財政投融資分科会(令和6年5月24日開催)議事録
財務省財政制度等審議会財政投融資分科会
議事録
令和6年5月24日
財政制度等審議会
財政制度等審議会財政投融資分科会議事次第
令和6年5月24日(金)14:25~16:22
財務省第3特別会議室(本庁舎4階)
-
1.開会
-
2.議題
- 産業投資について
質疑・応答
- 諸外国における財政投融資類似制度
(山内委員より概要報告)
質疑・応答
-
3.閉会
配付資料
資料1 |
産業投資について |
---|---|
意見書 |
土居丈朗委員 |
意見書 |
家森信善委員 |
意見書 |
冨田俊基委員 |
資料2 |
オーストラリア・シンガポールにおける海外調査について |
委員提出資料 |
豪州・シンガポール調査報告によせて |
出席者
分科会長 |
翁百合 |
奥理財局長 湯下理財局次長 藤﨑総務課長 大江財政投融資総括課長 田原資金企画室長 原山財政投融資企画官 大島管理課長 小多計画官 大江計画官 |
|
委員 |
丸田健太郎 渡辺努 |
||
臨時委員 |
有吉尚哉 岡田章裕 工藤禎子 小枝淳子 山内利夫 |
14時25分開会
〔翁分科会長〕少し早いですが、皆様お揃いでございますので、ただいまから財政制度等審議会財政投融資分科会を開会いたします。本日は、初めに産業投資についてご議論いただき、その後、本年3月、山内委員にご出張いただきましたオーストラリア及びシンガポールにおける財投類似制度の概要についてご報告いただきたいと思います。時間は2時間ということですが、盛りだくさんの内容でございますので、ご質問、ご意見など、できるだけ簡潔にお願いいたします。
それでは、産業投資について、大江財政投融資総括課長よりご説明をお願いいたします。
土居委員、家森委員、冨田委員より、本議題に係る意見書を頂戴しておりますので、併せてご紹介をお願いいたします。よろしくお願いします。
〔大江財政投融資総括課長〕ありがとうございます。それでは、本日もよろしくお願いいたします。
早速ではございますが、資料1の「産業投資について」という資料からご説明をさせていただきます。
目次をご覧ください。本日の説明は、まず、産業投資の概要としまして、産業投資のこれまでの歩み、また、近年の投資活動の状況やポートフォリオの状況についてご説明させていただきます。その上で、論点としまして3つ挙げさせていただいておりますが、産業投資の基本的在り方、産業投資にかかるガバナンス向上に向けた対応、それから産業投資の仕組み面の課題といったところを中心にご議論いただければと考えております。
まず、産業投資の概要でございます。資料3ページをご覧ください。
産業投資のこれまでの歩みをまとめております。時間軸を示す矢印に沿いまして、大きな制度変更や分科会での報告といった節目、また、その時々の財投計画における産業投資の主要分野をお示ししております。
左上、産業投資は、昭和28年に産業投資特別会計が設置されたことに始まります。当時、電力・海運・石炭・鉄鋼等の重要産業の整備を行うためということで、戦後間もない時期ですので、経済の再建、産業の開発及び貿易の振興といったことが目的として掲げられておりました。原資としては、一般会計からの繰入れを主なものとしまして、政府関係機関、融資系の機関を中心に出融資を行っておりました。
それから右のほうに参りまして、昭和60年ですが、NTTとJTの株式、公社の民営化ということで、その際に、両社の株式を一般会計から所属替えをして、産投特会の財源基盤を充実させることになりました。この配当の一部を技術研究の促進等に活用することになりまして、ご覧いただきますと円グラフで「研究開発機関」が大きくなっていることが特徴かと思います。また、このときに産投の目的から「経済の再建」が外されまして、その後は「産業の開発」及び「貿易の振興」という2つの目的が掲げられているところでございます。それが今に至っております。
以降、平成20年、平成26年、令和元年と、本分科会におきまして報告書をまとめ、対象分野の重点化を図りながら、産業投資を運営してまいりました。円グラフをご覧いただきますと、平成21年度以降、官民ファンド向けといったものが拡大してきていることが分かるかと思います。なお、官民ファンドの数値につきましては、DBJの特定投資業務を含む点にご留意いただければと思います。
次に、資料4ページをご覧ください。「産業投資の活用状況」としております。こちらの資料は4月の分科会でもご説明をさせていただきました。改めて簡単にご説明をいたしますと、このグラフの左側、産業投資ですが、近年、増加傾向が顕著となっております。右の円グラフは、過去10年程度の産業投資の投資累計額を機関別にまとめたものになります。DBJ、JBICというところ、また、日本公庫といった機関が主な機関となっております。また、官民ファンドについても幾つか掲載されております。こういったものが中心となっております。
資料5ページをご覧ください。現在の産業投資のストック、出資金残高の状況です。令和4年度末における各機関への出資金の残高は6兆6,692億円でございます。これを類型ごとに4つに分けておりますが、融資系機関が65%、官民ファンドが24%と全体の9割をこの2つの累計で占めております。
続きまして、資料6ページをご覧ください。産業投資を管理する財投特会(投資勘定)の損益を、これまでの累計の形でお示ししております。左側のグラフでございます。これまでに実現した利益の累計額ですが、こちらは収益が7兆9,347億円、費用の累計が5,249億円、これを差し引きますと、利益の累計が7兆4,098億円となっております。この多くは、NTT、JT両社の株式に由来するものですが、それを除いた純粋な産業投資としても、2.6兆円の利益を確保しております。
グラフの右側ですが、出資金残高1,000億円以上の機関における収益の状況をお示ししております。ご覧いただけますとおり、オレンジ色の部分がこれまでに実現した収益ですが、利益の大半がDBJとJBICから上がってきているものになります。
資料7ページをご覧ください。こちらは出資金残高に対する評価益、評価損という評価差額をお示ししております。図表のうち、令和4年度末の産投機関への出資金残高に対する評価差額を太枠で囲んでおりますが、合計でプラス3.1兆円となっております。内訳としては、こちらもDBJ、JBICが大きくプラスとなっておりますが、研究開発機関や一部を除いた官民ファンドについては、マイナスの状況となっております。なお、(注1)にございますとおり、この評価額といいますのは、各機関の純資産額に出資割合を乗じて算出しております。100%政府出資という機関もございますが、その場合には純資産額そのものとなります。
駆け足ですが、以上が産業投資の概要のご説明になります。
続きまして、論点でございます。資料8ページをご覧ください。
論点を大きく3つ挙げさせていただいております。太い部分ですが、1つ目が「産業投資の基本的な在り方についてどう考えるか」、論点2「産業投資のガバナンス向上のためにどのような取組が必要か」、論点3「現状の産業投資の仕組みについて改善できる点はないか」ということですが、詳細につきましては、この後のスライドで順を追ってご説明しますので、ここでは省略させていただきます。
まず、論点1「産業投資の基本的在り方」ですが、資料の10ページをご覧ください。平成26年度及び令和元年度報告書の概要をお示ししております。こちらは4月の分科会でもご説明いたしました報告書です。その中で産業投資に関係するものを抜き出しております。
特にポイントを赤字でハイライトさせていただいておりますが、一番上のほう、産業投資の役割は資本性資金を呼び水として供給し、民間による資金供給を誘発する質的補完であるといったこと。また、出資者として、ガバナンスの向上をさせていく必要があるということ。その辺りが述べられております。
令和元年の取りまとめの中でも、そういった産業投資の役割・課題、政策性と収益性という2つの要件それぞれに応じたガバナンスを講じる必要でありますとか、管理運営に係る具体的な取組が示されております。
こういった方向性に大きな変更はないものと考えておりますが、改めて本日、皆様のご意見を頂ければと考えております。
次に、資料の11ページ目でございます。こちらは令和元年度の報告書におきまして、産業投資のプリンシプルとして整理をされているものです。こちらは4月の分科会におきまして、渡辺委員からプリンシプルを定めてはどうかといった意見書をいただいたところでございます。4月の議論は財投全体ということでしたので、こちらは産業投資についてということではございますが、参考までに改めてご紹介をさせていただければと思います。
続きまして、論点2「産業投資にかかるガバナンス向上に向けた対応」でございます。資料の13ページ目をご覧ください。産業投資に関するガバナンス向上に向けた対応の全体像をまとめております。
大きく色の部分4つございますが、これまでの取組に加えまして幾つか、ガバナンス向上に向けた対応ということで、分類をした形でご説明をいたします。
まず、1つ目、個別投資先のデータの取得・分析、公正価値評価の活用といった収益性にかかるモニタリングの高度化。2つ目が、産投機関の経営陣との直接対話等による各機関への建設的関与。3つ目が、左下でございますが、収益懸念に対する実効的対応。そして、借入れに対する規律の強化ということでございます。
こういった柱ごとに各取組を行って、各機関の収益の状況見通しやその改善に向けた取組を踏まえ、資金配分・ポートフォリオ管理を行っていきたいと考えております。以降のスライドで、それぞれの柱についてご説明をさせていただきます。
資料14ページです。まず、収益性にかかるモニタリングの高度化です。そのうち個別投資先のデータの取得・分析についてでございます。
モニタリングにつきましては、先ほど簡単にご紹介しました令和元年の報告書の内容も踏まえた形で現在も実施をしております。各機関ごとに取決めに基づいてモニタリングレポートを提出いただいているところですが、官民ファンドなど様々な機関の間で比較可能な形式ではなく、また、主に累積損益額に着目した管理となっておりますので、課題を早期に発見するといった深度あるモニタリングができていないケースもございました。こういった状況を踏まえまして、出資者の立場でより主体的に官民ファンドの個別投資先のデータを横比較が可能な形で取得し、得られたデータについて多角的に分析を行い、その結果を受けて、各機関による運営改善の働きかけですとか、効率的な資金配分、今後の財投計画も念頭に置いて検討につなげるといったことを考えております。
右側の分析における着眼点、あくまでイメージとして例を示したものでございますが、例えばポートフォリオ全体を分析することで、投資の傾向ですとか、収益に大きな影響を及ぼし得る懸念案件を早期に把握する、そして適切な対応を促す材料として活用していくといったことを考えております。
また、我々としてこういったデータの分析をした上で、結果について、分科会の中でも今後お示ししていければということも念頭に置いております。
続きまして、資料の15ページ目でございます。同じく収益性にかかるモニタリングの高度化です。こちらは公正価値評価の活用、大型案件への対応とさせていただいております。
収益性にかかるモニタリングの高度化を図る上では、官民ファンドのポートフォリオの状況を正しく把握することが重要と考えております。現状では、官民ファンドについて、取得原価を貸借対照表価額としているところがございますが、国際的には公正価値評価の実施が標準となってきている。左下の箱の中にもございますとおり、国内のVCについても導入に向けた動きが経産省、金融庁での議論も含め活発化しております。官民ファンド、VCと組織の形態は異なりますが、公正価値評価を実施すれば、現在価値を踏まえてより適切にポートフォリオ管理ができていくという点では同様でございますので、官民ファンドについても公正価値評価の実施を求めるべきではないかと考えております。こういった点についてご議論いただければと思います。
