2024/05/14

第5次中期5ヵ年経営実行計画 (2021~2025年度の見直しについて)

荒川化学工業 株式会社 

2024 年5月 14 日
荒川化学工業株式会社

第5次中期5ヵ年経営実行計画(2021~2025年度)の見直しについて

荒川化学グループは、2021 年度(2022 年3月期)~2025 年度(2026 年3月期)を実行期間とする、第5次中期5ヵ年経営実行計画(以下、第5次中計と呼ぶ)において掲げた目標の達成に向けた重点施策を推進してまいりましたが、3年目までの進捗状況および当社グループを取り巻く事業環境等を踏まえ、見直しをおこないましたので、お知らせいたします。

見直しのポイント
・基本方針は変更せず、最終2025年度の計数目標と施策を見直し
・拠点やプラントの統廃合を含む既存事業の新陳代謝の加速と収益力の回復
・新規事業のステージアップ推進(みつける⇒そだてる⇒のばす)
・経営資源投入の機動性向上(安全文化の醸成、働きがいと生産性向上、人的資本投資等)
・資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応

1.見直しの背景

新型コロナウイルス感染症がもたらした需要構造の変化や半導体の需給変動による電子部品の需要環境変化に加え、原材料価格やエネルギーコストの大幅な上昇など、第5次中計策定時と比較して当社を取り巻く環境は大きく変化しております。

大きな収益源として需要増加を見込んでいた光硬化型樹脂「ビームセット」や半導体関連材料のファインケミカル製品、HDD用精密研磨剤「Neopolish」の販売が2年目から大幅に減少しただけでなく、幅広い事業セグメントにおける需要が低迷し、底は脱しましたが収益力は回復途上にあります。

また、水素化石油樹脂「アルコン」は、ウクライナ情勢に起因した欧州におけるエネルギー環境の変化により荒川ヨーロッパ社(ドイツ)において大きな損失の計上を余儀なくされ、現地での製造を終了しました。なお千葉アルコン製造においては、当初の予定から約2年遅れとなりましたが、安定稼働を見据えて、グローバル販売戦略の再構築をおこないながら、収益性の改善に取り組んでおります。

2.見直しの内容

第5次中計「V-ACTION for sustainability」における基本方針「KIZUNA 経営の推進と KIZUNA 指標(※1)の達成」に変更はありません。

当社が掲げた『ありたい姿:ロジンをはじめとする環境に配慮した素材を活かし、「つなぐ」技術の深化と新たな付加価値の創造に挑戦し続けることで、地球環境と社会の持続可能な未来に貢献する』の実現に向け、グループの価値観・行動指針(ARAKAWA WAY 5つの KIZUNA )に基づいた経営(=KIZUNA 経営)のもと、既存事業の収益力の回復、事業ポートフォリオ改革の加速による収益性の向上など、SHIFTの継続による人と事業の新陳代謝を深化させ、事業基盤の持続性を確保いたします。また、持続可能な地球環境と社会を実現するための課題に取り組み、付加価値・新規事業の創出に挑戦いたします。そして、2年後に迎える創業150周年、さらにその先を見据え、歴史と伝統をしっかりと受け継ぎながらも、安全文化の醸成、および働きがいと生産性の向上により成長し続け、「ありたい姿」を実現するために設定した KIZUNA 指標の達成を目指します。

(※1) 5つの KIZUNA とリンクした優先的な重要課題から設定した指標

3.重点課題の進捗状況

1)事業ポートフォリオ改革

①成長市場に向けた生産能力増強投資

成長市場での需要増加が期待できる「のばす」ミッションに位置付けている事業への経営資源投資は適切なタイミングで進めております。

光硬化型樹脂「ビームセット」は、自動車のEV化や5Gに代表されるスマートフォンの高機能化などによって搭載数が増加する電子部品の工程部材用途、およびディスプレイ向けを中心に拡販してまいります。ファインケミカル製品は、半導体関連市場などで使用される先端材料の高品質かつ高機能化ニーズといった将来的な需要増加に対応いたします。山口精研工業のHDD用精密研磨剤「Neopolish」は、データセンターへの積極的な投資が継続する見通しであるなか、HDDの高容量化、ニアライン需要の拡大などに対応してまいります。板紙向け紙力増強剤「ポリストロン」は、ASEAN地区でのさらなる拡販を目指し、荒川ケミカルベトナム社でのプラント増設を検討してまいります。

②新規事業の創出

松資源のさらなる機能追求や、微細藻類等の新たな「バイオマス」由来の素材をベースにした用途開発により、「ライフサイエンス」(医療、農業、コスメ)等への事業領域の拡大を図っております。

具体的にはユニバーサル マテリアルズ インキュベーター株式会社(UMI)が運営するベンチャーファンドへの出資を通じて、ω-6DPA(※2)を含有する微細藻の薬理作用に着目した事業を展開中のSoPros株式会社へ資本参加いたしました。今後、第5次中計期間中にライフサイエンス等の新規事業分野(微細藻類事業等)へのさらなる投資(約 20 億円)を予定しております。また、松由来成分を活用した新規事業の創出については、抗菌・抗バイオフィルム剤への適用や、生理活性物質の探索について検討中であり、早期実績化を目指してまいります。

