2024/07/01

情報委員会(第37回) 議事録

文部科学省 

情報委員会(第37回) 議事録

1.日時

令和6年2月26日(月曜日)16時00分~18時00分

2.場所

文部科学省東館17階 17F1会議室 ※オンライン会議にて開催

3.議題

  1. 第36回情報委員会(書面調査)の結果等の報告
  2. AIP センターの今後の在り方に関する検討について
  3. その他

4.出席者

委員

相澤主査、青木委員、天野委員、石田委員、尾上委員、小林委員、佐古委員、長谷山委員、引原委員、湊委員、美濃委員、盛合委員、若目田委員

文部科学省

塩見 研究振興局長、奥野 大臣官房審議官(研究振興局及び高等教育政策連携担当)、嶋崎 参事官(情報担当)、国分 計算科学技術推進室長、藤澤 学術基盤整備室長、原田 科学官、竹房 学術調査官、松林 学術調査官

オブザーバー

理化学研究所 革新知能統合研究センター
杉山 将 センター長

5.議事録

【相澤主査】 それでは、定刻になりましたので、科学技術・学術審議会情報委員会の第37回会合を開催いたします。
本日も、現地出席とオンライン出席のハイブリッドでの開催としております。報道関係者も含め、傍聴者の方にはオンラインで御参加いただいております。また、通信状態等に不具合が生じるなど続行できなかった場合、委員会を中断する可能性がありますので、あらかじめ御了承ください。
本日は、川添委員、星野委員が欠席と御連絡をいただいております。
また、オブザーバーとして、理研AIPセンターの杉山センター長と、経営企画部の斉藤部長に御出席いただいております。
それでは、事務局より配付資料の確認と、ハイブリッド開催に当たっての注意事項がありますので、よろしくお願いします。
【植田参事官補佐】 事務局でございます。
議事次第に基づき、配付資料を確認させていただきます。現地出席の方はお手元の資料を、オンライン出席の方はダウンロードいただいている資料を御確認ください。
本日は、資料3点と、参考資料を7点お配りしております。資料1が、スーパーコンピュータ「富岳」成果創出加速プログラム中間評価結果、資料2-1が、AIPセンターこれまでの成果と今後のAIPの在り方について、資料2-2が、AIPセンターの今後の在り方についての案となっております。
参考資料1は、「情報科学技術分野における戦略的重要研究開発領域に関する検討会」で検討すべき内容に関し、委員からいただいた御意見の要旨、参考資料2-1、2-2は、先日御審議いただいたAIPセンターの今後の在り方に関する検討についてと、AIPセンターのこれまでの取組について、参考資料2-3から2-6は、AIPセンター様の全体概要や各グループのお取組となっております。
現時点で不具合等ございましたら、お知らせいただければと思いますが、いかがでしょうか。もし何かございましたら、現地出席の方は手を挙げていただき、オンライン参加の方は事務局までお電話で御連絡いただければと思います。よろしいでしょうか。
続きまして、ハイブリッド開催に当たっての注意事項を申し上げます。
まず、御発言時を除き、マイクは常にミュートとしていただけますと幸いです。
ビデオは常時オンにしていただき、通信状況が悪化した場合はビデオを停止していただければと思います。
また、運営の都合上、現地出席の方も含めまして、御発言いただく際は「手を挙げる」ボタンを押して御連絡ください。
相澤先生におかれては、参加者一覧を常に開いていただき、手のアイコンが表示されている委員を御指名いただければと思います。
また、議事録作成のため、速記の方に同席いただいております。御発言される際は、お名前をおっしゃってから御発言いただけますと幸いです。
また、恐れ入りますが、マイクの数が限られておりますので、現地出席の方が発言いただく際は、大きめの声で御発言いただければと思います。
また、傍聴参加をいただいていた方については、Zoomにて御参加をいただいております。
その他トラブルが発生しましたら、現地出席の方は手を挙げていただき、オンライン出席の方は電話にて事務局まで御連絡いただければと思います。
事務局からの御案内は以上でございます。
【相澤主査】 ありがとうございます。
本日は、3件の議題を予定しております。第36回情報委員会(書面調査)の結果等の御報告、AIPセンターの今後の在り方に関する検討について、その他でございます。
それでは、初めに、書面審査として実施した第36回情報委員会の結果を報告いたします。事務局より御説明をいただくとともに、並行して追加意見募集等を行っていた「情報科学技術分野における戦略的重要研究開発領域に関する検討会」に関する御意見についても併せて御紹介をお願いします。
【植田参事官補佐】 事務局でございます。
第36回情報委員会としまして、1月25日から2月1日にかけ、スーパーコンピュータ「富岳」成果創出加速プログラムの中間評価についての書面調査をお願いしておりました。
1点、資料1の12ページ一番下にありますプログラム全体に関連するアウトカム指標において、事務的な誤記がございましたが、こちら、本事業の評価に直接関わる数字ではないことから、相澤主査と御相談の上、軽微な修正として反映し、研究計画・評価分科会の方に提出をさせていただきました。
また、同時期に追加でお伺いをしておりました「情報科学技術分野における戦略的重要研究開発領域に関する検討会」に対する御意見につきましては、その要旨を参考資料1の方にまとめております。
内容に応じて大きく4つに分類させていただきましたが、まずAIに関するコメントとして、現在はやりのAI手法ではアプローチできない研究課題を明示すべきであることですとか、自らの過去データを用いた自律処理系におけるデータ処理とその制御は、現在の生成AIの観点では足りていないのではないかということ、また、パーソナルエージェントAIや人間中心AIに必要な技術課題は何かといった議論が必要ではないかという御指摘をいただきました。
次に、融合領域に関するコメントとして、最適化技術やソルバー、量子コンピューティングといった他技術をAIを組み合わせる領域が重要であるとの御指摘をいただきました。
さらに、データに関するコメントとして、データセンターの問題もあり、膨大な計算量が必要なものにAIを活用すべきという観点ですとか、国内のデータ利用にはハードルがあり、現在アクセスできていないデータも含めて活用する連合学習や分散学習などの仕組みが必要ではないかといった御意見がございました。
最後、全体を通して、現在の手法の限界を超えるアプローチを誘導すべきでないかといった趣旨のコメントもいただいております。
以上でございます。
【相澤主査】 ありがとうございました。
もしここで書面審査の御報告に関して質問がありましたら、お願いします。
特に研究計画・評価分科会でも特段の問題はなく、円滑に審議が行われてございます。
さて、続きまして、参考資料1、お手元にございますとおり、委員の先生方から実に様々な角度からのコメントをいただいております。
全体としてまとめるのは必ずしも容易ではございませんが、大きく3つのカテゴリーに分けるとしますと、1番目のグループに関してはAIの技術そのものに関する御意見、すなわちAIそのものを進化すべきである、現在主流のAIでは対応できない問題に対応するための革新的なAIですとか、自律処理系、エージェントAI等、様々な方向へのAIの進化そのものを検討するべきであるといったコメントをいただいております。
2番目のグループに関しては、むしろ融合を目指して、AIの適用範囲を拡大していくべきである。例えば、最適化技術や量子コンピューティングといった、今まさに伸びていく分野との融合を目指していくのがよいという御意見をいただいております。
3番目は、データが重要であるということで、より多くのデータを扱えるように、様々、膨大な計算量が必要となるものにAIを活用するとか、国内のデータ活用について、より制度的な面も含めて検討するべきであるといった御意見をいただいております。
これにつきまして、追加の御意見等がございましたら、挙手にてお知らせをお願いいたします。よろしいでしょうか。
今後また議論を深めていく中で、いろいろコメントをいただく機会も出てくることと思いますので、もしこの場ですぐに追加の御意見ないようでしたら、また機会を改めてお伺いをさせていただければと思います。よろしいでしょうか。
では、本日、次の議題もございますので、報告については以上といたしまして、事務局にて更に検討を進めることといたします。
続きまして、議題2です。議題2においては、AIPセンターの今後の在り方に関する検討について御議論をいただきます。
まず初めに、資料2-1に基づいて、杉山センター長より御発表いただきます。よろしくお願いいたします。
【杉山先生】 では、まず画面共有させていただきます。
皆さん、こんにちは。AIPのセンター長の杉山でございます。10年プロジェクトの8年目がちょうど終わるところということで、こういった発表する機会をいただけて、大変ありがたく思っております。今日はよろしくお願いいたします。
まず、これまでの成果について簡単に御説明したいと思います。
AIPセンター、2016年度からスタートしておりますが、五本柱で進めていこうということで活動を行ってきております。
1番目が、次世代のAI基盤技術を開発しようということで、基礎的な研究を行っています。
2番目は、科学研究の加速をAIで行っていこうということで、選んだ幾つかの分野に対して具体的な研究を行っております。
3番目、社会的課題の解決に貢献していこうということで、日本国内で重要だと思われる高齢者のヘルスケアや自然災害の防災減災といった課題に取り組んでまいりました。
4番目、倫理的・法的課題への対応ということで、科学技術の研究だけではなくて、社会的な側面についてもしっかり取り組んでいこうということで、倫理指針の策定等、いろいろ取り組んでまいりました。
そして、5番、AI人材の育成ということで、こちらも今、申し上げるまでもなく、一番重要な課題になっておりますが、こちらについても継続的に取り組んできております。
AIPセンターの運営のビジョンでございますが、技術的には、機械学習を軸足にしようということで、基礎から応用・社会まで一気通貫の研究体制を敷いてまいりました。
そして、産学官で連携し、研究成果を国際的に発信するというところに特に重点を置いております。
そして、国際的な高度AI人材の登竜門を目指すということで、助っ人外国人を呼んでくるというスタイルではなくて、我々のセンターに優秀な人に来てもらって巣立っていくという、人材が循環していく組織を目指して運営しております。
現在の研究体制でございますが、3つの研究グループをつくって活動しております。
1つ目が、汎用基盤技術研究グループ、これは私がグループディレクターを務めておりますが、汎用的な基盤技術、基礎研究を行うグループとなっております。
2番目が、目的指向基盤技術研究グループ、これは上田がグループディレクターを務めておりますが、科学の研究であったり、社会的な課題であったりといったものに目的指向の立場から技術開発を行うというグループです。
そして、3番目、社会における人工知能研究グループ、こちらは橋田がグループディレクターを務めておりますが、社会におけるAIの観点で、いろいろ分析していこうということで、3つのグループで研究に取り組んでおります。
現在の統計情報ですが、常勤研究員が137名おります。非常に多様性が高まっておりまして、外国人が40%、女性が22%となっております。この辺について、また後半で少し御相談できればと思いますが、いろいろと良い面と悩ましい面とがあります。
そして、いろんな大学や企業の客員研究員が284名、大学院生が中心ですが、いろんな大学の学生が96名おります。
海外からのインターン生を集めるプログラムも非常に活発に活動しておりまして、過去3年間、コロナの間はストップしていましたが、今年度から復活しておりまして、延べ156名のインターン生が理研にやってまいりまして、3か月から、長い人だと1年ぐらい滞在して、一緒に論文を書くということで、大変な成果が上がっています。
加えまして、40以上の企業と共同研究を行ったり、40以上の海外大学や研究機関と連携を深めるということも行っております。
オフィスは、本部が日本橋オフィスでございますが、チームをいろんな大学に配置していますので、北は東北大学から、西は九州大学まで、幅広く拠点が分散されています。これも一つの大きなメリットだと思っております。
AIPセンターのアウトプット・アウトカムの目標ですが、基盤技術研究に関しましては、機械学習や最適化などの分野の基礎分野で、主要な国際会議で顕著な成果を上げたいということで、なかなか評価するのが難しいというのがこれまでの悩みでしたが、まずは客観的に見て分かりやすい主要な国際会議で、例えば論文賞を取ったり、オーラルやスポットライトに選ばれるといったのが客観的な指標の一つになるだろうと思います。それを数えるだけというのはちょっとナンセンスかもしれず、また、サンフランシスコ宣言といったものもありますので、あまりそこによってはいけないとは思うんですが、まずは第1目標として、こういったものを掲げております。
あとは、招待講演を行ったり、国際的な認知を受けた技術を開発していくということは非常に重要だと思っておりますので、こういったなるべく客観的に技術が評価されているというエビデンスを集めようとしています。
2番目、目的指向研究に関しましては、医療や災害などの分野で、具体的にAI技術を実用化していこうということで活動しております。
科学研究に関しましては、我が国が強みを有する分野での科学研究の加速ということで、これはとても広い分野ですので、あらゆるところでこういったことができるわけではありませんが、幾つか選んだテーマに対して、我が国が強みを有する部分で特に科学研究の加速をAIで行っていこうということで、ターゲットを絞っております。
