2024/07/09

「サステナブルファイナンス有識者会議」(第24回)議事録の公表

金融庁  

「サステナブルファイナンス有識者会議」(第24回)議事録

日時:令和6年6月17日(月曜日)15時00分~17時00分

【水口座長】 それでは、只今よりサステナブルファイナンス有識者会議(第24回)の会合を開催します。皆様、御多用のところ御参集いただきまして、ありがとうございます。

早速、議事に入りたいと思いますが、本日は第四次報告書について御議論いただきたいと思います。では早速、事務局から御説明をお願いいたします。

(資料に基づき説明)

【水口座長】 そうですね。ありがとうございました。というわけで、「はじめに」は導入で、2のところが言わばこの有識者会議からのメッセージということだと思います。有識者会議は懇談会等ということですので、有識者会議として言えること、言うべきこと、言えないことというのはあるんだと思いますけれども、その範囲でこういうメッセージをお送りしたいということ。そして、3は個々の具体的な取組についての進捗、それから残された課題・対応という整理になっております。

ということで、ここから5時までの時間を使いまして今日は御議論いただき、今日の議論を受けて最終的に修正をしていただいて、改めて皆さんに御覧いただいて御意見をいただいて最終化をしていきたいと、このように考えております。ですので、取りあえずここから5時まで自由討論と思っているんですが、全部一遍に議論すると多分ごちゃごちゃになりそうなので、少し順番を分けて議論していきたいと思います。まず、全体の構成と「はじめに」についてどうですかというのが一つ。それから、2の中核的論点の内容についていかがですかというので一つ。そして最後に、後半部分の個々の論点についての書きぶりとか、抜け落ちないですかということで分けて議論していきたいと思います。

では最初に、この全体の構成はこういう形でいかがでしょうかということと、「はじめに」も含めて、書きぶりも含めて御意見いただきたいと思いますけれども、いかがでしょうか。

林さん、どうぞ。

【林メンバー】 全体の構成とかボリュームについては、本当によくまとめていただいたと思っています。

改めて中核的論点のところで(1)、(2)、(3)というこの括りはいいと思ったんですけれども、アセットオーナー・個人投資家の理解の促進と浸透とありますが、アセットオーナーと個人投資家だけじゃなくて、我々証券会社も、あるいは銀行も保険会社も、やっぱり市場関係者全体じゃないかと思います。アセットオーナーとか個人投資家というのは本当に大事な部分なんですけれども、タイトルに限定するほどアセットオーナーと個人投資家だけが遅れているとは思わないので、ここは表現を変えていただいてもいいのではと思っております。

【水口座長】 全くおっしゃるとおりで、そうですよね。理解の浸透が必要なのは、社会全体ということだと思います。

ちなみに、すみません、「はじめに」と構成については、この通りでよろしいでしょうか。

【林メンバー】 はい。私は、なので、全体の構成としては大変いいと思っています。全体の構成という意味では、最後の参考のところも、これを見るといろいろな思いが込み上げてくるんですが、こんなにいっぱいあるんだとかと思いながら、せっかくだったらリンクさせていただけると。貼る予定なのかなとは思っています。

【水口座長】 ファイルの方では貼れているんだと思いますけれども。

【林メンバー】 この(1)の中核的論点のところなのか、どこかなのか分からないんですが、アセットオーナーのお取組の進展に触れつつも、まだ全体としてレベルアップというのはすごく大事だと思っています。

【水口座長】 何回かやはり、生保さんは頑張っているけれども、まだ年金基金とかがもう少し積極的になってもよいのではないかという議論は何回かいただいていると思いますので、年金基金の話はあるんだろうと思いつつも、おっしゃるように、ほかはできているよという感じに見えてしまうので、このタイトルはあんまりよくないですよね。

では、岸上さん、渋澤さんの順番で行きたいと思いますが、岸上さん、お願いします。

【岸上メンバー】 ありがとうございます。全体の分量とかには特に異論はないですし、最後の会議等、リンクを貼っていただいてという前提で、すごくためになる集約の仕方ではないかなと思っています。

その上でですが、対応と進捗が別冊になっていると思いますが、本編のほうですと、「はじめに」と中核的論点ということで、全体像のまとめがこの報告書の中にあってもよいのではないかなと思いましたので、別冊というオプションも残しつつ、本報告書の中でのサマリーの代わりに、初めのほうに記載してもよいのではないかなと思いました。

もう1点ですけれども、別冊になっているほうの進捗と今後のところの項目と、本報告書の目次の3の中の項目数が違ったりするので、そこは合せられてもよいのではないかと思いました。合わせないのであれば、それをどこかで説明してもよいと思いました。例えば各投資分野の推進というのが2枚刷りのほうにありまして、そこの中でサステナが1点目にありますが、本報告書では(6)グリーンファイナンス推進から始まっているんですね。サステナというところで受託者責任などについての議論ということで重要な点かと思いましたが、それが本報告書のほうでは特に項目として記載がないので、あってもよいのではないかと思いました。ほかにも幾つかそういった項目の記載の仕方が違ったりしたので、そこはもしコメントあれば、よろしくお願いいたします。

あと1点だけ細かい点ですけれども、1のところでPRIで強い力強いメッセージが発信されたと書かれているので、ここにいる皆さんはそのメッセージを分かっていらっしゃると思いますが、こちらもリンクで貼ってあると、確かにインパクトがあったメッセージだったかと思いますので、入れるとよいかと思いました。

以上です。

【水口座長】 ありがとうございました。概要と全体像のこの図は、目次の次のページぐらいにあってもよいのではないかという、そんなイメージですか。

【岸上メンバー】 そうですね、はい。

【水口座長】 ありがとうございます。では、渋澤さん、お願いします。

【渋澤メンバー】 ありがとうございます。まとめ方に異論はありませんが、「はじめに」のところに加筆があっても良いかと思います。この会が始まった2020年12月でちょうどコロナが大変なことになって、そろそろ終わりかなと思ったら、全然その後も続いたというタイミングでした。前政権の菅総理がネットゼロを宣言したということで本有識者会議が始まり、第1回目のときの議論は9割ぐらいが温暖化ガス排出に関わるテーマだったと思います。

当時では全く議論にもならなかったことですが、アメリカではESGが一部の州では違法になるようになりました。また、日本では政権が替わり、新しい資本主義を通じて資産運用立国、インパクトを通じて非財務的な情報開示をどのようにもっと可視化できるかという展開になりました。5月中旬のインパクトウイークのトークセッションでは、外国人有識者が企業価値の進化にインパクトをいかにマネタイズできるかという指摘もあり、そのインパクトをどのようにお金として換算するかという議論もありました。

要は、「はじめに」のところに、4年を振り返りというときに、いかに時代が今まで変わっていたかということを簡単に整理していただき、当初のときと比べると課題が時代に応じて変わっているということを表しても良いのではないでしょうか。多分4年後には、また変わっている可能性があるので、今までの経緯をビジュアライズできれば、世界が変わっている、考え方も変わっている、日本が取り組んでいることも変わっているということで、内容がよりぐっと入りやすいんじゃないかなと思います。

【水口座長】 ありがとうございます。そうですよね。確かに非常に大きく変わりましたよね。少し考えてみたいと思います。

【西田サステナブルファイナンス推進室長】 そうですね。

【水口座長】 ほかに。手塚さん、お願いします。

【手塚メンバー】 どうもありがとうございます。あまりここの部分は私は発言するつもりはなくて、非常によく出来ているなと思ったんですけれども、あえて申し上げますと、今、渋澤さんがおっしゃいましたけれども、過去3年間で24回開催して、3回報告書を出しているわけです。これは別に答申でも諮問でもないというのはそのとおりだと思うんですけれども、一方でこれ、初めに申し上げますとこうした活動を通じて金融の方と行政の方と産業界と、その他専門家が集まって、このテーマを真面目にこんなに議論している国はあんまりないと思うんですね。

そういう中で、実はこの会議の中でいろいろ議論したテーマで国際的に後からそれについてきているというテーマがあるんじゃないかと思います。例えばなんですけれども、ESG評価機関をどうディシプリンしていくのかというテーマは、かなり初期の頃にこの場で議論されたことですが、今や国際的にそういうものをルールメーキングしていきましょうみたいな話が出てきています。

あるいは、トランジション・ファイナンスは、これはまさに日本のお家芸のような形で出てきたコンセプトですけれども、今やグリーンファイナンスからトランジション・ファイナンスに大きな議論の中心が移ってきている。その際に、日本の場合は分野別ロードマップのようないろいろなネジや釘に相当するツールを全部そろえて対応しているということで、ある意味で模範を示しているという感じもあると思います。

あるいは、データ収集が重要で、客観的データがないとこの話というのはなかなか評価できない、あるいはアップル・ツー・アップルの比較ができないという話を、これも最初の一、二年でいろいろ議論したと思うんですけれども、今やまさに昨年のG7で日本がそういうことを提唱し、特に大量排出産業に関して国際的な共通のメジャメントのコモンズスタンダードみたいなものをつくらなければいけないというようなことを提唱して、まさにそれが動き始めているということで、この3年間でこの有識者会議からいろいろと意見として出てきて、それが実際、国際的なトレンドで受け入れられてメインストリームに出てきているというのを少しビジュアライズすると、手前みそじゃないんですけれども、意味のあることをいろいろやっていると世の中の人に受けてもらえるんじゃないかなと思います。まえがきの部分か何かに、「はじめに」か何かの部分なんかに少し入れていったらいかがでしょうかと、こういう提案でございます。

