2024/10/11

高等教育の在り方に関する特別部会(第9回) 議事録

文部科学省 

高等教育の在り方に関する特別部会(第9回) 議事録

1.日時

令和6年9月10日(火曜日)10時00分~11時45分、12時45分~15時00分

2.場所

Web会議

3.出席者

委員

(部会長)永田恭介部会長
(副部会長)大森昭生副部会長
(委員)吉岡知哉委員
(臨時委員)伊藤公平、大野博之、小林浩、中村和彦、濱田州博、平子裕志、堀有喜衣、益戸正樹、松塚ゆかり、両角亜希子、吉見俊哉の各委員

文部科学省

(事務局)伊藤高等教育局長、浅野私学部長、森友大臣官房審議官、奥野大臣官房審議官、松坂文部科学戦略官、吉田高等教育企画課長、梅原専門教育課長、井上国立大学法人支援課長、佐藤参事官(国際担当)、三木私学行政課長、板倉私学助成課長、錦私学部参事官(学校法人担当)、中安生涯学習推進課長、後藤大臣官房文教施設企画・防災部計画課長、髙見高等教育政策室長、遠藤専門職大学院室長、北野国立大学法人支援課企画官、篠原私学経営支援企画室長、花田高等教育企画課課長補佐、疋田高等教育政策室室長補佐、阿久津高等教育政策室室長補佐、濱中国立教育政策研究所高等教育研究部長ほか

オブザーバー

(意見発表者)政策研究大学院大学・林教授
(関係団体)一般社団法人国立大学協会・益副会長、一般社団法人国立大学協会・梅原理事、専門職大学コンソーシアム・北畑会長、一般社団法人公立大学協会・浅井会長、全国知事会・牧野愛知県副知事、一般社団法人全国高等専門学校連合会・大塚会長、全国専修学校各種学校総連合会・関口常任理事・総務委員会委員長

