2024/07/05

エンドユーザーに向けた AI 活用も加速。日本における AI サービス導入企業の最新動向: GenAI Customer Day (第 2 回)

日本マイクロソフト 株式会社 

エンドユーザーに向けた AI 活用も加速。日本における AI サービス導入企業の最新動向: GenAI Customer Day (第 2 回)

2024年7月5日 | Japan News Center

日本マイクロソフト株式会社
執行役員 常務 クラウド & AI ソリューション事業本部長 岡嵜 禎

※本ブログは、2024 年 6 月 24 日に開催した報道関係者向け説明会を元に再構成したものです。

日本マイクロソフトは 2024 年 6 月 24 日 (月) に、日本国内における AI サービスと、導入企業の最新動向に関するメディア向け説明会「GenAI Customer Day」を開催しました。第 2 回となる今回は、イオン株式会社様および株式会社ナガセ様に参加いただき、それぞれの取り組みについて紹介いただきました。

■AI を「使う」と「創る」: AI 活用を加速させ、AI が当たり前の世の中へ

ビジネスシーンをはじめとする実社会において AI 活用の方向性は、「AI を使う」と「AI を創る」という2つの観点があります。マイクロソフトは、Copilot for Microsoft 365 をはじめとする様々なソリューションによって「AI を使う」ニーズに応え、迅速なお客様のビジネス課題の解決を支援しています。また、「AI を創る」ニーズには、Azure AI StudioAzure OpenAI ServiceMicrosoft Copilot Studio などを中心に、お客様独自の AI モデルの構築を支援しています。現在 Copilot はグローバルではもちろん、国内でも多くの企業で活用が進んでいます。日々の生産性の改善のみならず、AI が当たり前に使える企業組織や人材育成にも貢献しています。

Copilot PC : クラウドからデバイスまで

マイクロソフトは「クラウドからデバイスまで」を掲げ、Copilot+ PCを発表しました。デバイスに AI を組み込み、ネットワークにつながっていない状態でも AI の価値を体験できるのが最大の特徴です。AI に最適なプロセッサーは、1 秒間に 40 兆回以上の演算を実現する NPU (ニューラル・プロセッシング・ユニット) と、メモリー、ストレージも非常にパワフルです。また、マイクロソフトが提供する SLM (小規模言語モデル) 「Phi Silica」を搭載し、ローカルで様々な AI 体験ができる点も大きな特徴です。Surface をはじめ、各メーカー様からスペックに準拠したデバイスも発表されています。ぜひお手にとって体験ください。

■マイクロソフトと Open AI の強固なパートナーシップ

米国で開催された Microsoft Build で、改めて強調されたのがマイクロソフトと OpenAI の強固なパートナーシップです。「AI を創る」際の中心となる Azure OpenAI Service は、GPT-4、GPT-4 Turbo だけでなく、最新の GPT-4o や GPT-4 Turbo with Vision、DALL・E 3、Whisper といった画像生成、音声認識のソリューションを備えています。

Azure AI ソリューションのポートフォリオをご活用いただくお客様は、グローバルで既に 5 万社以上あります。日本でもよりインダストリアルの領域に適用が進み、お客様それぞれのビジネスプロセスや課題に踏み込んだ活用事例が増えています。

イオン株式会社様の事例

データイノベーションセンター チーフデータオフィサー 中山 雄大 様

・リアルタイムでお客様を広く深く理解し、体験価値を向上

イオングループは現在イオン株式会社とグループ企業を含め、約 300 の企業で構成されています。小売事業を起点とし、ディベロッパー事業、総合金融事業、サービス・専門店事業など様々な業態がありますが、それぞれが持つお客様との接点をイオングループ全体でつなぎ相互に活用することを目指し、2021 年 3 月にデータイノベーションセンターが発足しました。「グループ全体でデータに基づく事業価値創造を実践」と掲げ、各事業が持っているデータを整理し、現場でアクセスできるプラットフォームを作り、人材確保にも力を入れています。生成 AI がまだ一般的でなかった 2021 年当初から当該領域の人材も含め、中途採用を積極的に推進しています。また弊社の AI 開発は100% 内製で進めており、今回は実際の取り組みの中から 2 つ事例をご紹介します。

・商品説明自動生成 AI

主に E コマースを想定し、サイト上にある商品の説明文を AI が生成したものに置き換える試みです。商品数が非常に多いため生産性があがるだけでなく、高品質なコンテンツ維持にも AI 活用が有効だとわかりました。効果検証を行ったところ、AI による自動化で 60% の工数削減を実現、納期遅延などの問題も改善できました。事業貢献に関してある商品群でテストをしたところ、人の手による説明文に比べ AI による文章のページビューが高いこともわかりました。ハルシネーション対策として、AI が生成した文章は必ず人が目視で確認するため、人による手直しの影響は多少ありますが、お客様の目を引く、より価値の高い文章を提供できていると考えています。生成できる文章は商品情報やタグ、要約、セールスコピーがあり、さらに内容を充実させることも可能です。また、保守的な文章にするか、革新的にするか、そのほか博多弁や関西弁、丁寧な言葉など要望を追加できます。