【水口座長】 ありがとうございます。渋澤さんの御意見と併せてまとめていく感じですかね。もともとシンプルにという感じだったので、「はじめに」を1ページに収めようという意図があってこういうふうになっているんですが、少し考えてみたいと思います。

ほかにいかがでしょう。

特段、構成についてはよろしいでしょうか。それと、最後の会議の一覧も確かにインパクトがある。なるほど、こんないっぱいあるのかということで。これも、ですから、報告書にも載せる感じでいいですかね。報告書の一部にでも。

【西田サステナブルファイナンス推進室長】 そうですね。はい。

【水口座長】 いいですかね、あっても。ウェブで見れば、確かにこれ、リンクが飛ぶようになるんでしょうから、いいのかなと思います。

それでは、林さんから既にコメントいただいていますけれども、2ページ以降の中核的論点の内容についても、皆様から御意見をいただければと思います。いかがでしょうか。(1)のタイトルはやはりもう一度考え直したいと思います。

では、安地さん、お願いします。

【安地メンバー】 ありがとうございます。中核的論点のところで、ここの構成でそんなに違和感はないんですけれども、ざっくり言うとここの構成は、いろいろ頑張ってきたんだけれども、世の中、もっと1.5度も上がってしまうのが見えたり、ほかのことも起きたりして、頑張ったけれども、広さとか速さの面でまだ足りてないですよねという、この問題意識が書いてあるんだと思うんです。

したがって、私、多分、今日2回目なので、これを読む人の読者に近い立場だと思うんですけれども、結構先ほどの議論にもつながるんですけれども、(1)とか(2)は割と唐突感が、いきなり個別に入っているなと感じたので、例えば問題意識をもうちょっと書いた上で、恐らく今足りてない、それは広さの観点なのか、深さの観点なのか、スピードの観点なのか。多分(1)は広さの観点じゃないかなと思うんです。(2)とかは、スピードが足りない、どういうスピードでトランジションしていくか。そこに若干ただし書でジャストトランジションみたいな、早いだけでも駄目ですよみたいなものを書いておけばいいと思うんですけれども、全体のストーリーを考えると、大きいストーリーからいきなり細かいところに触れているような感じがするので、うまくつながるようにされてはいかがかなと思いました。

もしこの(1)、(2)で行くのであれば、これも全く先ほどと一緒で、恐らく成果とかそういうのを書けば、こういうことやったけれども、ここが課題と書けば、多分この(1)、(2)は流れると思うので、岸上さんじゃないですけれども、全体の成果があれば、それでも十分行けるかなと思いました。

あと、すごい細かいこと申し上げますと、(1)のところで真ん中辺の「サステナブルファイナンスの理解と促進は人材育成とも併せて検討することが望ましい」というのは、すみません、若干唐突感を感じました。そうだと思うんですけれども、うまくつながるように、何か人の話と。そのとおりだと思うんですけれども、ここは初めて読む人は何か少し飛躍感をもしかしたら感じるかもしれないので、うまくつながるようにされてはいかがと思います。

あと、これも細かいですけれども、(2)のGXとトランジション・ファイナンスの上のほう、10年間で150兆円云々でまだ民間資金の導入は引き続き課題であるという、もしかしたらこの辺は前へ出してしまってもいいかなという、中核的論点の一番前辺りに課題意識で出しても、そんなに変じゃないかなと思いました。

(3)は、全体の話から若干目を転じて大きいスコープの話なので、これはより据わりがいいかなと思いました。

あと最後、すごい細かい、すみません、会社の係長みたいなことを言いますと、「はじめに」のところが、金融機関と投資家が、金融機関や投資家等の順番が、中核的論点は、投資家・金融機関。順番をそろえてもいいかなという、細かいですけれども、統一されてはいかがかなという。

以上でございます。

【水口座長】 ありがとうございました。おっしゃるとおりで、初め、(1)、(2)、(3)しかなかったところに、後からまえがきを上乗せしているので、結果的に唐突な感じになっています。そこは少し整理しなければというのは思いました。

それでは、渋澤さん、林さん、吉高さん、鳥海さんという順番で行きたいと思いますが、まず、渋澤さん、お願いします。

【渋澤メンバー】 ありがとうございます。中核的論点については、(1)と(3)のところについてコメントさせていただきたいと思います。

(1)のアセットオーナー・個人投資家、特に個人投資家のところは、この3年間で新しい資本主義を通じて、つみたてNISAが改正されました。個人から、特に若手世代から口座開設が増えて、今までなかったような資金フローが出てきている。これは間違いない。ただ、そのほとんどがインデックスファンドに流れています。海外に。それは別にいいと思うんです。なぜかというと、海外の成長に取り組むということになるので別に駄目ということじゃないと思うんです。

私がどちらかというと問題視しているのは、そのほとんどがインデックスファンドに流入していることであります。新しいお金の流れが出来ていますが、インデックス投資の場合、サステナビリティなどが全く関係なく、投資対象のインデックスがどれぐらい上がったか下がったぐらいしか関心ありません。それは新しい資本主義、資産運用立国で打ち上げている思想、それから、以前からのコーポレートガバナンス改革も含めて、反対へお金の流れが出来ているということに懸念しています。

サステナブルファイナンスになりますと、やはりそれはインデックスじゃなくてアクティブ運用だと思います。それも個人投資家にきちんと向き合いながらも、いろいろな側面があるかと思うのでアセットマネジャーに関係する話かもしれませんが、せっかくいい流れが出来ているのに逆方向にお金の流れが生じているのはもったいないなと思います。この流れを是正するようなことが可能であれば、表現していただければなと思っております。

3番目の多様化するサステナビリティ課題とインパクト投資の項目ですが、ESGはアメリカで違法になっている州があるということは政治的な背景がありますが、政治的な背景には怒りがあるわけです。その怒りはどこから来るかというと、ESGでは、Gは最初来ました。それからEが来ました。あなたはカーボンゼロか、ゼロじゃないか。とても仕分しやすいので浸透しました。例えばカーボンをどんどん排出するような業界や生活しか代々知らない人たちに対して、君たちはバッドEと言われてしまうとそれには不満、怒りが生じると思うんです。要するに、ESG中でSが取り残されてきたのです。

日本では、ISSBの議論で温暖化ガスが最初に来て、2022年のときの議論では、次のテーマは何かという問いに、生態多様性が既定路線になっていましたが、日本では新しい資本主義を通じて人的資本という言葉が前面に出きました。ISSBの幹部が日本に訪れたときに、どこへ行っても、人的資本しか言わないというインプットができました。

これは先ほど手塚さんの話とつながるんですけれども、実は今度、ISSBの次のテーマに、もちろん生態多様性、ネイチャーポジティブが検討されますが、人的資本も入ったんですね。そういう意味では、「人的資本の形成などを通じ」とサラッと書いてありますが、サステナビリティの大きな課題であるSが取り残されているところにもっとフォーカスを与えるようにしていただきたいなと思っています。

【水口座長】 おっしゃるとおりですね。Sが取り残されている怒りがあの反ESGの動きになっていて、かえって足を引っ張っているというわけなので、そこは非常に重要だなと。

あと、(1)のところでちょっとだけ質問なんですけれども、個人の方がインデックスに向いてしまう、個人の言わば嗜好というかプリファレンスがあるというときに、こちらでどういうことをするのがよいというのはありますか。

【渋澤メンバー】 個人の方々は、つみたてNISAをはじめ、賢くちゃんと勉強されています。インデックスファンドの運用コストが安く、そのほうが長期的にメリットあるということにきちんと分かっていらっしゃるんです。それはそのとおりで、別に悪いと言っているわけではありません。ただ、そこだけに金の流れが出来てしまうと、サステナビリティのことは全然考えない、一番安いところにお金の流れが生じてしまいます。安いコストという考え方もありますが、皆さんの将来のために、このような投資もあるんですよということにも目を向けていただきたいです。

最終的に決めるのは個人です。ただ、今までは、これが一番安いです、一番売れていますだけで、そちら方面に行っています。売手サイドの課題も当然あるかと思います。あまりフィーを稼げるようなビジネスではないので、一番抵抗が低い、安い、みんながやっています、どうぞ、というところがあると思います。だけど、世の中にはサステナビリティが大事だと思っている運用会社、ファンドマネジャーもいらっしゃいます。そういうものにもきちんと光を当てる。こういう選択肢がつみたてNISAの中でもあるんだということが、情報提供でも良いですが、あったほうがいいんじゃないかなと思います。