4.議事録


【永田分科会長】 おはようございます。第9回の特別部会を始めさせていただきます。
お忙しい中、また、まだ暑い中、お集まりいただきまして、ありがとうございます。
本日も対面とWEBのハイブリッド会議で行います。
この会議の様子は、YouTubeで配信しております。オンラインで出ていらっしゃる方々が自由に発言できる環境にいるという前提で始めさせていただきます。
それでは、事務局から、連絡事項をお願いいたします。
【花田高等教育企画課課長補佐】 失礼いたします。本日は、ハイブリッド会議及びライブ配信を円滑に行う観点から、御発言の際は、部会長から御指名されましたら、お名前をおっしゃってから御発言ください。WEBで御参加の先生は、御発言の際は挙手のボタンを押していただきまして、御発言の後は、再度挙手ボタンを押して表示を消していただきますようお願いいたします。また、発言時以外はマイクをミュートにしていただくなど御配慮いただけますと幸いでございます。
本日の会議資料は、事前にメールでお送りしているとおりでございますが、会場のiPadには、本日の会議資料をチャットにてURLをお送りしてございますので、紙の資料と併せて御活用いただければと思います。
事務局からは以上でございます。
【永田部会長】 ありがとうございます。
本日は、何件かヒアリングをさせていただきまして、その後、議論をさせていただきたいと思います。午前中はご発表とヒアリング、午後はヒアリングと意見交換ということで、よろしくお願いいたします。
それでは、最初に、政策研究大学院大学の林先生からご発表いただきます。
それでは、林先生、よろしくお願いいたします。
【林教授】 よろしくお願いいたします。政策研究大学院大学の林と申します。
私の後は、いろいろな団体の方々の御発表があるようですので、私、やや場違いな感じもあるのですが、私、どういう立場から話すかということですが、これまで私、15年くらい、学位授与機構で大学評価の仕事を行っていました。ただ、四、五年前に今の職に移ったのですが、学位授与機構のときから、もともとの専門は科学技術政策の研究をするのが専門でして、今、職場はそこがメインですので、科学技術政策の話をしています。そういう科学技術政策の最近の議論から見て、高等教育についてどう考えるかという、そこのギャップを埋めるというのが、恐らく私の情報提供の趣旨だと思っております。ですので、話としては、比較的研究大学に近いところの話になるかとは思いますが、お聞きいただければと思います。
1枚おめくりいただきまして、全体のお話しする論点ですが、5つのことをお話ししたいと思っています。
1つ目が、近年のランドスケープ変化に基づく重要領域の人材育成ということで、これまでと比べても、近年、かなり重要な技術領域ですとか、そういう重要領域がクリアになってきて、そこの人材をどうしなければいけないかという議論が科学技術イノベーション政策の中では出ています。それを高等教育としてどう考えるかというところです。
2つ目、そのためにも国内外の大学間の連携を行って教育研究を革新しなければいけないという話。
3つ目、そこで社会人を大学へ還流させなければ動かないだろうということを申し上げたいと思います。
4つ目、そういう議論の中で、内部質保証というものをどう考えるかという話。
5つ目、そういう議論がある中で、高等教育の政策課題への実績に応じた、安定した/予見性ある財政支援というものをどうするべきかということをお話ししたいと思っております。
順にお話しさせていただきます。
1つ目でございますが、近年のランドスケープ変化に基づく重要領域の人材育成ということで、OECDが「科学・技術・イノベーションアウトルック」というものを出していますが、そこでも近年は世界的な危機の時代だというふうに言われています。気候変動、災害、感染症など、社会技術システムのトランスフォーメーション、あるいは持続可能な「移行」ということが求められているという状況にあります。
一方で、なかなか難しいのが、地政学的な緊張の高まりによって、経済競争力であるとか、安全保障を支える重要技術の競争が激化していると。その状況の中で、各国がいろいろと考えなければいけない状態になっています。
そこで、高等教育がいかに対応するかということを考えなければいけないと思います。
1つ目が、重要分野の人材の確保です。
「サプライチェーンにおける戦略的自律性・不可欠性のための重要分野を支える人材育成」と書いています。上に挙げたような時代認識の下で、各国で戦略的自律性、つまり、ほかの国に依存しなくても、自国でしっかりと技術を形成し、マーケットに出していくような能力があるか、そして、不可欠性がほかの国から頼られるような優れた能力を持っているか、それが不可欠性ですけれども、そういうものを支えるような人材をどうするかということを考えなければいけない状態になっています。
1枚おめくりいただきますと、各国で重要分野をどう議論しているかというものが書かれております。
例えば、左側、アメリカですが、表の左のところに、課題認識として、安全保障もあれば、製造業と産業の生産性であるとかの労働力開発とスキルのギャップであるとか、気候変動のような持続可能性のような話もあります。こういう課題認識の下で、重要技術というものを幾つか認識している、それが右側ですが、AIであったり、量子であったり、ロボットであったり、そういうものが書いてあります。
それと同じように、その下にアメリカのNSTCの発表の重要・新興技術リストということで、19の分野がこういう形で提示されています。
これはアメリカだけではなくて、例えば右の上のほうにいきますと、イギリスもやはり「英国イノベーション戦略」ということで、先端材料だったり、AI、バイオインフォマティクスであったり、様々な技術領域が、自国の今後の技術力、産業を支える分野だということを特定している、そういう状態になってきているというのが各国の状況です。
1枚戻りまして、そういうふうに各国で重要分野の特定がされている中で、じゃあ、どうやってそういう重要技術分野の人材育成ニーズを考えていくのかというのは、そこはそれほど各国でもまだクリアではありません。こういう人材育成ニーズを把握するためには、政府あるいは大学自身も、「戦略的インテリジェンス」という言葉がありますが、どういう人材が今後必要なのかを、ちゃんと分析に基づいて提示するということが必要であるというふうに考えられます。
EUA(欧州大学協会)等も戦略的フォーサイト、あるいは、フューチャーズ・シンキングなどをもって、大学が、単に外的な状況が生じたときに、それに振り回されるのではなくて、主体的に変革に取り組んで未来を形成する、そういうような将来を見通すような分析能力を持つべきだということを言っています。
より具体的には、その下、例ですが、グリーントランジションによって労働市場が変化している。それによって新しい職種、必要スキルも変わってきているだろうということで、また先ほどの、おめくりいただいて次のページの右下でございますが、例えば、EUがグリーントランジションで典型的にこういう仕事が生まれつつあるのだということを例示しているものになります。サステナブルファイナンスの金融専門家であったり、都市をいかにインクルーシブにするかという都市設計の人であったり、そういうものがもう既に生まれていますし、下のほうにいきますと、環境のデータのアナリストであるとか、都市でスマート農業を展開するような、そういう人材が必要であるとか、そういうような具体的な人材の像を示しています。
ちょっと行ったり来たりですみませんが、先ほどの前のページに戻りますが、EUA等では、そういう分析をちゃんと踏まえた上で、つまり、行政側のシンクタンクがこういう分析をしているのですが、それを踏まえた上で、各大学が自分たちの学位プログラム、人材育成を検討するようにということを求めています。こういうような仕組みを日本でもどう考えていくのかということが論点かと思います。
それに加えて、3つ目、「高等教育を通じた基本的価値の共有」と書いていますが、こういう危機の時代で、技術の話だけではなくて、やはり基本的な価値というものを教育していくというのが高等教育機関の役割で、特に欧州ですと、民主主義であるとか、ウクライナの話とかもありますので、あるいは極右の政治の話とかがありますので、そういうところで民主主義をいかに教えていくかとか、そういうことを議論しています。その辺りも、やはりこういう時代における高等教育の役割かと思います。
そして4つ目、「人材輩出の方策も見据えた育成」ということですが、今のようなことを言っていったときに、単に大企業に出ていくという形ではなくて、どういう形で人材を輩出していくのか、スタートアップ等も含めですが、そういうことも併せて考えていくことが必要になるというのが1点目でございます。
2点目、5ページですが、そういう議論をしたときに、国内の各大学それぞれが個別にやっていればいいのかと。あるいは、国内だけで今のような時代変化の中でやっていけるのかという論点があるかと思います。そこで、「大学間連携による教育・研究の革新」です。
国内大学においても、教育・研究のリソースの制約がある。Network of Excellenceという形で、いかに卓越した、教育でも卓越したところはあるはずなので、そういうものをネットワーク化していくか。あるいは、国際連携、特に少子化で国内市場が縮小し、労働力不足というところで、いかに国内学生を国際的環境に出して、あるいは海外から将来の外国人高度人材になるような学生を引きつけられるかと、こういう点で今後の高等教育を考えることが必要かと思います。
その点で1つ参考になるのは、欧州で、今、Erasmus+の枠組みで、European Universities Alliancesという大学間連携が、既に64のアライアンスが、560大学が参加する形でできています。こういうような国際的な状況の中で、我々は高等教育の競争力を高めなければいけないという認識があるかと思います。
このEuropean Universities Alliancesの中では、教育面、教育も研究もいろいろとアライアンスをしているわけですが、教育面でも、例えば「チャレンジ・ベースド・ラーニング」という言葉を使っています。一種のPBLですが、学生が様々な国、ヨーロッパですので様々な国の研究者であったり、企業であったり、地域であったり、そういうものと連携しながら地域課題に取り組む。そういうものであったり、あるいはバーチャルラボであったり、リビングラボのような、こういう新しい教育方法論を、アライアンスを組むことで導入することができている。
あるいは、「ブレンデッド・モビリティ」と書いてありますが、オンライン教育をしつつも、部分的には短期に国際移動するような、そういうような教育を展開している。
こういうような新しい教育の革新をいかに日本でもネットワーク化してやっていくかということは課題かと思います。
少し急ぎですが、次にまいります。
6ページ目で3ポツ目、「社会人の大学への還流」でございます。
この会議の1つのポイントは、やはり18歳人口減少ですので、それと産業構造変化を踏まえて、いかに社会人を高度人材に再育成することができるかということが課題かと思います。
特に、今日このシートでは、社会人博士学生に焦点を置いて議論をしています。今、修士からストレートに博士に進学する学生は低下しているし、あるいは、日本における産官学セクターの人材流動の低さというのは昔から言われているところです。いかに産業界あるいは社会から大学への還流をつくっていくかということが課題かと思います。
ストレートで修士から博士に上がってくる学生への経済支援は、この数年かなり拡大して、SPRINGであるとか、大学フェローシップ制度など、そういうものが出てきました。
ただ一方で、その人たちが、社会人が大学院へ還流して就学することへの支援が手薄になっていると思います。経団連でもそういう環境整備が不可欠だというふうには言っていますが、手薄だと思っています。
その具体的な一例でございますが、文部科学省の職業実践力育成プログラムというものがあります。職業能力に寄与するような教育を認定するというのが、この文部科学省がやっているBP制度です。そのBP制度に認定されると、厚生労働省の教育訓練給付金制度というものがありまして、それに基づいて、授業料の最大8割が給付される、学生に戻ってくるという制度がございます。
紙をめくっていただいて、8ページにその厚生労働省のものがついていますが、左に赤、緑、紫とあって、3種類あるのです。専門実践教育訓練、特定一般教育訓練、一般教育訓練と3種類あって、一番上が、さっき申し上げたように、最大で授業料の80%が返ってくる。その要件が右に四角で書いてありますように、先ほどの文部科学省のBP制度に認定されていること。ですので、実は修士であったり、あるいは短期履修プログラムというのは、このピンクだったり、それから緑、50%に下がるのですが、緑のところを使って授業料を公的資金で補助することが可能です。
しかし、博士課程についてはどうかというと、ちょっと小さくて申し訳ないですが、右側のところの四角で、結局、この制度、2年以内のプログラムしか対象になっていないので、博士課程は、この上の、先ほど言ったような80%返ってくるというものの対象になっていなくて、左で言えば、紫の上限10万円、3年間博士課程に通っても10万円の補助しかないという状態になっています。こういうように社会人が博士課程に戻っていくということに対して、国があまりそこの制度をつくっていくということができていないのではないかというのが3点目でございます。
そして、次のページに参ります。
内部質保証です。
このようにいろいろと大学改革が求められる中で、今、認証評価、第三巡目にありますが、「内部質保証」の重視となっていますが、私も学位授与機構の評価委員をやっていますが、率直に言って、大学の関心は低いと見ています。認証評価を受審する直前に、評価基準で求められるような内部質保証の規定をつくっているという大学がほとんどと見ています。
そういうものについてどう考えるかということですが、その下にありますが、内部質保証の能力に合わせた仕組みが必要だと思っております。
グランドデザイン答申でも、改善に取り組む大学と、改善の努力が不十分な大学に二極化しているということを既に書かれていましたが、現在もその状況は変わらないと思っています。改善が不十分な大学は実際にあって、設置基準等も理解が不十分な、そういう大学もありますので、そういうところには厳格に評価を実施する。
一方で、改善に真剣に取り組んでいる大学は、ちゃんと内部質保証に取り組まれているのであれば、今まで申し上げてきたような大学の戦略であるとか、大学改革と連携する形で、内部質保証をちゃんと機能するように進めていただくことが必要だと思っています。
例えば、こういう大学改革を支援するお金を今後も出していくと思いますので、そういう中で新しいプログラムをちゃんと学内で内部質保証の視点から評価をしている。学内の内部質保証に組み込んで、そういうものを検討した後に大学改革として展開するというような、そういう仕組みづくりをすることで、認証評価あるいは内部質保証が大学改革と遊離したものではなくて、一体化するような形に持っていくことが必要だと思っております。
最後でございますが、5つ目、「高等教育の政策課題への実績に応じた、安定した/予見性ある財政支援」です。
この議論は、私、第4期の国立大学の中期目標が始まる前に、運営費交付金のところの議論で何度かこういう議論はしていたところですが、なかなかまだ日本ではうまくいっていないところがあります。
大学、今もずっと申してきたように、様々な機能拡張がある中で、公的支援の拡大というのは必要になるかと思います。
その場合に、これまでも運営費交付金が必要だという議論はあっても、なかなか増えない状態だったわけですが、ただ、先ほどから出てきているように、日本の今後の産業を支える重要技術を支える人材が必要だというような議論があるときに、しっかりとそういう国の課題に対して、契約や、あるいは実績に基づいて追加配分をしていくことが必要であると。つまり、国の課題に対してちゃんと貢献しているところには、その実績に基づいて財政支援をしていく、そういう仕組みをつくっていくことが必要だと思っています。
そういうところで、下に書いてありますが、「シンプルで、透明で、安定的で、多様性を許容する」ような資源配分が必要だということが国際的にも言われているところでございます。
幾つかざっとイメージをお示ししますが、11ページでございます。
イギリスでは、大学院の教育とか、費用が普通の教育よりもかかるところについては、右の上に「フルエコノミックコスティング」と書いてありますが、実際に管理会計で幾らかかっているのかということを調べた上で、それを十分に賄えるような授業料を配付している。それプラス、真ん中にありますが、政策課題を踏まえた配分を国が設定していて、そこも算定式等の形で透明な形で配分をする、こういうことをやっているというのがイギリスです。
それから、次、12ページでございますが、オランダですと、「質の契約」という契約配分になっていますが、真ん中のところですが、国が6つの教育の質改善のための重要領域を設定しています。大学は、この6領域に関して計画をつくる。6領域、例えば小規模の教育であるとか、個別学生指導であるとか、ここに書いてありますが、そういうものに対して、大学が計画をつくり、そして、それを大学評価機関が、先ほどの認証評価とか、そういうものもやっているような機関ですが、大学評価機関がちゃんと評価をして、そして、事前評価でしっかりとした計画であればお金を出す、こういうような仕組みをオランダは取っております。
そして、13ページ、最後ですが、フィンランドはもっと数字によるものでして、本当に博士課程の学生を何人出している、あるいは、企業からのお金を幾ら得ているであるとか、そういうような指標であったり、あるいは、国の課題、大学の戦略、こういうものを踏まえて配分をするという形で、かなり透明な計算式によって配分がなされるような状態になっています。これも、例えば、国の中で博士人材がどれほど必要であって、各大学がどれほどそれに貢献しているのかということによって配分をするという思想になっています。
このような形で、いろいろな国のパターンがありますが、国の課題にしっかりと貢献している大学に実績に応じて配分をするということをやっていくということが今後、必要であると思います。
以上になります。
【永田部会長】 ありがとうございました。
それでは、御質問等をお受けいたします。いかがでしょうか。
益戸委員、どうぞ。
【益戸委員】 益戸です。今日も林先生の非常にクリアなお話を聞けて大変参考になりました。ありがとうございます。
お聞きしたい事は、ご説明の中に出てきた何かを決めるときに、それを誰が決めるのが適正なのかという事です。評価をするということは重要なポイントですが、どんどんスピードが加速しながら動いていく時代の中で、従来からのやり方で、補助金、国からの予算の配分など、適切に、的確に判断できる仕組みかという点です。形を変えていく事は非常に重要だと思いますが、その点については、どのようにお考えになられますか。
【林教授】 今の評価が絡んでくるのは、予算配分、特に追加の予算配分のところで重要なところだと思いますが、基本的に、高等教育のための予算というか、教育自体を目的とする予算よりは、先ほどあったような重要技術だったり、様々な高等教育以外のところの政策ニーズも踏まえながら、いかにそこに人材が貢献していくかという、そういうところのお金のほうが恐らく今後いろいろと出てくると思います。そういうものに対して、高等教育が人材をちゃんと提供し、そして必要な教育改革、教育フォームの改革を行ってやっているかということを、できるだけ評価のところでクリアに示していくことが必要なのですが、ほかの国で見たように、基本的には、できれば数字とか、要は、透明性はかなり重要であって、そういうところは確保したいということと、やはり、それでも教育というのはどうしても質的になりますので、それは大学評価の専門知識を持った評価機関がやっていくという形になっていると思います。
残念ながら、日本の大学評価は、どちらかというと、コンプライアンスというか、設置基準とか、そういう法律をちゃんと遵守しているかという視点が多くなっていて、なかなかこういう戦略に基づいてちゃんとやっているかという話が別の枠で動いていて、大学評価とはやや切り離されているところがあると理解しているのですけれども、ちゃんと教育あるいは教育評価の専門知識を持った人が、そういうところに関わっていくような仕組みをつくっていくということが必要なのかなというふうに思っています。
【永田部会長】 そのほかはいかがでしょうか。
堀委員、どうぞ。