社会AI研究に関しましては、個人情報共有や倫理指針などの分野で、社会システムの実装を実現するということで、もともとは倫理とか社会的な側面からスタートしていたんですが、それを徐々に徐々に技術の方にもセットさせていきながら、最終的に、ちゃんとシステムを実装するところまで達成したいと思っております。
そして、4番目、人材育成に関しましては、先ほどと少し重なりますが、AIP出身の研究者が国内外の主要な大学・研究所・企業で活躍するということが大事なことだと思っております。なので、人をとどめるというよりは、どんどん出していくのがむしろいいかなとこの分野では思っております。
AIP発足以降、国際的にどれぐらい評価を受けているのかというのを、数字だけで見ていただくのはやや恐縮ではあるんですが、ぱっと見て分かりやすいものを持ってきました。
機械学習の分野の主要な国際会議でNeurIPS、ICML、ICLR、AISTATSなどがありますが、これらでの論文のまず数を見ますと、AIPが始まる2015年以前は、ごく僅かでした。それぞれの会議に対して、一桁ぐらいの論文採択数でした。Oralなどの上のクラスでの採択というのは、もうほぼ皆無という状況でした。
それに対しまして、現在、例えば、NeurIPSですと、21、17、23、35と、かなり頑張っていまして、ICMLも18、26、11、23ということで、相当数が増えていまして、右側にいろいろ書いてありますが、Oralだったり、Longだったり、ベストペーパーが出たりということで、一応国際的に客観的に評価されるような論文も、数だけでなく、質も上がってきたということで、これは一応日本の研究機関としては世界的に誇れるものなのではないかと考えております。
また、国際学会において存在感を示すというのは、研究を発表するだけでなく、やはり胴元の方に行く必要があります。実際、会議を運営するというのが非常に重要で、ゼネラルチェアとかプログラムチェアがその主要な立場になりますが、そういったところに主要なメンバーがちゃんと活躍しています。
始まった頃は私の名前ばかりがあったんですが、AIPセンターで8年やっている間に、いろんな皆さん頑張ってもらいまして、いろんな会議でゼネラルチェアやプログラムチェアを担当できるようになってきました。
これは基本的には推薦されてなるようなものですので、やはりその研究者個人のビジビリティが高くないと、なかなかこういったゼネラルチェアとかプログラムチェアになれないという状況ですので、そういったところにAIPのメンバーがちゃんと名前を連ねるようになったというのは、大きな業績なのではないかと感じています。
Keynote、Plenary Talksに関しましても、主要なところでいろんな人が発表できるようになりまして、これ、私のところ、すみません、赤字で書かせていただきましたが、ICLR2023というのが一応機械学習の分野で最高峰に難しいと言われている国際会議の一つですが、そこでKeynote講演をできたというのは、個人事で申し訳ありませんが、私の人生にとって多分一番の業績が上がったんじゃないかと感じていまして、発表した後、やや達成感を自分で感じたようなところもありましたが、やはりそのインパクトはすごくて、その後、もういろんなところから反響が来て、うちにドクターで来たいとか、ポスドクで来たいとかというのがもうたくさん来るようになりまして、やはりこういったことはすごく価値があるんだなと改めて感じたところでした。
今お話ししたことは機械学習の理論系の方の話でしたが、もう少しサイエンスに近いほうで見ますと、主要ジャーナルでもそれなりに数がちゃんと増えていまして、ここは論文の数で競うところではないですので、あまりこれだけでいろいろ議論するのはよくないかもしれませんが、ちゃんと科学的に優れた成果を上げて、それを社会実装につなげていくということで、Nature関係のジャーナルやPNAS、Scienceといったところにも論文がきちんと出ています。
国際的な受賞もそれなりの数が出てきていまして、主要な学会も幾つか混ざっておりますので、こういったところでBest Paper Awardが出るというのは、これまで日本の研究組織ではなかなかなかったことですので、これは我々としても大変誇らしい成果だと思っております。
数に関しましては、コロナがありましたので評価しにくいところですが、18、19年頃はそれなりにたくさん出ていたんですが、20年、21年はコロナでぐんと減りました。22年から回復していますが、実はコロナの間に、人材の転出は毎年同じ数大体起こっているのですが、転入がコロナの間、海外からの転入が止まってしまいましたので、研究者の数が大分減っています。
Per Researcherというところに研究者1人当たりの論文数のような計算をしており、これが0.4まで下がっていたんですが、2022年度に0.7まで回復していますので、人数は少し減っているのですが、2022年度に既に回復していて、今年度、更にもう少し増える見込みですので、そういった意味で、コロナで少し苦労はしましたが、確実に戻ってきていると感じています。
口頭発表に関しましては、そもそも国際学会が中止になっているケースがずっとありましたので、数が減っていますが、それも今ハイブリッド開催によって大分戻ってきていますので、こちらも回復傾向にあると感じています。
この後、4ページで、研究成果をざっと御紹介できればと思いますが、一応これは前回にお送りしている資料の中に入っているもののサマリーになっていますので、簡単に御説明させていただければと思います。
まず、汎用基盤技術に関しましては、深層学習の理論をしっかりつくろうということで、なぜうまくいくのかということを数学的にしっかりと保証するというのが一番のターゲットで、研究コミュニティでも本当に賢い人たちが集まって、世界的に競争している分野です。そこで、ディープラーニングがシャローな学習、浅い学習よりも本当に予測性能が良いということを、ミニマックスレートをしっかりと証明して、ICLRのOutstanding Paper Awardを取ったりだとか、もっと新しい拡散モデルとかトランスフォーマも、近似性の意味でちゃんと最適なレートを達成できているんだということを証明したり、さらには、多段階の最適化というのが、機械学習のハイパーパラメータのチューニングであったりとか、あるいは、攻撃者が機械学習のシステムを攻撃するようなモデルと対応していますが、その問題に対して、初めてしっかりと理論保証を持って最適化できるといった理論をつくったりしています。
あと、新しいアルゴリズムを用いまして、弱い教師情報だけからでも、強い教師情報を使ったときと同じような学習がきちんとできるという全く新しい理論体系をつくりまして、それがいろんな賞を取ったり、本を出したりしています。
あとは、最近は、システムを一回学習して使うだけではなくて、それを継続的にどんどん新しいタスクに適用していこうという、継続学習という取組が非常に重要だと言われていますが、それに対してもロバストな方法をいろいろと提案していまして、主要な国際会議で高い評価を得ています。
さらに、もっと進んだところで、因果構造を推定しようというものです。ディープラーニングの予測は基本的には相関構造を使って予測していますが、予測に関してはもう十分いけるとこまでいっている感じはあります。さらにその因果構造をしっかり求めようという研究が、ある意味、サイエンスの一つの基礎研究として何十年も大きな課題になっているところですが、そこに対して、初めて、隠れた要因が存在する状況下でも全体構造を推定できるという画期的な方法を開発しました。こういった新しい手法もどんどん開発しています。
2番目、科学研究の加速ということで、このページと次のページは、既に皆さんにお送りしたスライドの一部を選んでいるものですので、簡単に御紹介するだけになってしまいますが、イメージングセルソーターの実現ということで、例えば、iPS細胞ががん化しているかどうかということを目で見て分けるのは非常に大変ですが、それを液体でパイプの中を流して、画像認識をして、がん化しているものはこちら側に分けてごみ箱に入れる、ちゃんと育っているものはこちら側に取っておくということを実時間でやっていこうということです。しかし、これをディープラーニングでそのままやると、実は推論が間に合わないので、光の方を工夫して、ディープラーニングで特徴抽出したパターンを組み込んだ光を当てます。そうすると、ディープラーニングの特徴が直接カメラで撮れるんです。そうすると、線形分離だけでできるということで、実時間に間に合うようになります。これは、今もう会社ができていて、具体的な実装につながっていくということで、あと2年まだありますので、最終的なゴールまできっちりつなげていきたいと思っています。
また、がんの研究も一番最初からやっていますが、いろんなところでやられているものではあります。今回、がんの中だけではなくて、がんの外側の部分、間質と呼ばれる部分からも実は非常に重要な情報が、特徴が取れて、それを使うことによって、がんかどうかという判定の助けになるということを示しました。
これと人間の診断を組み合わせると、はるかに性能が上がるということが分かりまして、やはり人とAIとは違ったやり方でやっていますので、相補的な関係があって、組み合わせることによって、より成果が出るということで、これは、ジャーナルでもいいところで評価されましたし、国際的にもいろいろ選ばれたりして、高い評価を得ています。
その他、アミロイドβのリスク予測の話や、非剛体物体間の部分点群マッチングということで、画像処理の話になりますが、これは心臓などの話に直結します。ですので、非常に重要な成果なんですが、こういったものも技術で高い評価を得ていまして、それが今、社会実装の方につながりつつあるという状況です。
社会的課題の解決に関しましては、自然災害の研究、特に力を入れてやっておりますが、理研の「富岳」全系を使って、世界初の断層都市高解像度解析を実現しました。
これは「富岳」を使えば速いからできるのではないかと思われてしまうんですが、実はそんな甘い話ではありませんで、「富岳」を使っても都市ではやはり難しいということで、機械学習とシミュレーションをうまく組み合わせることによって、大幅に計算時間を削減することができて、初めてこれが達成できたということになっています。
さらに、最近は微分方程式をディープラーニングを使って近似してやって、それを使うことによって、今まで有限要素法とかで区切ってやっていたものを、本当に連続値のまま解いてしまうということができるようになりまして、これが例えば地殻変動のシミュレーションとかで非常に有効だということが分かってきていまして、最近はこれをさらに生物学の方も適用しようということで、新しい研究も盛り上がっています。
あとは、津波をリアルタイムで予測する仕組みであったりとか、さらに、超音波検査、これは企業も入って一緒にやっているものなんですが、これは実用化の方までつながっておりますので、認可を取るまでに少し時間はかかっていますが、無事に今のところ進んでいますので、近い将来、しっかりと日の目を見る形になるのではないかと考えています。
最後、AIの社会的影響の分析ということで、AIPプロジェクトが始まった頃、まずはシンギュラリティだとか、AIは怖いみたいなところからスタートでしたので、まずは倫理規定を策定しようということで、人工知能学会の委員会にAIPのメンバーも参加させていただいたり、総務省とか内閣府の委員会にも参加させていただきまして、最終的に、我々も貢献したものが、IEEEやG20、OECDといった国際的な場で披露されることになりました。
個人データの管理に関して、我々は特に興味を持っていまして、欧米では主に企業が中心となって個人データの管理をしていますし、中国ですと政府が管理していたり、ヨーロッパは国同士でルールをつくって厳しく規制するようなモデルになっていますが、日本はどうすべきかというのは、まだいろいろ選択肢があるかと思います。
我々としては、個人ベースのアクセス制御システムを提案しています。これは基本的には、各ユーザーがスマホのアプリを使って自分のデータを暗号化して、パブリッククラウドにデータを上げます。そして、この人は私のデータを見ていいですよということを自分で選ぶようなスタイルになっています。
これは、実際高校生で実験をしているんですが、高校生が自分の成績を暗号化してネットに上げて、自分の先生は見てもいいですよとか、出願先の大学の事務の人は見てもいいですよというような感じで許可をして、先生はそれを見て推薦書をくっつけたり、内申書をくっつけたりということができるといったシステムになっています。これは非常に簡単にスケールしますので、100万ユーザーとかになっても、おそらく全然問題なく使えるはずです。これは、今、幾つかの地方自治体で、母子手帳への応用等といった、いろんな取組が進んでいるところです。
さらに、これを文書の管理にも適用して、教育分野にも貢献していこうということで、新しいプロジェクトも始まっています。
あと、少しネガティブな観点からは、AIのセキュリティと信頼性が非常に大きな課題になっています。
AIPが始まった頃から敵対的攻撃というのが非常に注目されていますが、パンダの画像に目に見えないような小さいノイズを乗せると、パンダがテナガザルと認識されてしまうというような例がよく出回っていましたが、ああいったものを使うと自動運転車を暴走させたりできるということが大きな問題でした。
この部分に関して、基礎研究はとても頑張ってたくさん論文を書いているんですが、いたちごっこがずっと続いていまして、いい守り方を提案すると、次の日に破り方が出てしまうというようなことがずっと繰り返されています。それを通して、いろんな知見は蓄積されていますということが一応理論研究者の立場ではあるんですが、実際のところ堂々巡りになってしまっているのが現状ですので、これに関しては、何らかの根本的な対策が必要ではないかということで、更に議論をしているところです。