【水口座長】 ありがとうございます。やはり、だから、そういう理解をきちんとしていただくということということですよね。

では、林さん、吉高さん、鳥海さんの順番で行きたいと思います。林さん、お願いします。

【林メンバー】 ありがとうございます。先ほどのお話で、進捗と今後のところを中核的論点のところでちょっと書いて、そして(1)、(2)につなげるというのは、そのとおりだと思いつつ、書き始めると、きっとこれまた30ページになってしまうなというところの本当バランスがすごく難しいんですが、考えてみたら、進捗と今後というのが恐らくこの紙だと思うんです。そうすると、これが一番前に来るという前提に立つと、これとこの中核的論点の(1)、(2)、(3)がつながるようにしないといけなくて、ここを見比べると、結構、点在していてわかりにくいように思います。

もう1回、(1)と(2)と(3)を見ながら、結局これはどこのことを言っているのかなと思うと、(2)は脱炭素に係る取組のことを言っていて、(1)は恐らく市場制度整備とステークホルダーのことを結果として言っているような気がして、(3)は各投資分野の推進で、なぜか(3)で多様化するサステナビリティ課題とインパクト投資となると、この青いところの下の2つだけのようにしか見えないじゃないですか。それはそれでいいと思うんですけれども、せっかくこのすばらしい表があるので、これとこの中核のところがうまくつながるように、この表とこの部分がうまく整合するような感じにしたら、すごく読みやすくて分かりやすくていいなと思いました。

【水口座長】 読みやすいという意味ではそうですよね。おっしゃるとおりだと思います。ただ一方で、中核的論点は多分「特出し」なので、この全部じゃなくていいということですね。

【林メンバー】 はい。ここに全部書く必要はなくて、この中のどれに該当するんだというのがちょっと分かるように、これを太文字にするべきなのか何なのか分からないんですけれども、何かこことうまく合わせて読めるようにする知恵を考えてもいいんじゃないかなと思いました。

【水口座長】 ありがとうございます。では、吉高さん、鳥海さん、藤井さんの順番で行きたいと思います。吉高さん、お願いします。

【吉高メンバー】 私も林さんと似たようなことなんですけれども、第四次報告書ということで、これまでも3回出してきて、もともとこれ、前も会議で一、二回同じことを皆さんで話したと思うんです。誰が誰に対する報告書なのか、一般の人に分かるようにするのかとか、もう既にいろいろ議論があったので、今、林さんおっしゃったように、過去のやつは多分もうこういうものにまとめていただいて、今回は結局、2024年度の報告書に当たってということで、今年何をしたかというのにやっぱり注力するほうがシンプルになるのではないかなというふうなことには私も同意でございます。

なので、中核的論点も、今年我々がした論点ということをきちんと明確にすべきかなというのも、毎回のように話したことがここに書かれているということでは、やっぱりGXは今年大きくて、こうやって取り出しするのは私としては何ら違和感はないということです。こちらの順番と、あと、これって毎年出していたんですよね、たしかね。

【水口座長】 そうですね。

【吉高メンバー】 毎年ですね。なので、やっぱり、もしかしてそれをつけていっても構わないと思いますし、参考資料として、やっぱりなるべくシンプルにというのは私も同意でございます。ということで、中核的論点のところは、もうアセットオーナーの話はちょっと出ましたし。

あと1点だけ、これは確認なんですけれども、タイトルがGXとトランジション・ファイナンスの推進になっているからなのかもしれないんですけれども、3ページの真ん中に、金融機関などにおけるリスク管理といった場合には、一応物理的リスクも入っていると私は認識しているんです。ですので、その後、「特に、脱炭素への移行」となっているので、この前のところには、もしかして物理的リスクの話もメンションしておいたほうがいいのかなと。まるっきりここで話していないわけではないと思うので、リスクというところはやっぱり触れるべきかなとは思いました。

あと、先ほど渋澤さんがおっしゃったように、(3)はもうちょっと人権とかダイバーシティーとか、それはもう目の前で今回我々も考えて話したことですので、これもきちっとメンションしていただくのがいいのかなと思います。

以上でございます。

【水口座長】 ありがとうございます。では、鳥海さん、藤井さん、そして、足達さんの順番で行きたいと思います。

【鳥海メンバー】 ありがとうございます。大分皆さんの御意見と重なるところもありますが、追加させていただきます。

私も、林さんがおっしゃられたように中核的論点と後ろがいまひとつリンクしてないというのが若干気になりまして、せっかくこの4つのカテゴリー、市場制度の整備とか、幅広いステークホルダーへの浸透という形でもともと整理がなされているので、そこのリンクをさせたほうがよいのではないかなと思っておりました。

それから、若干、「はじめに」のほうのコメントになってしまうかもしれませんが、先ほど渋澤さんがおっしゃられた、Sが取り残されてきたことに対する怒りがやはり反ESGのバックにあるというところなんですが、この数年の環境の変化ということでいうと、サステナブルファイナンスと直接は関係しませんが、やはりエネルギー価格の高騰によるインフレ、それだけやはり生活に密着して苦しくなったというのが大きな環境の変化かなとは思います。世界的にそういった環境の変化があり、そこからやはりS、一人一人の生活のほうが優先されるというようなことが起きたのではないかと思うので、そういった環境変化もあり、Sに対する気配りがより必要になってくるというようなことも、環境認識としては少し触れたほうがいいのかなとは思いました。

それから、中核的論点の(1)のところに人材育成のところを一緒に入れられているんですけれども、人材育成を議論したとき、あるいはこの後ろのところの論点を見ても、必ずしも投資家サイドの人材育成ということではなく、発行体というか企業側とか経営者のほうも育成をすべき、認識度を高めるべきではないかという議論があったかと思います。という意味では幅広いステークホルダーといって含めるんだったらいいんですけれども、必ずしも投資という観点だけに人材育成を含めてしまうと、やや狭くしてしまうのかなと思います。

以上です。

【水口座長】 そうですね。幅広い人たち、人材育成と言うけれども、だから、投資家だけじゃなくて、それは結局のところ、やっぱサステナビリティに対する認識が広がっていくということなんですよね。ということで、多分理解の促進とつながってくるだろうと思いますけれども。

【鳥海メンバー】 括り方の話なんです。でも、このパートで言うと、どうしても資金の出し手サイドの話と見えるんですけれども、必ずしもそうではないので、もう少し広く人材育成という括りにしたほうがいいのではないかと。

【水口座長】 そうですね。それでは、藤井さん、足達さん、そして、長谷川さんの順番に行きたいと思います。藤井さん、お願いします。

【藤井メンバー】 ありがとうございます。私からは、主に3ページのトランジション・ファイナンスのところですけれども、このページは幾つかの論点が若干入れ子のように記載されていると思います。具体的には、最初の2行は一定の進展ということでいいとして、その後の「わが国の」以降は、トランジション・ファイナンスについての議論の話をしています。その後の「また」以降のパラグラフは、資金の移動とか実際のファイナンスの話がされています。その次の「金融機関等における」というのは、ファイナンスド・エミッションを含めた議論の話に戻っていて、その後、「特に」以降は、移行戦略とか移行計画の話になっています。次の「例えば」というところはまた議論、ただし国際的な議論の話になっていまして、入れ子構造になっています。

要素をまとめると、いわゆる定義に係る議論の話、それに対して、ファイナンス案件のような実務の話、移行戦略・移行計画という、いわゆるトランジション・プランニングの話、さらに内外の議論という、大きく4つぐらいだと思うのですが、それが後半の個別の論点に行くと違う箇所に書かれていますので、ここからつながりにくいということを思っております。例えば、「トランジション・ファイナンスについては、大きく、定義も含めた内外の議論の話、移行戦略・移行計画という論点、実際のファイナンス案件といった論点がテーマとなっている」というようなところを項目の冒頭に書いていただくと、整理されるのではないかと思います。

関連しますが、真ん中辺りに「トランジション・ファイナンスをけん引してきた本邦」とありますが、日本がけん引したのが、議論の話なのか、ファイナンス案件の話なのかというのが分かりにくいと思います。記述を見ると、議論のところに力点を置いてある一方で、GX移行債といった実取引の記載もあるので、どちらを言っているのかが、この構成がゆえに分かりにくくなっていると思います。どういう論点があるというところを最初に何らか書いていただくと、この構成に大きく手を入れる必要なく整理できるのではないかと思いましたので、コメントさせていただきます。

【水口座長】 ありがとうございます。確かにこの部分は論点そのものが多いので、おっしゃるように何か複雑になっていますよね。ありがとうございます。

では、足達さん、長谷川さん、岸上さんの順番でお願いします。

【足達メンバー】 ありがとうございます。2点でございます。

前にも申し上げたように思うんですが、サステナブルファイナンスの議論においては、リスクとオポチュニティー、機会の話について、私はどうしても「リスク」を前に持ってきたほうがいいのではないかという思いがあります。3ページは、リスク管理と顧客支援になっているんですが、各論のほうに入りますと、これが顧客支援、リスク管理の順に書いてあるところが多数あります。(10)はタイトルのところも顧客支援・リスク管理という順になっています。皆さんの御意見を集約したいのでありますが、もし顧客支援なり機会というところが前提になるのであれば、サステナブルファイナンスというのは、民間の力だけでも自律的にビジネスとして発展していくと考えるべきではないか。それを何らかの政策的関与が必要だというのは、リスク管理の側面からだと私は思っておりまして、ここは問題提起をさせていただきたいというのが最初の点です。