また、右側の四角でございますが、4月の分科会で複数の委員から、官民ファンドによる大型投資案件について、産投の収益性にも大きな影響を与えるということを踏まえ、特段の注意を払う必要があるといったご指摘をいただきました。ですので、こちらに具体的な例も示しておりますが、実施機関・所管省庁に対して、投資決定や投資後の管理等において特に慎重な対応を今後も求めていきたいと考えております。
資料16ページをご覧ください。次に、各機関への建設的関与ということでございます。これがガバナンス向上の2点目の論点でございますが、各機関の経営状況等の監督については、理財局としましても、予算編成過程等で必要に応じて確認しておりますが、基本的には所管省庁に委ねているのが現状でございます。
他方、今後は産投の有効活用や出資金の保全といった観点から、経営陣を含めた各機関との対話や実地監査の活用により、運営改善を促すといった主体的・建設的な関与がより必要になってくると考えております。また、ファンド業務についての新たな知見を収集できる場としまして、つまり、各官民ファンドの横での連携ということになりますが、Plusというプラットフォームが既にございます。そちらへの参加を促しております。引き続きファンド運営の効率化や、官民ファンドを含む政府機関との連携促進を我々としても進めてまいりたいと考えております。
次に、資料17ページでございます。「収益懸念に対する実効的対応」としておりますが、産投機関の収益性に懸念が生じた場合の対応について、その内容や原因に応じて取り得る対応をあらかじめ整理できないかと考えております。
例えば、左側でございますが、個別案件での相当程度の損失の発生や、機関全体の収益の低迷が見られる場合には、発生原因等について適時、深度ある報告を求めるということですが、そうした状況が個別の投資判断だけではなくて、機関の投資方針等、より深い原因があると考えられる場合、また、そもそもの組織態勢に構造的な問題があると考えられるような場合などについては、それぞれ記載のとおり、相応の対応を求めていくことを考えております。
また、財務省から経営改善の要請を行っても、なお状況が変わらないといった場合には、下の箱に書いてございますような、翌年度以降の財投計画において厳しい対応を行う、また、産業投資の執行を留保するですとか、株主総会において議決権の行使によって、経営陣についての選解任等といったところについても踏み切ることは十分にあり得るといったことを明確にしておきたいと思います。一義的には、官民ファンド等の法律上の監督権限は所管省庁であることはもちろん承知しておりますが、出資者たる理財局としまして、より自律的な対応を取るということが必要ではないかと考えておりますが、この辺り、ご意見を賜ればと思います。
次に、資料の18ページをご覧ください。官民ファンドの中には、出資の原資として産業投資に加えて政府保証借入の活用を想定する機関がございます。その中には、財投計画の対象とならない、期間5年未満の短期の政府保証を想定する先がございます。現行制度上、財投計画の対象となる政府保証は、資源配分機能に着目しまして5年以上のものと、長期運用法という法律によって定められております。ただ、それより短いものにつきましても、そのレバレッジ効果や実質的に資源配分機能を担っている面もあるという部分も考えられます。そういったものについては、産業投資と一体的に管理する必要があると考えておりますが、皆様のご意見をいただければと存じます。
以上、少し長くなりましたが、ガバナンスに関する大きな論点の2番目が終わりまして、次が論点3「産業投資の仕組み面の課題」となります。資料の20ページをご覧ください。
こちらの資料では、財投特会投資勘定の資金の流れを示しております。左側が歳入、右側が歳出となりますが、投資勘定につきましては、財政融資のような財投債による必要額の資金調達ができる仕立てにはなっておりません。能動的な資金調達の手段はなく、また、勘定内で投資財源を留保して財源を平準化するといった仕組みもございません。このため、毎年度の財投計画編成においては、各年度内に生じると見込まれる歳入、これは左の歳入にございますとおりNTTやJTからの配当金ですとか、その他各機関からの納付金などといったフローでございますが、これに厳格に制約をされるという形で産投の計画額を決めていくという運用を行っております。
こういった仕組みでありますので、歳入に余裕がある場合には問題ないのですが、歳入が減少する場合には機動的にニーズに応えることが難しい。また、右側の下のほうに書いておりますが、仮に産投機関において、翌年度以降に出資ニーズが増えていくと見込まれる場合であっても、財源を勘定内に留保できない。これは歳入歳出額を一般会計繰入という仕組みになっておりますので、できないといった問題もございます。
続きまして、財源の変遷ということで、資料の21ページをご覧ください。こちらは産投の財源について、冒頭のご説明と似ておりますが、産投が始まって以来の歴史を時系列でお示ししております。
冒頭申し上げたとおり、もともと設立以降は投資財源は一般会計への依存というのが強かったところですが、昭和31年度には「投資財源資金」が設置されまして、当時は一般会計でも財政黒字がございましたので、余裕があるものを、投資財源の不足を補うためにということで受け入れていた時期もございました。また、昭和33年度から43年度におきましては、貸付財源に充てるための産投外債の発行も行ってございました。その後、財政事情の悪化を背景としまして、一般会計からの受入れが難しくなってまいりまして、昭和59年度をご覧いただきますと、211億円という数字にまで落ち込んだ時期もございました。
こうした中で大きな転機となりましたのが、先ほどもご説明した昭和60年のNTT・JT株の一般会計からの所属替えでございまして、これ以降はNTT・JTという両企業が成長していくのに合わせて配当金収入も増加をしていくということで、現在では産投に必要な主な財源として不可欠な存在となっておるというのは皆様ご案内のとおりでございます。
続きまして、資料の22ページ、投資勘定の主な収入の実績でございます。こちらはご覧いただきますとおり年度によって大きく変動がございます。歳入は、先ほども申し上げたとおり、我々が主体的に決めるものではなく、NTTやJT、また、産投の各出資先の機関の業績等によって外生的に決まるものでございます。
収入の内訳としましては、NTTの株式とJTの株式が下の青と緑の部分ですが、大部分を占めております。また、近年は臨時的な収入として株式売却収入、濃い青の部分でございます、このNTT株式の売却、株式売却収入ですが、こちらが大きな額として数年置きに登場するといった構造になっております。
資料の23ページでございます。産投支出への対応状況として、当初の要求額と当初計画額をお示ししております。4月の分科会でもご説明いたしましたが、足元におきまして、サプライチェーンの強靱化ですとかスタートアップ支援、また、GX等の政策課題を踏まえまして、産投を活用するニーズが高まってきているところで、要求額も大きく伸びているところでございます。令和6年度の要求額は8,040億円でございました。これを、計画額としては4,747億円という額にしたところでございます。
資料24ページをご覧ください。先ほども少し触れましたが、投資財源資金という、法律上認められております資金についてご説明をいたします。
こちらは一般会計に余裕があるときに、投資財源の不足を補うための原資として、あらかじめ一般会計から受け入れるための資金ということで設けられておりまして、昭和32年から38年度までの間に合計1,300億円という額を受け入れてまいりました。ただ、それ以降、昭和38年度を最後に一般会計からの受入れは行っておりませんで、現在は実質的には機能していないというものでございます。
こうした状況も踏まえまして、資料8ページの論点としてお示しいたしました財源平準化や能動的な資金調達の仕組みが必要ではないかといった論点を掲げさせていただきましたので、この点についてご議論いただければと存じます。
以上、各論点につきまして、ご説明をさせていただきました。なお、資料の25ページ以降に参考資料をつけさせていただいておりますが、こちらについては、時間の関係がございますので、説明は省略をさせていただきます。
それでは、皆様からのご意見を賜りたいと思いますが、冒頭、翁会長からございましたとおり、本日ご欠席の委員のうち、土居委員、家森委員、冨田委員から意見書をいただいておりますので、引き続きで恐縮ではございますが、私から読み上げをさせていただきます。
まず、土居委員のご意見でございます。
まず、1つ目、「産業投資のガバナンス向上について」ということで、社会的意義がありながら民間が取りにくいリスクについて、政府がそのリスクを部分的に取るために産業投資を使うことは、今後も産業投資として引き続き役割を担うことがあり得る。ただ、その際、国民への説明責任を果たすためにも、当該事業の当事者に経営の規律付けを与えるためにも、産業投資のガバナンスのさらなる向上が求められる。
その一環として、収益性にかかるモニタリングの高度化のために、官民ファンドにおける公正価値評価の実施を求めることは効果的であり、積極的に進めるべきである。
加えて、出資者たる理財局と、事業を実施する産投機関と、産投機関に対して法律上の監督権限を持つ所管省庁の関係を洗練化する必要がある。
この三者の本来あるべき姿として、産投機関が事業を実施する際に、効率的・効果的に事業を実施しているかや経営や財務に問題がないか等を所管省庁が監視し、理財局がその全体をガバナンスする関係が求められる。特に、産投機関が独立行政法人である場合、我が国の独立行政法人制度が英国のエージェンシー制度を参考にして制度化されたことを踏まえると、プリンシパル・エージェント理論の用語法に倣えば、所管省庁はプリンシパル(依頼人)であり、独法はエージェント(代理人)であることが求められる。
しかし、当分科会においてもこれまでに見受けられた関係として、理財局や当分科会に対する産投機関の事業や財務の状況や善後策等についての説明ぶりから、監督権限を持つはずの所管省庁が産投機関と事実上一蓮托生となっていて、産投機関の監視が不十分だったことがうかがえる場面があった。この状態は、プリンシパルたる所管省庁がエージェントである産投機関の虜になっているかのようであり、産業投資として効率的・効果的に資金供給を行う上でも支障を来しかねない。
今後は、前述した本来あるべき姿を踏まえて、産投機関とその所管省庁にそれぞれの職掌を全うしてもらうことを通じて、産業投資全体のガバナンス向上にも資すると考える。
そして、産投機関とその所管省庁の関係が不健全になっていないか等を監督する意味でも、理財局は各産投機関への建設的関与を深めるべきである。産投機関への実地監査の活用もこの観点から充実させていくことが望まれる。
2つ目の項目としまして「産業投資の基本的な在り方と現状の仕組みの改善点について」、産業投資の役割は、当分科会で取りまとめた「財政投融資を巡る課題と今後の在り方について」(平成26年6月17日)と「今後の産業投資について」(令和元年6月14日)で示された基本線を維持しながら、時代の要請に応じた改善に取り組むことが求められる。