あとは、今はいろいろネット上に情報が出回っていますが、ファクトチェックをどうするかといった話や、きちんと判断の公平性が保証できているのかといった、センシティブな課題に対しても、新しい技術をつくって提案しております。
ということで、ざっと研究成果を御紹介させていただきましたが、こういったことを通して人材育成も同時にできるといいなということで、研究しながら人材育成をしていることになっていますが、2023年度12月末までに154名が卒業していっています。研究員は若い人が多いですので、あまり目立ったポジションというのは少ないかもしれないんですが、シニアの人は主要な大学の教授になったりとか、准教授になったりというところもありますし、外国人がたくさんいますので、日本でポスドクを経験して、3年から5年ぐらいやって、海外の大学にアシスタントプロフェッサーとか、いきなりアソシエートプロフェッサーになる人も何人かいて、そういった人もたくさん出てきております。
企業は、具体名は書きませんでしたが、思いつくような企業にたくさん人が出ていってしまっていまして、いいのか悪いのか、悩ましいところではあるんですが、羨ましいと思えるような会社にたくさん就職をしています。
下のグラフが、毎年どれぐらい人が出ていっているかというグラフなんですが、平均して30人ぐらい毎年出ていっています。これは、悲しいと言えば悲しいところではありますが、皆さん、ステップアップして次のいいところに移っていて、少し悪い言い方をしますと、今まではポスドクとして雇って給料を払って研究していたんですが、彼らは出ていって、行った先で理研の客員研究員になってもらっています。そうすると、一円も払わずに一緒に共同研究ができるということになりますので、ある意味、ねずみ講式に研究者を増やせるような状況になっていて、これは実はとてもいいやり方なんです。
なので、私のチームとかですと、今もう孫世代が出てきていまして、もともと最初にいたポスドクが、幾つかの大学のアソシエートプロフェッサーやアシスタントプロフェッサーになっていて、彼らがいい学生を採っていて、その学生がインターン生としてうちに来て一緒にまた研究するという状況になっていまして、これを何年か続けていくとどんどん増えていくので、非常にいいやり方だと思っています。
AIP起ち上げ時にチームをたくさんつくりまして、本当にそんなに大丈夫なのかということを少し批判されたことがありましたが、そこは意図的に実はやっていまして、2016年度に始めた頃には、やはりAIがまだどこが当たるのかということが全然分からない状況でしたので、私として可能性がありそうなところ、あと、いい人材がいるところを選んで、チームを多めにつくりました。2018年度の段階で52チームほどありましたが、その後、国内外の評価や世界的な研究の分野の動向を見ながら、見直してきました。
汎用グループに関しましては、最初21チーム、小さいチームをたくさんつくったんですが、やはり5年ほどやっていくと、伸びるチームと縮小していくチームが徐々に出てくることが分かりましたので、必要に応じて小さいチームを合併して運営効率を上げ、今は13チームまで絞っています。
目的グループに関しましては、重要度が特に増してきたと思われる分野に資源を集中して、24チームから17チームまで絞っております。
社会グループに関しましては、本当はもう少しチームを増やすことができればよかったのですが、定年退職等の関係でチーム数が一度減ってしまったところがありました。それに加えまして、社会系の人材というのはなかなか理研では必ずしも採用しやすいわけではないということと、日本にそもそもそういった人材がたくさんいないということも現状でしたので、それであれば、社会的な分析をするだけではなくて、それを技術に実装する部分もしっかりやっていこうということで、技術系のチームを社会グループにも編入することにしました。そうすることによって、今のチーム数は6ですが、効果的に研究を進めているという状況になっています。
今のAIPでうまくいっていることと課題を主観的にまとめましたが、国際的な競争力は幾つかの分野で出てきたかなと感じています。学問分野も、新しいものが幾つか開拓できたり、AIの花形である画像や言語、信号処理の分野でも、数理に強い人が集まってきてくれるようになっていますので、こういったところは非常にいいなと思っています。
目的系に関しましては、医学などの応用分野や公平性などの人文系の研究者がセンターの中にいますので、非常に連携しやすいというのは大きな強みだと感じています。
国際的にいろいろ活動してきたおかげで、特にアジアが多いのですが、海外の優秀な若手研究者からポスドクに応募がどんどん来るようになりまして、本当に信じられないような業績を持ったような人が応募に来ています。これは非常によかったなと思っています。
また、最初の方にも少し御紹介しましたが、チームがいろんな大学に分散されていますので、主要大学に理研の分室を置くことによって、各大学の優秀な先生にも関わっていただけますし、各大学の優秀な学生さんにも声をかけやすくなったということで、うまくネットワークをつくって活動ができているというのは強みかと思っています。
一方、運営上の課題ですが、先ほど申しましたように、毎年30名、人が転出していきまして、少し油断するとすぐ人数が減っていってしまいます。なので、我々の仕事としては、毎日毎日新しい人を次々雇う面接をしているというのが現状でして、それで何とかサイズを維持しているという状況です。今、AIPプロジェクトはあと2年ということになりましたので、皆さん、そろそろ出ようかなという感じで、特に今年度、優秀な人が動き始めている状況ですので、新たな研究人材の確保に課題が生じてきているところです。
これは先ほど申しましたが、ハブとなるAIP及び各大学に研究拠点を置いたことは非常によかったかと思っています。
ただ、全体として、やはり情報分野における人材不足というのが非常に深刻でして、最初のところで外国人が40%と申し上げましたが、主観的に、在籍している130名ぐらいのメンバーを、情報系と、医学や物理といった情報系でない人とで分けたとすると、私が見た感じは、情報系の人が50人ぐらいかなという感じだったのですが、50名の中で、外国人は実は8割ぐらいいます。すなわち、情報系だけを見ると、もう日本人はほとんどいないという状況です。実際、私は東大で今研究室を持っていて、20名ほどドクターの学生がいるんですが、9割方が外国人で、日本人はわずかしかいないという状況です。理研の私のチームで、試しに日本語でポスドクの公募を出して1年ぐらい置いているんですが、1件も問合せすら来ないという状況です。
これはもうそもそも母集団の人がいないということです。私のチームが悪いのかもしれませんが、全然人がいないというのが実情ですので、そういった意味で、情報系で特にドクターに上がる人はほとんどいないというのが非常に深刻な状況だと感じています。一方、欧米や中国、アジア諸国を見ると、どんどん情報系の人が、ドクターに進学しているんですね。そういった人が国際的に活躍している状況ですので、これはかなり今日本と差が開いてきてしまっていると感じています。
今、社会におけるAIの状況に鑑みまして、AIの技術開発のさらなる強化が求められると感じています。今のAIPでうまくいっているところも幾つかあるかと思いますので、こういった強みを最大限活用するとともに、新しい方向性をしっかり示して、日本のAI研究を更に牽引するような役割を担っていけるといいのではないかと感じています。
これからもう少し具体的に、今後どんな方向に行きたいかというのを、かなり我々の主観的な話も混ざっていますが、こんな研究が重要になるのではないかと思っていることを簡単にお話しできればと思います。
まず、生成AIが今非常に注目されていますが、正確性と信頼性の面で非常に課題があります。大規模なリソースも必要になります。そういった意味で、本当に勝負していくためには、似たようなことをやっていても、何百グループも同じようなことをやっている人がいますので、とても競争に勝てるような状況ではないですので、やはり今まで積み上げてきたものの上に、更にもっとすごいものを載せて、ほかの人が全く真似ができないような圧倒的なレベルのものをつくらない限り勝負にならないと感じています。
さらには、精度の向上、計算資源の省力化や、ドメイン指向型といったところも非常に重要になってきています。
さらに、シミュレーションできない実世界の問題もたくさんありますので、ロバストな知能システムをつくっていくという大きな方向性が重要だろうと感じています。
今の文脈で、もう少し基礎研究の目から見たときに、「信頼できるAI」をきちんと実現するというのが重要だと思っていまして、この言葉自体はもう使い古されたものですので、なかなか言葉だけで新規性を出すのは難しいのですが、今、例えばChatGPTのような共通の基盤モデルがネット上で動いていて、それをみんながアクセスするような形になっていますが、そもそも同じものをみんなで使うということはあまり健全でない気がしますので、それを個別化するというのが、既に幾つかの会社で行われているかと思います。
その個別化されたシステムが、今度、その人とインタラクションすることによって、それぞれが学習していくことになって、さらに、社会の中でいろんな人同士がインタラクションを取りながら学習していくということになりますので、右の方に複雑な絵を書きましたが、AIと人のインタラクションや、AIとAIのインタラクション、複数の人とAIのインタラクション、さらにそれが時間とともに変化していくといった、こんな複雑な系の中で、いかに学習の全体像をコントロールしていくかというのを理論的にしっかり詰めていくというのが重要だと考えています。
これは、よくよく考えていくと、情報分野の基礎研究のほぼ全てのエッセンスが入っている課題かと思っています。さらに、セキュリティの問題も、ここにもちろん入ってくるわけですので、そういった意味で、こういった将来像の中には、本当に我々がやるべき課題がたくさん含まれていると考えています。
何か名前をつけなければいけないので、少し苦し紛れにAdvanced AIPという名前をつけたのですが、AIPのAはAdvancedですので、Advancedが2つ重なっていますが、外国人の前で話すときに、面白い名前の方がいいかなということで、こういった名前にしています。
どんなことをすべきかということで、先ほどと少し重複しますが、ハブとしてしっかり機能していこうということと、産業界も、2016年の頃はまだあまり日本でも立ち上っていなかった印象ですが、最近やっと産業界も非常に活発になってきましたので、しっかりと連携して、海外との連携も更に深めていきます。
人材育成に関しましては、昨年ぐらいからかなり活発に活動しているんですが、情報系の母数を増やすべく、情報系学生・若手研究者の積極的雇用をしたり、女性の博士課程進学者を増やすために、いろいろ説明会をしたりとか、あとは、研究テーマもそういう方向に少し振ろうかなということも考えていまして、女性が活躍している研究分野はありますので、そこに自然とAIの課題も出てくるかと思いますので、そういった分野に投資していくというのも、一つ大きなやり方かと思っています。
あとは、中高生向けのアウトリーチ活動ということで、私も年に3回ほど女子高生や女子中学生の前で講義したりしています。なかなか大きな波にはならないのが正直なところではありますが、非常にやりがいのある活動で、それで1人でも2人でも感化されて、こちらの分野に流れていってくれればということで、これをもう少し組織化してやっていきたいと思っています。
あとは、海外の大学や企業に所属する研究者をPIや研究員としてクロスアポイントメント雇用しようということも、これから進めていきたいと思っています。今、国内ではこれは大学でやっているんですが、それを企業であったり、海外の大学であったり、そういう人たちを部分的に理研で雇用するということを実現できれば、より多様な人材を確保できるのではないかと考えています。
このAdvanced AIPよりももう少し具体的な話がありまして、21ページですが、3つの柱で研究していくといいのではないかということで考えています。それぞれ、Mathematical Intelligence、Domain Intelligence、Physical Intelligenceという名前をつけました。数理的な研究と、科学分野のドメインに根づいた研究と、物理世界とのインタラクションをしっかり取っていくといった3つの分野を柱にしていくのが重要ではないかと考えています。
これは少し細かいスライドですので、割愛させていただきたいと思いますが、数理的な研究に関しましては、先ほど少し申し上げましたが、変化する環境でいかに学習して、因果関係もしっかり取り入れて、AIの安全性も保証しつつ、最近は量子の話等も出てきていますので、そういったものを取り込んでいくということで、いろいろな理論的な課題を統合して、知能を実現するというところに貢献していくのが重要ではないかと考えています。
Domainに関しましては、科学研究を加速するということが目的になりますが、いわゆる「AI for Science」というのは、サイエンス分野の研究だと思いますが、我々は、ここではAI研究そのものを指しています。ですので、サイエンス分野で使えるAIを研究するというのがターゲットになっていますので、科学研究に関しましては、あらゆる分野を網羅的にやるというよりは、幾つか選んだ分野でしっかりAIの新しい技術を流し込んでいきたいと思っています。その幾つかのテーマが、具体的なものが候補として挙がっています。
3番目のPhysical Intelligenceでは、物理の世界に基づいた人工知能によるブレークスルーを目指そうということで、ここがある意味AIの花形部分ではあるんですが、今のLLMを超えるものをつくっていくということで、知覚と行動や、継続的な学習、超並列、分散、非同期計算といろいろキーワードが書いてありますが、こういったところに取り組んでいくことによって、実世界の環境で普遍的に機能する汎用的なAIを実現しようということで、ボトムアップに研究を進めていくべきだと考えています。
