2024/01/30

アストラゼネカのイミフィンジ、肝動脈化学塞栓療法(TACE)およびベバシズマブとの併用療法、TACE単独療法と比較してTACE対象肝がん患者さんの病勢進行または死亡リスクを23%低減

アストラゼネカ 株式会社 

アストラゼネカのイミフィンジ、肝動脈化学塞栓療法(TACE)およびベバシズマブとの併用療法、TACE単独療法と比較してTACE対象肝がん患者さんの病勢進行または死亡リスクを23%低減

公開日 2024年 1月 30日

本資料はアストラゼネカ英国本社(AstraZeneca PLC)が2024年1月19日に発信したプレスリリースを日本語に翻訳し、みなさまのご参考に提供するものです。本資料の正式言語は英語であり、その内容・解釈については英語が優先します。

EMERALD-1試験は、TACE対象患者さんにおいて
全身療法とTACEとの併用によって臨床転帰の改善が認められた初のグローバル第Ⅲ相試験

AstraZeneca PLC(本社:英国ケンブリッジ、最高経営責任者(CEO):パスカル・ソリオ[Pascal Soriot]、以下、アストラゼネカ)は、第Ⅲ相EMERALD-1試験の良好な結果概要を発表しました。肝動脈化学塞栓療法(TACE)対象の肝細胞がん(HCC)の患者さんを対象とした本試験において、アストラゼネカのイミフィンジ(R)(一般名:デュルバルマブ、以下、イミフィンジ)とTACEおよびベバシズマブの併用療法は、TACE単独療法と比較して主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)の統計学的に有意かつ臨床的に意義のある延長を示しました。

これらの結果は、1月19日、カリフォルニア州サンフランシスコで開催された2024年米国臨床腫瘍学会消化器がんシンポジウム(ASCO GI)(#LBA432)で発表されました。

HCCは肝がんにおいて最もよくみられる種類であり、その患者さんの約20~30%がTACEの対象となります。TACEは、腫瘍への血液供給を遮断するとともに、化学療法や放射線療法を肝臓に直接届けることができる治療法です1-8。TACEは、その対象患者さんにおける標準治療であるにもかかわらず、TACEを受けた患者さんの多くが8カ月間以内に病勢進行または再発が起こります9-11

EMERALD-1試験において、イミフィンジとTACEおよびベバシズマブの併用療法は、TACE単独療法と比較して、病勢進行または死亡のリスクを23%低減させました(ハザード比[HR]0.77;95%信頼区間[CI]0.61-0.98; p=0.032)。PFSの中央値は、TACE単独療法群の8.2カ月に対し、イミフィンジ併用療法群では15カ月でした。観察されたPFSの有益性は、事前に規定された主要なサブグループ間において概ね一貫していました。また、副次評価項目である増悪までの期間(TTP)は、イミフィンジとTACEおよびベバシズマブ併用療法の臨床的有効性をさらに裏付けており、TTP中央値はイミフィンジ併用療法群の22カ月に対し、TACE単独療法群では10カ月でした(HR 0.63; 95% CI 0.48-0.82)。

本試験では、引き続き主要な副次評価項目である全生存期間(OS)を評価します。

スペイン、パンプローナのClínica Universidad de Navarra肝臓ユニット長および内科教授であり、本試験の治験責任医師であるBruno Sangro医学博士は次のように述べています。「早期の肝がんにおいて、TACEが標準治療となってから20年以上経ちますが、病勢進行率は依然として高いままでした。TACEにイミフィンジとベバシズマブを追加することで、TACE対象の肝がん患者さんの病勢進行または死亡のリスクが23%低減したことから、全身療法とTACEを併用することで、早期ステージにおける臨床的に重要な転帰が有意に改善することが初めて示されました」。

アストラゼネカのオンコロジー研究開発エグゼクティブバイスプレジデントであるSusan Galbraithは次のように述べています。「TACEの対象となった肝がん患者さんにイミフィンジベースの治療を併用することにより、7カ月近く無増悪生存期間が延長されました。当社は、最終的な全生存期間の結果を待ちながら、今回示されたEMERALD-1試験の良好な結果について世界の規制当局と協議を行っていきます」。

結果概要: EMERALD-1試験i

イミフィンジとTACEおよびベバシズマブの併用療法の安全性プロファイルは概ねコントロール可能であり、各薬剤の既知のプロファイルと一貫していました。TACEの施行回数は各治療群間で一致していました。グレード3および4の有害事象は、イミフィンジとTACEおよびベバシズマブ併用療法群では45.5%、TACE単独療法群では23%の患者さんに発現しました。