2つ目は、中核的の(3)で、「多様化するサステナビリティ課題とインパクト投資」となっているんですが、もう少しここを踏み込んで、金融商品もしくは金融活動としてのイノベーションがより積極的に期待されているのだということまで書き込めないだろうかという思いを持ちました。G7のサミットがイタリアであり、この首脳コミュニケが出ておりますが、ここに「我々は、気候・生物多様性対策やクリーンエネルギーのための革新的な資金調達源や革新的なスキームを引き続き模索していく」という一文が入っています。これは文章から見て、多分日本から入れたのではないと思いますが、いずれにせよこのG7なんかで議論しているのも、「金融には、もっと工夫をして社会的課題を解決したり、資金供給によって機能を発揮できる余地がある」という期待感が背景にあると思います。そうした期待感やイノベーティブなものを開発していく責任というようなニュアンスを少し入れることができれば、(3)のところが、「多様化するサステナビリティ課題があって、インパクト投資が世の中で注目されています」という主張だけよりも、もう少しポジティブな印象が出るのかなということで提案をさせていただきたいと思います。

以上です。

【水口座長】 ありがとうございます。多様化するサステナビリティ課題とインパクト投資の間が確かに飛んでいると言えば、そのとおりですね。1点目の話は、だから、リスク管理と顧客支援、リスクとオポチュニティー、この順番なんですよね。

【足達メンバー】 それで統一してはどうかというのが私の意見です。

【水口座長】 ぜひ委員の皆様からもし御異論があれば言っていただき、御異論がないと、じゃ、そういう方向かなということで理解をいたしますので、よろしくお願いします。

では、長谷川さん、岸上さんの順で、長谷川さん、お願いします。

【長谷川メンバー】 ありがとうございます。最後のほうになるとなかなかもう皆様がおっしゃったところと重複してしまうなと思いつつ、そういう意見を持った人が多いという意味で言わせていただきます。

私も(3)の多様化するサステナビリティ課題とインパクト投資のところで、これはISSBのネクストアジェンダが生物多様性と人的資本になっているからこの2つが例になっているんだと思うんですが、この間小森様とも直接お話ししたときに、人的資本といってもまさにサプライチェーンの労働とか、あと、労働環境とかジェンダーとか、そこの賃金格差とかそういうのは全部入っているという話でしたので、これはまさに人権、いわゆるビジネスと人権で言う人権課題の中核ですので、そういう意味ではここはやはり人権とかダイバーシティー、DEIとかという言葉を入れていただいたほうが、課題の中心としてより適切ではないかと思いました。

それから、これも今まさに足達さんがおっしゃったことに近いことを私も感じたんですが、多様化するサステナビリティ課題があるからインパクト投資が重要になっていますといきなり出るんですけれども、実際には気候変動とかは生物多様性とか人的資本、人権など非常に多様な課題になっていて、お互いがすごく相互に高い関連性を持っていて、まさに環境と例えば人権なんかよく言われていますけれども、その両者にポジティブインパクト、ネガティブインパクトに関するトレードオフがあったりするので、インパクト評価が重要になってくるというか、それをしないと、本当にその取組がサステナビリティに貢献しているかどうか分からないというところでインパクト評価、インパクト投資というものが出てきていると思いますので、そういう関連性が分かるような書きぶりにしたほうがいいのかなと思いました。

そう考えていくと、この進捗と今後の課題の図についても、本当は各課題が全て全部相互に作用・反作用じゃないですけれども影響し合っていることなので、例えばサステナ課題が多様化するから、課題横断的に今後検討する必要が出てくるから、インパクト評価、データ指標が必要になってくるといった、そういう相関が分かるような何か工夫ができるといいかなと感じました。

【水口座長】 ありがとうございます。大変重要な御指摘で、おっしゃるとおりですね。人権の話とかは一番中核課題なんだと思っています。そうだなと。あと、お互い相互に関連し合っているという、実は問題は複雑なんですけれども、複雑であるがゆえになかなか図にしにくいという問題があるのかなと思います。

それでは、岸上さん、お願いします。

【岸上メンバー】 ありがとうございます。先ほど構成に異論はないと言いましたが、皆様の意見を聞いている中で、一つの意見ですが、「はじめに」の最後に24回開催されといったところとか公開しているので、これの次のページに例えば進捗と今後のページが来ることで、まとめとして、これからこの報告書で紹介する課題・進捗・今後がこのようなものですよということで入れて、そのまま、現在3となっているところに行って、この中核的論点について、先ほど最初に西田さんが紹介した、私の理解が間違っていなければなんですけれども、今後さらに課題が特に残っていて、フォーカスしていくべきポイントという紹介であれば、この3の後に入れてもよいのではないかなと思いました。いろいろ個別の進捗がある中で、それを横断的な形でフォーカスして取り組むものとして最後に紹介するとなると、これにサマリーを期待しなくなるので、必要以上に盛り込まなくてもよいというのと、あと、先ほど言っていた、個別の項目との整合性という期待値が少し下がると思うので、より横断的な内容であってもおかしくないのではないかなと思いましたので、一つの提案までです。

あと、最後なんですが、この(1)、(2)、(3)で、先ほどの安地さんの御意見と逆になってしまうかもしれないですが、特に(3)のところが多様化するサステナビリティ課題とインパクト投資という、方向性が全くない題名なので、今後のフォーカスポイントとするのであれば、その2つに何を期待するのかがタイトルから分からないので、もう少し考えてもよいのではないかと思います。

以上です。

【水口座長】 なるほど。(1)は促進と浸透、(2)も推進なのに、(3)はそういう方向性が書いてないじゃないかと。言われてみるとそんな気がしますね。なるほど。

中核的論点というこの定義をこの場所に置くのか、最後に置くのかというのは、大きな変更でありまして、そこは難しいところですね。当初はやはりメッセージを最初に打ち出そうということで、各論は後半に置いて、総論というか、大きなメッセージを多分一番前に持ってこようというのがこの構成の趣旨だったのかなと思っているんですけれども、どうでしょう。

【渋澤メンバー】 私のイメージは、現状と将来と思っていたんです、(2)と(3)の違いというのは。今の状態はこうですということが(2)で、(3)がこれからという、そんなイメージだったんですけれども、違いました?

【岸上メンバー】 逆だと思いました。

【水口座長】 なるほど。そうだとすると、場所も逆のほうがいい?

【渋澤メンバー】 いや、私は、そういうイメージで思っていただけです。

【水口座長】 なるほど。

【岸上メンバー】 私は逆に感じていたので、(2)が将来を言っているのかと思ったので、(3)の後でのほうが自然かという感想です。なので、今の状況ですと、どちらの意味合いなのかが若干ここでも理解が異なるという状況なので、位置づけがはっきりすれば、前でもよいとは思います。

【林メンバー】 「以下の点に取り組んでいくことが期待される」と書いてあるから、やっぱりこれ全部、(1)も(2)も(3)も将来だとふわっと私は読んでいました。

【水口座長】 なるほど。だから、(1)も(2)も(3)も将来ですね。

【林メンバー】 どれもまだ片づいてないので。

【水口座長】 そうですね、どれも片づいていない。

【藤井メンバー】 先ほどのコメントと関連するのですけれども、トランジション・ファイナンスについて(3)の記載が先に来て(2)の記載を後ろに持って行ってしまうと、(3)の記載はトランジション・ファイナンスの各要素が違うところに書かれているので、全体像が見えない状況になるので、恐らく意味が分からなくなってしまうとは思います。

【水口座長】 そうですね。そういう意味ではやっぱりこの(2)が、今の順番のほうがまだ分かりやすいですよね。比較的、今の順番が分かりやすいという方にうなずいてくれた人が多そうな気がするんですけれども、引き続き考えて、ですね。

ほかにいかがでしょうか。一旦、あと1時間ぐらいになりましたので、後段の3の議論もしながらもう1回戻りたいと思いますが、それでは、3の各論についてもコメントをいただきたいと思います。ここからは、3も長いんですけれども、あまり区切るとまた大変なので、3の中であればどれでも自由に御発言ください。

二木さん、お願いします。

【二木メンバー】 どうもありがとうございます。私は全体を読ませていただいて、大体こんなところかなという腹落ちは多くのところでしているんですが、1個、(4)の個人に対する投資機会の拡充は、投資の基本的効果を何か実感できる機会、情報提供を図ることが重要だというのは、よく理解できるんですが、その後の分かりやすく要点を特定して理解を得ていくと書いてある部分、ここの要点って一体何なんだろうなということと、それから、それでなぜ総合的に議論していくことが必要になってくるのだろうかという流れがうまく理解できないです。

それから、総合的に議論していくということを前提にした上で、この有識者会議において、3つやってはどうかという御提案ですが、そもそも関心を持つ投資家層と書かれてあるのですが、これは先ほどの渋澤さんの議論ではないんですが、関心を持つ投資家層だけでよいのかというところが少し気になったのと、それから、フラッグシップ的な投資機会を創出するというのは重要だと思うのですが、イノベーションの在り方について、この有識者会議で議論するという点が、若干の唐突感があるかなと思いました。

それから、このパーツは、サステナブルファイナンス市場だとか、サステナブル投資市場だとか、持続可能性を捉えて成長機会を実現する投資とか、言い換えというか表現のぶれが大きいので、少しまとめればもうちょっとすっきりするんじゃないかと思いました。