【堀委員】 じゃあ、先に。興味深い御発表、誠にありがとうございました。
2点あるのですけれども、1つは、5ページに、欧州の高等教育圏のような大きな流れをどうやって日本がつくっていけるかというような問いが示されているのですけれども、もし林先生が何かお考えのことがあれば、ぜひ教えていただければと思っております。
それから2点目、これはちょっとコメントに近いのですけれども、8ページで、厚生労働省の教育訓練給付金制度を取り上げてくださっていて、博士課程が入っていないということが指摘されているのですけれども、もしこの博士課程も、ここに認定するような形に持っていくということであれば、もう少し博士課程のプログラムを実践的な形に再定義するということが多分欠かせないというふうに思うのですけれども、そのようなことを博士課程の今後の方向性として先生はお考えなのかどうかということにつきまして教えていただければと思います。
【林教授】 ありがとうございます。まず、後者のほうからですが、今、SPRINGであるとか、フェローシップ制度であるとか、もうストレートで上がってくる学生に対して、研究インターンシップであるとか、学術面以外のところにちゃんといけるような、そういう学生指導がもう進んでいます。そういうことを考えれば、社会人が還流してきて、社会人のニーズに基づいて、社会人と大学の先生が一緒に研究する形で教育をするというのは十分あり得ることだと思っていて、そういう点では、博士課程の変化というものももう既に起きていると思いますし、また、ここでこういうものを対象とすることで、それが促進されるのではないかというふうに思っております。
それから、前半のほうですが、なかなか難しいところだと思っています。5ページの下のところに、日中韓とかASEANの連携の話が書いてあります。私も前の職場のときに日中韓の連携を大学がしているものとかをモニタリングしたりして、本当に個別個別の大学は、かなりいい教育をしていると理解しています。ある大学は、日中韓の学生のグループが、3か月おきに日本、中国、韓国と共同生活をしながら学習をするということもやっていて、本当にいい教育をしているなと思っていますが、そういうものがなかなか大きな流れにはなってきていない。それは、どうしても欧州高等教育圏みたいな大きな枠組みがないので、個別的な取組にしかなっていないというふうに理解していますが、そういうものをいかに、もう少し今後拡大していくことができるか。そんな短期的にはできないと思いますが、こういうことをもう少し拡大する方向を検討できればいいのではないかなというふうに思っております。
【永田部会長】 小林委員、どうぞ。
【小林委員】 先生、どうもありがとうございました。
ほとんどのところ、アグリーな御意見だと思うのですが、1つは、9ページのところの認証評価のところの内部質保証の件なのですけれども、この改善に真剣に取り組む大学と、改善努力が不十分な大学とに二極化しているというのは変わらない状況だというふうにおっしゃいまして、そこにやはり「厳格に評価」という言葉があったと思います。今は認証評価機関が割と外から見ると乱立しているように思いまして、それも各団体によって、機関によって基準が結構ばらつきがあるというところを、どのように厳格にというふうに何か方針を持っていったらいいのかというところの方策があれば、いただきたいと思うのですが、いかがでしょうか。
【林教授】 ありがとうございます。なかなか、まず「厳格な評価」の意味でございますが、やはり評価を受ける場面まで設置基準の改正を知らないであるとか、教学マネジメント指針なんてあるのですかという大学も実際にありまして、そういうところには、もうこういう認証評価を受けるということをいいチャンスにして、そういうものを知ってもらう。そういう意味で、厳格な評価というのは、ちゃんとそういうものを踏まえて質保証をやっていますかということを問うという形のものになります。
そういうことに関しては、様々な評価機関があっても、どこもそういうことはぜひやるべきであると思っていて、もちろん評価機関によっていろいろと重点の置き方は違うとは認識していますが、やはりこういうところは最低限のラインだと思いますので、各評価機関に求めていくのかなというふうには思います。
【小林委員】 ありがとうございます。
【永田部会長】 伊藤委員、どうぞ。
【伊藤委員】 ありがとうございました。英国とオランダと、それからフィンランドとかといって具体的な例が出ているのですけれども、英国もフィンランドもオランダも、ほとんどが国立大学で、また、オランダといえば、多分、日本の人口の6分の1ぐらいだと思うのですけれども、大学の数は13しかない。フィンランドは53ぐらいで、たしか人口は日本の20分の1、英国は100ぐらいで人口は半分ぐらいかもしれないですけれども、それに対して日本は800の大学があるので、いわゆる認証評価というところと、後でおっしゃった学費の決め方とか、研究費をどうやって配分するかといったときに、800を相手にするのと、13を相手にするのは全然違うと、その辺のところを、日本に対してヨーロッパの例をお示しになるときに、どういうふうに考えればいいのでしょうか。その辺の特徴は。
【林教授】 ありがとうございます。おっしゃるとおりで、この辺りの議論、特に私がずっと国立大学を対象にした議論をしてきたということもあって、国立大学を想定した、特に国立大学の運営費交付金を想定したような議論をしています。
そうなったときに、私学助成を含めて、私学のやり方をどう考えるかというのは、やはり別のことを考えなければいけないところはあると思いますが、ただ、ここで欧州の議論で、先ほどもキャッチフレーズです。「シンプルで、透明で、安定的で、多様性」と。これは私立だろうがどこでもいい、恐らく一緒で、やはりどうしてそれが配られているのかという透明性と、3年とかの短期のお金をもらっても、なかなか何もできないというのが実際なので、そこをいかに安定的で、あるいは予見性ある、つまり、配分の式が分かっていれば、今後どういう状況になっていくかというのは計算すれば分かるので、予見性のある形に持っていかなければいけないというのは共通した考えだと思いますので、800、大学がある中でも、逆に、大学の数が多いからこそ、透明性であるとか、安定性というのは考えなければいけないのではないかというふうに思います。
【伊藤委員】 分かりました。
【永田部会長】 もうそろそろお時間ですが、私からシンプルに質問です。教育の評価をするときの指標とは何ですか。教育して、その人が社会に出て、どんな働き方をするかを見なければ分からないので、いろいろな改革をやっても、その結果は相当先になるでしょう。どこの国でも過去に基づいた配分になっていて、本当に先生がおっしゃるように、改革的にいくということについて、どう配分するのかという問題があります。つまり、教育の効果をどう測定するかということと、最後に、こちらは先生がお詳しいでしょうから、なぜこれまで教育への投資がこんなに増えなかったのかということです。諸外国は増えているのです。先生も御存じで、スイスやドイツを調べてみても、国からの支援が何十%という単位で増えています。この2つについて、お答えいただけるとありがたいです。
【林教授】 まず、前者でございますが、教育の効果は、各国を見ても、目立つのは、例えば、税金の納付の状況から収入を分析して、実際に高等教育がどういう効果があるか、そういうような分析というのは出てくるわけですが、ある種、外形的な定量的な分析でしかないと。
質的なところは、やはり先ほどから出ているような、国としての重要な人材、そして、それに対して貢献する人をどれほど育成できているか、そこが恐らく今後の論点になると思います。
ただ、そうは言っても、今後の国にとって重要な分野、そして重要な人材は何かというのは自明ではないので、そうすると、各国で「インテリジェンス」という言葉がありましたが、そういうものを、例えば役所の中にある種のシンクタンク的な機能として位置づけるであるとか、あるいは大学の中で、日本でいえば「IR」という言葉なのかもしれませんが、そういう分析のところをつくってやっていくであるとか、そういうことをすることで、クリアに効果は出てこないかもしれませんが、必要な人材をちゃんと併せた方法で育成できているということは説明することができるようになるのではないかなと思っています。
教育投資が伸びないという話は、それはちょっとどうですかね。なかなか、やはり今の話と同じで、高等教育の効果がどれほど国にとって意味があって、様々な社会保障費とかが伸びる中で、それを押してでも、いかに将来へ投資しなければいけないということをクリアに出せてこなかったと、そういうことなのかなというふうに思っております。
【永田部会長】 ありがとうございます。
そのほか、よろしいですか。
ここにいらっしゃる方は、皆さん大学を卒業していると思いますし、それなりに高いレベルの努力をされていると思います。教育の成果をはかるというのは本当に難しくて、その準備ができているかという認証評価のほうがもっと機能的にならないといけないと思っています。目指すものへ、本当にその大学が行ける状況になっていますかということは、もっと厳しく評価されるべきだろうと思います。
林先生、ありがとうございました。
それでは、続きまして、関係団体からのヒアリングでございます。
各団体に申し上げておきます。説明10分、意見交換15分程度を見込んでおりますので、そのラインでお願いしたいと思います。
それでは、最初に、一般社団法人国立大学協会からの御発表をお願いいたします。
【益副会長】 皆さん、おはようございます。本日は、私ども国立大学協会に対して、意見発表の機会をいただき、深く感謝申し上げます。
国大協の永田会長は本部会の部会長を務めておりますので、本日は、私、国大協副会長、東京工業大学の益と……。
【梅原理事】 横浜国立大学学長の梅原でございます。国大協に設けられてございます我が国の将来を担う国立大学の新たな将来像に関するワーキンググループの座長を務めてございます。意見発表をさせていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いします。
【益副会長】 それでは、お手元の資料の2ページ目から少し説明させていただきます。
最初に、国立大学は何かということでございますが、2ページにございますように、国立大学は、国立大学法人法により設置されております。第1条に、目的として、「大学の教育研究に対する国民の要請にこたえるとともに、我が国の高等教育及び学術研究の水準の向上と均衡ある発展を図る」と規定されております。
真ん中の枠でございますが、この目的に基づき、国大協では、国立大学の使命として、6点挙げております。
1番、世界最高水準の研究教育の実施、重要な学問分野の継承・発展、知の循環と社会への還流、全国的な高等教育の機会均等の確保、新たな価値を創造し、社会基盤の構築を先導する人材を育成・輩出、6番目が、地方創生の中核として地域・産業界と連携し多様な社会課題に対応するという使命でございます。
このように「使命」を表現するのは、国立大学が国民と社会のために存在するものであり、社会の基盤となり、社会の発展に尽くす責務と覚悟の表れでございます。こうした思いを共通して持っているのが国立大学という存在であると私どもは考えているところです。
3ページ目をお願いいたします。
国大協では、2040年に向けた将来像を検討するワーキンググループを設置し、昨年11月以降、永田会長も毎回参加し、ここに記載しておりますが、全国から10名以上の学長が集まり議論を続けているところです。少子化の課題、かなり加速しているわけですが、この課題をいかに克服し我が国の発展につなげるか、そのために国立大学が何をすべきかということを議論しているところでございます。
議論の内容について、梅原座長から紹介いたします。
【梅原理事】 それでは、4ページを御覧いただければと思います。
国大協で検討してございます国立大学の将来像について御説明します。
資料の左側の図で示しておるとおりでございますが、我が国の将来の発展のために目指すべき社会の姿として、多様性社会、繰り返しますが、多様性社会の構築と、グローバル化の進展が不可欠であるという認識を強めてございます。
そのためには、中教審でも議論されていらっしゃるとおり、「知の総和」の維持・向上が必要であり、留学生受入れの大幅な増加、博士取得者の増加、大学進学率全体の向上、研究力の向上、地方創生へのさらなる貢献に国立大学が主体的に取り組むことで、新たな社会の到来に向けた変革を牽引していくことが必要と考えているところでございます。
その実現のためには、国民と社会のために利害を超えた活動が可能である、そういう国立大学の強みを、国立大学のみならず、公私立大学も含めた様々な主体との連携を強めていくシステム、これを私たちは「国立大学システム」というふうに呼んでいるのですけれども、この構築が必要であると。その方向性で議論を進めているところでございます。
それでは、5ページを御覧ください。
取組の具体的なアイデアについては、現在も議論の最中でございまして、先々週にも全国の国立大学の学長が集まりまして、活発に議論を展開したところでございます。きちんとコンセンサスを得られるまでには至ってはございませんが、取組について、どのような意見が出ているかということを御紹介したいと思います。
まず、留学生の大幅な増加については、在学者の3割程度は留学生とすることを目指すと、そういう議論を進めてございます。
そのためには、例えば、秋入学の本格実施や、出口管理への転換、海外から留学生を集める機能を強化すること、日本国内でも就職が可能になるような取組が必要であるというような議論をしてございます。
また、博士取得者の増加につきましては、現在の3倍を目指す。毎年、大体1万5、000人が我が国で博士号を取るわけですけれども、国立大学が1万人強を担保してございます。7割程度は国立大学ということですので、3倍ということですので、3万人程度まで博士取得者を増やすべきであるという議論をしてございます。
そのために、アカデミア以外に進む博士のための教育プログラムの開発、あるいは経済界に対して一層の理解と協力を求めていくことが必須であろうというふうに考えているところでございます。
大学進学率全体の向上につきましては、特に女性比率の向上としてございますが、学生だけではなくて、教職員の女性比率の向上、社会人、障害を持つ学生の受入れ比率を増やしていくことが、これも必須であるというふうに考えてございます。大学それぞれの取組も重要でございますが、複数大学が連携して進める取組とすることも考えられるという意見となっています。
研究力の向上につきましては、Top 10%論文の割合を上げることをメルクマールとして、そのために必要な研究者の流動性の向上や国際共同研究、派遣、受入れ等を積極的に進めるべきという議論を行ってございます。
6ページになります。
地方創生へのさらなる貢献としては、大学が地域を支える主体へと転換することが必要ではないかという議論となっています。
この中では、少子化、人口流入の観点から、地方大学の魅力向上により、地方から都市部への人口流出に歯止めをかけるような行動を意識しつつ、人材育成や研究イノベーションを通して地域に貢献し、あるいは、留学生や国際交流の機能を生かして、地域における世界への窓口となること、こうした取組には地域に所在する公私立大学と協働することが必須であるということを考えているところでございます。
これまで挙げましたような取組については、個々の大学がばらばらと取り組むだけでは限界がございます。であるからこそ、国立大学同士、あるいは地域の国公私立大学、あるいは地域ごとの産学官や全国規模の様々な連携が重要になってきます。
先ほどから述べている国立大学の利害を超えた活動が可能という特性は、言い換えれば、様々な相手と協働できるということでございます。そのために、まず国立大学がさらなる連携を進められるように、制度や仕組みを変えていくことが必要です。
ここでは、連携推進法人のような既存制度をより使いやすいものとする。一法人複数大学や地域プラットフォームのより一層の活用を図る。そして、連携した取組を行っていることが正当に評価され、そのための支援等も受けられるようにすることが必要という意見が出てございます。
我が国の社会変革のためには、国民の共通財産であり、社会のインフラとなっている国立大学が、公私立大学も含む多様な相手と連携し、国立大学だけで取り組むよりも大きな効果を出していくことが必要であろうというふうに考えてございます。
以上が、これまでの議論の紹介でございますが、引き続き、我が国の将来のために、国立大学が決意と覚悟を持って、何ができるかということを真剣に議論していく予定でございます。
【益副会長】 最後、国立大学を少し紹介させていただきます。国立大学協会は、7ページにありますように、全都道府県に様々なタイプの大学が存在する国立大学の全てが加盟しております。
また、8ページでございますが、国立大学は、御承知のとおり、昭和23年の11の原則に基づき、全国に配置されております。その後も理工系学生増員、新構想大学、一県一医大構想、大学院大学の設置等により、現在の国立大学の原形ができております。
右枠のところを見ていただければ分かるのですが、平成9年、99大学2短大、これをピークとして、それ以降は、よりよい教育研究のため、大学としての強みを生かすために、自ら再編・統合を進め、現在は82法人86大学構成になっております。
また、資料9ページ、最後でございますが、国立大学の役割は、中教審の議論を見ても移り変わりがあります。しかし、冒頭に述べたとおり、国立大学法人法に記載されておりますとおり、国民と社会のため、我が国全体の均衡ある発展のため、自らを変革してまいりたいと考えているところでございます。変化を恐れず、国民と社会の発展のために活動する国立大学への御理解、御支援を、引き続きよろしくお願いいたします。
私どもの発表は以上とさせていただきます。どうもありがとうございます。
【永田部会長】 ありがとうございました。
それでは、御質問、御意見等をお願いいたします。
濱田委員、どうぞ。
【濱田委員】 御説明ありがとうございました。
1点、最後のほうで、大学等連携推進法人等の制度等の見直しという御説明があったのですけれども、今考えていらっしゃるこの制度の課題と、どういうふうに見直していけばいいかということをお聞かせいただければと思いますので、よろしくお願いいたします。
【梅原理事】 ありがとうございます。やっぱりヒト・モノ・カネへの権限だと思っております。今、こういう法人、山梨大学長もいらっしゃいますけれども、山梨県等々でもやっていらっしゃいますが、やはり単位互換ぐらいのところでとどまっていると思っていまして、さらなる連携からその次を我々としては考えなければいけない。そのときには、やっぱりヒト・モノ・カネへの権限が、この連携される法人にあればいいのかなと。そのためには、それ相応の法的なところの変革とか、いろいろなことがあるのかなというところでございまして、まだ具体的にこうですよという議論ではございません。
【濱田委員】 ありがとうございます。
【永田部会長】 ありがとうございます。
平子委員、どうぞ。
【平子委員】 平子でございます。よろしくお願いいたします。
国立大学の大きなミッションとして、「地方創生」という言葉が何度か出てきましたが、そのためには、やはり地方自治体との関係が非常に大事だと思います。国立大学と地方自治体との関係の強化について、どのように考えていらっしゃるか、そこを補足いただければと思います。
【益副会長】 ありがとうございます。私も国立大学の学長になって分かったのですが、従来は、国立大学は、地方のこととあまりコンタクトがありませんでした。最近の国立大学の長の話を聞いていますと、常日頃、地方自治体の首長さん、あるいは議員の方と、本当に地方を、どうすれば国立大学が役に立てるか、一緒に何ができるかということを真摯に議論しているということを、私は東京にいるのですが、地方の国立大学の学長の方からはすごく感じています。どの学長も地方を活性化する、そのために国立大学は何をすべきかということを議論させていただいております。
【永田部会長】 伊藤委員、どうぞ。
【伊藤委員】 御説明ありがとうございました。特に、梅原学長のお話を伺っていて、まさに我々国民として望む方向で大胆に取り組んでいらっしゃるということで、明治のときにも、私立大学が先にあったとしても、国立が、帝国大学が出てきたことによって一気に教育が上に持っていかれたという、まさに我々が望む方向性だと思っております。