※TACE対象のHCCへのイミフィンジとTACEの併用療法、またイミフィンジおよびベバシズマブとTACEの併用療法は、本邦未承認です。

以上

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肝がんについて
肝がんは、世界でがんによる死因の第3位であり、世界で毎年推定90万人が診断され、アジアの特定の地域では高い有病率を示します。肝がんの中では肝細胞がん(HCC)が最も多くを占めます12-14。また、すべてのHCC患者さんの80~90%は肝硬変を併発しています15。肝硬変をはじめとした慢性肝疾患は、関連する炎症が時間の経過とともに免疫抑制をもたらし、HCCを発症する可能性があります15。免疫療法は有効性が検証されたHCCの治療法であり、進行期の治療を受ける患者さんが利用できる承認済みの治療選択肢が複数あります16

EMERALD-1試験について
EMERALD-1試験は、TACE対象の切除不能なHCCの患者さん合計616名を対象として、イミフィンジとTACEとの同時併用後のイミフィンジの単剤療法もしくはイミフィンジとベバシズマブとの併用療法を増悪まで継続する治療と、TACEの単独療法を比較した、無作為化二重盲検プラセボ対照多施設グローバル第Ⅲ相試験です。

本試験は、北米、オーストラリア、欧州、南米、アジアを含む18カ国の157施設で実施されました。主要評価項目は、TACEの単独療法と比較したイミフィンジとTACEおよびベバシズマブとの併用療法のPFS、副次評価項目は、TACEの単独療法と比較したイミフィンジとTACEとの併用療法のPFS、OS、患者報告アウトカム、客観的奏効率などです。

イミフィンジについて
イミフィンジはヒトPD-L1に結合するヒトモノクローナル抗体であり、PD-L1とPD-1およびCD80との相互作用を阻害することで、腫瘍の免疫逃避機構を抑制し抗腫瘍免疫反応を誘発します。

イミフィンジは、第Ⅲ相試験であるTOPAZ-1試験とHIMALAYA試験に基づき、米国、EU、日本、中国、その他数カ国で、局所進行性または転移性の胆道がん(BTC)に対する化学療法(ゲムシタビン+シスプラチン)との併用に加え、切除不能なHCCに対するイミフィンジ単剤(HCCに対するイミフィンジ単剤での承認は日本のみ)あるいはイジュド(トレメリムマブ)との併用で承認されています。進行HCCを対象としたHIMALAYA試験に続き、EMERALD-1試験はアストラゼネカがHCCを対象に実施し良好な結果を得た2つ目の第Ⅲ相試験です。

非小細胞肺がん(NSCLC)においては、第Ⅲ相POSEIDON試験に基づき、イミフィンジは、化学療法およびイジュドとの短期間の併用療法が、転移性NSCLCの治療薬として米国、EUおよび日本で承認されています。また、イミフィンジは、第Ⅲ相PACIFIC試験に基づき、化学放射線療法後に進行が認められていない患者さんを対象として、切除不能なステージIIIの非小細胞肺がん(NSCLC)における根治目的の治療薬として唯一承認されたがん免疫治療薬であり、世界的な標準治療となっています。その結果はリアルワールド観察研究であるPACIFIC-R試験で確認されています。2023年には、第Ⅲ相AEGEAN試験において、術前補助化学療法との併用療法として、および術後補助療法における単剤療法でのイミフィンジを評価し、切除可能なNSCLCの治療法として良好な成績を得たと発表しました。

また、本剤は、第Ⅲ相CASPIAN試験に基づき、進展型小細胞肺がん(SCLC)の治療薬として、米国、EU、日本、中国をはじめ多くの国々でも承認されています。さらに、数カ国では、進行膀胱がんの治療歴のある患者さんの治療薬として承認されています。

2017年5月に初めて国際承認されて以来、20万人以上の患者さんがイミフィンジによる治療を受けています。

広範な開発プログラムの一環として、イミフィンジは、SCLC、NSCLC、膀胱がん、数種類の消化器がん、乳がん、その他の固形がんの治療薬として、単独療法ならびに他の抗がん剤との併用療法においても検討されています。2023年に、アストラゼネカはイミフィンジを評価する複数の第Ⅲ相試験について良好な結果を発表しており、それらには、リムパーザ(オラパリブ)との併用療法における卵巣がん(DUO-O)、子宮体がん(DUO-E)が含まれます。

当社は、特に消化器がんでは広範な臨床開発プログラムを有しており、複数の適応症におけるイミフィンジの評価をさらに進めています。イミフィンジを検討する臨床試験としてはEMERALD-1の他に、HCCに対する術後補助療法としてのベバシズマブとの併用療法(EMERALD-2)、TACE対象のHCCに対するイジュドとレンバチニブおよびTACEとの併用療法(EMERALD-3)、切除可能な胃がん・胃食道接合部がん(MATTERHORN)や局所進行食道がん(KUNLUN)を対象とした試験が進行中です。2023年6月には、イミフィンジを標準治療である術前補助化学療法に追加した第Ⅲ相MATTERHORN試験において、主要な副次評価項目である病理学的完全奏効(pCR)を達成しました。