ここに記載されていることについて、具体的にどういうことを今後やっていこうと考えているのか今一つイメージできませんということを言いたかったということであります。以上です。

【水口座長】 ありがとうございます。

確かに、「分かりやすく要点を特定し理解を得ていく方策について」って、何をしようとしているのか分かりにくいですね、おっしゃるように。「要点を特定し」というのも確かに、サステナブルファイナンスの意義とか、こういうことを市場の人たち、個人の人たちにも理解してもらうことが大事なんだと思うんですけれども、そのことをもうちょっとうまく表現できたほうがいい。

それと、おっしゃるように、フラッグシップ的な投資機関の創出について、有識者会議で議論できるのかと言われると、確かにそうですよね。いわゆるダイアログの中で、せっかく個人投資家が今広がってきて、資産運用立国という議論があって、そこの資金が動こうとしているときに、それがきちんとサステナブルファイナンスに向かっていかなきゃいけませんよねと、こういう問題意識は正しいですけれども、それを具体化する方法論がなかなか見えていないだけに、書きぶりがはてどうかと、そういう感じになっているんだと思いますが。ありがとうございました。

それでは、林さん、お願いします。

【林メンバー】 今のやはり8ページの個人に対する投資機会の拡充で、その大きなタイトルが「幅広いステークホルダーへの浸透」というふうになって、先ほどのところでも申し上げたように、個人だけじゃなくて機関投資家も含めてとか、幅広いステークホルダーの浸透というのは、個人がすごく大事だと。今、NISAの話とかいろいろあるので。かつ、日本の個人資産が大量に眠っているということですから、これは大変重要だと思うんですが、ここにとどまらないような書きぶりをもうちょっとしていただいてもいいかなというふうに思っています。

ここ、個人の投資家のところにグリーンウォッシュの課題というのがあって、グリーンウォッシュの課題は本当に個人だけじゃなくて、機関投資家向けでも、それからソーシャルウォッシングもあると思っているので、ここに、個人のところにグリーンウォッシュの話を閉じ込めてはいけないようなちょっと気がしておりますので。

これを人材の育成みたいなところに入れるのか、ちょっと書きぶりは考えないといけないと思うんですけれども、このウォッシングの問題は、丁寧に対応しなければならない環境にあると思いますので、それは個人のグリーンウォッシュだけじゃなくて、それを販売する金融機関であったり、あるいは御発行体の場合もあるかと思うので、ここのグリーンウォッシュの書きぶりと、それからグリーンウォッシュに限らず幅広い観点でもう少し議論していただいてもいいかなというふうに思っています。

それを踏まえて、課題・対応のところも、事業者とか投資家というのは個人という意味なのかどうかちょっと分かりにくくなっていますので、その辺りを整理して、4番の「幅広いステークホルダーへの浸透」というところを少し書き換えていただいてもいいかなというふうに思いました。

以上です。

【水口座長】 ありがとうございます。それでは、手塚さん、渋澤さんの順番で行きたいと思います。手塚さん、お願いします。

【手塚メンバー】 ありがとうございます。何点か申し上げます。

まず一つは、(2)情報・データ基盤の整備なんですけれども、これは、問題というか進捗と課題・対応はここに書かれているとおりなんですが、1つ、実態として我々の経験で申し上げます。先月から2回もヨーロッパに出張に行っているんですけれども、実はデータ整理が必要、あるいはデータの標準化が必要ということは、みんなほぼ共通で理解はしているんです。どうやってやるかというところが、今、実は大混乱な状況でして、百花繚乱です。

例えば、鉄だけ取ってみましても、CO2原単位あるいは製品別のCO2原単位をどう計算するかというのは、IEA、OECD、UNIDO、WTO、ITDI、クライメートクラブ、その他の公的なイニシアチブのほかに、民間でGHGプロトコルであったりSBTiだったり、あるいは、EUの政府のCBAMであったり、アメリカのEPAなんかもデータ収集をはじめ、全部違う方法論を使っているんですね。

そうしますと、データを提供する側からすると、めちゃくちゃにコストが高くて、どこまで手を広げていいかという問題がありますし、恐らく、金融の皆さんからすると、何を見たらいいのかわからないという状況で、要は、市場が混乱してくるような状況にあります。

重要性は認識されているんですけれども、どう収れんさせるかという部分の議論がまだこれからの話でして、これをどう国際的に共通化するか、あるいは、共通化できないならば、翻訳するための辞書のようなものを作る―インターオペラビリティーとか言っていますけれども―こういうものをどうまとめていくかというようなテーマが、多分、一丁目一番地でこの部分は入ってくるのかなと思います。これはデータを出す側と読む側、両方が協力する形で作っていかないと、恐らく納得できるものになっていかないのではないかというのは、課題の一つとしてあるかなと思います。

それから、2番目が、(7)のトランジション・ファイナンスですね。これは先ほど申しましたけれども、日本からいろいろなツールとかパーツとかも含めて問題提起をして、これが世界的に受け入れられて、皆さんがこういう取組を始めているという状況だと思います。これも先週ヨーロッパに行って次の課題として必ず出てくるなと思ったのが、OECDのレポートに書かれているんですけれども、ほとんどの気候政策が今、実はサプライサイドにお金をどうつけるかという政策。つまり、製造側に対して研究開発だったり投資支援だったりということをやっていますが、圧倒的に欠けているのが、市場形成のほう、つまりディマンドサイドの側の政策サポートが少ないということです。

実は日本の場合は、それもある意味先回りして、経済産業省がGX市場研究会というものを今年の前半にやっているんです。正式名称を一応読みますと、「産業競争力強化及び排出削減の実現に向けた需要創出に関わるGX製品市場に関する研究会」。中間報告が出ているんですけれども、要は、技術ができても、グリーン製品を喜んで買ってくれる市場がなければ投資ができない。民間企業としては、ファイナンスをつけようと思っても、市場がなくて儲からないままではファイナンスはつかないという問題が出てきます。

ここをどうやってこれから進めていくかというのは、恐らくこのトラジション・ファイナンスの次の大きなテーマになってきますので、日本はそこを認識して、既にそういう政策も手も打ち始めているんだけれども、実はこれは世界的課題だというようなことがどこかに入ってくるといいんじゃないのかなというふうに思います。

それから、3番目は、(10)の金融機関におけるシナリオ分析をはじめとする顧客支援・リスク管理、リスク支援・顧客管理かもしれませんが、この部分なんですけれども、課題・対応のところで、日本ではガイダンスを作り、様々な取組が始まっている。ここにもトラジション・ファイナンスというのが出てきて、いろいろなところに飛んで書かれているんですけれども、後ろのほうで、「金融機関の規模・特性に応じた移行戦略の枠組みを検討することが重要である」というようなことが書かれています。これは先ほど渋澤さんがおっしゃいましたように、状況が刻々と変化してきているんです。なので、ガイダンスを作ったからそれで終わりというわけにいかなくて、例えば、技術の進展であったり、あるいは、今申し上げた、グリーン市場があるのかないのか、あるとしたら、どれぐらいのスピードでできてきているかによって全然お金のつけ方も変わってくる。

あるいは、国際的に、これも鳥海さんがおっしゃったように、エネルギーコストが上がることによって、対策疲れみたいのが一部の市場で起きていたりなんかしている。こういうものによって結構、対策にめりはりがついてくるかと思います。

したがいまして、ここに、固定化したガイダンスとか固定化した取組を進めるのではなくて、不断の見直しをしながらアップデートしていくというようなコンセプトを入れていただいたほうがいいんじゃないかということです。

最後に、(12)で、脱炭素に係る取組の国際展開・浸透。これも非常に重要なポイントだと思いますし、課題のところで日本が主導しつつ、具体的な案件組成に向けて説得力を持って高めていくことが重要と、これは全くそのとおりだし、日本はそれに貢献するためのいろいろなノウハウなりリソースを持っていると思うんですが、実際にはリソースが不足しているのですね。

なので、これをやるのであれば、官民合わせて、人的あるいは財政的なリソースをここに振り向けるような枠組みが必要になってくるということが何らかの形で言及されていたほうがいいんじゃないかなというふうに思いました。

以上です。

【水口座長】 ありがとうございます。大変興味深いお話で、ちょっとだけ質問というか確認なんですが、最初におっしゃられた、データ基盤の整備が大事だということは分かっているけれども、いろいろな主体が一斉にやり始めて、かえって混乱しているのではないかと。ここは、そこを調整することが必要であるみたいなことを書けばいいですか。

【手塚メンバー】 個別のことは、多分、経済産業省とかがやっていることはあると思うんですけれども、恐らく、国側から見ても、そこは調整されていかないと使い勝手が悪くて困るというのがあると思いますので、言及していただいたらいいんじゃないでしょうか。

【水口座長】 そういう課題があるんだよということを指摘して。ありがとうございました。

2つ目におっしゃられた、グリーン製品がちゃんと買われるような状況になっていないと、サプライサイドが幾らつくっても、それは進みませんよねというのはそのとおりだと思うんですけれども、これは素朴に考えると、非グリーンなものの値段を高くするいわゆるカーボンプライシングみたいな、そういうイメージの議論と思ってよろしいですか。