これがいずれはいろんなアプリケーションにつながっていくだろうということで、知能ロボットや、社会全体の最適化に使えるような技術をアウトプットとして出せればいいなと思っております。
最後に、AIPセンターは理研の中で活動しておりますが、理研におけるAI研究の総合的推進ということで、ここは私のレイヤーというよりは、もう一つ上のレイヤーからのお話になるんですが、理研でまずAIの研究を行うことにどんなメリットがあるかということを、私なりに考えたところです。まずは、理研ですので、物理の研究センターがあったり、医学の研究センターがあったり、いろいろ科学分野の研究センターがありますので、異なる分野の研究者と連携するというのが非常にやりやすいというのは大きなメリットだと感じています。
また、大学ではないというのがやはり重要でして、いろんな大学と付き合うためには、自分たちは大学にいないことというのはとても重要だと感じていまして、複数の大学と研究協力をすることが、理研だと非常にやりやすいと感じています。
あとは、理研として、これから「AI for Science」に力を入れていこうということになっています。そこで科学基盤モデルの研究を行うことになっていますが、そこと連携することによって、我々の研究自身も非常に効率化できるのではないかと感じています。
実際、理研の各センターはいろいろ有望な科学データを持っていまして、例えば、生命・医学系ですと、遺伝子配列や発現(ゲノムコホートデータ)や、タンパク構造、イメージングなど、非常に有望なデータをたくさん持っています。また、材料・物性科学分野でも非常に有望なデータを持っていますので、こういったデータにある意味優先的にアクセスできる権利が理研の中にいるとありますので、これは大きなアセットになるというふうに感じています。
27ページは、理事長のスライドを借りてきたものですが、理研のミッションとして非常に高いゴールが定められていますが、これを実現するために、TRIP構想というものが提案されています。
その詳細が28ページですが、Transformative Research Innovation Platform of RIKEN platformsという名前で、非常に長いので略してTRIPとなっていますが、良質なデータを整備して、それをAI・数理で予測の科学を開拓して、更に計算可能領域を拡張していくというのをぐるぐる回して研究を進めていこうということになっています。その中にAIPセンターは、今8年間ですが、10年間の蓄積された成果がしっかり埋め込まれて、次につながっていくというような位置付けになっております。
最後が、これは、投影のみの資料となっていますが、第5期中長期計画で理研の中でどういうことをすべきかということが、現在まさに議論されているところですが、理研全体の総合力を最大化するために、このTRIPを活用して組織横断的な仕組みを検討しています。
具体的には、基礎科学型プログラムという緑の船と、課題解決型プログラムというオレンジの船がありまして、その周りにTRIPがあり、いろんなセンターがあるという絵になっています。この中にAIPもしっかり位置付けられていまして、特に、右上に少し書いてありますが、AIPセンターのAIの学理研究を核として、理研のその他の研究センターが連携・総力を挙げ、AIを活用した科学研究の加速に取り組むということで、理研の「AI for Science」のプログラムに、AIPセンターもリーダーシップを持って参加するということが、ここに今まさに議論されているところです。
既に計画されている具体的な取組としまして、科学研究向けの基盤モデルの開発・共用や、Physical Intelligence Programという、エッジの知能化を見据えた、今後に向けた取組の検討がなされています。こういったところにも、AIPセンターの次の取組がもしできるのであれば、積極的に関わっていけるのではないかと考えております。
以上で終わります。どうもありがとうございました。
【相澤主査】 ありがとうございました。
それでは、ただいまの杉山センター長からの御発表に対して、御質問等ございましたら、挙手にてお知らせください。よろしくお願いいたします。よろしいでしょうか。
では、まず私から、初めに簡単な質問をさせていただければと思います。
最後のところで、理研全体の構想として、TRIP構想というのを御紹介いただきましたが、今のTRIP構想自体は、これから将来的に立ち上げるものという位置付けですか。
【杉山先生】 理研の方では、TRIP構想につきましては、既に一部予算的な形で進みつつあります。AIと融合した研究は、これから理研の中でも検討して、本格的に進めていこうというような形になっております。
【相澤主査】 分かりました。ありがとうございます。
差し支えのない範囲で、現在の進行中の活動で、AIに関わる部分がありましたら、簡単にキーワードだけでも教えていただけますか。
【杉山先生】 この右下の2つということですかね。科学研究向けの基盤モデルをつくっていくという、TRIP-AGISというプログラムと、あとは、エッジの知能化に向けたPhysical Intelligence Programというものが検討されています。
【相澤主査】 分かりました。どうもありがとうございます。
それでは、小林委員、よろしくお願いいたします。
【小林委員】 どうもありがとうございます。
先ほど博士に行く日本人20代が少ないというお話がありましたが、やはりそれは出口としての、産業界でのAIのニーズがまだ、ドクターを持っている人材を必要としていないという状況が変わっていないということでしょうか。
【杉山先生】 今、修士の学生の給料がものすごく増えているというのがむしろあるのかもしれません。いい発言かどうか分からないのですが、修士を出た学生の1年目の給料が教員よりも高いかもしれないような状況で、私が止める力はありませんよね。
つまり、ある意味、民間企業はうまく回っているので、どんどん若い学生が企業に取られていってしまっているという状況なのかもしれませんが、裏を返すと、アカデミアのポジションに魅力が全くなくなっている、競争力がなくなっているという状況です。
【小林委員】 そこを変えるためには、やはり企業側というか、受入れ側がもう少し博士的な人材を必要とするということが必要でしょうか。
【杉山先生】 そうですね。そこは、しかし、既にもう何十年も同じことを言っている気はします。
なので、私としては、少し個人的な意見になってしまいますが、日本ではそういった活動をすでに10年、20年やってきて、結局、むしろ悪くなっているような状況ですので、割り切って、どんどん海外から優秀な学生を集めてきて、博士課程をまず充実させて、日本の大学の幾つかが国際的にしっかりと注目されるような大学になれば、日本人の本当に優秀な人の何人かが、きちんと自分も大学院に行って国際的に活躍できる人材になろうと思ってくれるのではないかと思います。
【小林委員】 逆に、日本人の学生が海外で活躍するために、博士を取って学んでいくというようなマインドはまだ少ないのでしょうか。
【杉山先生】 ゼロではありません。ここ10年ぐらいで、少しずつ出てきています。幾つかの民間の財団法人なども、大学院にアメリカに送り込むための、何千万といった資金援助をするような財団もあったりしまして、そういったところにものすごく優秀な人が応募してきたりしています。それを知能の流出と私は言いたくありませんが、日本人の優秀な人がきちんと国際的なマーケットに出るようになっております。
ただ、悩みは、そういったアメリカの大学でドクターを取って、結局、民間企業に就職してしまいます。なので、なかなかアカデミアにフィードバックは戻ってきていないというのが現状です。
【小林委員】 なるほど。何かいいロールモデルができると良いと思います。
【杉山先生】 そうですね。ある意味、日本人のマインドを変えることは正直難しいと思います。しかし、それで日本の大学が沈下してしまうと望ましくありませんので、やはりまずは優秀な人をきちんと集めることが重要ですので、国籍問わずに、しっかりと博士で活躍してくれる人材を世界中から集めてくるということが必要ではないかと思っています。
【小林委員】 分かりました。
また、論文のところで、数だけではないとおっしゃっていたのはそのとおりだと思いますが、研究者当たりの数字が1以下というのは、1つも出していない人もいるということですか。
【杉山先生】 これはどう計算するか、単位の見方はあまり把握しておらず、申し訳ありません。
【小林委員】 何か違う指標なのかもしれませんけれども。
【杉山先生】 複数の著者がいる論文がありますので、それを人数で割ったりすると、どんどん減ります。一つの論文を10人で書いていると、0.1など簡単に数字で表されますので。
【小林委員】 かなり大がかりな著者リストということでしょうか。
【杉山先生】 例えば、今、私がやっているような理論の研究でも、著者が5人ということは普通ですので、5から10人ほどになることもあります。
【小林委員】 それで1以下になってしまうということですね。
【杉山先生】 そうですね。
【小林委員】 分かりました。ありがとうございます。
【相澤主査】 ありがとうございます。
ほかは、いかがでございましょうか。
青木先生、よろしくお願いいたします。
【青木委員】 杉山先生、いつもお世話になっています。
【杉山先生】 どうもありがとうございます。
【青木委員】 やはりここは、先生がいつもおっしゃっているような人材というのがキーワードだと思います。それが、政府の戦略に対して、どういうふうに打ち込めるか、文科省から出るかというのは、また別問題かもしれませんけれども。大学の人間としては、やはり人材のフローを、ある意味、大学としても、AIPがプラットフォームになって循環する仕組みに非常に興味がありまして、そこが非常に大きいと思います。
もう一点は、もちろんAIPが理研の中にあることによって、理研としての位置付けというものがあると思いますが、私としては、どちらかというと、大学の人材プラットフォームという格好のイメージが非常に大事だといつも思っています。
そのときに、先ほど年間30名のフラックスがあるとおっしゃっていましたけれども、やはり人材のフローの、どこから来て、どのぐらい滞在して、どこに行くのかということを、次の人材戦略の中で、どのように設計して、それに対してどう投資をするのかということは非常に重要なポイントかと思っています。
例えば、東北大学で、ポスドクのフローを追おうと思っても、東大でも同じだと思いますが、大きくて、誰がどこで雇用されて、どこに行ってどうなっているのかというのはとても難しく、そこの全体像を捉えるのにとても時間がかかります。
AIPだと押さえておられると思うので、今までがこのような感じで、もし次のアドバンストになったとき、どういう戦略があり得るかということ、それから、国策ということもあると思いますが、何かお話しいただけることがあれば、お願いしたいと思います。
【杉山先生】 2016年度にAIPができたときに、まだ当時は助教クラスとかポスドククラスに日本人が何人かいて、そういう人たちはAIPで採用することができました。そういう人たちが、2017年、2018年度ぐらいに結構入ってきていましたが、みんな3年から5年ほどAIPで研究して、巣立っていきました。
2020年に入ると、もう日本人がいないという状況です。ここ二、三年は、本当に外国人ばかり採用しているというのが情報系では現状でして、私のチームも、まだ日本人を雇ったことがないような状況だったりします。
なので、数は、もう増えないと思います。少子化ですし。大学の中にもちろん優秀な学生は一定数いますが、全分野の先生が狙っていますので、その学生がうちの研究室に来てくれる確率は、10年に1人ほどしかおそらくないと思います。さらに、それを継続的にやることは難しいですので、やはり海外から人を採れる国や研究機関などを狙って、システマティックに採るしかないと思っています。
私は、かなりそういうところはやっていまして、幾つかの大学と割と太いパイプが今できていて、そこから優秀な学生が数年に一度程度来てくれていたりします。先輩が後輩を呼ぶような感じで、どんどん循環しています。結局、しばらくお預かりして返しているようなところはあるかもしれないですが、それでも、きちんと理研の看板を持って、あるいは、東大の看板を持って勉強して、論文を書いて、研究成果を上げて、世界に出ていっている学生ですので、そういった意味では非常にいいのかなと思っています。
【青木委員】 大学のある種の行動変容や、そのものを誘導できるような仕組みがあると本当はいいのだろうなと思って伺っていました。すぐにはなかなか申し上げにくいだろうと思うんですけれども。
【杉山先生】 そこはJSTでBOOSTが動き始めているところですが、ああいうので学生は多少は感化されています。なので、ドクターに行きたい学生がいないわけではありません。気持ちとしては行きたいなと迷っている学生を後押しする力にはなります。
【青木委員】 AIPに行けるというところを、ブランドを少し高めていって、求心力をもちろん持つのですが、大学からも積極的に送るような格好が本当は何かの形で取れないかと考えておりました。
また、今後、ぜひ人材の供給の発生源といいますか、そういったフローの中心になっていただきたいと思います。ありがとうございます。
【杉山先生】 ありがとうございます。引き続き、よろしくお願いいたします。
【相澤主査】 ありがとうございます。
では、盛合先生、よろしくお願いします。
【盛合委員】 杉山先生、ありがとうございます。今日はオンラインで失礼いたします。
【杉山先生】 ありがとうございます。
【盛合委員】 2つ質問がございまして、1つ目は、AIPの期限を延長することで、人材流出が防げるかという観点です。現在8年目で、もうすぐ終わるということで、流出が激しくなっているとおっしゃいました。