ただ、コロナ禍を経て、我が国の財政状況は一段と悪化している点を、産業投資も踏まえる必要がある。我が国の一般会計では、国債(建設国債や赤字国債)を増発して渡し切りの政府支出を増やすことが近年多かった。中には、成長分野への政府支出でも、追加的な財源を増税で賄うことはしなかったために、結果的に国債に依存することになっていた。建設国債と赤字国債の償還財源は、租税であり、直接的な応益負担を求めることはない。
しかし、成長分野への投資は、成果が上がれば受益者には経済的利益がもたらされる。確かに、そうした経済的利益の一部は法人税等によって国庫に還元される面はあるが、それはかなり間接的であって、応益負担の原則を徹底したものとは言い難い。
他方、財政投融資には、直接的に応益負担を求める仕組みがある。出融資先で上がった経済的利益の一部が、財政融資資金は利払いとして、産業投資(出資)は配当や国庫納付として、直接的に国庫に還元される。
依然として基礎的財政収支赤字が多く残る国の一般会計において、さらなる財政収支の改善が求められる中で、成長分野への投資を今後も一般会計がその多くを担うというわけにはいかない。産業投資が担うにふさわしい成長分野への投資があれば、一般会計に代わって産業投資がそれを担うことが考えられる。それは、応益負担の原則をより徹底することにもつながり、過度な租税負担を避けることにも資する。
そうした改善を進めるためには、産業投資において、機動的かつ安定的に投資の財源を確保できる仕組みが必要となる。特に、年度間の財源平準化や能動的な資金調達の仕組みが完備されているわけではないから、産業投資のガバナンス向上を前提に、新たな仕組みの導入を検討すべきである。
以上が土居委員の意見でございました。
続きまして、家森委員の意見を読み上げます。なお、本日欠席する可能性がありますのでという形でいただいておりますが、本日はご欠席と伺っております。
それでは、意見書ですが、産業投資の基本的な役割について。これまでも社会の要請に応じて重点分野を変えてきましたが、これからも、政策性と収益性のバランスを取りながら、民間金融の呼び水としての役割を発揮するべきです。我が国にとっては重要であるが、民間だけでは実現できない投資プロジェクトを目利きする能力を高めることが必要です。
産業投資にかかるガバナンス向上に向けた対応について。各機関への建設的関与を強化することには賛成です。しかし、箸の上げ下ろしにまで口を挟むようになると、現場の創意工夫を阻害してしまいかねないので、慎重に行っていく必要があります。基本は、各機関の取締役会や理事会、投資委員会などがきちんと機能しているかを監視することではないでしょうか。
産業投資の仕組み面の課題について。産業投資の資金源が実質的にNTTとJT株の配当が大半となっているために、資金需要に柔軟に対応するための工夫を考えることは必要です。投資財源資金という制度があるというご紹介がありましたが、実際には利用されていないようです。ここに一般会計から組み入れていただくということも考えられますが、既存の産業投資による出資分を第三者に売却することなども検討してみてはどうでしょうか。
以上が家森委員の意見書でございました。
続きまして、冨田委員からの意見書でございます。
「産業投資の在り方の検討を始めるに際して」、産業投資の在り方の検討においても、それに先立つ事業の評価から始める必要がある。例えば、平成20年6月の『今後の産業投資の在り方について』では、基盤技術研究促進センターの出資制度について、①基礎的基盤的技術が実用化製品化による特許料収入に結びつかなかったこと、②複数の企業等の出資により研究開発プロジェクト会社を設立し共同研究を実施する方式は、事業化するのは各企業であるので、実用化の最終段階まで競合する企業間で共同研究を継続することは困難なことなどを指摘し、その後の教訓としてきた。
しかし、旧産業革新機構及びJICの個別事業について、当分科会は管理・モニタリングなどの手続的な事項を除き、政策目的や政策効果など実質的な事項について議論ができていない。例えば、旧産革機構のJDIへの出資目的は何であったのか、国内中小型液晶ディスプレイ企業の再編・国際競争力の観点から政策効果はあったのか、出資損との関係などを総括し、今後の産業投資に生かすべきではないか。事務局の見解をお伺いしたい。
論点1「産業投資の基本的な在り方について」、資料1の11ページに記載がある産業投資のプリンシプルは、産業投資の目的、投資組織、投資戦略の在り方を高く掲げたもので、3つの原則は財務省、産投機関、関係省庁、投資家など関係者に共有されてきたものと思われる。
産業競争力強化、地政学リスクの高まりに対するサプライチェーンの強靱化、脱炭素経済構造への移行など、国による産業支援の必要性が高まってきている状況の下で、この原則を踏まえて、産投出資と一般会計による出資・補助金・交付金とは異質であることについて明確に示すことが今必要である。
『財政投融資を巡る課題と今後の在り方について』(平成26年6月)37ページに、出資金は「出資者に対して収益を還元する必要のある資金で、・・・産投出資は元本を上回る一定の収益が見込まれる事業を対象としている」と記されているが、これをより具体的に示す必要があるのではないか。
論点2「産業投資のガバナンス向上に向けた対応について」、JICについて、「ファンドによる投資判断は各ファンドの運営者による意思決定に委ねる」と迅速性を重視した形式的な規定が、本分科会令和5年11月17日資料1の8ページの図の中に記されている。
しかし、大型案件の場合、分散投資によるリスク管理は適用できないこともあり、資料1の15ページに指摘があるように、投資決定時点において特に慎重な対応が求められる。
大型案件は投資決定に先立ち、経済条件、技術革新のテンポ、内外の競争条件などについての幾つかのシナリオの下で、事業が生み出すネットキャッシュフローを示し、そのNPVが出資額を上回るように事業がきちんと設計できているのかどうかについての多面的な検討を、主務省は出資者である財投特会に対して、当分科会で十分な説明を行い、国民に開示する必要がある。
また、JICのサブファンドは財投計画外の短期の政府保証借入が可能とされているが、ファンドによる借入は産投からの出資金のリスク・リターンに大きな影響を与えるので、財投計画外に区分されているとはいえ、資料1の18ページに記載があるように短期借入も産業投資と一体的に管理できるように、規律付けることが必要である。
論点3「産業投資の仕組み面の課題について」、前回の分科会で申し上げたように、財政融資とともに産投出資もはじめに原資ありきではなく、「はじめに政策ありき」の観点から、計画が編成される必要がある。そのためには、産投会計の財源平準化のための財源留保措置などが必要である。
同時に、財投計画の編成段階で事業の政策性と収益性の精査が必要であり、モニタリングの段階においてもその高度化を収益性に関する事項に限定するのではなく、政策性についても特に大型案件については出資者として定期的なレビューなどで政策効果を検証することが必要である。
以上、3委員の意見書をご紹介いたしました。
冨田委員からございました、事務局の見解をお伺いしたいというところがございましたので、こちらに対する我々の、取りあえずの回答を今この場でご紹介させていただきたいと思います。併せて冨田委員に対しましては、この会議の後にご報告したいと思います。
先立つ事業の評価が必要とご指摘をいただいている点につきましては、例えば、去年6月の分科会におきましては、JICの横尾社長、また、INCJの志賀社長にご出席いただきまして、JOLEDの案件について丁寧にご説明いただくなど、実施しております。
当分科会において、こういった案件のレビューは今後も必要に応じて実施をしていく考えでございます。とりわけ大型の投資案件につきましては、本日の分科会の資料でもご説明しました。また、去年6月の分科会でも資料に入れておりますが、産業投資の収益性に大きな影響を与えるということを踏まえて、JIC及び経産省に対して、投資決定や投資後の管理等において特に慎重な対応を求めることにしております。
去年11月の分科会におきましては、JICの運用期限2050年までの延長に関して、中期的な投資活動の方針とともに、投資規模の検討やその裏づけとなる資金計画の作成を求めるなどとしております。こういったことも踏まえまして、今後も当分科会でご議論いただく予定で考えております。
他方で、先ほど家森委員からいただいたご意見の中にもございましたが、各機関への建設的関与を強化することには賛成だが、箸の上げ下ろしにまで口を挟むようになると、現場の創意工夫を阻害してしまいかねないといったようなことをいただきました。こういったご意見も考慮する必要があると認識しております。我々が主体的にどう絡んでいくかというバランスが難しいところはございますが、我々としましては、ガバナンス面を中心として、より主体的に関与していきたいと考えておりまして、まさに本日の論点の2でございますガバナンスに関する資料も、そういった問題意識で用意させていただいたところでございます。
なお、政策面につきましては、一義的には主務官庁が責任をもって関与すべきものであるといったような部分はやはりございまして、主務官庁に対して、より一層しっかり対応するように、そういったこともしっかり求めていきたいと考えております。
大変長くなりましたが、私からは以上です。
〔翁分科会長〕ありがとうございます。
それでは、ただいまのご説明を踏まえまして、委員の皆様からご意見、ご質問をお願いしたいと思います。こちらの会場にいらっしゃる皆様は、名前の札を立てていただきますようお願いします。オンラインでご出席の皆様は、チャット欄、または挙手ボタンでお示しください。こちらで確認しながら指名いたしますので、そのままお待ち願います。
なお、ご発言の際に資料を引用される際は、資料番号と該当ページをおっしゃっていただくようお願いいたします。
それでは、どなたからでも結構ですので、よろしくお願いいたします。
では、まず岡田委員、お願いいたします。
〔岡田委員〕読売新聞の岡田です。本日はありがとうございます。
何点か質問がありまして、まず、以前にも伺いましたけれども、財源を機動的、財源面を柔軟にという点ですが、これまでは産投の財源の枠がはまっていたので、その枠の間でということでやってきたものを、もう少し時代の要請に応じて、少し柔軟に広げてということなのかと思いますが、今までは逆説的に、この枠があったので枠の範囲でということであったかと思うのですが、野放図にそんなに増やしていくつもりはないというお話だったかとは思いますが、それでも、定性的な経済安全保障とかサプライチェーンの強靱化は非常に概念が広いので、一体どこまで拡張して考えるのか、数字的なものは難しいにしても、何がしか目安のようなイメージがもう少しないのかと思ったのが1点です。
ここのガバナンスの向上というのも、それをどれぐらい柔軟に拡張していくかということとの兼ね合いで、柔軟な部分が大きくなればなるほど、ガバナンスもより強く強化するということになろうかと思いますので、そのバランスというときに、どれぐらいの、どんな拡張のイメージがあるのかというのが質問です。
その際に、この資料にあります、14ページですとかあるいは17ページ、このモニタリングの高度化等を理財局の方々がというときに、人のイメージで、例えば官民ファンドに来られている方々というのは、そこで何らかの成果を残して、また民間のほうに戻っていってということで、その意味で成功するということに強いインセンティブと責任感を持ってやっていらっしゃるのかと思いました。