【手塚メンバー】 アプローチとしては2つあって、ヨーロッパのようにハイカーボンプライシングにしてグリーンのものを売れるようにするか、アメリカのように、カーボンプライシングを使わずに、グリーン製品のコストを補助金で安くするというアプローチと、全然違うやり方をやっているわけですね。現実には。

これは、どちらがいいかというのは、やってみなきゃ分からないですけれども、いずれにしても、消費者がそれを選好するためにどういうふうに政策支援をするかということは、まだ世界的に未熟でして、しかも、今申し上げたような極めて抽象的な概念しかなくて。

一方で、グリーン投資をすると、明らかにコストが上がることは、特に大量排出産業に関しては見えていますので、今の政策でもあるところまでは行くんでしょうけれども、そこから先、最終的に市場にものを出せるか、巨額の投資ができるかという判断を迫られたときには、マーケットがないと、これは売れると思ったものにしかお金はつきません。こういう話です。

【水口座長】 ありがとうございます。環境経済学の世界では、課税と補助金は裏表の関係ですから、御指摘のような2つの方法のどちらかということなんですね。ありがとうございました。

では、渋澤さん、岸上さんの順番で。

【渋澤メンバー】 ありがとうございます。

2点ございますが、1点目が13ページの(9)の多様化するサステナビリティ課題です。印象に残ったのは、外務省の「開発のための資金動員する」、これは水口先生と私が委員になっている関係で入ったと思います。この報告書を読む方々は恐らく金融の方々なので、いきなりこのようなテーマが出てくると、やや違和感を覚えるかもしれません。あるいは、ただ読み飛ばしてしまうということかもしれません。それは残念です。なぜこの課題を取り上げているかということを、文字数とかそういう制限があるかもしれませんが、もっと丁寧に伝えたほうがいいと思います。

表現はお任せしますが、途上国、すなわちグローバルサウスは、今までのカーボンネットゼロの議論の中でも、先進国の君たちいいでしょうと、我々はこれからなんだからという指摘があります。また、先ほどのSが取り残された、まさに取り残されている人々が世の中で数多く、これから日本を考えると、人口が減る日本、そして人口が増えるグローバルサウスの組合せというのは、日本のサステナビリティのためにとても大切な組合せと思っています。

ただ困っている人たちを助けましょうという次元ではありません。なぜそれがサステナビリティとつながっているかということも丁寧に紹介したほうが良いと思います。

私がここで思う議論のポイントというのは、ODAの絶対額が増えないという前提で、量じゃなくて質の勝負と考えたときに、ODAをただの支援でなく、触媒として使うということが大事なポイントなんじゃないかなと思います。一方で、このセクションの「課題と対応」のところには何も示していません。

官民連携のところでは、私が以前から思っていることとして、共通言語は存在しないかということです。要するに、民間は売上げ、利益を求めます。官は、予算を組むときにすごく時間をかけて精査されていますが、決まったら、それが予定通りに実践できるという前提があると思います。つまり、そこの共通言語がないのです。

ここで、このインパクト測定は共通言語になり得ると思っています。

あと、18ページのカーボン・クレジット市場のところです。以前から、いろいろなところでこれからの大事な重要な課題というところに取り上げていますが、ここに書いたことに加え、最近ではインパクト加重会計など非財務的な価値のマネタイゼーションのところで重要な鍵となるのは変換係数です。仮にCO2排出量が測定できたとしても、それがどのぐらいの、ドルや円という金額相当なのですかというクエスチョンマークがあると思います。

今の流れですと、学者たちが過去のデータを分析し、理論的なプライシングを算出するということになっています。それも重要なんですが、長年市場に参加する自分としては、理論値は大切ですが、やはり市場があって、そこで買いと売りが出会うという市場発見機能も織り込むことが大切だと思います。

だから、これはカーボン・クレジット市場を促すと同時に、そこから可視化する、CO2排出量をマネタイズするというところのデータ集積もすごく大事なことであると思いますので、ここも短い文章で表現していただければと思います。お願いします。

【水口座長】 なかなか難しいですね。また御相談させていただく感じで。よろしくお願いいたします。

それでは、岸上さん、足達さん、藤井さんの順番で行きたいと思います。岸上さん、お願いします。

【岸上メンバー】 ありがとうございます。

皆様の御意見と一緒の面としましては、せっかくまとめているからには、もう少し要点が分かりやすいと、特に関わっていらっしゃらない方々に伝わりやすいかなと思いました。その点で、先ほどの進捗と今後のまとめがその要点になるかという視点でこれを拝見していたんですけれども、そうすると逆に、この報告書の中で書かれているものとの差があるかというところでコメントしたいと思います。

その前に、例えば、要点が分かりにくいところの例としてなんですけれども、8ページのところで下線が引かれているのが、課題と対応のところで、「金融庁において必要に応じさらに検討」というのが下線が引かれているんですけれども、これだけを読むと、何を検討するのか、もちろんその前後で分かるとは思うんですが、これが下線が必要なところかなというところになってしまうかと思いましたので、より端的に一番進捗があったところですとかピックアップできるとよいと思いました。

その点で、進捗と今後のところで幾つか例としてですが、例えば、企業開示のところでは、本文のほうでは保証の在り方についてというところに下線が引かれていたんですが、それがこのまとめの中でも必要ではないかと思いました。

データ基盤についてですが、まとめのほうではNZDPUについてのみ進捗と今後の対応で書かれていたんですけれども、こちらに参加するというのが、まとめとしての唯一のところとして入れるもので果たしてよかったかどうかという点ですとか、グリーンのところに行きますと、右側で、引き続き投資環境整備に向けた議論といったところに関しては、ガイダンスも含めてグリーン投資のところの環境整備というところなのか、若干、現状ですと投資環境全体の整備に向けて議論を行うといった書きぶりになってしまうかと思いましたので、そういった点ですとか。

あとは、多様化するサステナ課題のところが、主語が投資家・企業などといったところにそれぞれ明確にしている点はよいと思いますが、一方で、もしも投資家・企業等で行うのであれば、有識者会議としては役割はないということになるかと思いましたので、もう少しこことのつながりが見えるとよいかと思いました。

また例えば、企業対話のところでいきますと、こちらは先ほど最初にコメントしたところにもつながりますが、本報告書との関係性がちょっと見えず、まとめだけに入っている部分かと思いましたので、ここは関連性があってもよいかと思いました。

国際展開の、右側の今後の対応のところで、主導的なフレームワークというのは、どなたが主導的なフレームワークをつくるかといったところが明確になるとよいかと思いましたので、まとめとして活用できるようにもう少し具体化すると同時に、それによってこの本報告書との連動性と、仮に報告書がこの状態のままであったとしても、このまとめで分かるというような位置づけができるとよいのではないかなと思いました。

以上です。

【水口座長】 ありがとうございます。この表を少し精査せよという話ですね。ありがとうございました。

それでは、足達さん、藤井さん、そしてウェブの佐藤さんの順番に行きたいと思います。足達さん、お願いします。

【足達メンバー】 ありがとうございます。各論では4点ほど申し上げたいと思います。

1点目は、まず、最初の5ページ目の冒頭に「情報開示の意義」という箇所があるんですけれども、企業による開示というのが、ステークホルダーとの有効な対話の前提として重要性が高いという書き方なんですが、私はここはもっと踏み込んでいただければありがたいなと思うんです。

というのは、サステナブルファイナンスそのものを取り組もうとするときに、投融資対象先である企業から何も情報が開示されなければ金融の側は意思決定ができないという、そういう現実があると思います。これは移行計画にしてもそういう特性があるわけで、金融機関が移行計画をつくる前に事業会社がつくっていなければ、金融機関の移行計画は絶対できないという例が典型だと思います。私はここは、情報開示とあるいは開示の充実というのは、サステナブルファイナンスを進める上での大前提であるというぐらいの踏み込んだ書き方をしていただければありがたいなというふうに思いました。

それから、7ページ目のところのデータの整備・集約のところです。ここで、「金融庁等が連携しつつ、企業と連携し、本邦におけるデータ整備の在り方について検討していく」という一文があって、これもなるほどと思うのですけれども、一方で、サステナブルファイナンスを考えるときに、今、行政の中に存在している情報、行政がいろいろな政策を推進する中で収集している情報を、どのようにこのサステナブルファイナンスで活用していけるのかということも私は重要な鍵を握っていると思います。

例えば、温対法の届出データの電子化というのが進んだわけですけれども、それでも2年のラグを持っている。こういうところを1つ1つ潰していくというのも重要な課題です。これはインパクトのほうに書いてあると言えば書いてあるんですが、例えば、ある市町村で独り暮らしのお年寄りの方が何人いるのかとか、シングルマザーの家庭がどれだけあるのかとか、そういうことが情報として知ることができるというのも、インパクトを計測する上で非常に意味のあることだと思います、個人情報は必要なく、一般的に処理されたもので構わないので、行政が今把握している情報をどう使えるのか、その議論もこのデータ整備・集約のところに1行付け加えていただくとありがたいなというのが2つ目です。