(※2) ドコサペンタエン酸:DHA(ドコサヘキサエン酸)等とは異なるユニークな薬理作用を特長とした不飽和脂肪酸

③事業の SHIFT 推進

「そだてる」ミッションに位置付けている熱硬化型樹脂「アラコート」、低誘電ポリイミド樹脂「PIAD」、電池用材料は第5次中計期間中での「のばす」への SHIFT を目指した取り組みを進めているものの、3年目終了時点での SHIFT は実現に至っておりません。

一方、荒川ヨーロッパ社(ドイツ)における水素化石油樹脂「アルコン」の製造終了、ロジン誘導体・サイズ剤事業等における製造拠点の統廃合、および不採算少量販売事業の撤退など、「やめる/わたす/すてる」への SHIFT をおこない、事業の新陳代謝を進めております。

2020年度事業ポートフォリオ
2025年度事業ポートフォリオの目指す姿
※図中の赤字は SHIFT した事業等を示す

2)安全文化の醸成

2017 年 12 月1日に発生しました富士工場での爆発・火災事故を風化させないため、2021 年度からサスティナビリティ委員会の下部組織として安全文化醸成専門委員会を設置し、安全に対する体制を強化いたしました。コミュニケーション、人財育成、リスクアセスメントの3つの課題の解決に向けて富士工場に設置した荒川安全伝承館ならびに小名浜工場の保安道場にて、全社員対象に安全教育を実施し、加えて安全操業に係る高度専門人財である安全技術者の育成人数も増加しております。引き続き、工場の保安力向上に向けた取り組みも進めております。

3)働きがいと生産性の向上

経営理念を策定した 1993 年当時から「個性」を重視し、すなわち多様性を活かし、企業の成長につなげるという基本的な考え方をもっており、2013 年にはグローバル化や人財の多様化が進むにつれて大切にしたい価値観・行動指針として「ARAKAWA WAY 5つの KIZUNA」を明文化し、浸透活動を継続しております。2021 年4月に発足しました KIZUNA 推進室を中心に個人と会社が共に成長できる環境づくりと組織風土の醸成を目指しております。

性別や年齢に関係なく全社員活躍、生産性の向上に向けてワークライフバランスを考慮した施策や業務プロセス改革に取り組んでおり、社員一人ひとりの自律した協働が今まで以上に求められると認識しております。また、社員の価値観や働き方のニーズの多様化が進んでいることに対応し、多くの社員が希望する地域で働けること、加えて事業環境の変化に対応できる柔軟な配置転換との両立を見据えた人事制度の設計を見直し、2023 年度から運用しております。今後の自律的なキャリア形成にも寄与し、すべての社員が個人の働き方に合わせて活躍できる環境づくりを支援してまいります。

4.経営指標

1)KIZUNA 指標

荒川化学グループでは、2021 年度から KIZUNA 指標を導入し、サスティナビリティに対する各種取り組みの進捗状況のモニタリング・評価をサスティナビリティ委員会でおこなっております。KIZUNA 指標は、当社グループにとって優先的な重要課題から設定した「ありたい姿」を実現するための定量化した指標であり、5つの KIZUNA の軸に区分し、各指標に対する配分の重みや進捗によって独自のポイント換算によりモニタリングして管理しております。

このたび、各 KIZUNA 指標の進捗状況や財務目標の見直しにともない、関連する各指標の目標値の修正および一部の指標の変更などをおこない、KIZUNA ポイントの到達地点も見直しました。詳細については、2024 年5月 28 日に予定している 2024 年3月期決算説明会資料および 2024年6月発刊予定のサスティナビリティレポート 2024 において公表予定です。

2)経営戦略を支える人的資本投資

当社グループの持続的成長には、変革や新たな付加価値の創造をリードしていく中核人財を育成していくことも重要課題の1つです。次世代を担う多様な中核人財をキャリアステージの早い段階から見出し、選抜研修の実施と配置任用により、人財ポートフォリオの質および量の観点で測定をおこない、人財戦略会議にて中期的な育成戦略を検討し、計画的な育成を実施しております。また、当社グループの経営戦略推進を加速していく上で、多様な専門性の結集も非常に重要であると考えており、様々な分野における人財育成に向けたKPIを設定し、好循環につなげることで企業価値の向上と社会貢献を目指してまいります。

3)資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応

上場以来、ROEだけでなく、PBRも非常に重要な指標であると認識しております。PBRは 2017 年には一時的に1倍を上回りましたが、その後は業績に連動しながら低下し 0.5 倍を下回る状態が続いています。

当社の資本コスト(WACC)は4~5%程度と認識しております。まずは中期経営実行計画の各施策を推進し実現することで、マイルストーンとしてROE7%、ROIC5%を達成し、さらにそれ以上を目指して企業価値を向上させるとともに、積極的な情報開示や事業の安定性を高め、株主資本コストを引き下げることも重要であると認識しています。また、資本効率に加えてキャッシュフロー創出力であるEBITDAの改善状況も重要な指標として位置付けています。

将来の期待値を高める成長投資や新規事業の創出などを含む事業ポートフォリオの見直しを継続的に進め、利益水準の改善と中長期的な視点での企業価値向上につなげてまいります。

公式ページ(続き・詳細)はこちら
https://www.arakawachem.co.jp/jp/ir/20240514midterm5.pdf

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