースが発生しました。元日には、能登半島を中心とした震度7の地震が発生し、大きな被害が出いています。2日には、羽田空港で日航機と海上保安庁の航空機が衝突し、双方とも炎上、5人が亡くなりました。衝撃的なニュースでした。

2つのニュースとも、通常放送を切り換えたりして、速報対応に追われました。お正月気分が吹き飛ぶ重大な出来事でしたが、こうした緊急事態には、迅速かつ的確に対応できるよう不断の努力、研鑽を怠らないことが肝要だということを思い知らされました。

さて、視聴率速報です。2023 年年間の視聴率は個人全体で全日が 3.6%、プライムが 5.5%で2冠を達成しました。世帯は3冠でした。いずれも開局以来初の快挙です。番組編成、制作陣を中心にした全社一体となった取り組みの歴史的成果と言えると思います。しかしながら、厳しい競争は今後も続くと思われますので、気を緩めずにこの勢いをさらに加速していきたいと思います。

昨年一年は、テレビ朝日が中継した 3 月の WBC、8 月の FIBA バスケットボールワ―ルドカップ 2023 をはじめ各局のスポーツ中継が高視聴率を獲得しました。スポーツ界への大きな貢献で文化勲章を受章した川淵三郎さんは 11 月のお祝い会で「スポーツは人々に夢や希望、勇気、感動を与える」とスポーツの効用を力説していらっしゃいました。

テレビが始まって 70 年、テレビ朝日が開局して今年で 65 周年、実はテレビも多様な番組群によって、夢や希望、勇気、感動を視聴者に送り続けてきたのではないかと思います。日々のニュースや情報は人々の生活の糧になり、ドラマ、バラエティ、あるいは音楽番組はまさに感動や笑い、励ましや癒しを発信してきました。

しかしながら、いまテレビはそうした本来の機能が変化し、取り巻く環境は急速に厳しさを増しています。その原因は、コロナの影響もあって動画配信が拡大し、テレビ視聴の実態が変化したことやウクライナ情勢による経済環境の激変が影響していると思われます。アメリカでは既存のテレビは Netflix など動画配信の影響でシェアを落としており、地上波のブレーキは世界的トレンドともいえます。テレビ朝日は現在「BREAKOUT STATION!新しい時代のテレビ朝日経営計画 2023-2025」を展開中ですが、こうした状況に速やかな対応策、戦略の強化が求められていると思います。

具体策を説明します。まずタイムテーブルですが、視聴率競争ではしっかりトップ争いができていますが、さらなるアクセントのついた増収増益策を掲げる必要があります。2020 年7 月、編成、営業、ビジネス、インターネットの 4 局を統合的に運用するビジネスソリューション本部を立ち上げ、3年あまり大きな成果をあげてきました。

この本部内に戦略タスクフォースを組成し、緊急かつ重要なコンテンツ制作にあたります。社内に点在するヒットメーカー、クリエーターを集め動画配信向けドラマ、広告会社と連携しての企業 PR や CM の制作、AR、VR、メタバースなどデジタル系ビジネスの開発などに集中的に取り組んでもらいます。

次に経営計画に掲げた新領域開拓と IP ビジネスです。昨年電子書籍の BookLive 社の株式を取得、持ち分法適用関連会社としました。豊富なコンテンツを軸にアニメ化やそれに伴う IP ビジネスを加速させていきます。さらに年末までに、フィギュア、プラモデルで高収益をあげている壽屋の筆頭株主となり、資本業務提携で合意しました。国内だけでなくアメリカやアジアでも人気商品を販売している会社で、人事交流によって IP ビジネスのノウハウを共有していきたいと考えています。

この2件との連携のカギを握るのがアニメ戦略です。「ドラえもん」、「クレヨンしんちゃん」に加え、「ユーリ!!! on ICE」や「ブルーロック」などヒット作品を生みだし、ビジネス拡大に努めてきましたが、さらに新作品を投入していきます。アニメの場合、「出版-放送-映画」というビジネスモデルがあり、そのプロセスでの IP 展開によって収益を拡大するのが基本です。従って、まずは人気作品の確保が不可欠です。激しい競争がある分野で相当の努力が求められ時間もかかります。3年ぐらいをメドに、まずタイムテーブルにアニメ番組を複数編成できるよう注力する必要があります。

もうひとつの新規事業は、大型オリジナルスマホゲーム「メテオアリーナ」です。大ヒットした「モンスターストライク」の開発、運営を行っている株式会社でらゲーと共同開発したオリジナルで、多数の特徴的なキャラクターが登場する対戦型アクションゲームです。先月、情報リリース、この夏のローンチが決まりました。