・イオン景気インデックス

生活者の実感値をリアルにタイムリーに反映させ、AI を活用したイオン独自の景気指標を作成しました。北海道から沖縄まで全国の店舗で、日常の買い物の第一線に立つ店長に対し毎月アンケートを実施。「お客様の笑顔が増えている」だとか「財布の紐が緩んでいる」といった情報を AI で要約・分析しています。日本全体あるいは関東や九州といった地域別や業態別にみることもでき、景気に合わせて店舗のオペーレーションを変えるなどの取り組みも行っています。現在は内部での活用に限定し、経営向け資料としてまとめるほか、店長それぞれのダッシュボードから他地域の状況などを確認できるようにしています。このほか次のステップとして、店頭 POP やお客様の声の集約など、今後も AI 活用を進めたいと考えています。

株式会社ナガセ様の事例

AI 教育開発部長 山野 高将 様

・教育分野と相性の良い AI を活用し、教育改革を推進

当社は、高校生を中心とする東進ハイスクールをはじめ小学生中心の四谷大塚、社会人向けの英語や DX、また日本を代表する選手が所属するイトマンスイミングスクールなど複数の領域で教育事業を展開しています。本日ご紹介するのは東進ハイスクールにおける AI 活用事例です。「100% の生徒の学力を大巾に向上させる」というミッションを掲げ、6 年連続 800 人以上の東京大学合格と一定の実績をあげていますが、100% の生徒の学力向上を謳うには道半ばです。個性や学力、性格も様々な生徒一人ひとりに最適な学習を提供できてこそ 100% といえますが、そのためには生徒個々の学習状況の把握、データの読み込みと理解など、先生への負荷が膨大です。教員のなり手不足や働き方改革における就労時間の削減も踏まえ、当社では教育業界における AI 活用に率先して取り組んでいます。

・志望校別単元ジャンル演習

200 億問超の生徒の解答データを AI で分析し、志望大学に合わせ生徒一人ひとりに最適な演習を提案。700 以上の大学に対応しています。国公立大学志望の場合、こちらを完全達成すると合格率は 70% 以上という実績をあげています。

・英作文 1000 本ノック

難易度が高く、先生個人のスキルに依存しがちな英作文の指導を AI が実現します。GPT-4 の LLM と東進の保有する指導ノウハウや採点基準などのデータを組み合わせ、いつでも、どこでも、すぐに、何度でも演習できるシステムを Azure OpenAI Service 上に構築しました。2024 年 2〜3 月に内部生および石川県の生徒へ無償提供し、1,310 名の生徒が延べ 12 万 8 千回を超える演習を行い、 4 月 22 日より正式開講となりました。基礎から最難関まで 5 つのレベルに分かれ、日本語の出題に合わせ英語の文章を作成。AI が採点し誤答の場合は修正箇所をリアルタイムで指導します。

さらに、来年受験科目に組み込まれる情報Ⅰ/プログラミング対応版も近々リリース予定です。英作文同様に、実際に書いたプログラムを AI が添削。生徒のプログラミング能力を高めるだけでなく、指導員不足の解決に貢献します。教育現場で、最後に人を動かすのは人です。人ができる得意な部分、また AI が得意な部分を棲み分けて、生徒一人ひとりに合ったコミュニケーションと最適化された教育を、マイクロソフトと一緒に実現したいと考えています。

■マルチモーダルが進む、AI 新時代へ

Azure OpenAI Service で最新の GPT-4o の利用が可能となり、国内での活用が進んでいます。テキスト・音声・画像を組み合わせた入出力に対応。マルチモーダルが進み、今後は映像や音声領域におけるより高度な AI 活用が期待できます。レスポンスの高速化も進み、対話型アプリケーションにおけるリアルタイムコミュニケーションの向上も期待できます。このほか画像生成の DALL・E 3、音声認識の Whisper の活用も継続し、今後も様々なユースケースを支援します。

パフォーマンスとコスト効率の最適化も、重要なポイントです。2023 年 3 月の GPT-4 登場から、2023 年 11 月の GPT-4 Turbo、2024 年 5 月の最新モデル GPT-4o にかけて、コストは 1/12 に削減、一方パフォーマンスは 6 倍まで向上しています。より安価なコストでユーザーエクスペンスに優れたアプリケーション開発を実現します。

■2024 年以降 AI トレンド予測

マルチモーダルの加速は引き続き、これまで中心だった LLM に加え、より少ないパラメーターで AI を実行できる SLM (小規模言語モデル) も登場しています。適材適所で最適なモデルを組み合わせ、お客様にとってよりメリットのある AI 実装をマイクロソフトはこれからも支援します。

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Tags: Cloud Computing, Corporate News, Digital Transformation, 人工知能 (AI)

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