こちら理財局の場合ですと、インセンティブという言い方がいいのか、チェックする役割を、例えば財務省の人事のローテーションでも、結構順番に何年かごとに変わっていくということも多いかと思いますし、そもそも民間でプロフェッショナルの方がやっていらっしゃるところを、モニタリングというのがどんどん深いコミットメントになっていくと、その専門性のような点で、どの程度できるのか。また、そのインセンティブというか、民間の場合は成功して利益が出てということかと思いますが、チェックの場合に、失敗したら自分の、理財局で働いていらっしゃる方々が、失敗してマイナスの評価になるとよくないかなと思ったら、かなり保守的にというふうになる。そんなことはないのか、その辺り、全体としての、柔軟に広げていくということと強化していくバランス、理財局側の態勢も含めて、その辺りはどのようにお考えでしょうかというのが質問です。
以上です。
〔翁分科会長〕ありがとうございます。
今の段階で少しお答えになれることがありましたら、お願いします。
〔大江財政投融資総括課長〕ありがとうございます。それでは、岡田委員からいただいたご質問、大きく2つかと理解しております。
まず、1つ目の柔軟に広げるということ、増やすのはどれぐらいのイメージかということございましたが、また、大きくなったらガバナンス強化をしていかなければいけないのではないかというお話ございました。むしろ逆で、我々として、拡大ありきで考えているわけではないということは、この場で改めてはっきり申し上げておきたいと思います。
むしろ、土居委員からの本日の意見書でもありましたが、あくまでもガバナンスが強化されて、収益性という部分を我々としてもある程度自信が得られるようなものでなければ、本来は産業投資というものは出すべきではないと考えております。その考えは、一切変わるものはございません。
ですが、一方で、先ほどご説明したような、財源の構造が非常に硬直的で、また、はっきり申し上げて、60年間使われてない制度がそのままになっているというのは、やはり現状において何らか変えていく必要があるのではないか。例えばNTTやJTの業績によって大きく配当は左右されますので、ある年に突然大きくマイナスになるといったことも可能性としては考えられるわけでございます。そうしたらもう産投、投資というのはやらなくてもいいのかというと、最近のニーズを踏まえましても、そういったことではないと思いますので、そういった意味で財源の平準化を図りたいといったようなことでございますので、どれぐらい拡張するかというイメージは全くございません。まずはそういった問題認識でガバナンスの向上を図りながら、将来的なそういったニーズというのもあるかもしれませんが、拡張ありきではないというところを、まず、お答えさせていただきたいと思います。
もう一つ、人の問題でございますが、これをどのようにやっていくか、失敗を恐れて保守的になってしまうのではないかということでございました。これはかなり個別性のあるところでもございますので、一概に申し上げることは難しいとは思いますが、まず、我々は当然、産投機関から要求があって、それについてどのように措置していくかという議論がございますので、我々も当然、政策的に意義があるという、各機関なり主務官庁の説明で納得が得られるものであれば、きちんと措置をするというのは当然のことでございます。そういった原則は変わりはないと思います。ただ、その中でもより収益性というところを意識してやっていくといった心構えで今後も臨んでいくのだと思います。具体的なモニタリングの在り方といいますのは、1人1人の判断でやるやらないというものではなくて、むしろきちんとした、今日も統一的なフォーマットという横串的にということを申し上げたと思いますが、まず、そういう組織全体としてどういう、フォーマットも含めて枠組みを構築した上で見ていくかということですので、個々人の評価といったところで、あるいは組織としてどのように対応していくかということではないかと考えております。
〔岡田委員〕ありがとうございます。
〔翁分科会長〕それでは、次に、工藤委員、お願いします。
〔工藤委員〕ありがとうございます。では、私はコメントを4点させていただきたいと思います。
まず、1点目、産業投資について、評価として、呼び水として資本性資金を供給することで、民間金融による資金供給が誘発され、スタートアップ支援など時々の課題の解決に一定の役割を果たしてきたと、前向きに評価をしております。前回の分科会でも申し上げたのですが、近年社会変化のスピードが増して、不確実性も増す中で、リスクマネー供給に対する需要というのは拡大しており、産業投資の重要性は高まっております。そのため、より機動的に対応できるように、財源の確保策が検討されるべきだと思っております。財源余剰分の財投特会への留保を可能とする法令改正は、検討に値すると考えているほか、我が国の財政状況を踏まえると難しいことは理解しておりますが、やはり、一般会計予算からの限定的な繰入れということも今後検討に値すると思っております。
2点目、一方で、これも前回の分科会で申し上げたのですが、ガバナンスに課題を抱え、収益性を確保できなかった財投機関も、やはりこれまで存在してきたということだと思っています。本日事務局からご説明をいただきましたが、収益性に深刻な懸念があるにもかかわらず、改善に向けた必要な対応が行われていないと判断される機関に対して、追加の財政措置を行わないことや計画済みの産業投資の執行を凍結すること、役員の選解任等の議決権行使を検討することは、ガバナンス改善のために重要であると考えております。方向性に賛同いたします。
さらに、収益の大部分をDBJ及びJBICが生んでいる現状や、産投機関間での実際の出資先の重複が一部発生していることを踏まえますと、収益性に深刻な懸念を抱える産投機関について、組織の統廃合を含めた抜本的な改善対応を果断に実施することもあってよいと考えます。
他方、あるべき収益性については、言うまでもないかもしれませんけれども、投融資のステージや投融資先の内容によって、機関ごとに異なっていると理解しておりますので、それに応じた管理が必要だと思います。国として民間が取れないような、収益性対比でリスクの高い案件にも積極的に投資いただいております。産投機関には、初期のステージにおける資金供給を担い、ぜひ産業を育ててほしいと思います。
そういった観点も踏まえまして、収益性に深刻な懸念を抱える産投機関の統廃合に加えて、国として支援すべき産業の変化というのもあると思いますので、それを踏まえた産投機関の統廃合や、場合によっては新設というのも検討していっていただいていいのではないかと思います。また、さきに述べたように個別の機関に求められるべき採算性は異なると考えられる中、むしろ産投のポートフォリオ全体での目標リターンを持つことがあってもよいと思います。
3点目は、モニタリングの高度化という観点では、公正価値評価の活用が検討されているとのことでありますが、適切な方向性だと思います。公正価値評価の導入には、費用の問題や対応できる監査法人が限定されているという課題がありまして、民間のベンチャーキャピタルでも普及が途上であると認識しておりますが、一方で、官民ファンドが公正価値評価を正しく導入することにより、我が国での普及の後押しにもつながっていくのだと思います。
4点目、最後でございますが、本日の分科会では主に収益性に関わるガバナンス向上が取り上げられておりますけれども、収益性に懸念がある産投機関は政策性にも課題を抱えている事例があるのではないかと思います。曖昧な政策目標と、それに伴う投資案件選別の規律の弱さが、出資件数や金額ありきの産投機関運営につながって、確固たる事業計画を持たない事業にも資金を提供することにつながった事例もあるのではないかと問題意識を持っております。
今後、政策性の高次化を促す取組といった点についても、ぜひ、一層の検証を行っていただきたい、行っていきたいと思います。
以上でございます。ありがとうございました。
〔翁分科会長〕どうもありがとうございました。
それでは、有吉委員、お願いします。
〔有吉委員〕有吉でございます。まず、全体として、ご用意いただいた資料1について、ご提案というか、方向性としてお示しになっていることには、全く違和感はなく、こういった方向で検討を進めていかれるのがよろしいのではないかと思っております。その上で、論点の1から3まで、特に論点2を中心に所見を申し上げさせていただきたいと思います。
まず、論点1の産業投資の基本的な在り方についてということでございますが、前回もコメントをさせていただきましたとおり、産業投資の意義や役割の重要性は今後一層高まっていくものと考えておりますので、そのことを前提に、在り方も考えていくべきだと思います。
この点、産業投資、さらにはそこから産投機関が民間に資金を供給していくことについては、資金面の意味合いももちろん大きいですし、それからよく言われます呼び水効果も、実際に、民間側も非常に大きく評価しているものだと思います。
加えて、産投機関側ないし官の側からの意図ではないかもしれませんが、実際の効果として、民間企業においては、官民ファンドあるいはそれ以外の産投機関から出資を受けていることが一種のお墨つきとなって、ビジネスの面にも大きくプラスになっているという実態があることも、産業投資の意義の中に含めてよいのではないかと思っております。
その上で、論点2の産業投資のガバナンス向上という観点について、4点ほど申し上げさせていただきます。
1点目は、これも前回若干のコメントをさせていただきましたとおり、限られた資金の中で官が資金供給に取り組むことについて、意義が高い投資先に効果的に割り振るということを、回収可能性の点と併せて、考慮していく必要があるのではないかと思います。すなわち、民間が出しにくい、あるいは民間だけでは資金が出しにくい先に資金を回すということを、政策目的や回収可能性とは別の次元で重視していくべきではないかと思います。
そういった意味で、官民ファンドや、それ以外の産投機関について、その収益が上がっているから成功ということでは恐らくないと考えておりまして、ディープテック的なスタートアップに投資をした結果、たまたま大成功して収益が上がるということは立派なことだと思いますが、そうではなくて、有力なベンチャーキャピタルがこぞって出資をしているような有力なスタートアップに、官民ファンドも乗っかりました、ということで収益を上げても評価すべきではないと思うのです。
もちろんそれ以前に収益性が非常に悪い、損失を垂れ流すといったような回収可能性自体に問題がある産投機関について、しっかりとしたモニタリングが必要ということは言うまでもないわけでございますが、そういった回収可能性という観点に加えて、官が資金を出すことの意義という観点も、十分留意してモニタリングを行うべきである、ガバナンスについてチェックをしていくべきであるというのが1つ目のコメントであります。
それから2点目のコメントとしまして、産投機関の中には、例えばディープテック的なスタートアップに対する資金供給支援の制度を用意していたとしても、実務の態勢や人的なリソースが十分に備わっていなくて、枠組み、制度はあるものの、実際には機能していないとか、年間で数件の対象しか支援ができないとか、そういった実態もあるらしいと聞いております。こういった優れた制度を用意したり、政策目的や産業支援に取り組むための枠組みはできているにもかかわらず、必ずしも態勢やリソースが備わってない産投機関について、もちろん単純に人手を増やすことは簡単ではないと思いますが、産投機関の役割、あるいは産業投資の役割というものが徐々に変わってきていることも踏まえて、例えば態勢の見直しを求めるとか、人の配置を変えることを促すとか、こういった発想でのガバナンスを出資者である財投の役割として果たしていくことも考えていくべきではないかというのが2点目のコメントであります。