最初の御説明で、国立大学の基本的な役割というところが益学長のところであったのですけれども、どうしても私、1つまだ自分で理解できていないのが、全国的な高等教育の機会均等の確保という部分なんです。ヨーロッパはほとんどが国立大学、アメリカでも70%の学生が州立大学に通うというような中において、比較的公立に通う中において、日本では僅か16%の学生しか、大学生の中で16%ぐらいしか国立大学に通っていない。4%が公立、80%が私立というような状況になっている中において、機会均等と言うときに、これをどういうふうに捉えていらっしゃるのか。
つまり、私などの考えだと、例えば、どのような家庭環境においても、大学に進みたければ、大学で学べるということになれば、個人ごとの奨学金を充実させることによって、その人が選んだ大学に行き、それぞれの大学は、個人負担はある程度均一に国立も私立も公立もしておきながらも、国立大学はここに掲げられたような世界最高水準の研究・教育、また、地方創生といった大きな目標が別にあるので、それは運営費交付金を大幅に増やして、国立だからこそ公費を入れるべきだと私は思うんですけれども、機会均等と言ったときに、例えば、どうして国立だけが学費が安くてよいのかどうかとか、でも、それだったら、学費が安いのであれば、家計関係が厳しい人だけを採るとか、くじ引で機会を均等にする、そういうわけではないわけですよね。本当の意味で16%しか学生が行っていないところで、今、日本における国立大学の機会均等の部分、それ以外は、私、全て今回の御発表の中でおっしゃるとおりだと思っているところなので、ここの機会均等の御説明をしていただけると大変助かります。
【益副会長】 まず、機会均等の前に、国立大学が全国にあることによって、私立大学のお話を伊藤先生がされたかと思うのですが、大学の数は地方によってばらばらですよね。国立大学が多い地域もございますし、国立大学しかない地域もあって、地域を国立大学そのものが支えている地域もある。ばらばら、いろいろな地域格差というか、違いがある中で、機会均等を日本全国として考えるということで、現時点では、全国平均で見ると16%になっているのだと思います。
おっしゃるように、このパーセントを増やすためにということは、僕も大事だと思うんですが、本来、じゃあ、そもそも全国の国立大学に対して、どのようなことを社会が期待しているのか、産業界が何を期待しているのか、あるいは国民が何を期待しているのかという議論をいま一度して、先生のおっしゃったような考えもありますでしょうし、我々国立大学が、研究という意味で、あるいは技術開発、イノベーションを起こすために、今までやってきたことをもっとやってほしいのか、そのために国立大学に何を期待するのかという議論があって、どれだけのパーセンテージの学生を育てるのか、あるいは、どれだけの資金を国が、あるいは産業界が、個人が投資するのかという議論になるということが重要だと考えているところです。
【梅原理事】 すみません。参考資料でつけてございます19ページを御覧いただければと思います。
地方における国立大学の役割というところで紙をつけたのですけれども、地域別の学生数であるとか、都道府県別の学生数の比率、大学院ですけれども、これを見ていただければ分かるのですが、やはり慶應大学さんも、横浜国立大学もそうなのですけれども、なかなか首都圏にいると気がつかない何かというものが、この数字で表れているのかなというふうに思います。やはり東京からの距離感で言うところの地方における国立大学の役割というのは極めて重要でございまして、この後、知事会の方もお話しされると思うのですけれども、やはり中央にいては分からない国立大学の役割、これが多分、アクセスという意味でも重要で、今、伊藤先生が御質問になられた機会均等というところにもつながってくるのかなというふうに思っています。
【伊藤委員】 ですから、国民全員に機会均等ではなくて、あらゆる意味で、アクセスといったことも含めて、地域的なことも含めた機会均等という定義だということでよろしいですよね。
はい、分かりました。ありがとうございました。
【永田部会長】 ありがとうございます。
そのほか、いかがでしょうか。
大森委員、どうぞ。
【大森副部会長】 今日はオンラインで申し訳ありません。御発表ありがとうございました。地方の私立大学の学長という立場で、ちょっとポジショントークになるかもしれませんけれども、お尋ねをしたいと思います。
国立大学が各地域にあるということの意味は本当に大きいと思っていて、これは本当にすばらしい仕組みになっているなというふうに思います。
今、御説明いただいた18ページ、19ページとかで、地方における国立大学の在籍学生数の割合みたいなものも見せていただいていて、その意味も大きいなというふうに思っています。
ただ、今、伊藤先生がおっしゃったように、例えば、国立大学の割合が学部生で50%を超えているのは13県なので、やっぱり全体としては私学のほうが多くて、地方においても、もちろん国公立大学しかない県においては非常に重要なんですけれども、それ以外の県においては、私学もないと、多分、間に合わないだろうというような状況で、今日、御発表の中に、国立大学は国や地域のインフラであるという表現をされていらっしゃったんですけれども、それは全ての大学に当てはまるというふうな理解を一緒にさせていただいてよろしいでしょうかということが1つです。
それから、資料の中に、例えば公務員の数が国立大学は多いというお話が出ていますけれども、これは個々の職種でいくと、例えば、幼稚園、小、中、高の教員は私学のほうが多いというようなこともあって、これは個々の職種について言っていても詮ないという話もあるかなと思っています。その上で、これから国立大学システムのように、地域で国立大学が本気になって大学みんなで地域のアクセスを確保していこうとされるときに、協働していくときに、私もやっぱり伊藤先生と同じように、一緒に学んでいくのに、こっちの学生はこのぐらいかかるけれども、こっちの学生はこのぐらいだよという、一緒に机を並べる学生同士で費用負担が全然違うみたいなことが、これからネックになっていかないかどうか、国立大学システムというものがどのぐらい、私、かなり期待して今お聞きしたんですけれども、一緒にやっていくことになるかわかりませんが、そういう費用負担みたいなもののネックという、今やっぱり国立と私立の負担の格差というのは大きな問題ではないかと私は考えているので、改めて、どんなふうにお考えかということをお聞きできたらうれしいなと思っています。よろしくお願いします。
【永田部会長】 どうぞ。
【益副会長】 御意見はよく理解させていただきました。ただ、費用負担だけということを考えると今の御意見になるのですが、そもそも高等教育に、我々大学に何を期待しているのかという議論を抜かして費用負担のことだけ言うのは、少し個人的には気にはなっております。
国立大学の使命として、高等教育、高度な人材を養成するというときに、今日、林先生の最初の講演でもあったように、どのような人材を何人欲しいのですかという議論があって、そのために高等教育機関はどれぐらいの人数を育てないといけないのかということがあって、その中で国立大学には何をしてほしいのか、私立大学には何をしてほしいのかという議論がまずあって、じゃあ、その費用負担を、先ほどの繰り返しになるのですが、費用負担を誰がするのか、産業界がどれだけ費用負担するのか、直接的に、例えば理工系の大学は産業界にたくさん行っているわけですが、その産業界がどう負担するのか、社会がどう負担するのか、社会も、中央の都市もありますし、地方もありますし、そこがどう負担するのか、それで個人は、ブレークダウンして、どう負担するのかという議論にしないと、今の格差のことだけを言って、機会均等も、「機会均等」という言葉だけで、みんなが同じ金額だけですねというところに落としてしまうと、議論がちょっと違うところにいってしまうというように考えていますので、今の授業料の格差とか、そういうところの議論をするなということでもないし、僕は無視しろとも言いませんけれども、その前に我々が議論しないといけないことがあるということを、もう一度、我々、こういうところで議論しないといけないのかなというように思っています。
【永田部会長】 ありがとうございます。
【大森副部会長】 ありがとうございます。地方大学の部分だけを取ると、おっしゃっていることは、本当にこれはすばらしくて、でも、それは私学もほぼ同じことを言っていて、多分、国立、私立の目指しているところの違いは、地方においてあまりないというふうに、なので、一緒に歩んでいけることがすごく必要だなというふうに感じたのでお尋ねしました。ありがとうございます。
【永田部会長】 ありがとうございます。
時間が来ましたので、ここまでとさせていただいて、後でもう一度、総合討論的に議論する可能性はあります。
次に、専門職大学コンソーシアムからの御発表をお願いいたします。
【北畑会長】 専門職大学コンソーシアム会長で、新潟にあります開志専門職大学学長をしております北畑でございます。
本日は、中央教育審議会で意見を述べる機会を与えていただきまして、誠に光栄に存じます。このたび、少子化が進行する中で、高等教育の在り方について網羅的な検討が行われ、その中で、制度発足5年余りの専門職大学につきましても、その位置づけ、役割、あるいは課題について御指摘をいただいていることにつきまして、敬意と感謝を申し上げたいと思います。
専門職大学制度は、平成28年の中央教育審議会答申に基づき創設された新しいタイプの大学であります。情報通信、医療保健、ファッション、クールジャパンなど、今後成長の期待できる分野で専門人材が不足しているという産業界の要望に応えるとともに、学生には質の高い実践的な職業教育を行い、専門的スキルを身につけるとともに、理論や幅広い知識を学び、応用力、展開力のある高度人材に成長し、学士号を付与して、それにふさわしい処遇を受ける機会を与えるものであります。
その教育手法の特色は、既存の大学と違いまして、少人数教育、実務家教員の採用、臨地実務実習、この3点でございます。
特に、4年間で600時間を超える臨地実務実習は、企業等の現場で従業員と一緒に仕事をするものでありまして、学生の能力を大きく伸ばすきっかけとなります。働くこととは何か、仕事に対する責任や自分の適性は何かを早い段階で自覚し、ビジネスマナーを身につけ、コミュニケーション、プレゼンテーション、チームワークの重要性など、座学では学べない経験をいたします。大学での学習と現場での実践を繰り返すことによって、学習に対するモチベーションが上がり、専門的なスキルが身につきます。
幾つかの意見を申し上げたいと思います。
まず、26ページから27ページにあります成長分野を創出・牽引する人材の育成でありますが、今申し上げましたように、専門職大学制度の創設の趣旨は、まさに成長分野における成長分野を牽引する人材の育成でありまして、その点は51ページにも書いてあります。27ページの「大学、高等専門学校」を「大学、専門職大学、高等専門学校」に改めていただきたいと思います。
次に、出口における大学評価の必要性、重要性であります。
教育研究の質のさらなる高度化の中で、36ページに、出口における質保証の促進と、42ページに、情報公表の推進が指摘されております。
私は、大学の学長になる前に、中高一貫校の理事長を6年、うち1年は校長を兼務した経験があります。高校生、保護者、進路指導担当教員の大学選びは、入り口の段階での大学評価、つまり、偏差値でありますとか、合格難易度、これで進路を決める傾向がございますが、偏差値の高い低い、合格難易度と、大学在学中にその学生の能力が伸びるかどうか、大学が能力を伸ばす教育をしているかどうかとは必ずしも因果関係があるとは言えません。出口段階での大学教育の成果を客観的に評価できる指標がないのが原因でありまして、入り口での大学評価でしか判断ができないという問題があります。
中学、高校の場合は、「偏差値」が適正な尺度かどうかには疑問があるにせよ、偏差値は定量的な基準でありますので、出口での高校評価、中学評価ができます。入学時の偏差値と卒業時の偏差値を比較して、教育による学生の成長の程度を示すことができます。つまり、学校の教育力の比較ができるわけであります。
これに対し大学の場合は、多くの場合、出口の客観的評価基準がなく、それぞれの大学で様々な情報を出していますが、横並びの比較ができないのが現状であります。
例えば、就職先として、企業名がホームページなどで羅列されておりますが、企業名のみの場合が多く、企業ごとの就職者数、分母となる就職希望学生数、あるいは、採用が本社採用なのか地方採用なのか、こういった区分が公表されていないケースが多いのであります。就職先企業を業種別、従業員規模別、上場区分別等に統一された基準に基づいて公表することを奨励すべきではないかと思います。
上場企業の人事部長から見た大学評価という日経新聞系の試み、アンケートもあります。産業界も大学教育の出口の評価には非常に関心があります。産官学の共同研究で、この問題に関する指標づくりを検討してはどうかと思います。
次に、51ページの職業教育を担う他の学校種との接続という記載の部分であります。
多様な学生の受入れ促進として、留学生、社会人の受入れ増が指摘されておりますが、これに加えて、17万人の専門高校、24万人の専門学校から4年制大学への進学、あるいは転入学の比率を上げることが必要ではないかと思います。
71万人の高校普通科からの4年制大学進学率は既に67%、今後大きな伸びは期待できません。これに対して専門高校から4年制大学への進学率は、現状、18.8%であります。これを伸ばす余地は大きいと考えます。
高校進学の際に、普通科、工業科、商業科などへの振り分けが行われ、これがその後の進路を決める分岐路になっておりますが、これは人口増加社会、産業の高度成長時代から続いているものでありまして、少子化時代には合っておらず、改めることが重要ではないでしょうか。中学や高校では成績不振だったが、高校、大学では新たな教育環境、あるいは、何かのきっかけでぐんと能力を伸ばす生徒は少なくありません。専門高校、専門学校に進んだら、原則就職と方向づけるのは、少子化時代にはもったいないことでありますし、生徒にとって不幸なことだと思います。生徒の側から見ても、大学で高度な知識と理論を身につけ、処遇の改善につながる学士号を取得できることは大いに魅力的なはずであります。
課題は、保護者の経済事情であります。学力があっても保護者に進学させる経済力がない、早く就職して稼いでもらいたいという事情があります。これは奨学金制度の拡充で対処できるはずだと思います。
専門職大学は、実践的な教育をする点で、専門高校、専門学校との親和性が高く、その受皿となり得ます。
次に、51ページの専門職大学、専門職短期大学の機関別の役割の部分であります。
「法令の厳格な定めの下で大学としてふさわしい教育研究の水準を担保し」は、これは当然のことであり、大学、大学院・専門職大学院、短期大学等にも共通のことであります。専門職大学にのみ、認証評価等について「法令による厳格な定め云々」と記載があるのはバランスを欠いております。先ほどの意見交換の場でも、既存の大学についても認証評価に対する不十分な対応という御意見がありました。そのとおりでありますので、これは共通の課題だと思います。
また、認証評価が例示されておりますが、専門職大学の分野別認証機関の設立が遅れておりまして、多くの専門職大学は代替措置としての第三者検証を選択せざるを得ない現状にあります。専門職大学にふさわしい認証機関が早急に設立されることを期待しております。
同じく51ページの産業界のニーズに応え分野を拡大するという指摘でありますが、私ども専門職大学は、大いに拡大をしたいと思っておりますが、残念ながら、制度創設時に期待されたほどの数は増えておりません。
開志専門職大学は3つの学部がありますので例外でありますが、その他の専門職大学は全て単科大学であります。大学設置審の指導で、大学の名称に「分野名」、省令で「専門職」という文言を大学の名称に入れることとされておりますが、このため、例えば、18文字の大学名、非常に長いものになっております。さらに、産業界の要請を受けて、分野を拡大する、学部を増設すると、学部の分野名を書き換えなければいけない。大学名を変更しなければならない。新しい分野を増設する場合には、大学名を変更しなければいけないというのは非常に理不尽なことでございます。分野を大学名に記載するという設置審の運用を改めていただきたいと思います。
また、大学名に「専門職」という文言を入れるという規制についても、再検討の余地はないでしょうか。専門職大学院には、このような規制がありません。通信制大学にも名称規制はなく、大学名に「通信」を入れているのは東京通信大学1校のみであります。専門職大学にのみある名称規制を廃止し、「分野名」や「専門職」という文言を大学の名称に入れるかどうかは、それぞれの大学の判断にしていただきたいと考えております。
専門職大学は、初年度16校が申請したのに対して、認可されたのは僅か3校であります。翌年も16校の申請に対し、認可されたのは8校でありました。厳しい審査方針が示されたことから、専門職大学を設立しようという機運は急速に萎えました。新しい分野ですから、そもそも博士号、修士号を持った教員を確保することに苦労いたします。現職を退職し、申請中の大学への就任承諾書を取り付けた上で申請をするわけでありますから、取下げとなると、教員候補者の仕事の確保や保障が必要になります。投資した施設、設備も不要になり、億単位の損失を被ります。そもそも40人以下の少人数教育が要件になっておりまして、もともと採算性の確保が厳しい中で、申請者が負担するリスクは大きく、申請数が伸びない理由になっております。大学設置審にお願いするものでありますけれども、事前相談の充実など、申請者のリスクを小さくする御努力をお願いしたいと思います。
32ページから33ページに記載されている社会との接続、連携の強化、地域との連携の推進であります。
専門職大学では、教育課程連携協議会では、地方公共団体、地元企業の代表が委員として参加し、臨地実務実習の大半は地元企業の協力により実施されております。
専門職大学の取組は、学生の地元就職増につながっております。延べ半年近くにわたる臨時実務実習を通じて、学生は、地元企業にも自分に適性の合った企業がある、あるいは、魅力的な経営者がいる、親しみを感じる職場があるということ学生時代に実感し、企業の規模や知名度だけが職業選びの要素ではないと考え直す機会となっております。
一人っ子家庭が多くなり、地元就職を希望する保護者の期待もあります。そして、地域経済の発展にも専門職大学が大いに貢献するものと考えております。
私の発表は以上でございます。ありがとうございました。
【永田部会長】 ありがとうございました。
御質問、御意見等をお伺いいたします。いかがでしょうか。
皆さん、お考えのうちに一言お聞き申し上げます。御説明の中で、国際や国際社会との対応という面については言及が一言もなかったのですが、専門職大学群としては、どのようにお考えでしょうか。
【北畑会長】 私の発表では触れませんでしたが、それぞれの専門職大学で取組はしていると思います。私ども開志専門職大学について申し上げます。
1つは、留学生の受入れですけれども、私どもは留学生を受け入れるための対応が十分ではありません。それは規模が小さいので、留学生をたくさん受け入れると、例えば通訳とか生活指導の人員を配置しなければいけません。私ども、まだ240人の入学定員でございますので、なかなか留学生を受け入れるということになっておりません。
幾人かおりますが、これは日本語のN2の資格を取った者を日本人と同じ入学試験を受けて受け入れております。そういう現状にあります。
他大学のことはよく分かりませんが、規模が大きい大学でないと、なかなか留学生は取り入れられないかなと思います。
【永田部会長】 もう1つ、国際社会との教育・研究でのお付き合いはいかがでしょうか。
【北畑会長】 これは、学生が他大学との交流をやっております。スペインのサラマンカ大学、それからイタリアのフィレンツェの大学だったでしょうか、それから台湾の大学、オーストラリアの大学、こういったところと、オンラインで学生同士が議論をする、意見交換をする授業(ゼミ)をしております。そのため指導教官と窓口を設置し、大学間で連携協定を結んで学生の国際化教育につながるような教育をいたしております。
【永田部会長】 ありがとうございます。
吉見委員、どうぞ。
【吉見委員】 今日のお話の中で、とりわけ6ページにお書きになられていた、中学や高校では成績不振だったが、高校、大学で新たな教育環境、あるいは何らかのきっかけでぐんと能力を伸ばす生徒が少なくないと。全くおっしゃられるとおりだというふうに思います。過去30年の日本社会の停滞の非常に大きな原因の1つが、日本社会が失敗できない社会であるという、ここが大きいと思うし、日本社会を失敗できる、むしろ失敗がチャンスになる社会に変えていくということが、教育改革にとって極めて重要なことだと認識しております。
