2024/05/29

米国臨床精神薬理学会(ASCP)年次総会におけるブレクスピプラゾールの成人の心的外傷後ストレス障害(PTSD)に対する臨床試験結果の発表について

大塚製薬 株式会社 

大塚製薬株式会社
H. ルンドベックA/S

医療関連事業

2024年5月29日

米国臨床精神薬理学会(ASCP)年次総会におけるブレクスピプラゾールの成人の心的外傷後ストレス障害(PTSD)に対する臨床試験結果の発表について

  • このたび発表された臨床試験結果は、成人のPTSD患者さんを対象としたデータとして最大規模のものであり、20年以上新薬が承認されていない領域における重要な進展を示します1,2
  • 3つの臨床試験のうち2つでは、投与10週目のCAPS-5合計スコアの変化量を主要評価項目として、ブレクスピプラゾールとセルトラリンの併用群がプラセボとセルトラリン併用群に比べてPTSDの症状を改善したことが示されました1
  • ブレクスピプラゾールとセルトラリンの併用群はプラセボとセルトラリン併用群と比較して、PTSDの4つの症状(再体験症状、回避症状、考えや感情の否定的な変化、過覚醒症状)において改善が認められました1
  • ブレクスピプラゾールの安全性に関する新たな知見は認められませんでした。
  • これらのデータに基づき、大塚製薬とルンドベックは、成人のPTSD治療薬として、ブレクスピプラゾールとセルトラリンの併用療法の効能追加申請(sNDA)を、本年4月に米国食品医薬品局(FDA)に提出しています。https://www.otsuka.co.jp/company/newsreleases/2024/20240409_1.html


大塚製薬株式会社の米国子会社であるOtsuka Pharmaceutical Development & Commercialization, Inc.(所在地:米国ニュージャージー州・プリンストン、以下「OPDC」)とH.ルンドベックA/S(本社:デンマーク、コペンハーゲン、以下「ルンドベック」)は、米国フロリダ州マイアミで開催された米国臨床精神薬理学会(ASCP)年次総会において、成人の心的外傷後ストレス障害(PTSD)患者さんを対象に、ブレクスピプラゾールとセルトラリンの併用療法の安全性と有効性を検討したフェーズ2試験(#061試験)およびフェーズ3試験(#071試験と#072試験)の詳細な結果を発表しましたのでお知らせします1,2

これら3つの試験における主要評価項目は、投与10週目までのプラセボとセルトラリン併用療法に対するブレクスピプラゾールとセルトラリン併用療法のCAPS-5(Clinician-Administered PTSD Scale for DSM-5)総スコアの変化量でした1

試験はランダム化、二重盲検、アクティブコントロールで行われ、#061試験と#071試験は可変用量試験で、#072試験は固定用量試験でした。#061試験と#071試験においてブレクスピプラゾールとセルトラリン併用群は、プラセボとセルトラリン併用群と比較して、CAPS-5総スコアの10週目時点での変化量において統計学的に有意な減少(p<0.05)を示しました。#072試験では、ブレクスピプラゾールとセルトラリン併用群は主要評価項目を達成しませんでしたが、PTSD症状の重症度の改善は#071試験および#061試験と一致していました。#061試験と#071試験では、臨床全般印象・重症度スコア(Clinical Global Impression-Severity Illness:CGI-S)およびCAPS-5の4つの症状(再体験症状、回避症状、考えや感情の否定的な変化、過覚醒症状)において一貫して改善が見られました1

ブレクスピプラゾールとセルトラリンの併用群の忍容性は良好であり、3つの試験における安全性の結果は、これまで得られたブレクスピプラゾールの安全性プロファイルと一貫していました。試験全体における治験薬投与開始後に発現した有害事象の発現率は、ブレクスピプラゾールとセルトラリンの併用群で55.5%、セルトラリンとプラセボの併用群で56.2%でした2

#061試験結果は、ブレクスピプラゾールとセルトラリン併用群における、CAPS-5総スコアの最小二乗平均値は-16.4でした(p=0.011、セルトラリンとプラセボ併用群と比較)。ブレクスピプラゾールとプラセボ併用群では-12.2、セルトラリンとプラセボ併用群では-11.4、プラセボ単体群では-10.5でした。
#071試験結果は、ブレクスピプラゾールとセルトラリンの併用群による最小二乗平均値は-19.2でした(p=0.0007、セルトラリンとプラセボ併用群と比較)。セルトラリンとプラセボ併用群では-13.6でした。
#072試験結果は、ブレクスピプラゾール2mg/日とセルトラリンを併用した結果、最小二乗平均値は -16.5でした(p=0.52、セルトラリンとプラセボ併用群と比較)。ブレクスピプラゾール3mg/日とセルトラリンの併用群では-18.3(p=0.66、セルトラリンとプラセボ併用群と比較)、セルトラリンとプラセボ併用群と比較では-17.6でした1