それから3点目としましては、こちらも前回コメントさせていただいたところの関連でございますが、ポートフォリオとしてのリスク、損失の管理という発想を強めてもよいのではないかということであります。公的な資金の性質上、例えば今年100の利益があった産投機関が、来年その100を自由に使ってよいということではないと思うわけでございますが、ただ、一旦上げた利益の範囲内であれば、ある程度緩やかに柔軟に、それぞれの政策目的に従ってお金を使うことを認めるということもあり得るのではないかと考えます。これは産投機関側にとっては運用の柔軟化ということになりますし、逆に、それをモニタリングする立場としては、駄目なところにリソースを注ぎやすくなるという意味合いもあると思いますので、ポートフォリオによるリスク、損失の管理という観点を、時間軸としても、それからその時点、スポットにおけるポートフォリオとしても、両面でそういった枠の中でのリスク、損失の管理という発想があってもよいのではないかというのが3点目でございます。
4点目は、本日の資料でも何点か出てきておりますとおり、公正価値評価の取組を進めるとか、ベンチャーキャピタル・プリンシプルを金融庁で準備しているとか、そういった民間の投資ファンド、ベンチャーキャピタルなどに関わる制度の動きが昨今見られます。これもご説明があったとおり、民間のそういった取組が直ちに官のファンドであったり、官による資金供給に直結する、あるいは同じルールが適用されるというものではないと思うのですが、参考にできるところはぜひ参考にしていただいて、先進的な民間の取組を官の面でも採用して、使えるものは使っていただきたいと思っているというのが論点2についての最後のコメントであります。
論点3について、財政投融資全体や産業投資の規模をどうすべきかということについて私自身に何かコメントを申し上げるような知見はないわけでございますが、投資活動という性質上、決まった財源の枠の中で、必ずその金額を出さなければいけないし、それ以上出してはいけないということでは、とても動きにくいことは間違いないと思います。この点についても、時間軸とある時点での横の展開と、両面での柔軟性を確保するような制度を模索していくべきではないかと思います。
そういった意味で、資料にございますとおり財源の平準化、こちらは時間的な意味での柔軟性ということだと思いますし、能動的な資金調達というのか資金融通というのか、お金をどこから出し入れできるのか、私には官の会計がよく分かってないところがございますが、横での資金移動というのを柔軟にできるような制度をぜひ模索していただきたいと思います。
具体的にどうすればよいかということは、正直、私には全くアイデアはないわけでございますが、方向性として、ぜひご検討いただきたいというのが論点3に対するコメントでございます。
以上です。
〔翁分科会長〕どうもありがとうございました。
それでは、丸田委員、お願いいたします。
〔丸田委員〕丸田でございます。ご説明ありがとうございました。
私からは、8ページ目の論点1、2、3につきまして、個人的な意見ということでお話をさせていただきます。
最初に、まず具体論ということで論点2の13ページ目に書かれている各種の対応でございますが、今までほかの委員の皆様からも出ておりましたが、私も個人的に、やはりまず、公正価値でのモニタリングであるとか、モニタリングの高度化によって、より早いタイミングで、よりよい資金の効率的効果的な活用であるとか、政策効果を発揮していくためにも、従来のような過去の累積損益ではない公正価値レベルでのモニタリングは非常に重要だと考えます。
また、各機関への建設的関与であるとか、借入れに対する規律につきましても、当然、重要な点でございまして、賛同いたします。
一方で、収益懸念に対する実効的対応の部分でいろいろ議論はあるかと思うのですが、これらは本当に最終的な手段として、17ページ目の下に書かれているような役員の選解任であるとか、これらを行使するかどうかは別として、各主管省庁は出資をしていなくて、直接の出資は財投の産投から出ているということなので、やはりこの出資者としての権利をしっかり明確に、行使をする意図がある、また、どういう場合に行使するのかということは、各機関へのメッセージとして、ガバナンスの目的から明確に伝えていく必要があると思います。
ただ、その際にも、やはり重要なのは、各所管省庁との連携でございまして、お互いに、どういった場合にどういったアクションを行うのかという基本方針に基づき、各機関とコミュニケーションをしっかり取っていくことが重要かと思います。先ほど有吉委員からもございましたが、やはり政策効果と収益性は、場合によっては、相反する場合もあるかもしれませんので、より全体的な観点から見ていくのが重要と考えられます。その意味では、やはり各機関の置かれている状況であるとか、投資のポートフォリオを俯瞰しながら、場合によっては短期的には収益性や時価ベースの実績IRR等が悪化することもあるかもしれませんが、少し長期の観点から、政策効果なども見ながら、最終的にこれらの権利を行使する前の段階で、各機関に報告や改善を求めて対応の機会を与えるとか、マイルストーンを設定するなどの対応をしっかり行うべきだと思います。あとは、投資に関してはすべてが成功するということはないと思いますので、産投全体のポートフォリオの中で、リスクを吸収できるように、全体の管理の中で、各個別機関に対する対応を必要に応じて取捨選択していくべきではないかというところでございます。
続きまして、論点1と3については、まとめてコメントさせていただければと思うのですが、やはり、今回の資料を改めて拝見させていただきまして、過去の、6ページ目7ページ目でございますが、NTT・JT以外で、実現した利益で約2兆5,000億、それで今の含み益が、損もありますが、ネットで3兆円あるということで、産業投資の規模がかなり大きくなってから既に40年ぐらい経っておりますが、過去40年間でそれなりのリターンが出ているという実感です。一方で、産投の財源がNTT・JT株式が主体で、特に最近は低金利ですし、調達にそれほどコストがかかっているわけではないという状況が今までだったのかと思います。しかしながら、今議論されていますように、やはり財源の安定化は私も必要だと思いますし、そのために、場合によっては一般会計から少し借り入れるのか、もしくは、産投で直接資金を調達するということもあるかもしれませんけれども、そういった意味でやはり一定の、11ページのプリンシプルに書かれている、資本コストを上回るリターンを生み出す必要があるのではないかと思います。そこで、資本コストとして、これは低くて良いと思うのですが、期待されるものがあるので、それを明確にした上で、IRRであるとか、リターンとしてそれを上回っているということを、毎期ファンド全体としてモニタリングしていくということが、重要ではないかと考えます。
モニタリングをしっかり行う前提の上で、財源についても安定させる。ここで、なかなか難しいのはその規模をどうしていくかというところではないかと思います。これは、前回も議論ございましたが、スタートアップであるとかGXとか、こういったニーズが、テクノロジーも含めて、かなりスピード感が速くなっていて、場合によってはやはり機動的に、大型案件も取り組まなければいけないことも出てくると思いますので、その規模については、しっかり議論が必要なのかと。ただ、その場合にもやはり前提として、全体としてのポートフォリオ管理、それと個別の機関に対するガバナンス、モニタリングといったところと、あとはそれをやり切るための人的なリソースだとか仕組・体制の充足状況であるとか、そこら辺を全て勘案して議論を尽くしたうえで初めてその規模の適正性について議論できるようになるものと感じています。
以上でございます。
〔翁分科会長〕ありがとうございました。
それでは、山内委員、お願いします。
〔山内委員〕ご説明ありがとうございました。私も、いただいている論点については、全体的に賛同させていただきます。その上で、投資実務から感じたことを3点申し上げたいと思います。
1つ目が、借入れも含めた資金調達の話です。民間の投資の場合にもレバレッジを効かせるということで、ファンドが借入れをしてリターンを出していくということは一般的に行われているところではありますが、既にほかの委員の皆様ご指摘のとおり、借入れをした場合には、当然のことながらその利息が発生します。また、今回、政府保証の話もありますが、これは政府にリスクを負わせていることになりますので、その意味では借入れを使うというのは現実的な案の1つとしてはあるけれども、その上限を見ていく必要性は当然あると考えております。この点については、シンガポールと豪州でも同じような話はありますので、それは後ほど触れさせていただきたいと思います。
2つ目が、投資の管理についてです。全体的に高度化を進めていく、公正価値評価などを使っていく点は全く同感で、ある意味グローバルスタンダードに合わせていく形になるかと考えます。これまで、こちらの分科会でも公正価値評価や管理の高度化についてのお話の中で、なるべく現場の皆さんの負担にならないようにという話もありましたし、今回、家森委員からご指摘ある箸の上げ下げが投資の現場を萎縮させるというのは可能性としてあることは、実際に投資をする人間からすると全くそうかと思っています。
ただ、そのことは必ずしも管理をしないということではありません。難しいところは、民間でもそうですが、投資管理は情と理の部分があることです。情というのは、例えば最近ですとインパクト投資というのが少し注目されていますが、世の中のためになる投資をするという、ある意味社会貢献的な要素が入ったときに、リターンは低くていいのですかという議論が当然出てきます。そのときに投資家としては、当然これぐらいのリターンは欲しいという前提があった上で、このインパクト投資の趣旨に賛同できるのであれば出資するという考え方になります。
そうすると、どの辺りなら受け入れることができるかという話になりますが、空中戦の議論になりがちです。その意味では、今回、公正価値評価も含めたお話は、まずやってみて、どの辺りのリターン、財務リターンあるいは政策目標の達成度合いを許容していくかということを考えていく必要性があると思います。これは絶対的な正解というのはないと私は考えていますので、実際にやってみながら調整していくという運用での考え方が必要なのではないかと考えております。これが2点目でございます。
3点目として、管理の中で実際にExitした案件をどう評価するかという点があるかと思います。先ほど、委員の先生方のお話にありました、スタートアップですとか、あるいは例に挙がりましたJDIですとかを評価するときに、確かに、担当省庁に評価してもらうとどうしてもポジティブな話しか出てきません。これをあえて、自戒も込めて申し上げると、振り返りをするときに、自分が失敗したものを見詰めることができるかどうかというのが、投資のファンドマネジャーとして有能かどうかという判断材料になります。当然、全部成功する投資家はいませんから、失敗したときに、私はなぜそこで失敗したのか、その失敗を振り返った後に、その後の投資でどのように生かしたのかというところが、例えば私が投資家の方から聞かれる内容になります。そのときには感情の部分、先ほど申した情の部分も当然ございますし、一方で、理の部分も客観的な事実に基づいてご説明をする。その振り返りを、例えばINCJが間もなく投資期間を終了する形になりますけれども、全ての案件でやるかどうかというと、負担もありますし、技術的に難しいかと思うのですが、少なくともまずそれぞれの産投機関の中で振り返りを人材育成も兼ねてやっていく。さらにその上で、産投機関の評価として、特徴的な案件を中心にして、少し痛いところまで含めて、事実ベースで確認していく、その振り返りの部分が必要なのではないかと考えております。先ほど岡田委員のお話の中でも人材の点のご指摘がございました。私の理解している限りでは、官民ファンドにおいては、確かに投資プロフェッショナルの方に来ていただいているわけですが、同時に官民ファンドが人材育成を兼ねているということも皆さんおっしゃっているはずです。そういった観点から、その組織内での振り返り、また、理財局の皆様においては株主の皆様からご覧になった振り返りというのも、事実に基づいて行うことで、高度化がさらに有効なものになるのではないかと考えております。