その際に、やはり冒頭の、これは3ページあたりでお書きになられていた出口段階で大学教育の成果を客観的に評価できる、この仕組みがないと、失敗して伸びても、伸びたかどうか分からないということになってしまいますから、そこのネックになってきてしまうわけです。
そのときに、横並びの仕組みをつくるのではない形で、大学段階の伸びを評価できるような仕組みについて、どのようにお考えかということをぜひお聞きしたいと思います。
あと、細かいことで1点なのですけれども、これは単にお聞きしたいだけなのですけれども、最後の12ページのところで、専門職大学の特色と取組が学生の地元就職増につながっているとお書きになって、この辺のデータというか、この辺のもうちょっと具体的な説明をいただければ幸いです。
以上、2点です。
【北畑会長】 2点目のほうから先にお答えしたいと思います。
これは、開志専門職大学、新潟の大学ですけれども、この事例で数字を申し上げたいと思います。
まず、入学者のほうで、事業創造学部、情報学部、2つの学部があるのですが、事業創造学部で、県内出身者が63.9%、情報学部が67.5%でございます。新潟県全体で見ますと、新潟県の学生の新潟県内への進学率は40%ですから、3割近く高いということでございます。
それから、出口のほうでございますけれども、新潟県内出身者が新潟県内に就職した比率で申し上げますと、事業創造学部では68.8%、情報学部は、やっぱり全国の引きが強いので少し落ちまして41.3%です。いずれも既存の大学よりも、地元からの進学率、地元への就職率は高いと思いますので、この理由は、やっぱり御指摘のとおりで、社会との連携ということで、教育連携審議会がある、臨地実務実習の大半は地元の企業で実施している、こういうことが大きいと思います。
市町村との連携もいろいろお声がかかっておりまして、新潟市とか、南魚沼市、五泉市、3つの市と連携協定をやっておりまして、学生が自治体に出かけていって実習をやるとか、あるいは、学生が自治体の課題解決に挑戦する、そんな取組をいたしております。
それから、出口の客観的評価です。これはぜひつくっていただきたいと思うのでありますけれども、さっき申し上げましたように、日経新聞系の会社が、人事部長から見た評価ということで大学の評価をしております。ただ、これはイメージ調査でございまして、イメージではやっぱり駄目なので、客観的な指標、例えば、今申し上げましたけれども、どこの企業に何名就職したか、上場企業に何名就職したか、もっと言えば、従業員100名以上とか大規模の企業にどれだけ就職した、そういう率を出して、それで新しい偏差値のようなものを文部科学省あるいは文部科学省の外郭団体でそういうものをつくっていただいて、それを意識しながら各大学がその向上に取り組むということになれば、自動的に学力を上げる努力するようになると思います。高校生も、むしろ出口を見て進学先を決めるという方向になるのではないかなと考えております。
【永田部会長】 そのほか、御質問、御意見いかがでしょうか。よろしいですか。
ありがとうございました。
【北畑会長】 ありがとうございました。
【永田部会長】 引き続き、一般社団法人……。
失礼いたしました。松塚委員、どうぞ。
【松塚委員】 貴重なお話、ありがとうございます。
5ページ目のところで、トランスファーのお話があったと思います。こちらは、大学、大学院へ進学していくという、転入学を増やしていくということは、とても大切な視点で、様々な機会を学生さんに提供していくという意味でも非常に大切だと思います。
1つお伺いしたいのは、カタログを拝見しましても、お若い学生さんがほとんどだというようにお見受けしますけれども、林先生のお話にも今日ありましたけれども、社会人を受け入れていくような可能性は、今後お考えになっていらっしゃるでしょうか。
【北畑会長】 社会人も平等に入学試験で受けられるようにしてあります。ただ、希望者はそれほど多くありません。
初年度、私どもの特色は、例えば、ベンチャー起業家を育てるという学部があるのですけれども、この辺りは社会人の方が興味があると思います。それから、情報学部でいえば、学び直しです。私どもは、実践的な情報教育をやっていますので、スキルが身につくという意味で、これは社会人の人に魅力があると思いますが、これから宣伝をしていかないと、そもそも専門職大学の認知度が低いという問題から対応していかなければいけない。それに取り組んでいきたいと思います。
それから、編入の中で、専門学校からの編入は制度としてつくりました。これは参考になりましたのは、新潟県に長岡科学技術大学という国立大学で非常に評判のいい大学があるのですが、新入生の定員は80名、編入学で340名に増える。これは高専を持っておられまして、高専の卒業者の4割が大学に進学する。高専の方は、やっぱり高校入試、大学入試をスキップして実践的な教育を受けておられるので大学に進学する。今、東大に編入で入る人もいるということであります。
それを参考にいたしまして、私どもは、専門学校からの転入・編入ということで制度をつくりました。今年つくったので、実績が出るのは来年度以降だと思いますが、1つは、単位の認定です。専門職大学と専門学校というのは、実習が中心でありますので、専門学校で履修した科目が、かなり単位認定ができるということで、これは個別の専門学校と単位認定の制度を進めております。
もう1つは、上位3名は各学部入学金なし、授業料免除という規定を設けました。これは、今、残念ながら、3年生は定員割れをしておりますので、受け入れても別にただでもいいだろうと、既存の1年生から入った者のバランスは考えなければいけないので、そのぐらいの思い切ったことをやって宣伝をしております。
これは、専門学校に結構反応がよくて、むしろ専門学校から4年制大学に編入されるのだということで、専門学校のPRになりますということでございました。
繰り返しになりますが、専門学校に行った子は、学力はあるのだけれども、家庭の経済事情で専門学校止まりになって、2年で稼いでくれという親の要望がありますので、ここは思い切り手当てをしないとなかなか上がってこないのですけれども、そういう制度は設けました。
【永田部会長】 ありがとうございました。
【北畑会長】 ありがとうございました。
【永田部会長】 次に、一般社団法人公立大学協会からの御発表をお願いいたします。
【浅井会長】 公立大学協会会長を拝命しております浅井でございます。
本日は、中央教育審議会での意見を述べさせていただく機会をいただきまして、誠にありがとうございます。
また、オンラインで参加させていただくことをお許しください。
それでは、公立大学協会からの意見を述べさせていただきたいと思います。
今般の特別部会が、高等教育の将来像について、若者の夢を止めることや社会全体の希望を失わせることがあってはならないとの強い決意の下、この「中間まとめ」を取りまとめていただきましたことに対し、深く敬意を表します。
本協会からは、公立大学の特徴や地方自治体と高等教育との関係等について、地方自治体行政と向き合ってきた経験の範囲において、試論を述べさせていただきたいと思います。
まず初めに、公立大学をめぐる政策環境について触れさせていただきたいと思います。
現在、公立大学は101大学ありますが、18歳人口が減少に転じた平成期にその数を急増させています。単純計算では62大学の増となっておりますが、そのうち40大学余りは公立短期大学を母体としております。
地方側から捉える「18歳人口急減」とは、地域で育つ若者全体が急減することであり、加えて希少な若者人材を収容定員が増大した都市部の大学に引き寄せられるという二重のインパクトを意味しています。18歳人口をそれぞれの地域に何とかとどめようと、公立大学が設立されてきた経緯もございます。
公立大学は、非常に現実的なニーズに基づいて設立されており、その設置目的は明確であります。古くは、太平洋戦争中の昭和18年から20年の間に、公立(女子)医学専門学校が20校設置され、いわゆる「銃後の医師育成」を担っていました。そのほか工学・農学系の専門学校などが、いずれも国策を補完するように設置され、その多くが、戦後、新制大学の制度の中で公立大学となっております。
昭和期には、当時の女子高等教育を支える公立短期大学が設置され、その多くが平成期になってから四大化されました。
また、平成期の超高齢社会を見据えて制定された「看護師等人材確保法」を受けた看護系公立大学が先導するような形で、それぞれの設置自治体が必要と考える分野の公立大学が明確な目的の下で設置されてまいりました。
そのような中、高等教育の役割が変わってきたようにも思います。
教育基本法第4条第3項は、教育の機会均等を実現するための国及び地方公共団体の責務を定めておりますが、そこには初等中等教育は地方自治体中心、高等教育は国中心という役割分担があったように思います。平成期になり、地方分権の流れが加速し、超高齢社会への対応をはじめ、我が国における新たな政策需要に応じた大学設置は地方側に委ねられてきました。ここに部分的ではありますけれども、高等教育政策の役割分担の変更、いわゆる国から地方への移行が見てとれるようにも思います。
こうした役割分担の変更が見られるとはいえ、地方自治体は高等教育行政の専門性が必ずしも十分とは言えないように思います。
一方で、公立大学法人の組織設定につきましては、設立団体が定める定款によって規定されており、法人の活動も中期目標が示す内容に大きく左右されていると言えます。公立大学のガバナンスは、設置自治体政策と不可分な関係にあり、国立大学と国との関係とは大きく異なっています。
それぞれの設置自治体は、法制度上は、それぞれの評価委員会による評価を踏まえ、公立大学の存廃についても判断する責任を負っています。公立大学は、高等教育のコトバと地方自治のコトバの翻訳に努めつつ、地方自治体との対話を重ねながら、地域に貢献できる教育研究を実現してきたとも言えると思います。
それでは、この中間まとめが示す提言につきまして、少し意見を述べさせていただきたいと思います。
まず、教育研究の質のさらなる高度化についてでございます。
社会の発展の原動力に資する人材の育成のためには、学部教育における洞察力、思考力、展開力等の涵養とともに、充実した大学院教育の展開が求められているように思います。
その際、社会人を含め、大学院の教育方法につきまして、担当する教員間での踏み込んだ議論が求められていると思います。
また、認証評価制度の見直しについても言及されておりますが、自己点検評価や認証評価の取組も、単に法令適合性の確保だけではなく、教育の目的や手法に関して、異なる分野の教員間での対話が生まれる機会を創出するような工夫を施すことによって、制度の趣旨が生かされるのではないかと思います。
高等教育全体の「規模」の適正化につきましては、地方自治体は、自身が費用負担を行う公立大学につきましては、機会を捉え、スクラップ・アンド・ビルドを含めた大幅な改組を構想することもあり得ると思います。
したがいまして、公立大学と設置自治体は、公立大学の果たす役割に関する対話を絶やすことなく、適切な公立大学政策の展開を導いていかなくてはならないと思います。
高等教育への「アクセス」確保につきましては、行政レベルにおいて各高等教育機関や地域において検討を促すための仕組みの整備ということが述べられていますが、地方と国との役割分担をどのように考えていくのかが非常に難しいようにも思います。
地方自治体に高等教育振興に関する担当部署を整備する方向については、高等教育を地域の発展と結びつけて考えることができる地方自治体の能力に期待する意味で賛成をいたします。
一方で、大学政策に対し専門性を持った人材を配置することができる自治体はそれほど多くなく、担当部署を機能させることは簡単ではないという点についても留意が必要ではないかと思います。
また、大学での取組につきましては、公立大学は、国立大学に比べ、その規模は小さいのですが、公立大学が地方自治体の大学行政と常に向き合ってきた知見を提供することはできるというふうに思っています。
公立大学事務局で働いた後に設置自治体に戻った幹部職員がよい役割を果たしている事例がございます。また、今後、法人採用職員が地方行政との関係づくりに精通することも期待されていると思います。そうした人材を生み出せるようなキャリアパスを公立大学と設置自治体との協力により開発していかなければならないと思います。
それから、設置者別の役割の部分でございますが、公立大学の役割につきまして、これまで常に厳しい調整局面を通じて行政側と高等教育に関する課題を共有してきた点についても留意して記述していただく必要があるかと思っております。
それでは、最後に、公立大学協会の取組について触れさせていただきたいと思います。
公立大学協会では、公立大学政策に関する調査研究を推進してまいりました。これを継続するとともに、その成果について発信していくことが課題だと考えています。
また、公立大学に設置されている地域政策、公共政策系の学部の教員等の間でネットワークを組んで、公立大学や地域の高等教育政策に関する研究も育てていくことが必要だと考えています。
さらには、本協会では、会員学長による議論を基にしながら、「公立大学ガバナンス・コード」というものを作成させていただきました。公立大学は、大学によって様々なガバナンスの体制を持っており・、それに注意を払う必要がございました。そして、そのガバナンスにつきましては、程度は異なるものの、設置自治体政策は公立大学のガバナンスに深く結びついています。設置自治体政策にも適用できるガバナンス・コードのありようを今後検討する必要があると考えています。
公立大学は、こうしたガバナンス・コードによる点検を積み重ね、公表することにより、設置自治体、これは新たに公立大学を設置する自治体も含んでおりますが、設置自治体に対し、政策的な知見を共有することができるのではないかと思います。
加えまして、認証評価機関と共同した「大学教育と認証評価が一体となって大学全体の質向上につながっていく取組」についても、今後、考えていくことが必要ではないかと思っております。
公立大学協会からは以上となります。どうもありがとうございました。
【永田部会長】 ありがとうございました。
御質問や御意見をお伺いいたします。いかがでしょうか。
平子委員、どうぞ。
【平子委員】 平子と申します。御説明ありがとうございました。
地方自治体との関係を大きくページを割いて書かれていると思うのですが、3ページに、地方自治体に高等教育振興に関する担当部署を整備することについては賛成だという一方で、地方自治体によっては、専門性を持った人材を配置することができる自治体ばかりではなく、担当部署を機能させることは簡単ではないと書かれております。どうしても地方自治体の首長、トップの意思が非常に大きな役割を持つと思うのですが、そういった方々とのコミュニケーション、話合いは続けていらっしゃるのかどうかお聞かせ願いたいのですが、いかがでしょうか。
【浅井会長】 もちろん大学によって温度差はいろいろあるかとは思いますが、公立大学協会で学長会議等を通じてお聞きするところによりますと、やはり各学長、そして理事長の立場の方もありますけれども、当然、法人としての評価委員会などもございますので、そういう場面も通じて、皆さん、非常に積極的に首長の方とはコミュニケーションを取られているように思っております。
すみません。総論的なお話しかできなくて、本当に申し訳ありませんが。
【永田部会長】 そのほか、いかがですか。
今のお話に関連してお聞きしますが、首長とのコンタクトは良いと思うのですが、地方行政全般で、首長が、つまり知事が、関係部署と高等教育に関してどのように議論されているかということについては、何か進んできているのでしょうか。
【浅井会長】 その点については、事務局長より、説明していただきます。
【永田部会長】 事務局長、どうぞ。
【中田事務局長】 失礼いたします。今の知事や市長、首長との対応は非常に重要でございまして、トップ同士のいろいろなコンセンサス、大事なところですが、今、永田会長からおっしゃられたように、実際の政策を実現していく上では、様々な実際の事務方とか、条件面での交渉だとか、細かい交渉がたくさん必要であります。ですから、そことのコミュニケーションがきちんと取れるような体制ができるか。今まさに永田会長がおっしゃったように、知事の視野の中に、どの程度、公立大学の活動が入っているか。非常に大きな目玉政策をドンと進める場合などには、公立大学に期待をするというところもありますが、細かく教育研究の中身を徐々に整えていくという、そういった課題について、必ずしも首長レベルまできちんと視野に入れていただくことはなかなか難しいことでございますので、トップ同士のコミュニケーションと同時に、やっぱり現場の政策を預かる方々同士、大学の事務局、そういったところでコミュニケーションをいかに取っていくかということが非常に大きな課題だと日頃から感じております。
以上でございます。
【永田部会長】 ありがとうございます。
そのほか、いかがでしょうか。
大森委員、どうぞ。
【大森副部会長】 大森と申します。よろしくお願いします。
地方に公立大学がある県と、公立大学自体がないところと、そういう意味では、格差、それはそれぞれの自治体のお考えなので、ここで何とも言えないところですけれども、お考えとして、今後、各県なり、市ということは難しいと思いますけれども、各県に公立があったほうがいいのかどうか、県によっては、つくらないという判断をされた県もあったりとかすると思います。
その1つの理由として、やっぱり公立大学に地域人材育成をすごく期待してはいるのだけれども、一方で、なかなか地元の生徒が入れない難しい大学になってしまっていて、全国から集まっていてという、これは分野によって違うと思うのです。福祉系とか看護系は地元の生徒をしっかり育てているけれども、そういう状況も、この部会でも確認したところなのですが、今後、公立大学協会としては、地方創生ということを意図して、より地域の子たちを受け入れて残していくという戦略みたいなもの、こんなふうなことは何かお話合いになられているでしょうか。
【浅井会長】 今日の発表の最初のほうに述べさせていただきましたけれども、公立大学というのは、ある意味、非常に現実的な地元のニーズに基づいて設置されてきたという、そういう経緯があるかと思います。したがいまして、やはりその地域におけるニーズがどの程度あるかということが、多分、一番の基本になって、そこを首長とか、そういう方がどう判断されるかということになってきますので、なかなか公立大学協会として一定の方向性を出すということは難しいのではと思っているところです。
【永田部会長】 ありがとうございます。
そのほか、いかがでしょうか。
【中田事務局長】 ちょっと事務局から説明させていただきます。
【永田部会長】 はい、どうぞ。
【中田事務局長】 現在、都道府県レベルで公立大学がない都道府県は4つだけでございます。また、その中にも公立大学を設置しようというところもありまして、その動きについては、今、会長から申し上げましたように、我々のほうで、協会でどうこうということではなくて、あくまでも設置団体の判断ということになります。
大森先生ご指摘の入学者層がどういうところかということについては、これからこの部会で多分御議論なさると思うのですけれど、やはり18歳人口全体の数が減ってくると、当然、我々が受け入れなければならない様々な層の学生さんを、きちんと育てていくという責任が生じてくる。それはどうなるか、私どもで今、予想はできませんけれど、そういった意味では、公立大学が教育的に果たす役割についても、急激な変化が起こるのではないかということに、我々は、緊張感を持って取り組んでいかなければいけない、そういうふうに考えております。
以上でございます。
【永田部会長】 ありがとうございます。
そのほかは、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。
それでは、ありがとうございました。若干残されている時間があるので、全体をお聞きして、改めて伺いたいというようなことがあれば、まだ各団体、林先生もいらっしゃいますので、この際ということがあればお伺いいたしますが、いかがでしょうか。
改めてということはないですか。
ありがとうございました。
それでは、ここまでとさせていただきまして、林先生並びに各団体の方々、ヒアリングに臨んでいただきまして、ありがとうございます。皆さん、多分、なるほどとか、そこはやはり問題だったかということに、確信を持てたのではないかと思っております。大変参考になりました。ありがとうございました。

