2024/06/13

第28回世界半導体会議(WSC)の開催および結果について

電子情報技術産業協会(JEITA) 

2024 年 6 月 13 日
一般社団法人電子情報技術産業協会
半導体部会

第 28 回世界半導体会議(WSC)の開催および結果について
各国・地域の政府による半導体支援プログラムの情報交換を実施


一般社団法人電子情報技術産業協会(JEITA)の半導体部会(部会長:亀渕丈司 株式会社東芝 技術企画部 半導体・デバイス領域技術責任者)をはじめとする、日本、欧州、米国、韓国、チャイニーズ台北、中国の 6 極の半導体企業および半導体工業会は、6 月 6 日、宮崎県宮崎市にて、世界的な半導体企業の最高経営責任者(CEO)クラスが参加する年次会合である、世界半導体会議(World Semiconductor Council:以下、WSC)を開催しました。

今回の WSC では、各国・地域の政府による半導体支援プログラム(以下、地域支援プログラム)について、12 件のプログラムの情報共有を実施しました。WSC では、2017 年に「WSC/GAMS(Governments/Authorities Meeting on Semiconductors:以下、GAMS)地域支援ガイドラインとベストプラクティス(以下、ガイドライン)」を作成以来、計 47 件の各国・地域の地域支援プログラムについて、ガイドラインへの適応ならびに情報共有や質疑応答を実施し、WSC メンバー間の透明性を高めるための議論を継続的に実施してきました。

ガイドラインは、半導体分野の政府支援は「透明性があり、差別がなく、貿易を歪めてはならない」という WSC の共通見解を反映させており、それは政府/当局の介入は市場原理や長期的な収益率とリスク水準に関する期待に基づくべきで、企業やその製品の競争力が、技術革新や産業の成功、国際貿易の主要な牽引力となるべきであるという共通認識に基づいています。

経済安全保障や国家安全保障を確立する上でのキーコンポーネントとして、米国の「半導体と科学法」(通称 CHIPS 法)をはじめ、各国・地域とも大型補助金を半導体産業に投じており、従来から半導体ビジネスに注力している WSC を構成する 6 極に加えて、半導体ビジネスの存在感が薄かった国々においても半導体支援策を前面に打ち出し、半導体企業の自国への誘致を促すケースも増えてきています。また、各国政府による半導体支援策は、半導体製造に直結する補助金の支援策を中心としたものから、研究開発や税制支援、半導体人材の育成等にまで拡大した支援策も登場してきており、バラエティに富んだ支援内容となっています。

WSC の主催国は持ち回り制となっており、今回の WSC の主催国は日本で、議長は日本の半導体工業会(JEITA 半導体部会)を代表して栗原紀泰氏(東芝デバイス&ストレージ株式会社取締役常務)が務めました。そのほか日本からは、JEITA 半導体部会の役員である、宮島秀史氏(キオクシア株式会社 技術統括責任者)、吉田智氏(サンケン電気株式会社 取締役 常務執行役員)、竹見政義氏(三菱電機株式会社 上席執行役員)、吉岡真一氏(ルネサスエレクトロニクス株式会社 CTO)、山本浩史氏(ローム株式会社 取締役 上席執行役員)の 5 名が参加しました。

また、WSC 会議の下部組織で全体の議論の取り纏めを担う JSTC(Joint SteeringCommittee)の議長は、WSC を構成する 6 極を代表して JSTC 日本議長兼 JEITA 半導体部会WSC・政策運営委員会 委員長の三井豊興氏(キオクシア株式会社)が務めました。

このほか、特別講演として、半導体業界アナリストである OMDIA 社の南川明氏が、半導体産業の今後 10 年の市場成長の見通しについてプレゼンテーションを実施し、その後、WSC を構成する 6 極の代表 CEO によるパネル討論が行われました。また、ゲストとして経済産業省の西村秀隆氏(商務情報政策局審議官)に登壇いただきました。

上記以外の WSC の主な結果は以下をご覧ください。

1. 通商関連

① MC13(第 13 回 WTO 閣僚会議)において電子送信への関税不賦課という長きにわたる世界貿易機関(World Trade Organization:以下、WTO)合意の 2 年の延長が決定されましたが、2026 年 3 月には延長期間の期限となるため、GAMS に対して、モラトリアムの延長について他の WTO 加盟国と早急に協議を開始し、半導体および半導体関連のデータとデジタルツールが恒久的に関税および手続きから免除されることを保証するWTO 協定を策定することを提言しました。