今回、例えば、延長するとなった場合に、例えば、有期雇用の研究者が10年を超えて同じ組織で雇用することが難しいというところもあるかと思いますが、パーマネント採用しないと、そういう流出が止められないのか、あるいは、待遇面、かなりAIの人材は、世界的にも人材獲得競争が激しいと思いますけれども、待遇面で何か改善することで、人材流出に何か歯止めがかけられるようなところが期待できるのかという点が1つです。
もう一つが、Advanced AIP構想について後半の方で御説明いただきました点で、理研がスタートしたときに、社会科学的なアプローチというのも柱の一つになっていたかと思いますが、それは今回、その3つの柱の中のどこに入るのか、あるいは、共通の課題にすると下の方にありましたけれども、そういった整理にされるのかというところではいかがでしょうか。
【杉山先生】 ありがとうございます。
まず1つ目の人材の方でございますが、残り2年で次に何か決まれば延長できることになりますので、今すぐ出ようと思っている人を一旦引き止めることはできるかとは思います。
ただ、私としては、彼らにずっといてほしいと思っているわけではなくて、基本的には出ていってもらうべきだと思います。次の若い優秀な人を採らないといけないですので。なので、どこかいいところへ出ていって、教授なり、何かいい役職に就いてもらって、ちゃんと理研なり日本の大学と関わりを続けてもらうということが重要かと思います。さきほどの孫をつくってどんどんやっていくようなやり方ですが。
ですので、人を囲い込もうとはあまり思っていないというのが正直なところです。予算的にもそれはおそらく無理だと思いますので、基本的には、いい人にどんどん出ていってもらって、新しい人を採り続けるというのが必要なモデルかと思っています。
そのためにお金を積めばいいのではないかという話は当然ありますが、ちょっとした実験をしたときに、少し高い給料で雇うと、その人は、また次の少し高い給料のところにすぐ移ってしまいます。なので、お金で動く人はお金で動くので、それでは駄目だなという気はします。それは彼らのビジネスモデルなので、それを否定することはできませんが。
なので、あまりやりがいの搾取をしてはいけないとは思いますが、やはりこの先生と一緒に研究したいというか、この研究者と一緒に論文を書きたいと思って来てくれる人は、言い方は悪いですが、待遇が悪くても来てくれます。なので、まずは自分自身がそれぐらい魅力を出せることが必要で、そういう人は世界的にそんなにたくさんいるわけではありませんので、理研のセンターなり日本の大学で、数名でいいので、そういう柱になる人がいれば、そこにはたくさん優秀な人は集まってくると思います。
そういった形で、彼らの給料を全体的にベースアップしてあげるということは必要だと思いますが、急に不連続に1人だけ給料を上げてしまうと、やはりほかとバランスが取れなくなってしまいますので、よほど特殊なケース以外は、それはあまり機能しないかなという感覚ではあります。
あまり質問の答えになっていないかもしれませんが、いろいろ実験しながら、いい人材を回すことを目標にやっております。
2番目が、社会グループの話ですが、もともとの社会グループで、まずは倫理系の話や法律系の話をじっくりやっていこうということで、最初の5年ぐらいやっていまして、人材的にはシニアの方が最初チームリーダーをやられていたので、退職があって、やや規模が小さくなってしまったところで、いろいろ必死に探したのですが、なかなかAIの専門である法律家とか倫理の研究者は、日本ではほとんどいらっしゃいません。弁護士の先生などでAIの専門の方は何名かいらっしゃるので、そういった先生には客員研究員になっていただいたりして貢献はしてもらっていますが、そういう人たちを理研が雇用するわけにはいかないという感じではあります。
そこで、私としては、議論するだけでは科学の研究につながらないので、そこにしっかりと技術系のメンバーも入れて、議論された仕組みをしっかりと社会実装する、テクノロジーをつくっていこうということで、今の社会グループは動いているところです。それが次のAdvanced AIPの中で明示的には消えているように見えるかもしれませんが、技術の方の人たちは、Mathematical Intelligenceの中に入ることになります。
今、倫理の話や、公平性の話など、数学のものすごく難しい議論になっていますので、もはや文系の人が議論して解決する問題ではなくなっていて、それをテクノロジーとしてどう実現するかということが本当に大きな課題になっています。
もちろん文系の人の議論も必要ではありますが、そこを理研でメインにやるには少し難しいかと感じるのが、これまで8年の印象ですので、外部の人材にしっかりとそこはお願いして、理研では客員研究員なり身分を持っていただいて貢献していただくとともに、中では、そういった倫理系や公平性などの話、社会的な側面を技術にしっかり還元できる、数理的な研究に還元できる人を雇用して回していくというような仕組みが、今後の仕組みとしてはいいのではないかと思っていまして、そういったことが先ほどの青写真の中には入っているつもりです。
【盛合委員】 よく分かりました。本当にありがとうございました。
【杉山先生】 ありがとうございます。
【相澤主査】 では、尾上先生、お願いします。
【尾上主査代理】 ありがとうございます。
すばらしい成果と今後の展開を御説明いただきまして、ありがとうございます。
先ほどの盛合先生の最後の御質問へのお答えとも本当に近いところでよろしいのだと思いますけれども、やはり個別化されたAIを一般人が活用していく未来を考えると、社会受容性や、あるいは、リテラシーを上げていくような、そういう活動をするところが、このAIPの中にあるべきではないのかもしれませんが、例えば、スタートアップや、いろんなところとの連携が必要になってくると思いますが、その辺の何か具体的な方策がもしありましたら、教えていただければと思います。
【杉山先生】 企業との関わりは、非常に難しいところでして、いろんなアライアンスができています。公的機関としてどこに乗るかというようなことは、常に悩ましい選択ではあります。我々のところでも、実際、某企業グループからアライアンスに入りませんか、何かグループがあるので参加しませんかというような提案が来ますが、ある一社とくっついてしまうと、ほかとできなくなるところがあるので、今のところ、それぞれ距離を置きながら、我々は公的機関ですという立場で、少し距離を置いて見ているというのが実際のところです。
どうするといいでしょうか。民間企業であれば、どこかで一緒にくっついて社会実装を進めるというのはもちろん必要なことだと思います。我々も何か別の組織をつくって、そこがA社とくっついて、また別の組織をつくって、そこはB社とくっついてというようなことをやってもいいかもしれませんが、センター全体としては、あんまり色をつけたくないというのが正直なところではあるので。大手IT企業の傘下のようになるのも嫌ですし、そこは少し距離を取りながら見ているというのが現状です。
【尾上主査代理】 やはりAIPの中にいる人は、自分でスタートアップをつくって何とかしようというよりは、ピュアな研究をずっと続けたいという思考の方が多いということですか。
【杉山先生】 そこは理研の中でも非常に議論になっていますし、また、AIPも、外国の主要な先生に来ていただいて国際評価を受けるというのを何度かやっていますが、そこでもそういった指摘を受けますが、今、日本人がほとんどいない状況で、数少ない人がやっとアカデミアの方に来てくれたのに、彼らにスタートアップをやりませんかと私が声をかけることは絶対しません。
彼らは、黙っていても勝手に出ていきますので、それをわざわざ私が後押しすることは、今のところはするつもりはないというところです。もう少し人材が豊富になれば、多様性の意味で、民間に行く人もいたり、アカデミアに残る人もいたりとなればいいのですが、アカデミアがほとんどゼロですので、わざわざ、せっかく来た人に「君、応用研究をやりなさい」などと言わないほうがいいかなというのが、今の正直な気持ちです。
【尾上主査代理】 ありがとうございます。
【相澤主査】 ありがとうございます。
若目田委員、よろしくお願いします。
【若目田委員】 今日は御説明ありがとうございました。
【杉山先生】 ありがとうございました。
【若目田委員】 私はこの中では純粋なビジネスパーソンで、文系出身なので、少し目線が違うかもしれませんけれども、幾つか質問させてください。
1つは、最後にあったAI研究における理研内の総合的な取組というのは、今後の狙いとしては、やはり理化学研究所と密接に連携して、そのガバナンスを理研の目標などに沿った形でやっていくのが望ましいということでなのか、逆に我が国におけるAIの基盤研究のトップエンドとして、必ずしも理化学研究所という枠にはまらずある種自由に突き抜けていくほうがいいのか、その辺のお考えを教えていただきたいというのが1点です。
次に、応用領域に関しては、最初はかなり広めに対象としつつ、活発でないチームは合併したというような説明がありましたけれども、今後も体制を見直し継続する際に、応用領域を選んでいく基準とが必要ではないかと思います。結果的に統合されましたという進め方より、今後ここは集中すべきと判断する選択基準、もしくは、その選択に対する思いをお聞かせいただきたいというのが2点目です。
3点目は、先ほど企業との連携や、企業への人材の輩出について触れられたと思います。経団連の立場からこちらで何年か前に、企業における研究と国、公費でやる研究の役割分担について意見を申し上げたことがあるのですが、企業単独ではやりにくい、応用領域ではない基礎的なもの、もしくは、価値が出るかどうか分からない創発的なもの、これらについては国ないし国の研究機関に先導していただきたいと思います。
私も、前回の中間評価の際、実はAIPセンターの基盤研究について非常にわくわくしまして、例えば、データが少ない我が国において、そういう学習データが少なくても効果を上げることができる点は非常に重要な研究だと思います。そういった研究に関しては、むしろ企業からも人を集約するようなセンターになるべきと感じます。応用領域については、特定の企業と組むと他の企業と連携できないという懸念がるかもしれませんが、そこはある種の選択基準に基づいて、逆にAIPに委ねるという考え方があってもいいのかなと、これは感想ですけれども、思いました。
以上でございます。
【杉山先生】 ありがとうございます。
まず1点目の、最後の理研の総合的な研究の話ですが、AIPセンターができて、私が最初に2016年度に理研に送り込まれた形になったわけですが、当初、私もかなり大変かなというのが正直な印象ではありました。理研でAIの研究をこれまでやっていたわけではないので、最初、我々が理研という看板を持って、例えば国際会議に参加しても、誰だというような感じで言われてしまう状況でした。なので、そういった状況では、理研にいるメリットとは何だろうと、最初の頃は正直少し戸惑っていた面があります。
ところが、何年かしていくうちに、AI for Scienceのような研究は、この5年ぐらいで特に活発になっていますが、そういった分野の人も機械学習の国際会議とかにどんどん参加するようになっていて、そういう人たちは理研のことをすごくよく知っています。むしろ私よりもよく知っているぐらいの感じでして。なので、やはり基礎科学分野で理研というのは世界的に知名度がある研究所なのだなということは感じることができまして、我々としても、情報分野でちゃんと理研AIPセンターを国際的に知ってもらえるようにしようということで、これまで努力してきまして、一応機械学習の分野ではそこそこぐらいまではいけるようになったなと思っています。
今後、第5期中長期計画において、AI for Scienceを理研で進めていこうということになりますと、やはり強いサイエンスのブランドがAIの研究者にとっては非常に重要だと思います。AI for Scienceでやるときに、結局、少し言い方は悪いですが、AI研究者から見ると、誰と研究するかがほぼ全てなんです。適切でない研究者らと一緒に組んでしまうと、無駄な時間ばかり使って、大した論文が書けないとか、大した成果を出せないことになってしまいますが、トップレベルのサイエンス研究者が来て一緒に研究してくれると、本当にこちらのアイデアがしっかりそこに実装されて、すばらしい成果につながるというのも、私も個人的に何度かそういう経験をしているんですが、基本的には相手次第という感じです。
その相手の選び方に関しては、やはりAI研究者だけではできないところがありまして、そこは理研のブランドを使えると、自然と国際的に優秀な人たちが声をかけてくれるという雰囲気が今何となく醸成されつつある状況でして、正直これをここでやめてしまうのはもったいないと感じるところではありますので、そういった意味で、サイエンスのためのAIを進めるという意味では、理研の中に次のAIのプロジェクトを置くというのは非常に意義のあることだと考えています。
基礎研究に関しては、どこでもできると言えば、どこでもできるかもしれませんが、先ほど私の説明でもありましたが、いろんな大学をつないでハブにするというのは、理研でやりやすいところだと思いますし、大学は、いい学生を採るのにもちろんいい組織ですし、理研は、研究員を採ったり、海外のインターン生を採ったりというのが非常にやりやすいです。なので、この両方を組み合わせることによって、あらゆるレイヤーの優秀な人を取りこぼしなくしっかり日本に集めてくるということができるかなという気はしますので、そういった意味で、理研に配置するというのは、一つの有望な案なのではないかなと感じています。
それが1つ目の質問に対するお答えでして、2つ目が、テーマの選び方です。基本的には、かなり主観的に進めているというのが正直なところではあります。