私からは以上3点でございます。
〔翁分科会長〕どうもありがとうございました。
それでは、小枝委員、お願いいたします。
〔小枝委員〕ご説明いただきありがとうございました。1点コメントですが、収益性のガバナンスという点は非常に重要で、横串的で全体的なポートフォリオを見るという枠組みは、ぜひ作っていただきたいと改めて思います。
例えば、シンプルな考え方をすると、政策性と収益性のトレードオフがあるので、2対2のマトリックスみたいなものを考えたときに、政策性が高くて収益性が高いものといいますと、例えば今日の資料ですと6ページのDBJとかJBICの幾つかのプロジェクトが入るのかもしれませんし、あるいは収益性が高くて政策性が低いというものがあれば、やはり民間の呼び水としての機能を果たしたとすれば、民間に任せていくということが必要だと思いますし、収益性が低くて政策性も低いというものはExitする仕組みを、統廃合という言葉も出てきましたが、というのは大事だと思います。また、収益性が低いのだけれど政策性があるものについては、それが何かという議論がすごく大事だと思いますし、資料5ページの、どのタイプの機関が担当になっていくのかという議論がとても大事だと思いました。
ただ、この2対2のマトリックスを考えたときに、収益性の高い低いを何で判断しますかということも大事なことで、資本コスト以上の収益と11ページにありましたが、それよりも上だと収益性が高いとするという判断では適切でないかもしれません。ほかの国でどういったレファレンスを用いているのか、また政策性の高い低いについても、どういった仕組みで評価しているのかなどを見ていただきながら、ぜひそういった客観的なフレームワークを作っていただいて、財投のレポートなどにまとめて入れていただければいいと思いました。よろしくお願いします。
〔翁分科会長〕どうもありがとうございました。
それでは、皆様のご意見は伺えたと思いますが、今までのところで何かコメントはございますか。
〔大江財政投融資総括課長〕ありがとうございます。貴重なご意見を賜りまして、大変感謝しております。また、特に基本的在り方ですとかガバナンス、また、財源面の課題といったようなところにも、基本的にはご賛同いただける意見が多かったのかと思います。ありがとうございます。
その上で幾つか、私どもの資料にはなかった部分のコメントとしては、例えば産投のポートフォリオ全体としての目標ですとか、先ほど小枝委員からベンチマークという言葉もありましたが、産投全体として、まさにファンドとしての産業投資というふうに理解させていただいてよろしいかと思いますが、そういった視点というのは我々の資料には欠けていたかと思います。大変貴重なポイントかと思いますので、また今後、論点を整理する際などに反映させていただきたいと思います。
また、先ほど丸田委員からでしたでしょうか、規模感のお話、ほかの委員からもございましたが、あるべき規模感というところは、まさに非常に難しくて、我々も確たる答えは持っておりませんで、これまではやはりどうしても入ってくる財源にある程度左右される部分、また、そういった制約の中で、要求も見ながらというふうにやってきたと思うのですが、本日、冨田委員からもご意見をいただいたとおり、産業投資でやるべき部分、また、財融でやるべき部分、一般会計の補助金でやるべき部分というのは、本来、役割がそれぞれあるはずですので、規模感ありきではなくて、まさに政策がそれぞれある中で、どういった財政政策上のツールを用いるかということかと思います。ですので、大変な極論にはなりますが、産業投資で使うような、見合うものがないということであれば、むしろ配当金なりは一般会計に繰り入れて、補助金なりで使ってもらうほうが適切であるかもしれませんし、逆に産業投資でやる部分が、1兆円、2兆円、それぞれ収益性というのが、ある程度確からしさがあるのであれば、一般会計からの繰入れ、また借入れを使って、見合った収益の見込みがあればそういったことも考えてもいいのではないかと考えております。ただ、増やしていくという場合には、やはりガバナンス等々まだまだ乗り越えるべき課題が多いのではないかと思いますので、先ほども申し上げたとおり、まずは収益性を高められるような構造をつくるためのガバナンスの高度化が大事かと考えております。
簡単ですが、取り急ぎお答えいたします。
〔翁分科会長〕ありがとうございます。
やはり、皆様おっしゃっていたように、まず、ガバナンスをしっかりさせていくというのはとても重要ですし、今回公正価値評価を入れていくというのは極めて重要だと思います。
これは工藤委員やほかの委員からもありましたが、役員の選解任の議決権を行使するというところは、本当は非常に重要だと思います。ただ、家森委員がおっしゃっていたように、基本的にやはり、官民ファンドのガバナンスというのは、できるだけその機関のガバナンスがしっかりしているかを監督していくところが重要で、その1つ1つの案件などに介入するのではない。ガバナンスがうまくいかない場合は、やはり人を変えていただくことが非常に重要だと思います。もちろん人の問題だけでないこともあるのですが、重要です。最終的には、A-FIVEの例もありますが、本当にうまくいかない場合は、統廃合も含めてやはりしっかりと対応していく、考えていくことも非常に重要なことではないかと思っております。
また、18ページにありましたように、官民ファンドの借入れのところですよね。ここのところも管理できていないとすると、非常に大きな問題でして、ここもしっかりやっていく必要があるというのは、ご指摘のとおりだと思っております。
今、投資勘定全体で歳出歳入差額が留保できないという仕組みになっていること自体は、これを変えていくのは法律改正によってできることになるのですか。
〔大江財政投融資総括課長〕はい、現状の法律上の仕立てが資金、仮に今の投資財源資金を使うとすれば、一般会計の繰入れという形でしか財源は認められておりませんので、その投資勘定内で余りがあった場合に受け入れるということができないことになっております。ですので、中で留保しようと思ったら、そこの、具体的な書き方はしっかり検討する必要がありますが、投資勘定内の歳入歳出差額の部分も投資財源資金の財源とできるような形で法改正が必要になります。
また、ついでに申し上げると、5年未満の部分も、長期運用法で5年以上が財投計画の対象と書いておりますので、そこを変えるとすれば法律改正が必要という話になってまいります。
〔翁分科会長〕分かりました。ありがとうございます。
いずれにせよ、NTT株等などの売却や配当で随分年毎にジグザグした財源の状況となっています。この平準化というのは非常に重要ですし、柔軟性を確保していくということは大事だと思うので、一定の範囲でこういったことができるようにしていくということは、必要かと思いました。
規模の問題は、冨田委員もおっしゃっているのですが、やはり政策がはじめにあるものだと思います。それから、あとは案件が本当に投資に値するものがあるかどうかということにもよるので非常に難しいのですが、規模ありきの議論ではないこと、最初におっしゃっていましたが、やはりそういうところは順番が逆にならないようにお願いしたいと思いました。
私からのコメントは以上ですが、ほかに何か追加でございますでしょうか。よろしいですか。
それでは、この議論につきましては、これまでとしたいと思います。
続きまして、山内委員より、オーストラリア及びシンガポールにおける財投類似制度の概要についてご報告をいただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
〔山内委員〕ありがとうございます。
今回、財務省の皆様、理財局の皆様と一緒に準備をさせていただきまして、理財局の皆様に改めてお礼申し上げたいと思います。また、質問票の設計等に当たっては、昨年から参加させていただいた分科会での委員の皆様のコメントを踏まえた上で設計させていただきましたので、委員の皆様にも改めてお礼申し上げたいと思います。
今、お手元に私の提出資料という形で青の表紙のものと、参考資料2として「オーストラリア・シンガポールにおける海外調査について」がございます。資料2は、概要の部分だけ私から申し上げたいと思います。
今回調査対象としましたオーストラリア、シンガポールという国は、ある意味、日本の今後の産投運営の上で参考になる、財投運営の上で参考になる部分もありましたし、ここはなかなか難しいのではないかというところも2つほどありました。
まず、オーストラリアでは、3ページに全体像があるのですが、この一番上にあるAustralian Government Investment Funds、Future Fundほか7つのファンド、その下にSpecialist Investment Vehicles、SIVsと言っていたのですが分野別の8つのファンド、その下にCSIROと言われている機関があって、さらにSydney Startup Hubが入っています。
調査の目的は、2つ主に掲げておりました。1つは、今回の調査を踏まえた上で、今後の財投運営の仕組みをどのようにより高度化していくか。私が英語で質問した際にはモダナイズという言い方をしていました。現在の時流に合わせて変えていく、そのためにはどうすればいいかを考えていますということを申し上げていました。もう一つは、スタートアップ支援の在り方を政府の皆さんがどう考えていて、それを産業投資に類似する枠組みの中でどう支援しているか、あるいはスタートアップ周辺も含めた支援の在り方はどうなっているかを確認してまいりました。一番下のSydney Startup Hubというのは、その文脈で訪れたところになります。
一番上にあるFuture Fundと言われているものは、性格としては、日本においてはGPIFとJICの中間のようなファンドです。先ほど、我が国における一般会計への繰入れの話がございましたが、Future Fundは日本のGPIFと同じように年金基金に収益をプラスしてより成長させていく、こういったものを目的の1つとして持っています。その下に、政策目標に応じた7つのサブファンドが存在します。この7つのサブファンドは、アボリジニの方々を支援するファンドですとか、干ばつ対策ですとか、個別の政策目的に従ったファンドとなります。Future Fundにいる投資プロフェッショナルの人たちが、7つのサブファンドの運営も支援しているという仕組みです。
特徴的なのは、7つのサブファンドはそれぞれの政策目標を持っているのですが、Future Fundのインベストメントマネジャーの方々が負わされているのは数字に対する目標、財務目標であることです。私が整理させていただいた比較表の中で、機関運営の共通点として挙げているところになりますが、豪州のFuture Fundの「一般勘定」はGPIFに近いところで、消費者物価指数+4~5%は必ず達成することを求められます。この目標数値の目線合わせのために、Future Fundの方は外部のコンサルティング会社を使って、これぐらいだったら達成できる、達成できないという議論を政府とされているということでした。当然、目標を達成した場合にはインベストマネジャーの人たちにきちんと報酬もお支払いする仕組みになっています。かなり市場メカニズムが効いた仕組みになっています。