② WSC は技術の発展に伴い、政府や当局に対して、WTO の情報技術協定(ITA:InformationTechnology Agreement)の対象製品と対象国をさらに拡大するための ITA-3 に関する新たな交渉ラウンドの開始を検討するため、遅滞なく作業を開始するよう促す提言をまとめました。各極政府、WTO および世界税関機構(WCO:World Customs Organization)に対して WSC がまとめた製品リストや新定義案を提示し、無税化に向けた働きかけを行います。また WSC は、関税障壁の撤廃、自由貿易の促進が半導体産業に多大な影響があることを認識しており、ITA の推進について、各国政府および WTO(世界貿易機関)へ働きかけています。

③ WSC は、暗号化製品に関わる規則、輸出入における制限的な規則、国際統一原産地規則など、世界的な貿易を前提としている半導体産業の成長を阻害する可能性のある種々の規則の動向にも注目しており、各極の暗号法案関連の情報共有や質疑応答のやり取りを実施しています。WSC が 2013 年に策定した「WSC 暗号化原則」の完全実施に向けて、半導体業界の自己評価結果を活用し、GAMS との対話を続ける活動を続けております。

2. 知的財産権の保護

各極の特許情報の透明性を確保するため、「書誌事項」フォーマットに付与後レビューと特許訴訟に関するデータを含めることにより、特許訴訟に関する基本的な統計情報を一貫性と透明性をもって毎年収集し、世界知的所有権機関(WIPO:World Intellectual PropertyOrganization)に報告するための最も実現可能な方法を検討するよう、GAMS に対して提言します。

3. 環境対策

半導体製造用途における PFAS(Per- and Polyfluoroalkyl Substances:ペルフルオロアルキル化合物及びポリフルオロアルキル化合物)を検出、処理、除去するための基礎的研究方法、および環境、健康、安全性のプロファイルを改善しつつ必要な性能特性を有する高性能代替品を特定するために必要な技術についての支援について GAMS に提言しています。

4. その他

加えて WSC は、各極の人材育成の取り組みに関する情報交換を実施しています。今回は、Z世代以降の若者世代に向けた半導体業界からのメッセージについて議論しました。今回の議論の中では、STEM(Science 科学、Technology 技術、Engineering 工学、Mathematics 数学)教育の初等レベルから半導体教育の必要性を訴え、GAMS が産業界と協力し、教育、訓練を促進、半導体業界の人材拡大のニーズを支援することを提言としました。

WSC では、今回の結果として共同声明(英文)を採択しており、後日、WSC の Web サイト(http://www.semiconductorcouncil.org/)に掲載します。

次回の WSC は、2025 年 5 月に中国・青島にて開催予定です。

<参考>

WSC(World Semiconductor Council)

1996 年 8 月の日米半導体協定の終結を受けて、既にグローバル化していた半導体のビジネスを反映して、多極の場で世界の半導体業界の共通問題について協議することが必要との認識に基づき、日米の半導体業界で WSC の設立に合意、1997 年 4 月に日米欧韓の半導体業界が参加して WSC の最初のミーティングをハワイで開催しました。今回が 28 回目となります。

WSC の Web サイト:http://www.semiconductorcouncil.org/

GAMS(Governments/Authorities Meeting on Semiconductors)

日本、欧州、米国、韓国、チャイニーズ台北、中国の 6 極の政府による半導体に関する政府/当局間会合JSTC(Joint Steering Committee)

日本、欧州、米国、韓国、チャイニーズ台北、中国の 6 極による WSC 傘下の合同運営会議

【本件に関する企業/団体からのお問い合わせ先】
一般社団法人電子情報技術産業協会 事業戦略本部 事業推進部(担当:石崎・曽根原・榛村)
E-mail:sspg@jeita.or.jp

【本件に関する報道関係者からのお問い合わせ先】
一般社団法人電子情報技術産業協会 経営企画本部 ブランドコミュニケーション部
TEL:03-5218-1053 E-mail:press@jeita.or.jp

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