3つ目は、6ページに戻るんですが、6ページの上からポツで言うと2つ目のところに、「銀行のファイナンスド・エミッション開示については」とあるんですが、私は「金融機関の」でいいのではないかなと思います。ここだけ「銀行のファイナンスド・エミッション」にするのは、何か意図があるのかどうかというのはちょっと疑問がありました。

【水口座長】 すぐ上は「金融機関」なんですね。

【足達メンバー】 そうなんです。

4番目で申し上げたいのは、先ほど渋澤メンバーや手塚メンバーもおっしゃったんですけれども、行政がどういうふうに民間と連携してお金を流すのかという部分、パブリック・ファイナンスとの分担と言ってもいいし、ブレンデッド・ファイナンスと言ってもいいのかもしれませんけれども、その議論というのはあまりこの有識者会議でこれまでしていないんだと思います。

ただ、まさにグローバルヘルスの話もそうですし、気候で言えば適応の話もそうです。何回か問題提起はしたつもりなんですが、どこかでこのブレンデッド・ファイナンスもしくはパブリック・ファイナンスとプライベートファイナンスの融合みたいなことをきちんとこの有識者会議で議論するのであれば、それが課題だとして24年度の事務年度でやるという決心をするのかどうか。例えば、GX推進機構みたいなものも1つの形では誕生するわけでありますので。

そこが必要だというのは、手塚メンバーあるいは渋澤メンバーのご意見に私も同感なんです。もし書き入れるんだったら、きちんと「そこの議論を24年度やりたいとか、やる」というような言い方で書いたほうが、あまり中身を実際我々はやっていないものですから、率直というか、正直な表記になるんだなというふうに思いました。

以上です。

【水口座長】 ありがとうございます。

では、藤井さん、佐藤さん、吉高さん、長谷川さんの順番で行きたいと思います。藤井さん、お願いします。

【藤井メンバー】 ありがとうございます。細かなコメントは幾つかあるんですけれども、それは事務局さんにメールで差し上げるとしまして、2つだけ気になった点を申し上げます。

1点は、17ページの地域DXの課題のところの「なお」以下のファイナンスド・エミッションのところで、「人的・費用的負担も相応に及ぶものであり」という記載はそのとおりなんですけれども、その次がすぐ「簡便な算定方法を期待する」になってしまっています。姿勢としては例えばDXの活用、GじゃなくてDXですね、の活用といったようなことが恐らく欧米ではかなり議論されていると思いますので、そういったことも視野に入れるべきではないかというのが1点です。

それから、18ページのカーボン・クレジットですけれども、これは渋澤さんの先ほどのコメントとある意味リンクしているんですが、カーボン・クレジットにつきましては、これからISSBが実際に導入をされると、今、各社個別に行っている社内炭素価格のようなものが市場価格に整合していくといった議論ですとか、あるいは、移行計画の策定が企業さんで進んでいくと、その凸凹をクレジットで調整するといったように恐らく議論が加速するのではないかと思っています。そのように動いているというようなことを、若干背景として記載したほうがいいのではないかと思っております。

そうしないと、報告書の中で、カーボン・クレジット市場の記載だけ、独立に出てくるような印象を与えるように思います。カーボン・クレジット市場は今後議論が加速すると思いますので、そういう動きが想定されるというような記載がつながりとしてあるといいと思いました。

以上でございます。ありがとうございます。

【水口座長】 ありがとうございました。それでは、ウェブの佐藤さん、お願いします。

【佐藤メンバー】 ちょっと細かい書きぶりのところです。中核的論点で、個人投資家の理解の促進と浸透ということで整理されている中で、8ページの個人に対する投資機会の拡充というところを読んでいきますと、「関心を有する投資家」という言葉が複数回出てきていて、どちらかというと、今年については、資産運用立国の流れの中で、金融教育の推進機構の立ち上がりとかそういうことを含めると、個人投資家のどちらかというと裾野を広げていくとか、そういう冒頭に渋澤さんから話があった資金の新しいNISAへの流れとかを含めて、投資家を増やしていこうと、その投資家に対するリテラシーを上げていこうという中で、このサステナのところは非常に分かりづらいというところで、「関心を有する投資家」ということで包括されていると思うんですけれども。

この前提として、個人投資家の裾野を広げていくというところの書きぶりと、その投資家に対してサステナビリティ、サステナブルファイナンスに対する意義等についての周知徹底とか教育とか、そういうことを図っていくということも何らか触れたほうが、バランスとして、特定のいわゆるプロ投資家っぽい個人投資家、関心ある人たちだけに対して様々な情報を提供するというように一見読むと読めますので、幅広い投資家への底上げというようなことも書き加えたほうがバランスが取れているんじゃないかと感じました。

以上です。

【水口座長】 ありがとうございます。おっしゃるとおりで、関心を広げていくということがまず大事ですよね。

それでは、吉高さん、長谷川さんの順番で。吉高さん、お願いします。

【吉高メンバー】 まず、6ページですけれども、これは御確認です。5ページに有報のサステナビリティ情報の記載欄のことが下線されているんですけれども、課題・対応のほうには一切触れていないんですが、私の理解で、基本的に任意のものでして、実際に開示府令にどのようなものを載せていくかというのは、非常に金融庁とか政府にとって重要なことだと思ったんです。サステナビリティ情報の記載については今後増えていくと思いますので、対応に入っている必要はないのかという御確認です。「SSBJに期待する」で終わってしまっているんですけれども、実際アクションを取るのはSSBJがやるわけではないと認識しているので、そこら辺の御確認をお願いしたい。まず1点。

2点目は、先ほどからも情報・データの基盤整備のところは言われたんですが、基本的にここは、1番目のポツは全体を言っているんですが、あとは全部CO2の話しかしていないんですね。だったら、もうCO2のデータ整備の話ということになりかねないと思うので、さっき足達さんがおっしゃったように、今後、サステナビリティのデータというのは本当に整備されていかなくてはいけないので、このCO2ばかりに寄ってしまっているところに、題名と中身に違和感を感じました。これはどうしたほうがいいのかなというのが、1つ確認でございます。

その次が、先ほど個人投資の話で、私もステークホルダーの中に個人投資家のことが書かれているので、これから非常に重要な課題だと思っておりまして。欧米と日本で個人投資家というのはもともと違っている。だから、欧米が言っている欧米の個人投資家のサステナビリティのスピード感とか、元来の、本来のところが違うと思うんです。なので、実態の調査といったときに、そこら辺を比較しながら理解していかないといけないのではないかなと思っております。

そういったような、もしかしてインパクト投資も同じだと思うんですけれども、インパクト投資も、多様な世界観という文言が書かれておりましたが、まさにそこがGXとインパクト投資と全然違うレベル感で、丁寧に分類化してさまざまな温度感でこういったものを考えていかなくてはいけないのかなと思っておりますので、もうちょっとそこら辺の記載があってもいいのかなと思っております。

あと、マテリアリティーの14ページのところは、最近、私もいろいろなマテリアリティーの検討に携わることがありまして、一旦固定してしまいますとそのままの予算も多いので、見直しとかそういったところには、少し重要であるということは入れていただくのがいいのかなと思っております。

ブレンデッド・ファイナンスに関して私も同意見でございまして、ここではまだあまり話されていないので、ただ、別のバージョンでちらっとそのようなのが入っていたような気がするんですが、削除されているのはもしかしてそういう意味だったのかなというのも感じたので、そこら辺がもし金融庁で意図がありましたら、そこもお聞きしたいなと思っています。

最後に、カーボン・クレジットですけれども、藤井さんがおっしゃったように、成長志向型カーボンプライシング実施方針というのは、スケジュールがいろいろとロックされているというのが前提にありますので、排出量取引やカーボン・クレジットの取引の資金移動に関して、金融庁としてどういう役割があるかということをきちっと検討していかなくてはいけない事項だと思いますので、そういった形で、GXの流れで呼応する形でこの13を書いていただくのがいいのかなというふうに思っております。

以上でございます。

【水口座長】 ありがとうございました。

1点目のところは、おっしゃるように、SSBJだけじゃなくて金融庁の府令ということだと思います。有識者会議で書くべきことと書いてはいけないことはいろいろあるみたいなので、そこはどういうふうに書いたらいいのかはまた御検討いただくということだと思うんです。

2つ目におっしゃられたデータ基盤の整備のところが内容はCO2ばっかりだよねというのは、どうしたらいいでしょうか。表題を変えたほうがいいのか、書いている中身のほうをもう少し広げたほうがいいのか。

【吉高メンバー】 今後、第五次が出てくるんですよね。第五次委員会が続くとなると、データがずっと続けていく話なので、このままでもいいとは思うんですけれども、だったらもうちょっと別のさっきおっしゃった……。

【水口座長】 データの話。

【吉高メンバー】 データの話もきちっと書かれたほうがいいのかなと思いました。どちらでも、こだわりません。

【水口座長】 分かりました。ありがとうございます。

それでは、長谷川さん、お願いします。

【長谷川メンバー】 ありがとうございます。

まず、7ページのESG評価データ提供機関ですけれども、最初に経団連で事業会社のアンケート、ヒアリングなどを基に、ESG評価が、どうも基準とか客観的方法が不明であるといったような御意見があったので、ここの行動規範というものを策定するワーキング・グループができて、行動規範ができて、今、この進捗のところでは、行動規範に多数の機関が賛同されていますということを書かれているんですが、その後で、とはいえ、EUでは規制を導入して、イギリスも行動規範でやっているけれども、規制の導入も別に否定はしていないようなことが書いてあって、今後の対応というところで、ESG評価データ提供機関における実効的な体制整備と企業との対話の充実というのが目的なんだけれども、EUが規制を入れているから、金融庁において何を検討するのかがやっぱりよく分からないなと最初に読んだときに思いまして。