実際、この分野は何が起こるか全然分からないというのが本音でして、今、我々は次はどんな研究をすべきかというのをいつも議論していますが、普通に議論に上がるテーマというのは、大体自分たちが思うことは、世界の誰かもやはり同じようなことを考えていて、既に見えないところで研究が動いていて、半年ぐらいすると、大手のIT企業とかからすごいものが出たりとったことが普通に起こっています。なので、今ここで、こういう方向が重要などといったことは、ほとんどもう遅いといいますか、言っている段階でやっていないと駄目という感じです。
ですので、そういった意味では、もう少しボトムアップ的にしっかり人材を固めて、新しいテーマを掘っていくことが必要で、その新しいテーマを掘る部分というのは、やはりギャンブルなんです。なので、優秀な人をばらまいて、もちろんちゃんと全体でコントロールする必要はありますが、10人いたら10人に当たってもらおうとは全く思っていないところが正直なところで、10人雇って1人当たればいいぐらいのつもりでやっている感覚ではあります。
結果的に全体でどれぐらい当たっているかというのは、割合はよく分からないところはありますが、何人か、この8年間でものすごく芽が出た人がいて、そういった人のところに海外からどんどんいい人が集まってきているというのが現状ですので、そこのやり方でないともう生き残っていけないのではないかというのが正直なところです。
【若目田委員】 それは、Domain Intelligenceにおいても、同じ感覚なのでしょうか。
【杉山先生】 Domainの部分は、パートナーがやはり重要ですので、いいパートナーがいるテーマを選んでいるということです。Domain Intelligenceそのものは、あくまでもAIの研究をやっているという感覚であります。それが、Mathematicalの方にも最終的にはフィードバックが返ってくることになっていますので、そこからまた新しい基礎研究のテーマが出てくるというイメージで考えています。
【若目田委員】 ありがとうございます。
【杉山先生】 3つ目は、御意見をいただいたということでよろしいでしょうか。
【若目田委員】 はい。
【杉山先生】 ありがとうございました。
【相澤主査】 ありがとうございました。
では、湊先生に御質問いただいた後に資料2-2の説明に行きまして、また引き続き皆様からは御質問、御意見を賜ることにいたしたいと思います。
では、湊先生、よろしくお願いいたします。
【湊委員】 杉山先生のすごいリーダーシップで、学問の方でも、マネージメントの方でもすごく活躍されて、この長い間ずっと続けてこられて、本当にすばらしいと思います。
当初AIPを設立するときに、当時、科研費でも、JSTのプロジェクトも大体5年でしたが、10年のプロジェクトということが、今思うととても画期的だったと思いますし、それで人材が採りやすかったということもあるのではないかと思います。
この次の期間というのは、AIP側で希望どおりになるかどうかは分からないですけれども、希望としては、どういう期間を延長したいとお考えなのでしょうか。例えば、5年なり10年なりで刻んでいくのか、それとも、永続的なものを希望していて、それを理研の中長期計画の中で計画していきたいのか、希望としては、どういうことを考えていらっしゃいますか。
【杉山先生】 ありがとうございます。
今回は10年間いただいて、これはやはり本当に大きかったと思います。実際にこの二、三年ぐらいは大した成果は出ていなかったというのが正直なところではありますが、それはある意味、いろいろ開拓していたからということです。その期間をある意味少し余分に使えたので、その後の、今は5年ほどたっていますが、大分成果が出るようになりましたので、やはり8年、10年いただけるというのは非常に大きかったと感じています。
今後に関しましては、もちろん次に、例えばもう10年やらせてもらえるとなるといいことではあるんですが、プロジェクトとしてやっている限りは、必ず終わりがあって、継ぎ目が出ますので、そこで人材の流出が必ず起こってしまって、そのときのリーダーの人がいつも悩むことになると思います。
そういった意味では、大学の先生等と同じような形で、永続的な組織になって、人材はどんどん互い違いで入って出てというのが繰り返されればいいと思いますが、明示的な終わりというのがないことが、やはり研究者にとってはいいのではないかという気はします。
今、AIPでもいい人がたくさん応募してくださっていますが、9年目なので、採りにくさがあります。あと1年半で来ますかと声をかけないといけないので。それは非常にもったいないと思います。普通に、3年、5年ありますよと言ったら、絶対に来てくれるはずなのに、1年半だから来てくれないということがあります。それはプロジェクト研究が続いている限りは必ずそうなりますので、どういった形がいいのか、私も明確には分からないところはありますが、明確な終わりがないような形でセンターが運営されるというのが理想的ではないかという気がします。
【湊委員】 あと、少し関連することなのですが、例えば、もし5年なり10年、あるいは永続的になった場合に、杉山先生自体はずっと続けられたいのでしょうか。それとも、例えば、サバティカル的な充電期間みたいなものを置くほうがいいのか、杉山先生の代わりになる人がいるのかというと、いないのではないかという気もしますが、永続的となると、トップもやはり属人的というわけにもいかないかもしれませんが、そのことについては、杉山先生御自身はどう考えていらっしゃいますか。
【杉山先生】 ありがとうございます。
そこをまさに理研の中でも議論しているところではあるんですが、普通に考えると、やはり同じ人が長くリーダーをし続けるべきではないとは思います。ただ、今のAIPセンターは割と若い人が中心ですので、なかなかリーダーをやるには少しかわいそうという世代の人もまだ多いのも事実ですので、そこをどうすべきかというのは、まだ理研の中でも明確な答えは出ていない状況かと思います。
私自身は、自分が研究できる環境にいれるのであれば、喜んで何でもやりますという感じではありますが、必ずしも自分で牛耳りたいわけではないですので、新しい人に出てきていただいて、その人が新しいカラーで引っ張っていくというが何人か出てくれば、うまくバトンタッチできるといいなと思っています。
【湊委員】 ありがとうございました。
【相澤主査】 ありがとうございました。
では、ここで一旦御質問、御意見を中断いたしまして、資料2に基づきまして、事務局より御説明をお願いいたします。
【廣瀬参事官補佐】 事務局より資料2-2につきまして、御説明させていただきたいと思います。
資料2-2ですが、先ほどの杉山センター長の御説明と、1月に御議論いただきました論点案を踏まえまして、事務局において、AIPセンターの今後の在り方について取りまとめの案を作成しました。こちらについて、簡単に御説明をさせていただいた上で、先生方の方に御議論いただきたいと思っております。
まず初めに、1ポツから、AI研究開発全体をめぐる状況について、簡単にまとめてございます。
AIの発展による本格的な社会変革が始まっているというところから開始させていただきまして、例えば、情報科学の専門知識がない一般の国民であっても、業務として、また個人として、AIを日常的に使用する社会というものに移行しているという現状について、まず記載させていただいてございます。
しかしながら、こういったAIの研究開発につきましては、政府によって、我が国でもかなり推進しているところではございますが、AI開発の競争の中心は米国の民間企業であって、我が国はAI開発状況が周回遅れというところの指摘もさせていただいているところでございます。
また、AI技術の活用範囲が大幅に広がる一方で、社会的には、AIを開発及び利用する際の安全性やセキュリティ面でのルールづくりというものが日々議論されている状況でございまして、例えば、こちらの段落の後半にありますけれども、昨年、G7の議長国として我が国も議論を主導いたしましたが、「全てのAI関係者向けの広島プロセス国際指針」というものが取りまとめられ、今年の2月にはIPAにAIセーフティ・インスティテュートというものが我が国にも設置されているという状況でございます。
また、従来、AIモデルにつきましては、精度のよい出力を得るためには、質・量ともに相応のデータが必要であることや、回答に至るまでの過程がブラックボックスであるというような課題が挙げられているところ、AI技術のこの急速な進展によって、安全性、セキュリティという課題が生み出されているという状況になってございます。
こういったものを今後対処すべき課題として、1から5番を挙げさせていただいてございます。これらにつきましては、政策的なアプローチのみならず、その研究開発による対応が必要とまとめてございます。
まず初めに、1つ目が、モデルの大規模化への対応でございます。計算機の省エネ向上のほかに、計算量を抑制するような研究開発が必要ではないのかというふうに記載してございます。
2つ目が、AIモデルの柔軟な追加学習の必要性と事例で書かせていただいておりますが、最新の状況変化に応じた学習の実現のこと、また、3つ目として、人間のような効率的な整理、より正確な判断を可能とするような機能の実現が必要ではないのかといったことを記載してございます。
また、AI技術の適用範囲の拡大や、最後のところに書かせていただいておりますが、AIの安全性、セキュリティへの対応が必要ではないかというところを事例として挙げさせていただいてございます。
今後としましては、大規模言語モデルというものが今、世間を席巻してございますが、こういったもののみならず、画像や動画を含むような多様な形態のデータも取り込んだ基盤モデルを中心として、AIの活用範囲が拡大されるとされている中で、我が国がAI研究を牽引するためには、こういったAI技術に加えまして、様々な分野への応用に精通した人材の輩出も急務であるということを、AI研究開発全体の中で、まず指摘をさせていただきたいと考えてございます。
2ポツ目が、理化学研究所の革新知能統合研究センター(AIPセンター)について、取りまとめをさせていただいてございます。AIPセンターは、先ほども杉山センター長からの御説明にありましたが、国際的に優れた研究者を糾合して、我が国のAI研究開発力を牽引するための拠点としまして、2016年に開始したセンターでございます。10年間の事業として開始されておりまして、8年度目の本年度までに、汎用基盤技術、目的思考基盤技術、社会におけるAIの観点を中心に、研究開発に取り組んできていただいてございます。
また、このAIPセンターですけれども、国のAI戦略におきまして、AI関連中核センターとして、国内の研究ネットワークの整備・推進の役割を担うとともに、AIに関する理論研究を中心とした革新的な基盤技術の研究開発で世界トップを担うセンターとして位置付けられているところでございます。
具体的な成果としましては、センター長からのプレゼンにもありましたが、これまでに、弱教師付の学習の理論や、「富岳」を用いた地震シミュレーションなど、国際的にもトップレベルの研究成果を多数創出してございまして、AIPセンターで研究に従事した研究者が、国内外の大学や民間企業で活躍するなど、AI分野の研究者の輩出にも大きく貢献をしているところでございます。
ただ、AIPセンターの開所当時の状況と比べまして、AIそのものの技術進展があり、また、様々な科学分野におけるAI技術の適用、民間企業におけるサービス化など、AIの取り巻く環境が大きく変わっているという現状がございます。
一方で、AIをめぐる昨今の状況を鑑みますと、AI技術の研究開発が依然として重要であるということは明白でありまして、日本としても、卓越したAI研究の牽引、人材育成、国際競争力の強化というものを様々方策が必要という状況には変わりはないというとこところでございます。
世界のAI研究の動向が大きく変わりゆく中で、国内の中核的なAI研究組織として、研究・組織の在り方について、柔軟かつ不断な見直しが必要とされる一方で、先ほどの議論にもありましたとおり、プログラムの終期が現在迫っているところで、新たなプロジェクトへの着手等が難しいというのが現状でございます。そのため、AIPセンターにおけるAI研究を遅滞なく推進していくためにも、AIPセンターの具体的な研究開発の内容及び実施体制を検討し、今後の在り方を早急に示す必要があるのではないのかということを、2パラ目を記載させていただいているところでございます。
3ポツ目が、AIPセンターの在り方の検討における留意点についてまとめたところになります。こちらは、1月の情報委員会で御議論いただいた留意点を記載させていただいているところでございます。
3つの観点で再度整理をさせていただいております。まず初めに研究内容、2つ目に組織体制、3つ目に人材育成という形で取りまとめてございます。詳細につきましては、1月の情報委員会並びにそのときの議論に基づきまして記載しておりますので省略させていただきたいと思ってございますが、こういったものを踏まえて検討すべきだというところで取りまとめてございます。
4ポツ目が、そういった留意点を踏まえまして、今後の在り方について、取りまとめ案として書かせていただいたところでございます。
まず初めに、AIPセンターにつきまして、AIをめぐる昨今の状況を鑑みた、AI技術の研究開発というものが依然として重要であることが明白であるという中で、日本のAI研究を更に進展させるため、このAIPセンターを国内外の卓越1産学の研究者を糾合するハブとして、また、国際的に優れた研究者を輩出し、我が国の研究開発力を牽引するための拠点として、今のプログラム終期は令和7年度となってございますが、令和8年度以降も引き続き設置すべきではないのかといったところを記載させていただいてございます。
また、AIPセンターにおきまして今後重点的に実施するテーマにつきましては、AI開発をめぐる状況や課題、これまでの取組等を踏まえまして、下記を考慮した内容とすべきであるというふうにまとめてございます。