一旦閉じさせていただきまして、オンラインの方々も、12時45分にお戻りいただきますようにお願いいたします。ありがとうございました。
( 休憩 )
【永田部会長】 議事を再開させていただきます。ヒアリングを幾つかの団体に行います。
全国知事会から、愛知県副知事の牧野様においでいただいております。御発表をお願いいたします。
【牧野副知事】 それでは、よろしくお願いします。愛知県の牧野と申します。本日は、知事会からの意見を聞いていただく機会をいただきまして、どうもありがとうございます。全国知事会の文教・スポーツ常任委員長を務めております本県の大村知事は、現在、海外渡航中のため残念ながら出席できませんので、私が代理出席で代わりに発言をさせていただきたいと思います。
中間まとめに対する全国知事会の意見を資料5のとおり取りまとめておりますので、全国知事会文教・スポーツ常任委員長県として、この資料5に沿って発言をさせていただきます。
まず1つ目、総論でございますけれども、大学等は、国公立、私立を問わず、地域の中核的な拠点として、地域の将来を支える人材の育成や産業の振興に多大な貢献をしており、地方創生にとって重要な役割を担っております。
地域の課題は、非常に複雑で困難なものが多く、大学等、地方自治体、産業界等のそれぞれの立場からのみで、地域課題の解決や新たな価値を創出することは限界となっております。地域の多様な主体が人材や知見を持ち寄ることで連携し、地域社会を支えていくための具体的な取組を行っていくことが求められると考えております。
デジタル化の加速度的進展への対応に加えまして、カーボンニュートラルの実現は地球規模の大きな課題でございます。大学等には、こうした新たな社会的要請に対しまして、人材育成はもちろん、技術革新のための研究開発や、開発した技術の実証実験、社会実装の先導モデルの提示といった役割が期待されております。
また、大学等には、グローバル化に伴う国際的な頭脳循環の中で高度外国人材等を呼び込み、地域へ定着させ、新たな価値を創造する機能を発揮したり、人生100年時代におきまして、リカレント教育やリスキリングの場として、地域社会を担う専門人材を輩出・再教育する機能を発揮していくことなども期待されております。
大学等におきましては、そうした期待に応えつつ、地域の核となりまして、地域産業の振興やスタートアップの創出などを図ることによって、雇用の創出、ひいては人材の流入・定着につなげるなど、各地域における一層の地方創生の実現に寄与していくことが求められていると考えております。
2として、今後の高等教育政策の方向性と具体的方策です。中間まとめの柱立てに沿って発言させていただきます。
まず1つ目、教育研究の「質」の更なる高度化についてでございます。
国際的な人材獲得競争が激化する中、大学等が、高度人材や地域において活躍が期待される専門性の高い人材を育成するとともに、そうした人材の呼び込みや地域への定着に向けて、ますます大きな役割を果たすことが求められております。
また、大学等が、就職に向けた学生の教育・支援のみならず、社会や地域のニーズに応じたDX、GXといった技術革新への対応に必要なスキルを身につけるためのリカレント教育やリスキリングに関する学びの場を提供していくことも重要でございます。
それから、2つ目、高等教育全体の「規模」の適正化についてでございます。
大学等は、地域の中核的な拠点として、地域の将来を支える人材や産業育成に多大な貢献をしており、地方創生にとって重要な役割を担っております。また、DXの加速化、SDGsの達成、2050年カーボンニュートラルの実現など、近年の困難かつ社会的な影響の大きい課題に的確に対応していくためにも、大学等の果たす役割はますます重要となっていることから、単に人口の減少をもって大学等の規模や地域配置を論じることなく、産学官の連携を深めながら広く議論する必要があると考えております。
特に、「規模」の適正化につきましては、地域において、大学等が果たす多面的な役割や高等教育機関数が異なる現状を踏まえた議論が重要であると考えております。
3点目、高等教育への「アクセス」確保でございます。
人口減少・少子高齢化の進行に伴う地域経済の担い手確保や地球温暖化などの環境問題、地震などの大規模災害への対応など、地域の実情に応じた様々な課題を解決するためには、地方自治体、企業、関係団体、住民等、多様な主体が課題を共有しまして、大学等が有する知見を最大限活用しながら、課題解決につながる具体的なプロジェクトをつくり上げていくことが必要となります。
効果の高いプロジェクトの実現のためには、多様な主体による活発な議論や試行錯誤、実証を繰り返しまして、実装につなげていくということが不可欠でございます。こうしたプロセスを安定的に行っていける環境を整えていくことが重要です。
地方創生を進めていく上で、地方部の人口流出を緩和するためにも、国の主導により大学等の地方部への分散を促進していく必要があると考えております。
また、地域の将来を支える人材の育成のためには、高等教育を受けたいと希望する者が経済的理由により断念することがないような体制であることが必要です。経済的観点からのアクセス確保のための体制整備等について、国で財源を確保し、全国で統一的に対応すべきと考えております。
そして、経済的な理由をはじめ様々な理由で地元を離れることができない進学希望者や、地元で学び・働きたいという意欲を持った進学希望者にとって、求められる学問分野を学べる高等教育の機会を確保することは、地理的・経済的観点からのアクセス確保のほか、地域の将来を担う人材を輩出する地方創生にとって重要でございます。
とりわけ、地方部の国立大学は、地元の若者の進学意欲に応える受皿であるだけではなく、都市部の若者の受入れにもつながることから、定員増を弾力的に認めるとともに、運営費交付金の充実及び安定的な配分を図ることが必要でございます。
4点目、機関別・設置者別の役割や連携の在り方につきましては、機関とか設置者の別にかかわらず、地域の中核的な拠点として、地域の将来を支える人材育成や産業振興に貢献することが重要と考えております。
5点目、高等教育改革を支える支援方策の在り方でございますけれども、大学等が、地方自治体や産業界など多様な主体とともに地域課題の解決や新たな価値を共創する拠点「イノベーション・コモンズ」としての役割・機能を最大限発揮できるよう、ソフト・ハード一体となった更なる教育研究環境の充実、すなわち、ソフト面の取組を支える施設の機能強化や老朽化対策を含む大学等の施設の整備充実及び安定的な運営の確保に向けた財政支援の充実を継続的に図る必要があります。
学生が生まれ育った地域の将来を担えるよう、地方大学に入学または卒業後に地元に定着した学生に対し、授業料減免などの一定のインセンティブを与える制度の検討や、地域内において進学者や就職者の実績に応じた地方大学に対する運営費交付金・補助金の増額などの優遇措置を図ること、さらに、地域内進学や就職を促す地方大学や地方自治体の取組に対する支援を拡充する必要がございます。
大学等の高等教育に係る教育費の負担軽減のため、国が実施する授業料等の減免や給付型奨学金事業等につきまして、支援対象の拡大、給付額引上げ、運用方法弾力化など、制度の拡充を図り、高等教育の授業料の無償化等を国が責任を持ってその財源を確保するということにより実現する必要があると考えております。
中間まとめに対する意見は以上でございますけれども、申し上げたいことは、地域の将来を支える人材育成や産業振興に、高等教育機関というのは多大な貢献をしていただいております。その意味で、地方創生にとって大変重要な役割を担っているということでございますので、その役割について十分に留意、着目していただき、その上で議論を進めていただけると大変ありがたいと考えているところでございます。
意見としては以上になります。どうぞよろしくお願いします。
【永田部会長】 牧野副知事、ありがとうございました。
それでは、御質問、御意見いかがでしょうか。益戸委員、どうぞ。
【益戸委員】 ありがとうございました。益戸です。
午前中の国立大学協会や、公立大学協会からのお話の中で、地方自治体の首長さんとの会話というのは非常に重要であるという御意見が出ています。
前々からこういった機会に申し上げていますが、各都道府県が単独で高等教育行政を担うような責任あるセクションをつくる事はとても重要であると考えています。現状は、組織の中にその知見のある方がいらっしゃらないので、実現は難しいとの御意見もありますが、この組織改革は大変重要な意味があります。特に地域の高等教育機関の再編ですとか、
地理的アクセスの確保であるとか、将来を見据えた高等教育を考える上では教育機関側だけではなかなか解決できない大きな問題です。
そこを、行政サイドの責任部署とさらに地元経済界を巻き込みながらしっかりやっていく事が少子化への備えではないでしょうか。地方自治体の専門セクションを文部科学省がリードしながら、協力をして進めていくという絵柄は描けないものかと考えます。この点についてはいかがお考えになられているか、教えていただければと思います。
以上です。
【牧野副知事】 今、益戸委員おっしゃったとおりでございまして、高等教育機関と地方自治体との連携というのは、本当に重要になってくると思っております。愛知県においても、愛知県は非常に大きな産業県でございますので、やはり様々な技術開発や環境問題とか、それから、ほかの面でもいろんな知見を集めながら地域の活性化に役立てていく必要がございます。もちろん企業との連携というのもいろいろされているとは思うのですけれども、そこを自治体がつなぐような形で、いろんな大学の様々な研究機能を活用させていただきながら、県の施策を進めているというところがございます。そのため、これからは、より一層、大学等の高等教育機関には、地域の活性化に対して意見と知恵を出す場であってほしいというふうに思っており、地域のニーズをしっかり酌み取ってくれる場所があるということは、これからますます重要になってくるというふうに考えております。
【永田部会長】 ありがとうございます。
大森委員、どうぞ。
【大森副部会長】 大森でございます。ありがとうございます。
今日の御発表、全てそのとおりと思って聞かせていただきました。ありがとうございます。
その上で、今日、御提言の中には、「とりわけ国立大学」というふうな表現がありますが、全ての大学に関してのお話だったということは理解した上でなんですけれども、地方創生の観点で言うと、結構地元の私立大学が地元の学生を引き止めているという役割、非常に大きいというふうに自負しています。私は私立なのですけれども。
私立大学に対して、自治体はどういうスタンスでお考えでいらっしゃるのか。「とりわけ私立大学」のお話は出てこなかったのですけど、私立大学に通っている地元の学生、かなり多いと思うのですね。その受け止めみたいなことをお聞かせいただきたいのが1点。
それから、国公私を超えて自治体が、県なり市が大学を支援していこうと思ったときに、その自治体にはどんな支援が必要なのか。例えば、地方交付税は公立大学以外の大学も算定基準にするとか、何かそういうようなことがあればもっと支援できるのにというようなことがあれば、教えていただきたいと思います。
【牧野副知事】 ありがとうございます。
私立大学に対する受け止めですけれども、確かに、やはり東京の大学に出ていくとなると、どうしても地方の学生さんは経済的に負担がかかりますから、そういう意味で、やはり地方に一定の高等教育のキャパがあるということは、これは高等教育機会の確保という意味では、地方にとっては本当に重要なことだというふうに考えております。
ただ、なかなか私立大学も、やはり地方の大学でございますと、できる分野と申しますか、教育分野とか、ある程度人が集められるものに限られてしまうという問題があると考えられます。特に私学は経営の問題などもございますので、学生を集められる分野に偏ってしまうという可能性があるとは思っております。
それから、自治体への支援については、やはり県が大学にいろんな協力をお願いするということになったときに、大学のほうで自発的に御協力いただく部分というのも大きいものですから、そうすると、やはり大学の運営経費というのがある程度潤沢ではないと自由に御協力いただけないというところもございますので、やはり大学の運営費を、ある程度自治体のことも考えた自由な活動に使える経費を頂けるというのが大事ではないかなというふうに思います。
【大森副部会長】 ありがとうございます。
例えば、地域の保育士とかを養成しているのはほとんど私学で、あるいは、短大だったりすると思うのですけれども、そういう大学が地域からなくなってしまうと、本当に地域のエッセンシャル人材が地元で育成できないみたいなことが起こってくると思うのですけど、そういうことに関して、県が大学とタッグを組みながら、そういう人材育成を私学とタッグを組んでしていくみたいな考え方というのは、知事会の中では御議論はなかなかないということでしょうか。例えばですけれどもね。
【牧野副知事】 ちょっとそこまではなかったです。愛知県は、私大も含めて、ある程度それなりに定員があって、もっと大学の少ない県ですと、いろいろ問題あるのかもしれないのですけれども、知事会の中でも、今のところはそういう意見はなかったということでございます。
【大森副部会長】 ありがとうございます。
【永田部会長】 そのほか、いかがでしょうか。
平子委員、どうぞ。
【平子委員】 御説明ありがとうございました。平子と申します。
地方の大学の大きな機能としましては、地元の学生をしっかり地元にとどめて、その地方の課題解決のために貢献するとだと思いますが、逆に、大学がもっとイノベーティブであるためには、他県の学生あるいは留学生の流入も必要だと思うのですが、このようなことに対して知事会で議論が進んでいるのかどうか、教えていただければと思いますが、いかがでしょうか。
【牧野副知事】 他県の学生といいますか、東京を含め都市部の学生、若者が地方に来ていただけるということについては、これはもっと促進していくべき、図っていくべきという御意見が知事会のほうでもございました。
また、外国人につきましても、愛知県のほうではかなり積極的に外国人の大学生の受入れを進めているところでございます。
やはり高等教育の中でも多様性の確保というのが必要だと思いますので、そういうのはぜひ進めていくべきだと思いますし、県外から来た学生さんがその地方の魅力を見つけていただく機会にもなると思いますので、そういうことはぜひ進めていくべきだし、そういうことは県としても努力していきたいというふうには思っております。
【永田部会長】 そのほか、よろしいでしょうか。
中村委員、どうぞ。
【中村委員】 中村と申します。ありがとうございます。
今までの質問ともちょっと重なるのですけれども、例えば、大学と自治体との連携を強化していくときに、この特別部会の中でも、高等教育担当の組織を自治体の中に置く、あるいは、自治体の外に出して、地域連携プラットフォームを中心とした地域連携コーディネータなどを配置をしながらやっていく、そんな意見が出ているのですけれども、実際に愛知県の考えで、愛知県内に高等教育機関全体をまとめるような組織を県の中につくるということは可能なのか、あるいは、もっと別組織として、県も十分関わり合ってつくったほうがいいのか、その辺についてもし御意見があればいただきたいです。
【牧野副知事】 愛知県では、大学との連携というのは、もう既にその担当がございますし、県立大学もございますので、大学の担当で、ほかの大学との連携等も図っているというようなことはございますが、そこの担当だけで全部やっているというわけではなくて、いろんな仕事をしておりますので、それぞれの業務のニーズから、大学とアクセスすることもございます。なかなか全部一本でまとめてというわけにはいかない部分があるのも事実だとは思います。
【永田部会長】 ありがとうございます。
そのほか、よろしいですか。
牧野副知事、ありがとうございました。参考にさせていただきます。
それでは、次の発表に移りたいと思います。次は、一般社団法人全国高等専門学校連合会からでございます。大塚会長、よろしくお願いいたします。
【大塚会長】 どうも皆様、こんにちは。全国高等専門学校連合会会長をしております大塚と申します。よろしくお願いします。
もう御存じのように、全国には高専、国立、公立、私立、3種類の高専があります。今回御提出させていただいた資料は、私どもの高専連合会の資料と、日本私立高専協会からの資料となっております。私どもの連合会の資料を作る際に、私立高専協会の資料を参考にさせていただきながら作った部分もありますので、今日の説明は、この連合会の資料にさせていただきたいと思います。私立高専協会の資料のほうは、参考までにつけさせていただいた次第です。
今回の中間まとめに対する意見を述べさせていただく機会をいただきまして、本当にありがとうございます。私どもとしては、基本的に中間まとめの全体については賛同しているところでございます。
1か所、中間まとめの52ページの部分、高等専門学校について今後期待していることが書かれている部分がございますけれども、私どもの資料の1ページの枠で囲ったところですけれども、2か所アンダーラインをつけさせていただいたところの修正というのを今回提案させていただきたいと思います。
まず、提案の骨子から説明させていただきたいと思います。
高等専門学校、いわゆる高専では、科学や技術で人々や社会の「幸せ」に貢献できる人財を育成しているところでございます。全国高等専門学校連合会、略して我々は高専連合会と呼んでおりますけれども、高専連合会では、高専の教育課程を補完して学生の成長をさらに促すことを目的に、例えば、高専の体育大会の、野球とか水泳とか陸上とか、いろんな競技があるのですけれども、その競技運営などを通じた課外活動支援とか、あるいは、NHKの放映でも有名なロボットコンテスト等の様々なコンテスト活動の運営・支援を通じて、高専における正課外活動の支援を担っているところでございます。
課外活動に関しては、全国、北海道地区から九州・沖縄地区まで8地区あるのですけれども、地区ごとにそれぞれの競技の体育大会を開催し、上位入賞した選手が全国規模の大会に出場するという仕組みをつくっております。
こうした、例えば、運動部系の部活動で言いますと、チームで結果を出すために、日頃の練習なども含めて的確に行動できるために、それぞれの人間力を養ったり、あるいは、試合のときに緊張に耐えながらチャンスをつかむために、集中力や、あるいはリーダーシップ、チームワーク力というのを培ったりしているところであります。いわゆる人間力を課外活動を通じて培っているところでございます。
また、高専のロボットコンテストなどを例にしますと、学生の柔軟な発想力、創造性を育成することを目的に、単にロボットの出来栄えだけではなくて、そこに込められた学生のアイデア、アイデアそのものを競わせるという趣旨でやっております。ですので、毎年ロボコンのテーマも年によって違うテーマになって、いつも新しいアイデアを学生はチームで生み出すということを実践しているところです。創造性とか柔軟な発想力、あるいは、やったことないものに対するチャレンジ精神、これもやはり人間力に通じるものだと思っております。こんな活動を連合会としては支援しているところでございます。
今回、この連合会の立場から、先ほどの中間まとめの52ページの高専に関するところの記述のうち、下線部(1)及び(2)の部分を表1のように修正していただけたらどうかなという御提案をさせていただきたいと思います。
1ページ目の表1を御覧ください。まず、下線部(1)の部分ですけれども、記述の中に、「人間力を育みながら」という文言と、後で説明しますけれども、「PBLによる実践力の修得」、これを含めていただいて、人間力の育成及び理論と実験や実習、あるいは、PBLによる実践力の修得というのを重視している、そうした教育をこれからも期待しているということを盛り込んでいただけるとありがたいかなというふうに考えたところです。
下線部(2)についてです。こちらは、「社会貢献の大きな志、大志を持った実践的・創造的技術者」という表現にしていただいて、高専で育成していく技術者は、社会貢献への高いモチベーションを持っている技術者ということを明示的に含めていただけたらというふうに考えているところでございます。
次のページに、提案の理由を簡単に説明しております。
その前に、高専教育について、簡単に概要を紹介させていただきたいと思います。4ページ目のところに図2というのがありますので、ちょっとこちらを見ながら説明を聞いていただければと思います。
高専では、心身の成長が速く、感受性の高い15歳から5年間、体験重視型の教育により創造的・実践的な技術者を育成しているところでございます。高専の教育課程では、学生は、授業や演習によって、いわゆる頭を動かす思考体験と、実験・実習によって実際に自分で手で触れたり目で観察したり観測したりしていく実践体験を組み合わせて、身につけた知識やスキルを必要な場面で自由自在にこなせる域まで学生たちは理解を深めているところでございます。また、こうした体験重視型の教育により、理論と実践力、これをバランスよく修得させているところが高専教育の特色の一つと考えています。
さらに、修得した知識やスキルを実際の課題解決の場面に「知恵」として発揮する、応用する、そういう「実践力」を育成するために、高専ではPBLというのを行っているところでございます。以上が、高専教育の教育課程における正課活動に含まれているところでございます。
加えて、高専教育には、先ほどもちょっと説明しましたけれども、正課外の活動も含まれておりまして、学生は教育課程の上で理論と実践力を身につけ、かつ、正課外活動でも人間力や実践力を養うような取組をしているところでございます。
2ページ目に戻っていただきまして、提案の理由についてです。