一方で、7つのサブファンドは、特別勘定となり、CPI+2~3%程度の数値目標が課されています。本当にこれを達成しないと何かペナルティーがあるのかを確認しましたところ、実際には多少丸めた運用をされていらっしゃるようですが、原則としてこのCPI+αの達成が目標になっています。例えばアボリジニのファンドの場合、ファンドの方々が直接、アボリジニの方々を支援する政策の活動をするわけではありません。アボリジニの方々が多く住んでいるところで雇用が生まれるように、不動産開発をしている会社に投資をしている政府系機関が別にあって、そこの運営資金の足しにできるようにFuture Fundのサブファンドの人たちが運用をし、予算の不足を埋めている。
実は、この下のファンドの投資先をみると必ずしもオーストラリア国内には限っておらず、グローバル株式にも投資しています。それぞれのサブファンドによって、年間これぐらいのお金が欲しいなという差があります。あるサブファンドは、株式よりも長期間の運用となり、リターンは低いが安定的に収益を確保できるクレジットを重視しています。そういったポートフォリオのそれぞれの違いがあります。
そういった意味で、Future Fundとその傘下のサブファンド、財政的な不足を埋めるといいますか、財務的な意味での付加価値を提供するところがかなり意識されていますし、それに応じたインセンティブ設計、評価設計になっています。
それに対して、Specialist Investment Vehiclesと呼ばれているものは、各政府機関が直接的に運営しているものです。例えば再生可能エネルギーにフォーカスをしたファンドがあって、それを運営する会社があります。Specialist Investment Vehiclesのほうが、より官民ファンド的な特色があります。
こちらについても、基本的にはやはり数値目標を達成するということが意識されていますが、Future Fundほど利益上のドライブは利いていない。開示されている情報がないので、必ずしもはっきりはしないのですが、少なくとも、Specialist Investment Vehiclesの目標はより政策目標のほうに寄っているというところがございます。
CSIROは、研究開発機関であり、その傘下にディープテックベンチャーキャピタルを持っていまして、そこが投資をすることになっています。CSIROは研究開発を担う組織ではあるものの、個別投資について細かくいうというよりは、ここも数字目標を意識した管理をしています。Future Fundに比べると政策的な意識がより強いと私は捉えたのですが、数値目標を全く軽視しているかということは、そんなことは全くないと、ご担当の方が明白におっしゃっていました。
オーストラリアは今申し上げたような機関が、スタートアップ支援に限らず、広く政策実現のために活動しているわけですが、それぞれについて共通して数値目標の部分に対する意識がある。どの程度の数字を求めるかというのは、そのファンドの性格によって決まっているというのが今回発見できた事項でございます。
ちなみに、先ほど債務のお話がありましたが、オーストラリアのFuture Fundについては、下の7つのファンドも含めて、日本でいうと省令になるのでしょうか、ディレクションというのがありまして、その中で、Future Fundについてはデットを10%ぐらいまでは使っていいと書いてあります。ただ、それを超えたらどうなるというペナルティーまでは明示的には書かれておらず、あっさりとした書き方になっています。
これがオーストラリアの概況でございました。
もう一つ、資料2でご覧いただきたいところが、シンガポールの関係機関の概要になります。12ページにございます。GIC、Temasek、Vertex、SEEDS Capital、BLOCK71とありまして、この最後のBLOCK71というのはシンガポールの国立大学で運営しているスタートアップ支援のコミュニティーで先ほどのStartup Hubと同じような役割をしています。
スタートアップのほうだけ先に申し上げますと、次の13ページにそのほかの関係機関を記してございます。こちらでハイライトさせていただきたいのは、それぞれ先ほどの収益と政策の観点から求めているものが全然違う、明確にデマケーションされている点です。
例えば、Temasekの場合、明確に財務目標のみを追求するとしていました。厳密に申し上げますと、Temasekは自己投資のほかに、マンデートとして、シンガポール政府が出資している企業体を投資家として管理する役割を持っています。シンガポール航空やシンガポールパワーのような国営企業体は、全てシンガポール政府がTemasekを通じて管理することとしています。実際には、Temasekがシンガポール政府の代理人として、それぞれの経営体に直接関与しているかというと、むしろ財務的に持たされているといいますか、管理しているのが実態のようです。したがって、Temasekも、豪州のFuture Fundと同じように、これぐらいの財務リターンを達成してほしいという目安がある中で、それを実現するためには国内投資のみでは足りないので、海外投資もやっています。この考え方はTemasek特有の考え方かと思いますが、Temasekは、日本の官民ファンドで想定しているような政策目標らしい政策目標は持っていない。あくまで財務リターンだけで考えています。
それに対して、それ以外の機関は政策目標にウエイトを置いています。シンガポールで近年問題になっているアジェンダとして水資源や食糧の確保があり、フードテック、アグリテックを強化していきたい意向があります。シンガポールは資源が限られていますので、そういったものを確保し、かつ、できれば財務リターンを得たいということから、こうした研究開発機関や経済振興機関が中心となって、財務目標を意識もするのですが、補助金なども含めた包括的な支援を連続的に行っています。
12ページにありますGIC、Temasek、Vertexと下のSEEDS Capitalの間では、財務目標に対する意識の明瞭な違いがあります。特にGICは、外貨準備高運用機関のようなもので、官民ファンド的な意味合いでの政策意識は薄いと考えていただいてよろしいかと思います。
以上がシンガポールの概要です。改めて豪州、シンガポールの共通点と相違点などを申し上げますと、機関運営における共通点は、民でできることは民でやること、民間資金が不足しているところに対して、アカウンタビリティーを確保しながら、政府金融と補助金を合理的に使い分けていく政府の意思が明瞭であったことにあると考えております。
また、両国両機関とも、その強弱の差はございますが、財務目標は強く意識されていました。さらに、それぞれの機関に対して個別評価をするよりは、その機関の財務的なリターン+担当省庁の他の関連政策とセットにして評価を行っている。機関別の細かい評価レポートを出す形にはなっておらず、政策として評価している現状がございます。
他方、相違点としましては、豪州はFuture Fundの傘下にあるファンドやCSIRO、SIVsなどでは政策目標も意識されています。ここはシンガポールのTemasek、Vertexとは全く違うところです。
また、豪州においては、一部のファンドについて、レビューを5年から10年の範囲内で行う方針を取っています。Future Fundは2006年設立ですが、それ以外のファンドは比較的最近、この十数年の間につくられたものが多いので、歴史的には若いファンドです。今は、いろいろ試しながらやっていらっしゃると政府の方のお話の中でもございまして、目標が達成できなかった場合には廃止もあり得るというのことでした。
シンガポールの機関は専ら財務目標のみを追求しています。先ほどの借入れについては、Temasekについても方針があります。厳密に何%と設定されているわけではないようですが、Temasekのアニュアルレポートには、借入れの利用を限定的にし、クレジットとして使うのは運用資産の10%前後にするとあります。確かに実績値を見ても10%から15%ぐらいの間で推移していますので、Temasekなりの規律も利いていると捉えております。
また、スタートアップの支援方針については、豪州、シンガポールとも補助金から民間支援の連続性を強く意識している。英語ではcontinuumという言い方をしていました。この連続性の尊重に加え、スタートアップ支援の理由も共通しており、キーワードとしてはGo Globalであると。この点については、後ほど日本との関連で申し上げます。
違う点としては、国のありようがそもそも違うのでハイライトするほどではないかもしれませんが、連邦政府制のオーストラリアでは州政府がスタートアップ支援の中心となっています。したがって、州の間での支援競争もあると認識していらっしゃいました。
一方、Go Globalに関して申し上げますと、どこに海外に出ていくかという点で、豪州で意識されているのは英語圏、シンガポールではアジア圏が意識をされていました。ただ、両方ともGo Global、外でやっていかないといけないという点は共通認識でした。
スタートアップ支援で、豪州の場合は少し政治的な意味合いがあるのかもしれませんが、国民に危機感を持ってもらうような説明ぶりが政策文書や関連報道からも見てとれました。資源依存が高く、資源に頼った経済の持続可能性の問題があるので、新産業をつくり、収益を上げていかなければならないという、新産業育成に対する意識というのが、例えばNational Reconstruction Fundという言い方で表現されています。ヒアリングさせていただいたときに、Reconstructionと表現すべき大災害をどうも思い出せないので、なぜReconstructionというのですかと言うと、そういった問題意識をより高めていきたいからという趣旨でそれほど強く表現されたということでした。
また、シンガポールにつきましても、先ほど申し上げた水や食料など安全保障意識が高いところもございますので、新しいビジネスによって自身の社会課題の解決と収益の獲得を目指したい、これが両方の国で共通して見られた特徴でございます。
このスタートアップ支援の中で話されたことが先ほど申し上げたGo Globalという考え方でした。豪州とシンガポールの機関いずれも海外投資に関与していましたが、ここで言う海外投資は厳密に申せば、3タイプあったと認識しています。1つは、豪州やシンガポールの企業とともに海外に行くのを支援するものが1つ。2つ目が、海外の企業に国に来てもらう、豪州、シンガポールに来てもらうという、インバウンドを意識した動き方。3つ目が、シンガポールのTemasek、Vertexでより強調されていましたが、海外の企業、例えば日本の地方銀行と一緒に、さらに別の第三国に投資をする、日本国内に投資をする、シンガポールに投資をするとか、そういった海外の企業と連携して国境を越えた投資活動機会を創出していくところも見られました。
Go Globalというテーマは、ご案内のとおり日本のスタートアップの課題、上場後に株価が上がらない要因の1つとして、指摘されている点ではございます。Go Globalにあたり、単独でリスクを取ることや、必要資金を調達するのは難しいところもございますので、Go Globalを今後、産業投資の中でのスタートアップ支援の1つのキーワードとしてもよろしいのではないかと考えております。