なお、本リリースに記載の効能または効果(適応症)については本邦で承認されている記載と異なる場合があります。本邦における承認状況については、最新の電子化された添付文書をご確認ください。

消化器がん領域におけるアストラゼネカについて
アストラゼネカは、様々な腫瘍タイプや病期における消化器がんの治療に対して、複数の医薬品による広範な開発プログラムを展開しています。2020年、約510万人が新規に消化器がんと診断され、約360万人が死亡しました17

このプログラムにおいて、当社は胃がん、HCC、BTC、食道がん、膵がんおよび結腸直腸がんの転帰の改善に全力で取り組んでいます。

イミフィンジは、BTCやイジュドとの併用におけるHCCなどで既に承認された適応に加え、現在、イジュド(トレメリムマブ)などとの併用療法に関しても、早期から進行がんまでを対象とした広範な開発プログラムの中で、HCC、食道がん、胃がんの治療薬としての評価が行われています。

リムパーザはファーストインクラスのPARP阻害剤であり、BRCA遺伝子変異陽性の転移性膵がんの患者さんを対象に米国をはじめとする数カ国で承認されています。リムパーザは、MSD(米国およびカナダではMerck & Co., Inc.)と共同で開発と商業化を行っています。

アストラゼネカは、胃がんの有望な治療ターゲットであるClaudin 18.2を標的とする複数の治療法を開発しています。これには、現在第Ⅱ相開発中でKYM Biosciences Inc.からライセンス供与されているファーストインクラスの抗体薬物複合体候補であるAZD0901、第Ⅰ相開発中でHarbour Biomed社からライセンス供与されている新規Claudin 18.2/CD3 T細胞受容体二重特異抗体AZD5863、および現在、中国AbelZeta社と共同で治験責任医師主導試験(IIT)で評価中のClaudin 18.2を標的とする自家キメラ抗原受容体T細胞(armoured CAR-T)療法であるAZD6422などがあります。

初期開発段階として、当社はHCCにおいて2つのグリピカン3(GPC3)を標的とするCAR-Tを開発中です。現在第Ⅰ相の開発段階にあるAZD5851は世界各国で開発が進められており、また、C-CAR031 / AZD7003は、中国のAbelZeta社と共同開発を進めており、現在、IITで評価中です。

アストラゼネカの免疫腫瘍学(IO)への取り組み
アストラゼネカは、アンメットメディカルニーズの高い特定の臨床領域に免疫療法の概念を積極的に導入しています。当社は、包括的で多様なIOのポートフォリオ、および抗腫瘍免疫応答からの回避を克服し、体内の免疫系を刺激して腫瘍を攻撃するように設計された免疫療法を中心としたパイプラインを有しています。

また、アストラゼネカは、がん治療を再構築し、イミフィンジの単剤療法や、トレメリムマブやその他の新規の免疫療法薬や治療法との組み合わせで、患者さんの転帰に大きな変化をもたらすことを目指しています。さらに、バイスペシフィック抗体や標的のがんに対する様々な免疫反応を活かす治療薬など、次世代免疫療法の探索も行っています。

アストラゼネカは、広範ながん種において長期生存を達成することのできる免疫療法ベースの治療を届けるため、革新的な臨床戦略を大胆に追求しています。また、広範な臨床開発プログラムにより、治癒の可能性が非常に高いより早期の疾患におけるIO治療薬の使用も支持しています。

アストラゼネカにおけるオンコロジー領域について
アストラゼネカは、あらゆる種類のがんに対して治療法を提供するという高い目標を掲げ、がんとその発見にいたるまでの複雑さを科学に基づいて理解し、患者さんの人生を変革する医薬品の開発および提供を通じて、オンコロジー領域の変革をけん引していきます。

アストラゼネカは治療困難ながん種に注力しています。当社は持続的なイノベーションにより、医療活動および患者さんの医療経験を一変させる可能性のある、製薬業界でもっとも多様なポートフォリオと開発パイプラインを構築しています。

アストラゼネカは、がん治療のパラダイムを再定義し、将来的にはがんによる死亡をなくすことをビジョンに掲げています。

アストラゼネカについて
アストラゼネカは、サイエンス志向のグローバルなバイオ医薬品企業であり、主にオンコロジー領域、希少疾患領域、循環器・腎・代謝疾患、呼吸器・免疫疾患からなるバイオファーマ領域において、医療用医薬品の創薬、開発、製造およびマーケティング・営業活動に従事しています。英国ケンブリッジを本拠地として、当社は100カ国以上で事業を展開しており、その革新的な医薬品は世界中で多くの患者さんに使用されています。詳細についてはhttps://www.astrazeneca.comまたは、ソーシャルメディア@AstraZenecaをフォローしてご覧ください。

References

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