2024/07/23

日本下水道新技術機構との共同研究を完了 ~ 下水処理場における N2O 排出量削減 高温化との関連など調査 ~

日立造船 株式会社 

2024 年 7 月 23 日

日本下水道新技術機構との共同研究を完了 ~ 下水処理場における N2O 排出量削減 高温化との関連など調査 ~

日立造船株式会社は、公益財団法人日本下水道新技術機構(東京都新宿区、塩路 勝久理事?、以下、下水道機構)との共同研究テーマである「下水処理場における N2O 排出量削減に関する共同研究」が、このほど完了し、下水汚泥焼却炉での燃焼温度を高温化することで N2O 排出量の削減につなげられることなどを確認しました。

下水道機構が実施する民間企業との共同研究は、地方公共団体が抱える複雑で高度な下水道分野の課題を解決することを目的に、民間企業で開発された技術の効果や適用範囲、留意事項等を技術マニュアル、技術資料としてとりまとめるものです。今回の「下水処理場における N2O 排出量削減技術に関する共同研究」は、下水道機構、三機工業株式会社(水処理)、当社(汚泥焼却)の 3 者により実施されました。研究期間は 2022 年 10 月から 2024 年 3 月までで、当社は下水処理場における汚泥焼却由来の N2O 排出量削減技術に関する研究を進めて参りました。

本共同研究は、専門分野の学識経験者や地方公共団体等の実務経験者で構成する汚泥処理・資源化技術評価共同研究委員会および上部委員会である技術委員会で審議され、公平中立で専門的な観点から指導・助言を受け、研究の成果を技術資料として発刊できる運びとなりました。

国内の下水道分野は年間約 500 万 t-CO2の温室効果ガスを排出しており、地方公共団体の事業活動に伴って排出される温室効果ガス排出量の中でも大きな割合を占めています。下水処理および汚泥焼却から発生する N2O は、CO2の約 265 倍の温暖化効果があるとされており、下水道から排出される地球温暖化ガスの約 25%を占めるため、温室効果ガスの排出削減には N2O 排出量の削減が非常に重要です。

本共同研究では、下水汚泥焼却炉における N2O 排出量削減技術について検討しました。主な検討結果は、次の 3 点です。

1.燃焼温度と N2O 排出量削減
国土交通省の新型炉※における 2022 年実績調査と、当社の実証試験結果より、燃焼温度を 900℃以上に上昇させることにより、下水汚泥焼却炉からの N2O 排出量は大幅に削減しました。すなわち、汚泥焼却炉からの N2O 排出量は、炉内燃焼温度に依存することを明らかにしました。特に、国土交通省の新型炉における 900℃以上の N2O 排出係数の中央値は、35g-N2O/wet-t でした。これは、850℃以上 900℃未満の N2O 排出係数の中央値 199g-N2O/wet-t と比較して、N2O 削減率は82.4%でした。さらに、当社の実証試験における N2O 排出係数の中央値は、0.8g-N2O/wet-t と著しく小さい値でした。

2.N2O 排出係数
国土交通省の 2022 年実績調査による新型炉の N2O 排出係数の実測値を確認し、地球温暖化対策マニュアル(環境省・国土交通省)における N2O 排出係数と比較しました。本共同研究では、追加区分「900℃以上」の下水汚泥の焼却に伴う N2O 排出係数として、国土交通省の 2022 年実績調査における 900℃以上の下水汚泥焼却に伴う N2O 排出係数の中央値 35g-N2O/wet-t を提案しました。

3.温室効果ガス排出量(GHG)のケーススタディ
混合生汚泥と消化汚泥における 900℃以上の焼却に伴う汚泥処理施設からの GHG 排出量のケーススタディを行いました。ストーカ炉では、混合生汚泥における GHG 排出量の合計が、流動床炉より大幅に少ない結果となりました。また、脱水汚泥処理量 100t-wet/日以上の GHG 排出量は、マイナスとなりました。さらに、脱水汚泥処理量が増加するに従い、GHG 排出量の削減効果が増加しました。消化汚泥の場合は、自燃が可能なため、消化ガスを全量発電に利用でき、GHG 排出量は大きくマイナスとなりました。

当社は、ごみ処理施設で培ったストーカ炉の技術を活かし、下水汚泥の安定した処理の実現を目指すとともに、SDGsの達成や持続可能な社会の実現に貢献します。

※ 下水道における地球温暖化対策マニュアルに定める N2O 排出係数が、高分子凝集剤で脱水した下水汚泥を流動床式焼却炉で 850℃で焼却した場合(高温)よりも低い焼却炉

【ご参考:炉内燃焼温度と N2O 排出係数(wet-1 トン当たり, 900℃以上)】
出典;「2022 年実績調査」(国土交通省), 「実証試験結果」(日立造船(株))

(終)

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