アラバマ大学医療システム精神医学・行動神経生物学部の精神医学臨床教授Lori Davis博士は、「米国では、PTSDが最も一般的な精神的症状の一つでありながら、治療を求めている患者さんは半数にとどまります3。今回、薬剤の併用療法がPTSDの4つの症状群を改善するというデータを、包括的な臨床試験から初めて得ることができました」と述べています。

大塚製薬取締役兼、OPDC上級副社長兼、医学責任者であるJohn Krausは、「PTSDに対する認識不足や間違った診断が、適切なPTSDの管理を妨げています4。症状が現れてから治療を受けるまでの平均期間は12年にも上ります。今回得られた知見は、一般的な精神障害でありながら慢性的に誤解されているPTSD症状の管理における重要な進展を意味します」と述べています。

ルンドベック社の上級副社長兼研究開発責任者であるJohan Luthmanは、「米国では、年間おおよそ1300万人がPTSDに苦しめられています5。このことから、今回のデータは新たな治療選択肢を開発するうえで極めて重要なものとなります。ブレクスピプラゾールとセルトラリンの併用療法が、PTSDを抱えるすべての人々にとって承認された新たな治療選択肢となることを期待しています」と述べています。

PTSD(Post-Traumatic Stress Disorder)について
PTSDは、米国で最も一般的な精神疾患のひとつであり、特定の年におけるPTSD発症率は約4.9%にも上ります5-9。PTSDは、心的外傷となる出来事や状況を経験または目にしたことで起こりうる精神疾患です。PTSDは患者さんにとって精神的または身体的に有害であるか、命にかかわる経験となり、精神的、身体的、社会的、精神的な健康が影響を受ける可能性があります。要因となる出来事の例として、自然災害や重大事故、テロ行為、戦争、暴力、いじめなどがあります10,11

ブレクスピプラゾールについて
新規抗精神病薬「レキサルティ(一般名:ブレクスピプラゾール)」は、大塚製薬が創製した独自の薬理作用を有する化合物です。海外ではルンドベック社と共同開発し、2015年に米国で「成人の大うつ病補助療法」および「成人の統合失調症」の2つの効能で承認され、現在、日本を含めた約60の国・地域で展開しています。2023年5月には、米国で初めてとなる「アルツハイマー型認知症に伴うアジテーション」の効能追加の承認を米国FDAより取得しました。日本でも、2023年10月に「アルツハイマー型認知症に伴うアジテーション(攻撃的行動及び発言、非攻撃的行動の亢進、焦燥を伴う言動等)」について効能追加申請を行っています。

  • 1. Behl S et al. Efficacy of Brexpiprazole in Combination with Sertraline for Patients with Post-Traumatic Stress Disorder: Summary of Data from Phase 2 and Phase 3 Randomized Clinical Trials. Presented at ASCP 2024 (May 28-31).
  • 2. Behl S et al. Safety and Tolerability of Brexpiprazole in Combination with Sertraline for Patients with Post-Traumatic Stress Disorder: Summary of Data from Phase 2 and Phase 3 Randomized Clinical Trials. Presented at ASCP 2024 (May 28-31).
  • 3. Koenen KC, Ratanatharathorn A, Ng L, et al. Posttraumatic stress disorder in the World Mental Health Surveys. Psychol Med. 2017;47(13):2260-2274.
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  • 5. U.S. Department of Veterans Affairs. How Common Is PTSD in Adults? Last updated: Feb. 3, 2023. Last accessed: April 30, 2024. Available at: https://www.ptsd.va.gov/understand/common/common_adults.asp.
  • 6. Lancaster CL, Teeters JB, Gros DF, Back SE. Posttraumatic Stress Disorder: Overview of Evidence-Based Assessment and Treatment. J Clin Med. 2016;5(11):105.
  • 7. Kessler RC, Petukhova M, Sampson NA, Zaslavsky AM, Wittchen H -U. Twelve-month and lifetime prevalence and lifetime morbid risk of anxiety and mood disorders in the United States. Int J Methods Psychiatr Res. 2012;21(3):169-184.
  • 8. US Census Bureau 2022 Data.
  • 9. Lehavot K, Katon JG, Chen JA, Fortney JC, Simpson TL. Post-traumatic Stress Disorder by Gender and Veteran Status [published correction appears in Am J Prev Med. 2019 Oct;57(4):573]. Am J Prev Med. 2018;54(1):e1-e9.
  • 10. American Psychiatric Association. What is Posttraumatic Stress Disorder (PTSD)? Last updated: November 2022. Last accessed: April 30, 2024. Available at: https://www.psychiatry.org/patients-families/ptsd/what-is-ptsd.
  • 11. Mayo Clinic. Post-traumatic stress disorder (PTSD). Last updated: December 13, 2022. Last accessed: April 30, 2024. Available at: https://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/post-traumatic-stress-disorder/symptoms-causes/syc-20355967.

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