この事業計画は、4年前にスタートしましたが、内容の精査に時間をかけたため、ようやくリリースとなりました。大ヒット、大ブレークを期待しているところです。

緊急対策としての新領域開拓は必須マターですが、やはり、編成の王道として強化すべきなのは、ドラマと報道です。ドラマは今世紀、「相棒」、「ドクターX」など、ヒット作品を制作してきましたが、一方で、今こそレギュラーとは別の長時間ドラマが大切ではないかと考えます。かつて、2夜連続の「流転の王妃・最後の皇弟」、「点と線」、5夜連続の「弟」、「白い巨塔」が大きな反響と高視聴率を獲得しました。最近の「友情」も大変好評でした。この路線を“テレビ朝日ドラマプレミアム”と銘打ち、国民的ドラマを創るという意気込みで取り組んでまいります。

もう一つは、「タモリステーション」です。これまで、2年間で7作品を制作しました。大谷翔平選手の活躍からウクライナ情勢、サッカーワールドカップ、富士山噴火、異常気象などで、平均視聴率は、個人 6.8%、世帯 11.6%でした。報道、スポーツからエンターテイメントまで、基本的に時代のトレンド、森羅万象を集中取材する、いわば、社を挙げたテレビ朝日スペシャルの位置づけで、タイムテーブル活性化の推進役にしたいと思っています。

今日は仕事始めということもあり、いくつかの戦略強化策を提示しましたが、ここで「チャレンジの軌跡」と題した、開局 50 周年、60 周年の社史に掲載された私のメッセージの一部をお伝えします。

まず 50 周年です。

「運命的に教育局としてのスタートであったり、それ故、ネット局の不備など、後発としての多くのハンデを何とか克服しようとした創業期の苦闘は、実は「木島則夫モーニングショー」など、テレビ史に残る傑作を創出してきました。こうした「挑戦」と呼ぶべき試みはこれに留まらず、数多くの成功体験を重ね、当社の DNA を形成しつつ今日に至っています」

続いて 60 周年のメッセージです。

「“万年4位”という烙印をぬぐうことが難しい時代が続いてきました。しかし、世紀を超えた 2001 年前後から潮目が変わります。幹部社員や中堅層の危機感から始まった全社変革推進運動が一つのキッカケでした。この運動の旗振り役のひとりとして、様々な編成改革を推進してきました。その結果、2012 年度、開局以来初めてのゴールデン、プライムの視聴率トップを実現しました」

次は、年頭挨拶の締めくくりとして、65 周年のメッセージです。

「視聴率トップになった 2012 年以降、視聴率は2位をキープしています。近年は堂々とトップ争いに加わりました。売上も 3000 億円台に乗り、スポットはじりじりとシェアを拡大しており、広告収入はこのところ2位です。デジタル系ビジネスの ABEMA、TELASA、UltraImpression、TVer などが、上昇基調にあります。開局の年、1959 年度の売り上げは、17 億円、経常利益は8千万円、番組制作費は8億6千万円、従業員 486 人のテレビ局が 65周年でここまでたどり着きました。この業績をベースに時代の要請に応える BREAKOUTSTATION として、更なる高みを目指していきたいと思っております」

テレビ朝日グループの皆さんとこの思いを共有し、年頭の挨拶とします。

篠塚浩代表取締役社長「年頭挨拶」

テレビ朝日グループの皆さん、あけましておめでとうございます。まずは能登半島地震の被災者の方々にお見舞いを申し上げたいと思います。その上で放送対応に当たった皆さん、大変お疲れ様でした。羽田空港での航空機事故も含め、きょう以降も報道は続いていきますので、しっかりと対応して行きたいと思います。

最初に去年のことを振り返ります。旧ジャニーズ事務所の性加害問題です。「マスメディアの沈黙」が指摘され、私たちは 11 月 12 日の検証特番を通じて、2003 年、4 年の裁判について報道していなかったことなどについて深い反省の意を示し、今後の改善策を表明しました。放送ハンドブックには人権に関する項目が、今回の事例を含めて近々大幅に加筆されますし、また、人権方針の策定作業も進んでいます。今年はそれらに基づいた研修なども行っていきます。

グループ全体の人権意識を高めていくとともに、テレビ朝日グループ全員で、テレビ局、テレビメディアの持つ公共的な役割について改めて強く認識していきたいと思います。年初からの一連の報道もまさにその公共的な役割の一例です。そして、テレビ朝日グループの企業使命「情報やコンテンツを提供し夢や希望を持ち続けられる社会の実現に貢献する」、この企業使命をもう一度、心に刻んでいきたいと思います。

ご存じのように旧ジャニーズ事務所は解体的な出直しとして、被害者への補償・救済を担う SMILE-UP.社とタレントのマネージメントを行う STARTO ENTERTAINMENT の 2 つの会社に分割されました。SMILE-UP.社は補償を進めていると聞いていますが、被害者への誠実な対応を引き続きお願いしていきます。また、STARTO ENTERTAINMENT とはお互いに透明性をもった公正な業務関係を構築していきたいと思います。