まだ流動的なところなので、方向性を示しにくいとは思うんですけれども、実効的な企業との対話の充実に資するようなことが目的なのであれば、何かもう少し、どういう検討をされるのかが記載されているといいかなと思いました。

あとは、渋澤さんがおっしゃったことと重なりますが、13ページの多様化するサステナビリティ課題について、私もこの外務省の開発のための新しい資金等に関する会議に参加させていただいたんですが、ここでサステナブルファイナンスとODAの連携の重要性ということが進捗として指摘されているのであれば、この後の課題・対応のところで、確かにこのサステナブルファイナンス有識者会議では検討していないんですけれども、あちらの会議では、まさにブレンデッド・ファイナンスで、特に途上国の社会課題に対応するような資金の場合、リスクが巨大過ぎて民間金融機関だけでは取れないので、そういうODAのような公的資金を呼び水に使ってやっていけばいいというようなことに対して、ただ、そのリスクは誰がどこまで負担するのかとか、ガバナンス・コードをどうするのかとかいろいろな意見が出ておりましたので、そういう課題と対応のところも何か一言あるといいのかなと思いました。

【水口座長】 おっしゃるとおりだと思います。ありがとうございます。

それでは、鳥海さん、お願いします。

【鳥海メンバー】 ありがとうございます。

14ページの(10)の脱炭素に係る取組のところなんですけれども、この会議で特に議論をしたわけではないんですが、削減貢献量というのは金融機関が事業会社に対して貢献できるところだと思いますので、削減貢献量について言及したほうがよいのかなと思いました。これもGXリーグのほうでは、直近、金融機関での活用事例集ですとかこういったものも出されておりますので、金融機関の役割としては入れられるのではないかというのが1点です。

それから、同じ(10)の中で、16ページのところ、先ほどから機会とリスクということで足達さんからお話がありましたが、16ページの(11)の2つ上のブレットのところで、「金融庁において気候変動に関する機会とリスクに関するモニタリングの体制整備」というふうに書いてあるのですけれども、機会について特にモニタリングをされるということはないのではないかなと思いました。

むしろ機会は、機会を見つけて、能動的に事業主体がそれを機会と捉えて動いていくということが重要なので、そういった人材を育成するとかそういった観点では必要なのかなというふうに思って、どちらかというと、内発的な動機で機会を追求していくというほうに持っていくということが重要なのではないかなと思います。

【水口座長】 おっしゃるとおりだと思います。ありがとうございます。

ほかにいかがでしょう。吉高さん。

【吉高メンバー】 1点だけ言い忘れてしまいました。

17ページの地域のところ、その簡便な算定方法というのはクエスチョンだったんですが、PCAFのこと触れなくていいのでしょうか? PCAFは結構地銀さんが入っていらっしゃって、金融機関の投融資に関するGHG算定方法というのは、そこで基本的には統一されていくということなので、いろいろありますけれども、もしかしてPCAFのことをここで入れていただくのも1つかなと思った次第です。

【水口座長】 ありがとうございます。PCAFに言及する。確かに、すぐ簡便にと言ってはいけませんよね。簡便にしたのではScope3を追いかけていく意味がだんだんなくなってきてしまうので、正確に取れるのなら取れたほうがいいですけれども、それは手間との関係ですね。

では、林さん、お願いします。

【林メンバー】 先ほど長谷川さんがおっしゃったところの「金融庁において必要に応じさらに検討」という下線のところと、それから、この表に書いてある「各機関の体制整備の実態等を確認し、さらなる具体策を検討」と、多分同じことを言っていると思うんですけれども、表のほうが分かりやすいなという感じがするので。

皆さん賛同したんですけれども、正直、実態が伴っていない感じを受けることもありますので、どこまでどう具体策で体制というか、レベルアップを図っていくのかということは、ここで議論すべきことなのかどうかちょっと分からないんですが、「必要に応じてさらに検討」について、もうちょっと書き込んでもいいかなというふうに思いました。

それから、今PCAFの話が出たので、ふと思い出したんですけれども、ファイナンスド・エミッション、PCAFの話、あと、アボイディッド・エミッションというのも。削減貢献量という話ですかね。その話までここに入れるかどうかもちょっとややこしいんですが、一応、入れるかどうか、それは地域というよりは、どっちかというと事業会社の話だと思うんですが、日本で避けられない議論かなということと、あと、海外でもアボイディッド・エミッションというか、削減貢献量の話をかなり議論を深めているように思いましたので、入れなくいいのかという議論はしていなかったなと思って、経産省の委員会なんかでは結構出てきているテーマではありますので、入れなくていいのかというのもいま一度御検討頂きたいと思います。別にこだわるものではないです。

以上です。

【水口座長】 行動規範、署名は増えたけれども、実効性が伴っているのかという議論はあると思います。ありがとうございました。

ほかにいかがでしょうか。小野塚さん、お願いします。

【小野塚メンバー】 ありがとうございます。すいません。ずっと静かにしていたんですけれども、2点ほど申し上げたくて。

1つは、先ほど足達さんとかがお話になられた企業側のところと金融の接続の話は、ぜひ入れていただきたいなと思います。今日、あんまり投資家のエンゲージメントの話が上がっていないかもしれないですが、そこの部分では企業の側が、サステナブル投資だけであれば、投資家から言われたESGの対応をしていればいいわけですけれども、今、ファイナンスと広がった中で、投資家が主体となるというよりは、企業の側が主体となって自分たちの脱炭素計画をどう進めていきながら自分たちのビジネスモデルを強靱化していくかという話を、投資家とも、銀行、それからM&Aに関わる証券会社、もしかすると保険会社、CVCがあればVCとかと話していくことになると思いますので、その辺りの企業側のマテリアリティー、先ほど吉高さんもおっしゃられたその辺りとかも含めて、強化を望んだ上で金融もそれを後押ししていきたいというのが入るといいのではないかというのが1点です。

2つ目が、先ほどから話題になっている人材のところに関してです。先週、こちらにいらっしゃる多数の方にも御協力いただきまして、私の団体であります科学と金融による未来創造イニシアティブのところで年次カンファレンスをしたんですけれども、そのときにも、やはり人材の話は大変盛り上がりまして、そのときに出た話と、それから、以前この会議の中で文理融合の話がたしか話題としては上がっていたけれども、まだ今年、多分あまりアクションできていなかったポイントがあるんじゃないかなと思いますので、ちょっとそこを、来年以降の期待というところも込めて、各大学でそういった講座が設置されているという話とのあたりに、意識的に何か、例えば、文科省と何かコラボレーションできるであるとか、金融というある意味文系の話を、もう少し科学の観点から意識して、何事をするにも金融というのを意識して進めていくみたいなことを考える場をつくっていきたいであるとか、そちらに絡む文言が人材のあたりに入ってくるとありがたいなと思った次第です。

以上です。

【水口座長】 ありがとうございました。

大分いろいろな御意見をいただいておりまして、なかなか事務局的には大変だなと思いますけれども。この辺で西田さんから何かもしコメントがあれば。

【西田サステナブルファイナンス推進室長】 先ほどの順番のところは、この絵を初めのほうに入れて3ポツはそのままという構成がよいだろうというお話でしたですよね、あとは特に矛盾したり重なったりする御意見はなかったと思いますのでそのまま反映作業を行わせていただきます。

【水口座長】 岸上さんから手があがっていますので、岸上さん、お願いします。

【岸上メンバー】 すいません、何度も。

1点だけですが、前回もコメントさせていただいて、もし見落としていたら申し訳ないですが、特にこの中核的論点のところで、現状としては、アセットオーナーへの浸透というところで、スチュワードシップ・コードの実効性について、昨年度の際には、今年度にかけてまず実効性をということだったと思うので、実効性とアセットオーナーのところへの言及があってもよいのではないかなと思いました。

以上です。

【水口座長】 ありがとうございます。

ほかにいかがでしょう。大体出尽くしたと思ってよろしいでしょうか。

大変貴重な御意見をたくさんいただきまして、ありがとうございました。今日いただいた御意見を踏まえて、一旦、事務局でリライトしていただきまして、修正案を再び皆さんに御覧いただいて、御意見をいただいて、そこから先は座長に一任をしていただくという形で今年度の報告書をまとめていきたいというふうに考えておりますが、そんな進め方でよろしいでしょうか。ありがとうございます。また英語版も併せて作っていただくということですので、御了解いただければと思います。

それでは、よろしければ、本日の会議はここで終了させていただきたいと思います。御協力いただきましてありがとうございました。お疲れさまでした。

―― 了 ――
お問い合わせ先

金融庁 Tel 03-3506-6000(代表)

総合政策局総合政策課サステナブルファイナンス推進室(内線 2918、2770、2893)

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