1つ目は、今も汎用グループで積極的に研究開発を進めていただいているところではございますが、次世代基盤技術を開発するための基礎研究の推進でございます。
2つ目は、先ほどの杉山センター長のプレゼンにおけるPhysical Intelligenceを念頭にした柱になりますが、実世界において汎用的に利用可能な人工知能の開発を挙げさせていただいてございます。
3つ目は、Domain Intelligenceの部分に対応しますが、AI技術による社会課題の解決や科学研究の強化・深化といった点、4つ目が、AIの普及に伴う倫理的・社会的課題への対応、5つ目は、AI人材の育成となってございまして、これまでの5つの柱を更に強化するような形で、5つの重点課題を設定してはどうかということを記載させていただいてございます。
その上で、AIPセンターの在り方の細かなところになりますけれども、AIPセンターにおける研究内容や、組織体制、人材の育成方針については、以下のとおりにすべきではないかと記載をさせていただいてございます。
まず1つ目に、研究内容についてです。研究内容につきましては、3つの柱で内容をまとめさせていただいてございます。
1つ目は、機械学習の数理的研究の深化でございます。機械学習の数理的解明を通じまして、汎用的に活用可能な次世代数理知能の技術の獲得を目指すと記載してございます。
こちらは、今も杉山センター長の方で精力的に取り組んでいただいているところではありますが、例えばのところでは、信頼性の低いデータから頑健性のある学習等によるAIの安全性につながる技術や、変化する環境下において逐次学習をするような記述、また、推論だけではなく因果関係に基づいた出力を得るための技術の研究といったものを今後行っていく必要がないかということを記載させていただいてございます。
2つ目が、実環境において汎用的に利用可能な人工知能の開発でございます。現在の大規模言語モデルというものは学習に長い時間を要するといったところがありまして、時々刻々と環境が変わるような実世界への対応が困難というような問題がございます。そういったものを解決するため、AIモデルの柔軟な追加学習や、分散学習・統合などにより、最新の状況の変化や、多種多様な知識に根差した高度将来予測も行える、そういった知能システムの構築を研究開発し、実環境において汎用的に使えるような人工知能技術の実現を目指すということを2つ目の柱としてはどうかということで記載してございます。
3つ目は、科学分野において先端的な人工知能の活用を通じた社会課題の解決、科学研究の加速でございます。
こちら、今も目的グループの方で意欲的に取り組んでいただいておりますが、こういったものを、特に最先端のAI技術の活用というところに焦点を当てまして、医療・医学や防災・減災といった分野における社会課題の解決や、物理や生命科学といったところの分野での科学研究の加速に貢献するような研究開発とするのはいかがかということで記載させていただいているところでございます。
また、こういった研究開発で得られたAI技術に関する技術課題を、必要に応じまして、ほかの研究の柱にフィードバックを行って、AI学習技術の深化にも貢献するということを記載させていただいてございます。
また、こういった1から3の研究の推進に当たりましては、AI技術の普及等に伴って生じるAIの安全性や、倫理などの社会的な課題についても取り組んで、安心してAIを利活用できる、そういった知識基盤の獲得も目指すべきということを記載させていただいてございます。
続いて、研究体制についてでございます。
AIPセンターにつきましては、現在も日本のAI研究のハブとして、企業・大学等との連携を強化していただいているところでございますが、日本のAI研究開発を更に牽引するためにも、こういった研究開発をしっかりと引き続き取る必要があります。また、これまでの成果を踏まえまして、AIPセンターが築き上げた国のAI研究のハブとしての機能、また、世界からのビジビリティを維持するといった役割を担っていく必要があるということを考えておりまして、令和8年度以降につきましても、理研が担うことが妥当ではないかということを記載させていただいてございます。
また、理研AIPセンターは、これまでもNICTや産総研をはじめとして、AI研究開発に取り組む国内の研究機関・企業との連携に取り組んできていただいておりますが、国内のみならず海外との連携というものも引き続き積極的に進め、提携先の組織との研究・人材交流を強化すべきではないかということを引き続き記載してございます。
また、先ほども議論にありましたけれども、理研に設置されているということによる理研全体の研究開発への波及効果というものを創出するために、理研内のAI研究というものを俯瞰し、理研各センターとの協力をすることによって、AI関連研究を総合的に推進する役割の機能を構築すべきではないのかということを記載してございます。
また、研究活動を行うに当たりましては、AIPセンターとしての研究目標を明確にしつつ、センターに所属する研究者の発想に基づきまして、最先端かつトップレベルの研究ができるような研究体制にすべきではないかということ、また、長期的視野に基づく基礎研究を継続的に実施する場をAIPセンターから提供しつつも、AIの技術進展が非常に速いことを踏まえまして、新しい技術潮流が生まれた際に機動的に対応できるような体制整備についての必要性を指摘させていただいてございます。
最後が、人材育成についてです。
情報科学技術分野における先端的な研究人材の質・量の両面で充実させるための取組を引き続き実施すべきであるということをまず記載させていただいてございます。特に、若手研究者の積極的な登用とセンターの研究への参画機会の提供を、引き続き実施するということを期待しているということにしてございます。
また、大学等に設置しましたサブ拠点の活動を通じて、各大学のAI研究力の向上への貢献や、国内外の優秀な博士課程の学生をインターン生として受け入れるなどの従前の取組というものをしっかりと行っていただくとともに、博士課程への進学につながるようなアウトリーチ活動や、学部・修士課程からの研究活動への参画を可能とするような取組という新たな取組を実施し、人材育成の活動というものを強化すべきではないかということを記載してございます。
また、大学等との連携のみならず、人材育成面におきましても、民間企業との連携を行って、企業の研究者の受入れ等を行うことによって、民間企業におけるAI人材育成の貢献も期待するということを記載させていただいてございます。
最後に、5ポツ目のところでございます。今後の検討の進め方について記載をさせていただいてございます。
まず初めに、今後のAIPセンターの在り方の検討に当たりましては、理研に今回も設置するということを鑑み、また、理研が令和7年度から新たな中長期目標期間に入るということも踏まえまして、体制の見直し時期や事業実施期間については、そういったものも鑑みまして、柔軟に検討すべきではないかということを記載させていただいてございます。
ただ、こういった期間については、AIの技術進展が早いことも踏まえまして、適時適切にAIPセンターの役割については柔軟に見直し、国内外のAI研究のハブとして、国のAI研究開発を常に牽引できるような体制を整備する必要があることに注意すべきということを記載させていただいてございます。
また、AI分野の研究人材が深刻に不足している中で、卓越した研究者をAIPセンターに糾合し国内のAI研究を先導していくために、給与面や雇用形態といったところ、制度面からも研究者にとって魅力的な研究環境を提供する必要があると御指摘をいただいているところでございまして、こういったところについても、関係者の取組を期待するというところで記載をさせていただいているところでございます。
事務局からの説明は以上となります。
【相澤主査】 ありがとうございました。
それでは、ただいまの御説明を踏まえまして、御質問、御意見等がございましたら、挙手にてお知らせください。
佐古先生、よろしくお願いします。
【佐古委員】 御説明ありがとうございました。このとりまとめ案と先ほどの杉山先生の御発表を照らし合わせて、2点コメントさせてください。
この4章で書かれている5つの項目というのがとても重要だと思っておりまして、この最初の1、2、3というのは、先ほど杉山先生もおっしゃった3つのIntelligenceの研究かと思っていますし、それらを推進することで、AIの人材育成という5番目が実現できると思います。やはりお話を伺っていて、4に対する取組が少し心もとないかなと思っております。
これは、先ほど杉山先生が、採ろうと思っても、なかなかそういう人がいないというお話があったかと思いますけれども、やはりAIを推進する人たちがAIPに入りたいと思っていて、どちらかというと、ブレーキというか、AIによるリスクを感じている人というのは、AIPの中に入ることは難しいかと思っております。
しかし、やはり技術には光と影の面が両方あると思いますし、社会受容性を高めるためには、しっかりとリスクのところも対応しているということの研究が重要だと思いますので、そこの体制を、例えば、外部にそういうリスクを議論する場を設けるとか、他の何かを設けられるといいのではないかと思いました。現状では、リスクも考えているという程度の表現になっているかと思いました。
2点目ですけれども、翻ってみると、今度は1章の方に繰り上げていただきますと、こちらにも5個あり、最後のAIの安全性・セキュリティというものが丸5としてあるかと思いますけれども、これが脆弱性に対するサイバー攻撃等となっているのは、AIに対するリスクであって、AIによるリスクではないと思います。AIによるリスクもおそらく技術的にカバーできる面があると思いますので、それが分かるような表現にしていただければと思います。
前段の部分には、AIによるリスクについて記述されているように思いましたが、急に丸5になって矮小化してしまったような印象を受けました。
私からは以上です。
【相澤主査】 貴重な御意見ありがとうございます。
【杉山先生】 1つ目の御意見に対しまして、丸4のAIの普及に伴う倫理的・社会的課題への対応の部分が少し縮小したように見えてしまうというのはあるのかもしれません。例えば、2月にAIセーフティ・インスティテュートが立ち上がっていますし、そういった意味で、議論する場というのは国レベルで既に動き始めているのではないかという気がしていますし、そこに我々としても技術サイドから貢献しようということで、今、理研の中で議論しているところです。
規制する法制度をつくったりだとか、制度をつくるところに技術者が関わるというのは、なかなか難しいところではあります。ブレーキとアクセルを同時に踏むようなことになってしまいますので。しかし、一方で、それを技術的にうまく、トレードオフにしないように研究するということは可能だと思いますので、我々としては、そこに貢献できれば、技術サイドとしてはいいのではないかと思っています。
【嶋崎参事官】 事務局でございます。2点目については私から回答させていただきます。
2点目の御指摘は記載ぶりの問題で、御指摘のとおりと思いますので、適正化を図りたいと思います。
【杉山先生】 私も、そのように思います。
【相澤主査】 佐古先生、よろしいでしょうか。
【佐古委員】 リスクについて、やはり中身を理解している研究者が絡まないと、実はどういうリスクがあるのかというのが分からないので、そこに研究者がいるということは、私は重要だと思っております。
以上です。
【杉山先生】 おっしゃるとおりだと思います。
【相澤主査】 ありがとうございました。重要な点であると思います。
ほかは、いかがでしょうか。
石田先生、よろしくお願いします。
【石田委員】 1つ目は、表現の問題かと思いますが、1ポツ目のところで、2段落目の最後の「しかし、AI開発競争の中心は」というところで、「周回遅れという批判も多い」と書いてありますが、こう書いてしまうと、現在のAIPのセンターが何もやっていないように見えるのではないでしょうか。確かに生成AIなどが目指すサービスは海外のものかと思いますが、今までのAIPのセンターの成果が含まれない形になってしまうのではないかということを少し感じました。これはコメントですので、御検討いただければと思います。
それから、もう一つは、これは杉山先生への御質問で、次の段階で御検討なさるのかもしれませんけれども、もし継続した場合に、今後人材の確保が大変というお話もございましたけれども、拡大する方向で希望されるのか、それとも、その規模感や、人等といったものは現状維持のまま存続するという形をお考えになっているのか、その辺の将来的な規模感を、もしお考えがありましたら教えていただきたいと思います。
【杉山先生】 ありがとうございます。
これは何と答えていいかよく分からないところもありますが、お金があればという話になるのかもしれません。
理論研究に関しては、いい人がいれば常に採れる形にしておきたいというのはありますので、もう少し余裕があるとうれしいと感じるところではありますが、これ以上桁違いに大きくなることは、おそらく、理論研究ではあり得ないのではないかという気がします。
Domainの部分に関しては、ある程度選んだ分野でやっていくことになりますので、こちらももう少し余裕があると、新しいテーマに取り組んだりできますので、ありがたいところではありますが、AIに根づいた研究をすることになりますので、そんなに爆発的に大きくできるところではないという気はしています。
一方、3番目のPhysical Intelligenceの部分に関しましては、実世界と対応する部分がやはり大きなマーケットのあるところで、ここはおそらく、規模をもっと大きくしていけば、相乗効果で成果も上がる分野ではないかという気がしますので、私が勝手にコメントしていいのかはわかりませんが、もし余裕があるならば、このPhysicalの部分を中心に予算を増やしていければ、センター全体としては強くなるのではないかと、主観的には思っています。
【石田委員】 ありがとうございました。