高専では、学生は、大学受験に中断されることなく、感受性の高い15歳から5年一貫で正課外の活動に取り組むことができており、これによって「人間力」を成長させておるところです。また、教育課程においても、今説明したように、理論と実践力、PBLなども含めて、体験重視型で力を身につけているところです。学生が、理論と実践力両者をバランスよく修得しているところから、下線部(1)のところは、人間力の育成と理論と実践力というところを明示していただきたいというような提案をさせていただいたところです。
また、下線部(2)のところですけれども、こちら、教育課程においても、現実社会に対峙するようなPBLを通じて、「社会貢献へのモチベーション」を育んでおりますし、また、正課外活動においても人間力を育んでいるところから、学生が社会貢献への大志を持った創造的・実践的な技術者を目指しているというところを明示させていただけないかと御提案したところでございます。
少子化が進む中、一人一人が付加価値の高い任務、仕事を担えるように、そして、卒業後も伸び続けていくために、こうした人財が必要と考えて、このような提案をさせていただいたところです。
説明は以上となります。ありがとうございました。
【永田部会長】 ありがとうございました。
高専の特徴や現在のことについてよく分かったのですが、急激な少子化が進むことに関しての何か御意見というのは、簡単でもいいので、述べていただけないでしょうか。
【大塚会長】 やはり少子化が進むことによって、将来の労働人口というのは当然減ってくるかと思います。やはり経済にしても、産業界のいろんな力にしても、担い手の人数掛ける一人一人の高度な仕事を担うための能力というのが関係していると考えます。高度な能力、付加価値の高い仕事をしていくために、高専のような学校では、人間力、あるいは理論と実践、そして困難に立ち向かえるような社会貢献へのモチベーション、これをしっかり今まで以上に育んだ教育が必要ではないかというふうに考えたところです。
【永田部会長】 ありがとうございます。
高専は大きな起爆剤になるのだろうと考えています。起爆剤というのは、多様性に関しても、それから、教育の実践化においても、とてつもなく期待できることが多いと思っていますが、今回の御説明だと、どういう御希望をお持ちなのかはっきり分からなかったので、少し聞かせていただきました。
それでは、御質問いかがでしょうか。伊藤委員、どうぞ。
【伊藤委員】 今の永田部会長の話とほとんど重なるのですけれども、もう一点、高専って、例えば、アジアに対して非常にアピール力も持っていますし、高専の実践というのは、ここに書かれている非常に教育的な効果があるというのは、今や大分知られるようになっていると思うのですね。
それで、今の部会長がおっしゃったことで、もう一点、国際化に対して、海外戦略というのも変ですけれども、海外との関係、あるいは、海外から留学生の受入れ等、その辺のところをどういうふうに将来的に考えていらっしゃるのかということをお話しいただければと思います。今、高専、本当に就職率も非常に高いですし、実はあまり困っていないのかなという気もしなくはないのですけれども、それも含めて、ちょっとお話しいただければと思います。
【大塚会長】 ありがとうございます。
海外戦略という意味では、今、海外に高専という制度を輸出するというのをやっております。モンゴル、タイ、ベトナムでは既にそれが行われて、その支援を継続して行っているところです。
また同時に、海外で高専に学びたいという留学生、これを募るというのも非常に重要なミッションだと思っております。海外から高専に留学生を受け入れる。そうすることによって、高専の学生さんも、様々な国にいろんな文化があり、考え方の違いがありというのを知って、若いうちから、15歳から物事の見方、少し視野を広げて考えることができたりするのではないかというふうに考えて、もっと留学生を受け入れて国際貢献を果たすと同時に、高専で学ぶ学生さんの能力向上にもつなげていけたらというふうに考えているところです。
【伊藤委員】 ありがとうございます。
【永田部会長】 そのほか、いかがでしょうか。
中村委員、どうぞ。
【中村委員】 ありがとうございました。
2点お聞きしたいのですけど、1点は、高専から理工系の大学の学部に3年次編入するという学生も多いと思うのですけれども、お分かりでしたら、今、大体何割ぐらいの学生が編入を希望し、実際に編入しているのか。ということが一つ。
もう一つは、最近、工業系の高校で専攻科が増えていると思いますが、そこも同じく5年制なのですね。ただ、教育課程が、3年が終わった後2年なので、高専とはまた違っていると思うのですけれども、工業学校専攻科との関係性、あるいは、何か合同の会議等を持っているのか、もしあったら教えていただきたいと。
【大塚会長】 ありがとうございます。
高専の卒業生の進路としては、大学編入学というのと、高専の専攻科への進学、それと、就職という三通りあります。私ども、高専の専攻科進学と大学編入学、両方合わせて、これ、学校によって若干違いがあるのですけれども、おおむね4割ぐらいが編入学または専攻科進学です。そして、残りの6割が就職をしております。
それと、高校の専修科、専攻科。
【中村委員】 専攻科です。
【大塚会長】 との違いですけれども、やはりカリキュラムが大きく違うかなと思っております。というのは、高専では、実は途中に、5年間一貫で教育できるというところがありますので、大学の内容も低学年から織り込んで教育しております。一般科目の教育も、専門科目の教育も行っております。ですので、最初の3年間が高校課程で、あとの2年間は大学課程というわけではなくて、ミックスされた形で一般教養の部分と専門能力、くさび形で教育しているというところがあります。
それと、そういう5年間という時間を有効に使えるので、間に、例えば地域、あるいは企業の現実の課題をテーマとしたプロジェクトベースの学習なんかを、例えば半年規模とか1年規模で、どこの高専も入れております。そういったことを通じて、実は地域の課題の本質は何かというのを理解するとか、あるいは、それを解決することによって、課題で困っている現場の人たちが喜ぶ姿をイメージしながら、それをまた自分の原動力にして学びのモチベーションを上げていく。結果として、社会貢献へのモチベーションを育むことにもつながっていくというところが高専教育の特色であり、高校プラス高校の専攻科とも違うところかなというふうに考えております。
【中村委員】 ありがとうございます。
【永田部会長】 ありがとうございます。
そのほか、いかがでしょうか。
小林委員、どうぞ。
【小林委員】 御説明ありがとうございました。
高専はかなり海外からも高い評価を得られていて、あと、中学卒業後に5年間の教育という、複線化のヨーロッパ型と言ったらあれなのですが、違う形の高等教育だと思うのですが、この2ページの上のところに、学生は、大学受験により中断されることもなく、感受性の高い一貫教育ということが書かれているんですが、いわゆる大学受験によって中断されているデメリット面というのをどのようにお考えになっているのか、あるいは、中学卒業後に複線化して5年で教育していくことのメリットみたいなものの可能性みたいなものはどのようにお考えか、教えていただければと思います。
【大塚会長】 ありがとうございます。
高専では、先ほどちょっと正課外活動というのを紹介させていただいたのですけれども、正課外活動としては、運動部系の部活動もあれば、演奏とか美術に関するような文化系の課外活動もあれば、あるいは、先ほど説明したロボットコンテストとか、あと、コンテストには様々な種類がありまして、英語のプレゼンテーションのコンテストがあったり、あるいは、最近はやりのAIを使って、それをビジネスに生かすためのディープラーニングコンテストというのがあったりします。
いろんな選択肢の中から、学生が自分に興味があったものを選んで、それを放課後とかの時間、5年間、興味あることにも熱中できるというところが、誰かに教科書みたいなのがあって教えられて学ぶ学びとは違った、自分から好きでやっているのだという、心に火がついたような状態で取り組むような教育ができるというところが、私が表現したかった大学受験に中断されることなくというところにつながっております。
大学受験が決して悪いと言っているわけではないので、そこは誤解がないようにというふうに思っております。
【永田部会長】 そのほか、よろしいでしょうか。
大塚会長、ありがとうございました。
【大塚会長】 ありがとうございました。
【永田部会長】 引き続きまして、全国専修学校各種学校総連合会の関口理事に御発表いただきます。よろしくお願いいたします。
【関口常任理事】 全国専修学校各種学校総連合会の関口でございます。今日は、中間まとめへの意見を述べさせていただきます。よろしくお願いいたします。
専修学校専門課程の現状ということで少しお話ししますと、直近で8月28日に学校基本調査の速報値が出まして、専門課程の在籍者55万8,243人、私立ということに限定しても、53万7,479人ということで、昨年度に対して3,871人の増ということになっております。この間ちょっと減ったり増えたりしていますけれども、今回はありがたいことに3,800人ぐらい増えました。全体として、ここのところ五十数万人の在籍者を確保できているということは、専門学校に社会からの一定の支持というものがあるというふうに見てもいいのではないかと思います。
一方、6月に参議院の本会議で、専門学校に関しまして多く含まれている学校教育法の改正が決まり制度面でも高等教育機関としての整備という方向で大きく進んだということであります。
これらを受けまして、制度的にも、それから、世の中の信頼ということの確保に向けて、専門学校としましては、学校教育法の改正でも、専門学校については、132条の2にいわゆる第三者評価の努力義務があるということを決めていただいたわけで、質保証・向上に一層取り組んでいかなくてはいけないというのが、我々の現在の位置であるかというふうに考えております。
資料に移ります。全専各連と略しておりますが、私どもの年来の主張は、冒頭書きましたように、「職業教育体系の確立」ということでございます。この場合、「職業教育」は、職業人の育成というよりも、「特定の職業に就くための教育」と捉えないと体系化はできないというのが全専各連の考えでございます。
さて、今回の中間まとめにつきましては、特に4年制大学に主眼を置いたものであるものの、高等教育全般の方向性を示しているということの性格もあるため、当連合会からは、以下の2点を踏まえて意見を申し述べたいと思います。
1つは、様々御意見もこれまでございましたような、少子高齢化、生産年齢人口減少を迎えている我が国の持続的発展を期すときに、様々な資質、背景を持った人たちが高等教育機関での学びによって、個々の能力を向上させ人材の流動化を進めることで、生産性の向上を図っていくことが重要である。これは私どもも大いに進めなくてはいけないことであろうと認識しております。
そのためには、アカデミックな教育体系と並んで、職業教育体系、先ほど述べましたが、これを整備して、そのことによって、人材流動性を担保する基盤としての国家学位資格枠組みを早期に構築することが、高等教育の今後の在り方の論点として極めて重要であると考えます。この点につきましては、教育未来創造会議の第二次提言においても明確に言及されているところであります。
では、具体的に中間まとめに対しての個別的な意見を述べさせていただきます。
2の今後の高等教育の目指すべき姿の(3)重視すべき観点、③高等教育の国際化の推進につきまして、28ページですが、留学生を受け入れているのは大学だけではなくて、専門学校においても約4万6,000人を受け入れているという実態を踏まえれば、記述にあります「我が国の大学で学び」というところの記述は、「我が国の高等教育機関(もしくは、大学等)で学び」とすべきではないでしょうか。
⑧高等教育機関を取り巻く環境・組織との接続の強化、イの社会との接続及び連携の強化、32ページですが、「専門職大学等や専門学校の職業実践専門課程においては、教育課程編成等につきまして、企業等との連携が制度化されており」と記述していただいておりますが、この理念、職業による職業のための教育というふうに私どもは捉えていますが、それを「高等教育における職業教育の在り方の本質」であるということを強調してはいかがかということであります。
ウの地域との連携の推進は、33ページあたりですが、今回実施されました「地方公共団体と高等教育機関との連携の状況に関するアンケート結果」にもございますように、「地方公共団体に、高等教育との連携業務を中心に行っている部署が設置されている例は少ない」、これまでの議論にもあったかと思います。
ただし、全国の地域連携プラットフォームの設置数、それから、厚生労働省関連の「地域職業能力開発促進協議会」をはじめとして、地域の産業振興・労働部局と専門学校が協力している実情というのは明確にございます。そういうことで、高等機関と地域の連携は、少しずつですが、進みつつあるというのが現状ではないかと思います。
今後も地方公共団体の人材育成等の政策に高等教育機関が強く関与していくためには、地域の連携機関や事例を包括的に把握して、人材育成の施策立案を中心業務とする組織が必要ではないでしょうか。これも今まで御指摘もあったと思います。その際には、専門学校卒業生の地元就職率が圧倒的に高いということもあり、都道府県の私立専修学校所管部署の積極的な関与、機能強化を期待するところであります。
3、今後の高等教育政策の方向性と具体的な方策について、(1)①学修者本人の教育の更なる推進、36ページあたりですが、「早期の学習コース分けからの転換」あるいは「レイトスペシャライゼーション」という進路選択の先送り的な提言は、平成20年度以降政策として進められてきたキャリア教育の充実による職業意識の涵養や情勢とは、方向性が異なるものではないでしょうか。早期の進路決定とモラトリアムの「どちらの選択も可能な緩やかな進路選択」ということであるならば、単に進路の先延ばしを強調するだけではなくて、キャリア教育の推進による早期の進路決定についても、進路選択の重要な要素であることを別途記述してはいかがでしょうか。
次ですが、「高等教育機関間の連携による転編入学促進」のうち編入学については、専門学校、短大、高専から大学への編入学が想定されているものと推察されますが、実態として、専門学校から大学への編入学は令和5年度で年間約1,600人であるのに対して、専門学校入学者のうち大学等卒業生は同年度で1万2,600人であることに着目すれば、「転編入学」だけではなくて、「卒業後の進路」としての連携についても記述してはいかがでしょうか。
②外国人留学生や社会人をはじめとした多様な学生の受入れ促進、37ページ、地域人材の確保のために、各地域の高等教育機関が行政との連携を図り人材育成を推進する必要があり、その際には外国人材の活用も重要であります。そのためには、高等教育機関を卒業した留学生の就職機会をさらに拡大することが必要と考えます。
優秀な留学生の受入れ促進の必要性については、学生確保の観点のみならず我が国の人材確保の観点からも重要であるとの視点も記述すべきではないでしょうか。
リカレント教育の推進についてですが、生産年齢減少への対処として極めて重要であるということは言うをまたないわけであります。その観点からとりわけ求められているのは、新たに「特定職業に就く」ためや「現在の職業における職業能力を向上させる」ための「職業教育」にほかならないわけです。何のためのリカレントなのかということが大事です。専門学校は、こうした意味での多くの社会人を受け入れているわけで、4万1,000人という直近のデータもございます。
現状では、高等教育機関の社会人の受入れ状況については、調査によって、「既卒者」または「社会人」の定義づけが異なることもあります。統一データがありません。リカレント教育の推進を言うのであれば、今後、政策立案を行う上で、状況把握、各機関の比較、検討を行えるような統一的かつ継続的なデータ収集の必要について言及すべきではないでしょうか。
都道府県の産業振興部局や労働部局との連携によりまして、ハロートレーニングといった雇用保険を活用したリカレント教育の機会が提供されております。専門実践教育訓練等々が代表ですね。ただ学習者側へのアプローチだけではなくて、企業側へのアプローチを積極的に行っていくことも重要であると考えます。
外国人留学生の国内企業等への就職については、より人材不足が指摘される地方への定着を促進するための方策が必要と考えます。そのためには、高等教育機関卒業者として、例えばですが、国家資格取得者の当該資格での国内企業等での就職が可能となるような、既存の枠組みにとらわれない新しい在留資格創設の必要性も検討してはいかがでしょうか。
「国内外における我が国の学位の透明性や比較可能性を高めるための資格枠組みの検討の加速化」については、「学位の透明性」だけではなくて、「称号」も含めるべきだと考えます。また、「検討の加速化」というレベルではなくて、「構築に向けた具体的協議の推進」としてはどうでしょうか。
③大学院教育の改革ですが、多様な学生の受入れについては、これまで4年制専門学校の高度専門士課程の卒業生については、大学院入学資格が認められてきたところでございますが、今般の学校教育法の改正によりまして、一定の要件を満たす専門学校に専攻科の設置を可能とする制度改正が行われたことを受け、事実上の区分制の成立ということですが、専攻科を含めたトータル4年以上の専門学校を卒業した者に大学院入学資格を認める方向について検討することが重要と考えます。
最後に、期間別・設置者別の役割や連携の在り方につきましては、52ページの専門学校の言及がありますが、特に、職業実践専門課程の制度、先ほど触れましたが、これは職業教育機関の本来あるべき姿の典型として制度設計され、PDCAの全ての過程において企業との連携ということを前提としているわけですが、職業教育のマネジメントや学校評価の推進、情報公開等によりまして、職業教育の実質化・高度化に大きく貢献している制度であると思います。
専門学校における職業教育については、今後は職業実践専門課程を中心として充実を図っていくことが方向としては重要と考えておるところでございます。
以上です。
【永田部会長】 ありがとうございました。
御質問等お伺いいたします。いかがでしょうか。
小林委員、どうぞ。
【小林委員】 関口先生、御説明ありがとうございました。
【関口常任理事】 どうも、こんにちは。
【小林委員】 2つありまして、1つは質の問題です。かなりいろいろ御努力されて、第三者評価とか導入されていると思うのですが、今度、専門学校も、2026年度からか、単位制が導入されて、質というものが大分強化されると思うのですが。今、専門学校、2,500近くありますよね。かなり玉石混交だと思うのですけれども、この辺りの質というものを、専門学校一つとして考えるのか、その中で、さっき区分みたいなことをおっしゃっていますが、そういう可能性があるのかどうかが1点です。
もう一点は、地域の中で、やはりもう大卒人材というのが採用できなくなる時代がやってきますし、地域人材の中で専門学校生・卒業生はかなり大きな役割を持っていると思います。ただ、先ほどの知事会の御説明の中に専門学校は一言も出てこなかったですし、ただ、今のお話の中で、自治体の中ではかなり連携を進めているというふうなことで、各地域における高等教育の中での専門学校の役割、大学との連携というのはどのようにお考えになっているのか、この2点を教えていただければと思います。
【関口常任理事】 最初の玉石というのは、昔からよく言われていることなのですが、全専各連といたしましては、その中での優良な部分といいますか、そういうことを制度的にくくり出すことによって、そこの質の向上を推進することで、全体を押し上げていこうということを長いことやってまいりました。
今、言わば、そのくくっている上の部分というのは、職業実践専門課程ということになって、職業教育の本質的な在り方ということを示しているという点でも、そういう方向で行こうということなのですが、大体今4割程度ということです。
これが果たして全体を巻き込むことができるかということについては、いろいろ困難があるかと思うのですが、まずは職業教育の在り方の本質的なもの、考え方を示しているものとして、業界、企業との連携ということですね。本当にそれを教育の実質として高めていくということの方向で、ますます職業実践専門課程、4割そのもののアップを図ることによって、そういう方向に動機づけられるその他の専門学校も増やしていこう、全専各連としてはそういう考え方だということでございます。
地域の問題は、実際に、例えば、地財措置で、職業実践専門課程の学校の学生に対する支援というのは、今25、6、もう少し増えているのかな、都道府県で実施されて、全国知事会のほうで決めていただいて、そこからの動きでありますが、そういう支援も一方であると同時に、地域連携プラットフォームというよりは、専門学校が、各都道府県の団体が関与しているのは、先ほどの地域の職業促進の協議会のほうなんですね。
あるいは、例えば、東京都の例で言いますと、産業労働局等々のところと定期的に専各が協議をして、そして、どういうふうにリカレント教育を活性化させていくかという協議をした上で、具体的な厚生労働省の専門実践教育訓練や、あるいは、長期高度の訓練コース等々、本科で迎え入れられる専門学校の入学者をどう増やしていくかという協議をしていますので、地域連携のプラットフォームや厚労の協議会というふうに2つに分けているというよりは、行政側に、先ほど来出ているような、そういう専門セクションができることによって、それらをトータルにリードしていくような動きというのは一番望ましいというふうに考えております。
【小林委員】 ありがとうございます。
【永田部会長】 ありがとうございます。
そのほか、いかがでしょうか。
堀委員、どうぞ。
【堀委員】 関口先生、御無沙汰しております。2点教えていただければと思います。