そのほかの気づきとしまして、スタートアップとダイバーシティの関係があります。ご案内のとおりオーストラリアもシンガポールも非常にダイバーシティが進んだ国です。エスニック・ダイバーシティも進んでいます。ただ、エスニック・ダイバーシティを推進するためにスタートアップ支援をしているのではなく、結果的にスタートアップのエコシステムの中に外国人人材が入っている形です。今回シンガポールで起業されている日本人の方にヒアリングさせていただいたのですが、シンガポール政府、あるいは国立大学から支援を受けておられました。これは政府から見ると決して外国人を支援するという趣旨ではなく、あくまで起業家のビジネスがシンガポールあるいはその周辺国でのビジネスにつながっていく、ゆくゆくシンガポール政府、シンガポール経済に資するという前提で、支援されていたものとなります。
オーストラリアの場合、それに加えて女性参画を強く意識していることも明確に分かりました。Startup Hubでもご説明いただいた方々は皆さん女性の方でした。Startup Hubに、入居している企業や卒業した企業を紹介するパネルがあったのですが、ご説明頂いた方々が、これは女性がやっています、これも女性がやっていますと、業務内容や企業内での役割も含めて多数ご紹介いただきました。スタートアップエコシステムにおける女性参画が強く意識されている印象を受けました。
最後になりますが、組織運営においてはやはり財務目標が強く意識されています。各機関へのヒアリングでは、必ずしも完全にできていると言えないがという譲歩つきですが、組織の効率性を意識、特にインセンティブとを組み合わせた上で、現場に任せて運営をしていくということを強くハイライトされていました。
豪州とシンガポールでの運営の仕方には、日本における産投運営の高度化に活用できる点と難しい点がそれぞれあるかと思いますが、今回の調査をきっかけに、今後の議論のご参考になればと考えております。
ありがとうございました。
〔翁分科会長〕ご説明、どうもありがとうございました。
それでは、ご質問やご意見ございましたら。いかがでしょうか。
ほかの方の質問が出る前にお伺いしたいのですが、1ページ目の財務目標を強く意識しているというのを、ファンドにヒアリングされて、こういった4から5%とか、2から3%とかそういうのを聞かれたと思うのですが、それはファンドと、あと、政府というか、そこと何らかの合意をしたような、そういうものになっているのですか。それはどういう見直しをしているのでしょうか。
〔山内委員〕ありがとうございます。財務目標は、毎年、政府の担当者の方と機関の方が対話をされる形で設定されています。政府側がどのように目標水準を設定しているのかは今回明らかにはならなかったのですが、ファンド側は、外部のコンサルタントの方を使って、今のマーケットから考えるとこの辺りが妥当ではないかと議論されているとのことでしたので、かなり緊張感のある対話をされていると捉えておりました。
目標数値を設定するプロセスとしては、連邦財務省の方と担当省庁の方、機関経営陣で議論をして、その議論をファンドのプロポーザルとして政府に提出し、それを基に最終決定すると伺っております。
〔翁分科会長〕分かりました。ありがとうございます。
まだ少しあるのですが、先に岡田委員、どうぞよろしくお願いいたします。
〔岡田委員〕山内委員、ありがとうございました。貴重なご報告、興味深く拝見しました。
このスタートアップの人材というときに、政府全体の議論だといつも日本の国民性というか、教育の問題も重要だと言われたりして、つまり、リスクテイク、頑張っていらっしゃる方はたくさんいらっしゃると思うのですが、米国なんかと比べてリスクテイクのできる人材が少ないとか、そうした中で、国とか政府とか官が少し出ていかないとうまく回らないというところで、政府でいろいろな施策が検討されているところかと思いますが、オーストラリアとシンガポールをご覧になって、国民性というか、国民性の違いというか、官と民の線引き、官がどのように入っていくか、その辺りでお気づきになられた点はいかがでしょうか。
〔山内委員〕ありがとうございます。今ご質問いただいた点で、明瞭なメッセージが出てきたのは豪州のほうでした。といいますのは、豪州のスタートアップの方々は国内志向が強いこと、またベンチャーキャピタリストも投資が大変保守的でベンチャー企業にお金が流れないことが、国のイシューとして存在したとおっしゃっていました。
そのため、まず、ベンチャーキャピタルの方々のリスク許容度を高めるという目的もあって、国が支援をする方向になったと伺っています。豪州については、私は少し意外だったのですが、非常にリスク回避的な金融プラクティスがあったということになります。
シンガポールについては、特にそういった国民性的なイメージはなかったのですが、いろいろとお話を伺っていますと、シンガポールの国内で物事を考えておらず、インドネシアやタイなどの周辺国も含めて、自分たちのビジネスをどのようにつくり上げるかという意識が、実務に関わっている方、それを支援している方々からも窺えました。
〔岡田委員〕ありがとうございます。
〔翁分科会長〕ほかにございますでしょうか。
あと2つお伺いしたいのですが、1ページ目の右のレビューというのは、ファンドが自らレビューをするということなのですか。何らかの客観性を担保するような、そういった仕組みとかは考えられているのでしょうかというのが1つで、もう一つは、ご見解をお伺いしたいのですが、2ページ目のGo Globalです。これについて、1と2と3とありますが、日本について、財投を通じて何かやるべきこととして、何か感じられたことがあったら教えていただきたい、その2つです。
〔山内委員〕ありがとうございます。レビューのプロセスについては、ファンド設立からの歴史が浅く、こういうプロセスで、こういうことをテーマにして議論しているというところまでは、私はあまり見えませんでした。先方の方も探りながらなさっているような印象はありました。このプロセスについて、もし、大江課長、フォローがあればお願いいたします。
〔大江財政投融資総括課長〕ありがとうございます。資料2の事務局の資料の7ページ目をご覧いただきたいのですが、オーストラリアのSIVsの運用実態とございます。こちらは先ほど山内委員から日本の官民ファンドに近いのはこれだというご説明をいただきましたが、まさに主務大臣がいまして、各Vehicle、ファンドの機関、Boardがあったりするという関係ですが、年初の投資計画ですとかアニュアルレポートというのは報告をしなければいけないと、たしか法律上の義務がかかっているのが一般的だったと思います。そういったことを受けて、また、政府から方針なり重点分野を示す。政策目標についても見ていくという構造にございます。
こういった中で、この右側、機関の下のほうに書いてある法定されたレビューの実施でございます。こちらは二、三年ごとと書いておりますが、これはSIVsやファンドによってケース・バイ・ケースでございますので、こういったものが山内委員の資料にもございますが、ファンドについては5年から10年ということで、ある程度法定される形で定期的にレビューをするということが行われております。
そういった中で、目標未達の場合には廃止をするといったような、厳しい監視の関係というのも成り立っている。
また、もう一つ、ついでに申し上げさせていただきますと、7ページの資料にもありますが、上の四角の3つ目の丸、「より収益性を担保するため、予算大臣も担当大臣とされている」ということで、収益性の部分というのは、まさに我々でいう財務省的なところが主務大臣と同列に入ることによって、より深く関与しているというのが制度的にも担保されているという構造になっていると理解しております。
〔翁分科会長〕ありがとうございます。
〔山内委員〕ありがとうございました。
今、大江課長からご説明いただいたアニュアルレポートは、例えばFuture Fund下のアボリジニ政策に関するファンドの場合、実際に投資を実行する会社が毎年出しています。写真つき、数字も込みで、かなり詳しく書かれているので、具体的にどういう活動をやっているかはよく分かります。
また、1年の振り返りをウェブサイトに出しています。例えば、投資先が破綻した事例があったのですが、その破綻の財務的ダメージはどれぐらいあり、なぜそうなったのかまで書いてあります。全ての投資案件においてそうしているかは今回調査した範囲では分からなかったのですが、イシューになりそうな大きな案件については、情報開示をすることで、皆さんの目にとまるようにご説明をすることが明確な姿勢として見えてまいりました。
もう一つ、Go Globalで日本の財投への示唆という点ですが、特にGo Globalを意識していたと感じたのは豪州よりはシンガポールです。豪州は、Go Globalを掲げているのですが、実際にベンチャー企業の方やベンチャーキャピタリストの方が、それについてきているか、反応しているかどうかというのはまた別のようです。確かに海外市場に展開をして成長した上場企業などの支援事例はありますが、数としては多くないので、先ほど岡田委員からのご質問にもありました意識の点において、まだ取り組んでいるところなのだろうと思います。その意味では、日本におけるGo Globalの意識、これは財投の話というよりは政策の話なのだと思いますが、これは皆さんでそういう機運をつくっていかないといけない。どこの省庁がやるという話ではなくて、みんなで、民間企業も含めてというところが1つ感じたところでございます。
一方、シンガポールは財務目標があるからこそ、海外に行かないと、より稼げないという別の角度の話があります。投資を受ける側からすれば、当然シンガポール市場の中だけで完結するつもりでやってない。シンガポールに拠点を置くけれども、見ている市場はまずアジア市場。アジア市場で展開するに当たって、シンガポール以外の投資家からもお金を集める必要がある。シンガポール以外のところでお金を集める必要がある人たちの支援者、間に入っている人たちの1つとしてVertexのようなところがあって、日本の地銀とジョイントベンチャーを組んで、というような動き方をされているということです。
つまり、シンガポールでは、ビジネスをされている方々がシンガポールでは完結できないという意識をそもそも持っているところがスタート地点になっています。もし、日本のスタートアップエコシステムをGo Globalで進めていくとすれば、官民ファンドが海外に行きたいと言っている企業を支援する能力をどれぐらい持っているか。官民ファンド自体でできない場合は、それができる人たちと組んで、どうやって日本のスタートアップを育ててあげるか。組み方については検討する可能性が多くあるのではないかと考えました。
〔翁分科会長〕どうもありがとうございました。
そのほか、よろしいでしょうか。
それでは、ご報告ありがとうございました。大変貴重なお話をいただきまして、感謝申し上げます。
それでは、ほぼ予定の時間に近づきましたので、本日の議事はここまでといたします。ご議論いただいた内容のほか、追加のご意見、ご質問などがございましたら、事務局までお寄せください。本日の冨田委員のご意見については、ご説明の上、もし何かご意見がありましたら、また対応していただければと思います。
本日の議事内容につきましては、この後、事務局より記者レクを行います。議事録につきましては、委員の皆様のご了解をいただいた後、財務省ホームページに掲載いたします。
次回は6月17日の月曜日、14時半より、開催いたします。
議題は、本日の議論を踏まえた論点整理の議論に加えまして、官民ファンドの現状につきまして、ご議論をいただきたいと考えております。
本日は、ご多用のところ、お集まりいただき、誠にありがとうございました。これにて閉会いたします。
16時22分閉会