【相澤主査】 ありがとうございました。
では、長谷山先生、よろしくお願いします。
【長谷山委員】 「お金があれば」という言葉が杉山先生のご発言に出ておりましたが、私も同じように感じています。資料2-2の4.に示されるマル1からマル5に取り組み、ハブになって国を牽引するということになれば、どれだけの人数で、どれほど多様なチームをつくらなければならないのかと考えます。その上、日本人がなかなか採用できない現状で、杉山先生のお話ではDomain領域についても分野を選んで実施するとのことですので、経済安全保障の問題も考えなければなりません。
やはり残念ではありますが、何に注力し牽引するのか、もしくは、自分たちだけではなく、ネットワークハブを担われるとして、今までの成果を踏まえ、新興領域で頭角を現すグループをノードとする、日本流のネットワーク構成を考えるなどの工夫が必要と感じます。無尽蔵にこの分野にお金が入って来るのであれば、この領域の研究者の一人として大変にうれしいことですが、それは難しいと思います。このような現状で、拝見したものが絵に描いた餅にならないだろうかと危惧いたします。
最後に、全国的に、AIの研究者やAIを応用したり利用する研究室が増えたことは、世界動向はもちろんですが、国内で世界に通じるAI研究を行っているAIPが、大変に大きな役割を果たしているからだと思います。次のフェーズでは、その良さを生かした、日本流の世界に勝てる筋道を考えた体制構築と、目標設定がなされるのが良いのではないかと考えます。
以上です。
【杉山先生】 ありがとうございます。
ここは大変私としても悩ましいところではありますが、今、我々は、国際的な場でAI研究をしていて、それこそGoogleとか、OpenAIとか、そういう組織の人たちと同じ土俵で闘っているわけなんですが、予算的には1000倍ほどの規模です。相手は1000倍規模で、しかし論文は、10倍ぐらいしか出ていないので、そういった意味では、我々は100倍のエフィシエンシーがあるのかもしれません。
これ以上お金を減らすと、もう人は来ないと思います。なので、もう日本としてのAI研究はやめましょうと、我々もみんな海外に出てしまいましょうというのも、一つの選択かもしれません。もう日本の国家規模では不可能です。AI研究には、日本では1000倍もお金出せません。ですので、AIPで育った人はみんな海外で活躍してください、将来日本に戻ってきてくださいということでもいいのかもしれませんし、これは、選択です。
おっしゃるとおり、あらゆる分野にお金を出すことというのは不可能ですが、AIの分野には信じられないような額のお金が世界的には投資されているわけで、日本はそこにお金を出せるのかどうかです。
出せなくても、みんなほとんどダメージなく、問題なく出ていきますので、そこはある意味心配はありません。ですので、それを政府できちんと判断していただくというのが必要なのではないでしょうか。少しお金を出して、Googleに勝ってくださいという、そんな世界ではないですので、本当に我々にAIをやらせたいのであれば、しっかりとサポートしていただきたいです。そうでないと、我々もおそらくいなくなってしまいますので、ぜひよろしくお願いしますというところです。
いい研究者に集まってもらっていますので、それにちゃんと見合った待遇を出してあげることによって、国としても強化できると思いますし、一定の競争力は保てるとは思いますので、その程度のレベルの投資はやはりぜひお願いしたいと思うところです。
【長谷山委員】 続けて、少しだけよろしいですか。
数値エビデンスはお持ちでしょうか。先生がおっしゃったようなNeurIPSや、AAAIなどのTopカンファレンスに、AIPで採録されている方がどれぐらいいるのかはお分かりだと思いますけれども、AIPほどのお金を普通の研究室ではもらっていませんが、多くの学生を抱え、基礎研究も応用研究も行いながら、AI・データサイエンスに関するトップ30以内の国際会議、ジャーナルにどれくらいの本数を書いている研究室が全国でどれだけあるのかということは、Web of Scienceでも、Dimensionsでも、データを見れば分かるかと思います。
そう考えると、AIPがハブになるとおっしゃいましたが、先に述べたようなグループを網羅的に巻き込んで、もう少しネットワークを広げれば、より大きな牽引力をAIPが持つことができるのではないかと感じます。いつも杉山先生のお話の中で出てくる方のお名前が同じなのは、組織の中に閉じているように感じます。AIを応用するDomain型の研究に関するトップ30の国際会議では、世界で一番発表件数が多い研究室が日本のものであったりします。
少しデータをエビデンスとして分析し、AIPがそれらのハブになれば、日本で固有のAIの発展方法が見えるのではないかと思います。AIPは、日本にとって唯一無二の大切な組織ですので、杉山先生がお声をかければ、ネットワークに必ずや入ってくれると思います。新しいグループを巻き込みながら、前進するというセカンドフェーズはお考えの中にないのでしょうか。
【杉山先生】 私の知る範囲では、研究室レベルで見ますと、過去10年で新しい研究室はほとんど出てきていません。
【長谷山委員】 そうですか。
【杉山先生】 そういった研究室に、時々すごい優秀な学生が出てきます。そういった人たちが活躍して論文を書いているというケースがありますが、一つの研究室で、同じテーマで毎年毎年論文を通しているようなところは、ほぼありません。
【嶋崎参事官】 文部科学省でございます。
この点は、どちらかというと、AIPセンターや杉山センター長というよりも、文科省の責任ではないかと思います。この8年、AIの研究がどんどん盛んになる中で、国内でこれだけの成果を創出しているとおり、AIPセンターに注力して頑張ってきてもらったわけですけれども、長谷山委員がおっしゃったように、そのほかの観点でも光るところはあったりするのだと思います。文科省として網羅的にしっかりとそれを把握して、能動的に、アクティブにネットワークをつくって、日本を牽引していきましょうということをやれてきたかと言えば、必ずしもそうではなくて、いろいろこういう人がいますとした上で、研究開発法人中心によろしくお願いしますということを言い続けてきたということが、基本的なスタンスではなかったかと思います。
まさに御指摘のとおり、AIPセンターの今後を考えていく中でも、ハブというからには、そのハブの先に大学があり、企業があるわけです。その中でも、なかなか目立たない、知る人ぞ知るというものもあるかもしれませんし、いろんな光るものがあるはずですので、そこをしっかりつなげていくというのは政策の役割だと感じます。よって、AIPセンターにまさにハブ・アンド・スポークの中核になっていただきたいという御指摘は、とても貴重な御意見として受け止めながら、どうそれをつくるかというところは、AIPセンター任せにするのではなくて、政府全体としてもしっかりと目配せをして、連携していくことをしっかりとやっていきたいと思い、心に刻んでしっかり頑張りたいと思います。このペーパーにどう書くかということだけでなく、どう具体的に実践、実行していくかというのは、またいろいろな方々と意見交換をしながら検討させていただければと思います。
現状、杉山先生だけにお答えいただくのは心苦しいと思い、まず一言申し述べさせていただきました。
以上です。
【杉山先生】 ありがとうございます。
日本全体の沈下は想像以上に激しいです。ちょうど五神先生とも、その話をしたところでしたが、世界から日本がほぼいなくなっていると言われました。ここで踏みとどまらないと日本が地図から消えてしまうとおっしゃっていました。
機械学習の分野でも、半分そのような状況です。先ほど30本論文が通りましたというような話をしましたが、それでも1%です。1万1,000本投稿があって、3,000本通っていますので、1%しかない状況ですので、やはり割合では多分勝てないですよね。
なので、せめて1%は維持しないといけないと思いますが、その中で、尖った人を何人出せるかというのが、これからの日本の生き方ではないかという気がしますので、金額の大小の話ではないかもしれませんが、やはり尖った人が1人でも2人でも出せるような研究センターを続けていくということは不可欠ではないかと思っています。
【相澤主査】 ありがとうございました。
変化の激しいAIの中で、機動的な側面が求められる一方で、ハブの運用はどうあるべきかという議論は恐らくあって、今現在のAIPのスタイルですと、サブ拠点という形で、大学の拠点を固定的に設けるような形になっているとすると、そこである種の機動性が将来的には阻害されることもあるかもしれないというニュアンスをどこかで議論の端にとどめるのもありかなというふうに思いました。
【杉山先生】 そういった意味で、システマティックにやっているわけではないということは確かにそうです。いい人がいれば、その先生のところにチームを配置して、そこに学生を集めるということをやっている感じなんですよね。
【相澤主査】 なるほど。分かりました。
なので、ハブとしての動き方をいかに機動的にすべきかというのは、次期に向けて、これまでの重要な経験を踏まえて議論すべきということですね。
【杉山先生】 一方で、あまりシステマティックにやり過ぎないほうがいいかもしれません。各大学に置かなければならないなどというようにはしないほうがいいかなという気はいたします。
【相澤主査】 一度置いたら10年間置くというようなところがあるのでしょうか。
【杉山先生】 今まではそうでもありません。チームは合併していますので、できたり、引いたりはしています。
【相澤主査】 分かりました。その辺りをもう少し御説明いただくとよかったかもしれないですね。
【嶋崎参事官】 承知しました。現状できている、また、これからすべきだということも含めて、ハブ拠点についても機動的な対応を運営していくことが望ましい、ということが分かるように工夫した記載をしたいと思います。
【相澤主査】 ありがとうございます。次は、湊先生どうぞ。
【湊委員】 先ほど、日本人の博士が全然採れないというお話がありましたが、これは、私も、なかなか進学してくれないというのが問題だと思います。修士で高い給料、オファーを受けて、出ていってしまいますが、その人たちをどうやってAIPに環流させるかというところをもう少し頑張らないといけないかと思っています。
ですので、その企業に行ってしまった人たちで、AIを研究開発している人たちのハブになってというのも重要かと思います。
【杉山先生】 そうですね。就職して研究に近いことをやっている人がまずほとんどいないというのが現実かとは思いますし、いたとしても、守秘義務を持ってやっていますので、やはり会社には手は出せません。
【湊委員】 今年、2月に私の学科の専攻で博士に進学した学生のうち、今年入社と同時に社会人ドクターで進学という人が2人出ているのですが、そういったプログラムのようなものを何かつくって、いろんな会社に提案していくといったことももしかしたらいいのではないかと思います。
【杉山先生】 実は、2月の頭に社会人博士説明会というものを理研でやりました。いろんな大学の機械学習の先生と社会人の方に集まっていただいて、研究しようというものです。
今まで社会人博士は、どちらかというと個人のつながりでしか来ていなかったような感じがしますが、それをもう少しいろんな研究室で見てもらおうということで、いろんな大学から10人ほど教員が集まって、結果的に、来てくれた人は15名ほどでしたが、大きな会社から、スタートアップ企業、社長さんもいたりするような交流会をしました。それがどうつながるかはまだ分からないところですが、学会とも協力しながら、それは続けていこうかなと思っています。
【湊委員】 今はもうだんだんと終身雇用ではなくなっていて、大体30代とか40代前で転職する人がすごく多いので、そのときに学位があるかどうかというのはすごく重要なんですけれども、それを、修士の学生は、まだそこまで切実に思っていないので、その辺りをもう少しやっていかないといけないと思っています。
【杉山先生】 日本だと、大学の先生にならない限りは、学位がなくても苦労しないということがあるのが問題なのかもしれません。
【湊委員】 例えば、海外に行くときに、学位を持っていると、すぐビザが出るということもありますので。
【杉山先生】 海外に行く人があまりいないのが現状かもしれませんが。
【相澤主査】 どうもありがとうございました。
それでは、ちょうど時間となりましたので、以上をもちまして、質疑応答、御質問、御意見等をいただく時間を終了いたします。
ただいま皆様から御意見いただいた点につきましては、資料に反映するということにさせていただければと思います。資料の反映については、御賛同いただけましたら、主査預かりという形で、本委員会としての決定としたいと思います。よろしいでしょうか。
(「異議なし」の声あり)
【相澤主査】 では、御質疑、御議論、御意見いただきまして、どうもありがとうございました。本日はここまでとさせていただきます。もし追加の御意見等ございましたら、事務局までメールで御連絡いただければと思います。
では、事務局から事務連絡等ありましたら、よろしくお願いいたします。
【植田参事官補佐】 事務局でございます。
本日も長時間にわたり御議論いただき、誠にありがとうございました。
次回会合の開催時期については、現時点で未定となっております。別途メール等で日程調整の御連絡をさせていただきますので、御対応のほど、よろしくお願いします。
先ほど相澤主査からございましたように、本日の議題について追加で御意見いただけるようでしたら、来週、3月4日月曜日の18時までにお送りいただければと思います。
以上でございます。
【相澤主査】 それでは、これで閉会とさせていただきます。本日は、どうもありがとうございました。次回もよろしくお願いいたします。

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