先ほど早河会長は収益の拡大を目指した具体的な戦略強化策について詳しく述べられました。私はもう少し先の私たちの企業活動に大きな影響を与えるだろう AI についての取り組みについて話したいと思います。

ChatGPT が世に出て 1 年余り、生成系 AI のこの 1 年の成長と発展は驚くべきものであることは、多くの皆さんが実感していると思います。インターネットの普及以来、もっと大げさには産業革命以来とも語られる革命的な社会変化をもたらすとされています。そして、その生成物が文書から画像そしてこの先は動画へとマルチモーダル化していく中で、映像コンテンツを生業としている私たちにとっても、もはや避けては通れない課題です。IoTv局と技術局が主導して去年 9 月には Go-chat を立ち上げ、また、デジタルガバナンス推進事務局を中心に利用ガイドラインを作成していますが、さらに研究と利用をスピードアップして世の中の変化に対応するため、ビネスソリューション本部の下に AI 推進チームを組成します。チームの課題はテレビ朝日グループの成長のために AI などデジタル技術を業務の中に積極的に取り入れていくこと、それに伴うリスク管理をしっかりしていくこと、この2 つです。

まず DX ですが、すべての部署を対象にデジタル技術に任せられることはデジタル技術に任せていく、業務プロセスも見直す、そこから生み出されたリソースをクリエイティブな仕事に当てるとともに、コストを下げることを目指します。

それが働き方改革や組織の多様性にもつながっていくと思います。それから番組制作部門を中心に、コンテンツ制作の効率化と新たな表現の可能性を探る、あるいは、新しいビジネスを生み出す可能性を探る。リスク管理では改めて著作権や個人情報保護、情報漏洩対策をしっかりしていく、さらに報道機関としてフェイク映像を見抜くこと、さらには国内外の規制、法制化の動きをしっかりフォローしていくとことなども含まれます。もちろんこれらの課題で一朝一夕に成果が出るとは思っていません。チームだけではなくグループの役職員全員が同じ課題感をもって、自分たちでアイディアを出し合い前に進んでいきたいと思います。

続いて成長戦略の柱の一つである配信事業について話します。配信事業の中でも特にTVer、Abema などで配信している「見逃し配信」AVOD は、去年の売上が前の年のおよそ4 割増と放送事業のダウントレンドを埋め合わせる存在になっています。平均再生回数では「星降る夜に」が 246 万回、「ハヤブサ消防団」が 217 万回と 1 位、2 位で、また「アメトーク」などの看板バラエティ番組が毎週安定した再生回数で下支えしてくれています。

が、成長を持続、あるいは加速させるためには、さらに大きく全体の再生数を増やしていかなければなりません。そんな中でここのところ目につくのが、バラバラ大作戦で昨年 10月から水曜深夜 26 時半に放送されている「夫が寝たあとに」です。大晦日の深夜にはスペシャルも放送されましたが、レギュラーの放送は見逃し配信で恒常的に再生数 20 万回前後を記録、最高で 29 万回と深夜帯の番組としては民放全局の中でも極めて異例の再生数となっています。TVer ではすべての民放併せて 1800 本ぐらいのコンテンツが常時配信されています。コンテンツの魅力になかなか気づかれにくい、つまり多くが大量のコンテンツの中に埋もれてしまうという状況の中で、この「夫が寝たあとに」は大きなヒントを与えてくれると思います。TVer に置いておくだけで回るという目玉コンテンツには数に限りがあります。SNS での効果的、効率的な情報発信など、どのようなルートで私たちのコンテンツの魅力を利用者に伝え再生回数を増やすことができるのか、去年立ち上げた組織横断の「配信事業拡大会議」では様々な試みが行われていると聞いていますが、ぜひ再現性のある勝ちパターンを発見して欲しいと思います。

それがコンテンツの内容強化と並んで、AVOD 市場で一段の成長をしていくカギになりますし、「キョコロヒー」や「ハマスカ放送部」などで実績のあるイベントやグッズなどの360°展開とともに、私たちのタイムテーブルの大きな特徴・財産である深夜帯バラエティの価値を最大化するべきだと思います。また、TELASA や ABEMA の成長にも貢献してくれると思います。

最後にデータ関連では、tv asahi iD は会員が 200 万を超えて順調に拡大し、様々なビジネス利用も進んでいます。ショッピング事業ではテレ朝ポイントの運用も始まりました。経営計画は 2 年目に入りますが、蒔いてきた種をしっかり育て、かつ、新たな種も蒔いていきます。まさに Breakout、困難な状況に立ち向かい、力を合わせて突破していきましょう。本年もよろしくお願いします。

※視聴率はビデオリサーチ調べ・関東地区

以上

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