1点目、2ページの3(1)①のところで、今回の提言が進路の先延ばしではないかという御指摘は、なるほどなと思う部分もある反面、どういう形で書き込んでいくのかというのはなかなか難しいなというふうにも思ったのですけれども、もしお考えがあったら教えていただきたいというのが1点目です。
それから、2点目ですけれども、リカレント教育につきましては、大学・大学院それぞれ力を入れていくという方向で、この部会でも議論してきたのですけれども、専門学校ならではの特徴がありましたら教えていただけないでしょうか。
【関口常任理事】 専門学校の職業教育というものについて、もし誤解があったらちょっと弁明をしておきたいのは、特定の職業の教育をやるということは、人間的な成長とか、職業に必要な一般的なスキルといいますか、あるいは、態度も含めて、そういうものの醸成につながらないということはないわけで、むしろ自分の関心が高いこの職業にどうしても就きたいという強い動機がある中での教育によって、これは高等学校の教育の段階からも、場合によっては中学の段階からも考えられることだと思いますが、そのことによって強く動機づけられて、例えば、こういう特定の職業の人になりたいとかという動機の中で、全体性といいますか、人間的な要素というのを特定の職業の教育の実践の中で培われるという要素が大いにあると。我々としては、その部分をできるだけ明確化して、カリキュラム化するというふうに捉えているわけでして、さらに言えば、職業実践専門課程に代表されるような現場の実習、こういうところは、とかく専門学校生について言われるような、専門のところだけは強いけどみたいな話ではなくて、その場を俯瞰的に体験する、職業の現場がどうなっているのかというふうなことを見る観点というものを今後強く教育していくと、しかも、そのことをカリキュラム化すると。
現場実習というのはもっと増やしていかなくちゃいけないというふうに思っていますけれども、そのことを通じて、総合的な仕事への見方、人間への捉え方というものを確立していくことができるのではないかと基本的には考えているわけですね。
そういうふうに考えますと、いきなり専門的なところへ入るのではなくてというような話と、特定の職業のところに早く関心を持ってやるという話が、順番が違うだけで、基本的に到達というのは一緒じゃないかなというふうに、専門学校側としては考えたいというところでございます。
それから、リカレントの教育の特徴ということですが、例えば、先ほどちょっと触れました、御存じだと思いますけれども、雇用保険を財源とした専門実践教育訓練、これは類型が、業務独占、名称独占のところが圧倒的に多くて、一番多いのが看護ですね。看護の専門学校へ入ってきたときに、3年間の学費等々が支援されると。でも、医療系の資格が圧倒的に上位になっています。その中で、専門職大学院のマネジメントオブテクノロジーというのはかなり上位に来ている。職業実践専門課程も、大学のそういうプログラムもみんな類型化されているのですけど、圧倒的にこれは資格ものと、それから、マネジメントオブテクノロジーみたいに本当に役に立つ高度なものというのは集客ができているということなのですね。
これはリカレント教育を考えるときにすごく重要なことだ。本当に仕事のため、つまり、専門学校がやっていることは、職業に就くための教育ですから、リカレントと言ったときに、好きな勉強をまたやりたいなという話もあるかもしれませんが、生産性の向上ということに結びつくためにリカレント教育が必要なんだという観点から言えば、これは職業教育中心でなければそういう話にはならないだろうと思っていて、それを中心的に担っている、あるいは、そういう高いミッション性を持って臨まなくてはいけないと思っているのは専門学校のスタンスだということです。
【永田部会長】 吉岡委員、どうぞ。
【吉岡委員】 ありがとうございました。吉岡です。
私も、例えば、ある技能を一所懸命深めていくということが、視座をつくっていくということは非常に重要だというふうに思っておりまして、今のお話、非常によく分かるのです。
専門学校は、今、基本的には高卒をイメージされているようなお話でしたけれども、その後大学につなぐとかという話もあると思いましたが、実際には結構、4年制大学を卒業してから専門学校で技能を磨くであるとか、方向転換する人もあります。例えば、それこそアニメであるとか、芸術系であるとか、あるいは映画を撮るとかというのは、大学の学生時代からダブルスクールをやっている学生もいますし、卒業してからそういう専門的な技術を深めていくという、かなりそういう学生は増えているように思うのですね。そういう意味で、4年制の大学との連携とか、大学を卒業した、いわゆるリカレントとまたちょっと質が違うと思うのですが、職業の専門性の涵養みたいなもののルートというのはこれから重要になっていくと思うのですけれども、その辺についてはいかがでしょうか。
【関口常任理事】 大学との連携というのはとても大切だと思いますし、ただ、専門学校の卒業して就く職業、あるいは、その専門学校の学びが、アカデミックな背景というものがある分野、医療分野なんかは特に学術的なものの背景というものはありますし、ある程度そういうものの学習をしなくちゃいけないというふうな領域と、あまりそういう学問的背景とは無縁の、無縁とは言わないでしょうけれども、技術ではなくて技能というふうなところの部分というのもかなりあるわけでして、等し並みに大学との連携が重要ということはないと思うのですね。
特にアカデミックな部分については、先ほど触れました専攻科という、一回卒業して世の中に出て、それで、もう少し自分のやっていることの知的な背景であるとか体系性だとかを学習したいという、そういう医療系を中心とした分野については、一旦卒業してから大学に行くとか、あるいは、専攻科で、そういう種類の専攻科が設けられたときには、それで勉強するとか、専門職大学院に行くとか、そういういろんな選択がある中で、学術性の必要度合いということを分野によって見極めつつ関連性というものを整理していくというようなことが、我々の側からは今求められているかな。
つまり、職業教育の分類というものがまだできていないわけですね。日本の社会全体において。そうすると、先ほどのNQFでも、職業教育の分類ができていなくてNQFもないじゃないかという話になるわけですが、その分類の過程の中で、いわゆるタイプとして、これは今先生がおっしゃるような、大学との連携というのが重視されるような性質のものなのかどうかというふうなことも取り組んでいきたいというふうに考えておるところでございます。
【永田部会長】 そのほか、いかがでしょうか。
両角委員、どうぞ。
【両角委員】 御説明ありがとうございました。両角と申します。
1つお伺いしたいと思います。専門学校は、特定の職業とかと結びついたところでの教育をされていて、大学ともいろんな行き来があるようにもなってきているということなのですが、その職業といったときに、既存の職業だけではなくて、新たな職業とか、あるいは、起業みたいなこととの関係はどのようなふうになっているのか教えてください。
【関口常任理事】 専門学校が今の制度に昭和51年、2年というところからなってくる以前は、各種学校だったわけですね。それで、例えば、これからいろんな職業が生まれてくるときに、先にこういう職業が成り立つのではないかというふうなレベルのところから学科をつくるというふうな運動性は、その当時からございました。
特に戦後のラジオ・テレビ技術みたいなところから情報系へ転換していくところでは、むしろ専門学校の側に専門家が集まるみたいな構造があったので、専門学校からこういう職業、こういう職種というものをつくったらどうかみたいな動きもあったやに聞いています。
現在ではそこまで業界側に働きかけるということはありませんが、かなり未成熟な分野、そういうところで、しかし、どうやら一つの職業として成り立ちそうだなという段階から、専門学校のほうが手を挙げて、そういう学科をつくって、そのことで未成熟な業界とのやり取りの中で、一種の人材の標準化を行うみたいな運動性は現在ございます。
ということで、そこは少しそういうタイプの専門学校というのがございます。さっきのお話のように、あんまり学術的な背景はないような領域にそういうものは多いですね。これは専門学校の中で、今後もずっとそのような学科づくりといいますか、は続いていくという領域だと思います。
【両角委員】 ありがとうございます。
【永田部会長】 そのほか、いかがですか。
何もなければ、両角委員のお話に加えて、同じことを聞こうと思ったのでお聞きいたします。
専門学校を卒業した後に、職業があるうちはいいのですが、なくなってしまった、その先、少しでもほかの職業に役立つようなものの考え方というようなことがもしあれば、安心して行けるような気がします。これから多分半分ぐらい職業がなくなるのではないかと言われている時代なので。新しくつくるのは、今おっしゃったとおりで、やはり時期的に、あるいはニーズがあって生まれてくるものもあるし、自分たちが主導でつくるものもあってもいいと思います。習った学生たちがほかに潰しが効くようになっていると良いのではないかと思いますが、いかがでしょうか。
【関口常任理事】 卒業生に対してどこまで責任を持つべきかという話で言えば、これは専門学校だけに問われているわけじゃないと思いますが、しかし、学んだこととそれを生かす仕事での因果関係ですか、関係性は一番専門学校が高いと思います。
そういう意味では、初期キャリア、長くて10年、あるいは5年ぐらいのところまでは、その専門学校で学んだことがちゃんと役に立っているのかというキャリア形成のところは、専門学校も把握する必要があるでしょうし、行政のほうもそれを取り組んでいただきたいという面もございます。
そうすると、初期キャリアの段階から、どの職業に就いても、マネジメント段階というのは大体移行するのですよね。そこの段階の手前で、初期キャリアのところの手前で、今先生がおっしゃったように、職業がなくなってしまうとか、先行き暗いなみたいなときには、それこそ全く関連のない分野の学習はゼロからになってしまいますが、そうじゃなければ、先ほどの専攻科とか、リカレントの教育ということを、そういう対象者に対しても展開していくということが専門学校の責任ではないかというふうに考えます。
【永田部会長】 クリアでした。ありがとうございます。
そのほか、いかがでしょうか。
ありがとうございました。大変参考になりました。
以上で、今日の関連団体からのヒアリングは終わります。この後、自由にディスカッションさせていただきます。
次回以降にまだヒアリングを行う団体があります。短大や私立大学というのは、これからまたヒアリングをさせていただきます。その前に、今日幾つかの団体からお聞きして、委員の皆さんが、全体を通して、これまで議論してきた中間まとめに結集しているところのもので、この点はやっぱりこうである、あるいは、新たにこういうこともあったのではないかというような点について、御意見をいただけると一番ありがたいと思います。
今それぞれに出た意見に対しては、千差万別の意見がおありになると思うのですが、我々としては、中間まとめをブラッシュアップしていく中で、今の質疑はこういう点を逃していたとか、あるいは、こういう点はもっと分厚くなるとか、こういう点は実は要らないのではないかといったことについてぜひとも御意見いただけるとありがたいと思います。
皆さんがお考えの間に一言だけ申し上げます。
今日ヒアリングしてみて、極めて学校種による明快な回答があったという気がします。それは、我々が期待しているものとは違ったかもしれませんが、かなり明快に自覚されているのだということだけは分かったような気がします。その点はやはり重要で、例えば、専門職大学の中で、ほとんど留学生、国際化の話をされなかったというのは、通常からそれほど意識されていないと思うわけです。一方で、専門学校あるいは高専で、特に専門学校はそうでしたが、国際化について書いてくださいと、留学生は当然対象にしているのだというようなことがあったので、それぞれスタンスがクリアに見えているという気がします。
そういったことで、こちらは私の感想ですが、設置者別というか、学校種別ということを書いておく意義はやはりあると思いました。国大協の資料で、中教審の答申ごとに必ず触れているわけです。ですから、それはその時その時の認識をやはり書いておくのは必要だと思いました。一時期、設置者別のところはそんなに詳しく書く必要はないと思いましたが、逆ではないかと思いました。これだけ意識されているのなら、それを尊重しないといけないのだろうと思っておりました。今の話は一例です。
そのほか、御自由に御発言ください。それなりの時間はあると思うので、いかがだったでしょうか。
私は、やはり地域の問題は厳しいなというか、愛知県の副知事さんが悪いのではなくて、自治体というのはああいうものだというのが如実に描かれているのだと思います。知っていることは知っているが、知らないことは知ったことではないという、興味のあることであればという感じだと思いました。
中間まとめで、我々はコーディネータをつくりましょうということを書いていますが、えらい甘いことを書いているという認識になりました。ましてや、それを自治体の中に部署を設けてくださいというような話は、かなり書き方を考えて、読んだ側がぜひともつくらなければいけないという書き方に変えないと、スルーされてしまうような気がするぐらいでした。残念というよりは、よく知ることができて良かったと思います。
ですから、あの部分の書きぶりは、あれではいけません。もっと深く首長さんに刺さる書き方をしていかないと何の意味もありません。我々としては結構重要なアイテムのコーディネータは、「はい、コーディネータね」と言って終わってしまう感じがするので、心配になりました。このような具合で結構で、やはり書き方をもっと強く刺さるように私は変えたいと思います。
いかがでしょうか。平子委員、どうぞ。
【平子委員】 ありがとうございます。
今の部会長の話を受けて、今日分かったのは、国立大学の話が結構出ていて、それは地域の中では重要な位置づけになるのだろうと。ですから国立大学システムというのもあるわけです。しかし、忘れてならないのは、そこで公立大学、私立大学の果たす地域との結びつきというのが非常に大事だということはよく分かりました。
しかし、どうしても大学と自治体との結びつきがまだ明確になっていない。部会長がおっしゃったように、そこをもう少し明確に記述することが大事だろうと、その意味では、地方自治体の中に専門部署をつくるぐらいのことを言ってもいいのかなということと、やはり首長の関わり方、意識の持ち方が非常に大事で、首長がその気にならなければなかなか動かないだろうと思うのですね。
今日は知事が出てこられなかったので本音は聞けなかったのですが、そこはもう少し明確に、特に知事の方に意識を高めてもらうような提言にすべきではないかなということを改めて思いました。
以上です。
【永田部会長】 ありがとうございます。
吉岡委員、どうぞ。
【吉岡委員】 同じ問題意識の系列なのですけれども、コーディネータということを強調したとき、やっぱり大学と地域、地方大学のことを考えるわけですが、私立大学にいた人間として振り返ってみると、非常に重要なのは、例えば、国際化をするときに、職員の役割って物すごく大きいのですね。国際化もそうですし、もちろん国内の大学と連携するときもそうですし、それから、地方とやるときもそうなのですけれども、そういう高等教育のアドミニストレーションに通じている人材というのがやはりこれから決定的だろうと思うのです。大学でそういう人たちが育たないと、地域の例えば自治体の職員にそういう人も増えてこないだろうと思います。やはり大学も、国立大学の事情は分かりませんけれども、私立大学の大きさによって、職員の数もそうですが、そういう例えば英語がしゃべれる、自由に使える人間が何人かいれば、海外の大学との連携というのはすごく楽になるのですね。
さらに今後重要になっていくのは、例えば、入試です。例えば、AO入試というのは、言葉だけ入ってきて、一時期は一芸入試に近いような捉え方をされていましたけど、本来AO入試というのは、やはり専門職員が担当してやっていくはずのものなのですね。だから、そういう大学アドミニストレーションのことが分かり、それから、その大学がやろうとしていることも理解し、個々の大学、職員にとっては自分の大学ですけれども、その理念から方向性が分かって、それも動かすことができる、そういう職員を育てること、それから、自分のところで育てただけではなくて、そういう能力を持った人を大学がつくって地域に送り出していくみたいな、そういうイメージをつくらないとならないのかなと。
国際化も、日本の大学ではやっぱり教員が走り回ったりするわけですね。それはとても大変です。入試ももう教員は手いっぱいなわけなので、そういうことを念頭に置く必要がある。つまり、コーディネータの話に似ていますけれども、そういう広い意味での連携をできる人間をどうやって育てるのかというのは、今後決定的なことかなと思います。
以上です。
【永田部会長】 ありがとうございます。
林先生のお話の中は我々と少し似ていて、連携しなくてはいけないということははっきりと出ていました。欧州の例ですが。ところが、日本はやはりまだそこまでできていません。大学間連携というのは意外にできていないような気がします。諸外国の大学とは皆さん仲よくされているのですが、国内の大学とあまり仲よくしてないのではないかというイメージがニュース等を見ているとわくのです。そこに何かマインドがあるのでしょうから、そこを取り除かないと、先ほど御回答いただいた連携等法人にもっと予算等を投下するとしても、その前に障害となっているものがあるような気がします。
先ほどの欧州の500、600という大学の連携は、なかなか日本ではできないと思うので、そこは書けていないと思います。連携をするときに、こういうシステムがあるから連携強化していきましょうということは書けたし、それから、その先、もしかしたら法律的にもっと権限を強めるのはあるとして、その前の、何で連携するか、本当に連携したくてしようがないというマインドにどう持っていくかという部分は、実は書いていないのです。
大学はひねくれていますから、人が足らないとか、分野が足らなくてお互いにそれを補完し合いましょうと言ったとしても連携しません。もっと建設的な生まれてくるものがないと多分連携しません。それが書けていないのではないかと思いました。
それは、地域創生、産業を生むとかということでもいいし、何かしらもう少し新たに何かを本当に生めるのだとフィージビリティを持って書くと、その次の段階として、組みやすくなっていくと思います。そこに、施策が入り得るような文言として書かないといけないと思うのです。施策というのは、お金がついてくる可能性があるような書きぶりです。それを少し感じました。あれだけ大きな連携体がヨーロッパにあるのだったら、日本だって、国公私立関係なく幾つかの連携体ができていっていいはずだと思うのです。
小林委員、どうぞ。
【小林委員】 今日、改めて林先生のお話を聞いて、戦略的インテリジェンスという言葉が出てきたのですけど、誰かにお任せするとか丸投げするのではなくて、やっぱり国家戦略としてこれはやるのだというふうな意思決定というのをやらなきゃいけないのだなというのを非常に強く感じました。
その中で、もう大森先生が退室されちゃったので、一つ、私、ショックだったのは、知事会の発表の中に、私学は学生が集まる分野に偏っているというお話がありまして、これはやはりそう見えているのだというふうにすごく感じました。やはり連携を強めていくとか、地域で必要人材を想定しながら人材ニーズを考えていこうとしたときに、こうやって見えていたら、なかなか連携なり、戦略的な連携というか、意思決定はできないのではないかなというふうに思いました。
専門学校の関口先生の中にも、やはり専門学校自体ももう地域と連携しているのだというお話がありました。ただ、それをやっているのは産業連携局とか、そういった局であって、それを超えた高等教育機関をまとめる部署が必要なのだというのは、そうだと思うのですけど、今日悩ましかったのは、これを自治体の中に責任ある部署としてつくっていくのか、それとも、外にそういった権限を持ったところをつくっていくのかというのは、一つ考え方として、これから議論していかなきゃいけないのかなというふうに思いました。
以上でございます。
【永田部会長】 ありがとうございます。
私も、副知事さんの話の中で、お金が降ってきたらガバナンスはやるという雰囲気が漂っているように感じました。政策なので、法律とか財源の措置でいろいろ動かすことになるわけですが、ひょっとしたら大切な要件かもしれません。実際に公立大学は地方自治体からお金が出ているわけです。その権限があってこその公立大学なわけだから、動かすためには、そういう要件がやはり必要なのかもしれないと同じように聞いていて、これは大変と思いました。
そのほか、いかがでしょうか。中村委員、どうぞ。
【中村委員】 今の話の続きなのですけど、やはりお聞きしていて、多分、自治体としては、例えば、教育委員会と教員養成学部とはやっているとか、あるいは、医務課と医学部附属病院はやっているとか、そういう個々のもので終わっているような気がしました。
なので、先ほどの小林委員の意見と同様ですけど、私は、県の中に特別なものをつくっても、やっぱり空回りしてしまうような。将来的な20年後、30年後、40年後を見据えて、その地域をどういうふうに活性化していくのだという、本質的な地域創生みたいなものを全体で見ていく、人材養成も含めて、そういう部分というのは自治体の中では無理なのかなと感じました。
しかも、そういうことをやるコーディネータってなかなか難しいという話は、この部会の中でもよくされています。しかし一番近い人を数名置きながら、今後養成をしていく、地域創生のための本当にコーディネートできる人を養成していく、そこはもう本当に国立、公立、私立が一体化してやっていくということを今後やらなければいけないのではないか思っています。
以上です。
【永田部会長】 似たような感覚だと思うのです。
吉見委員、どうぞ。
【吉見委員】 まだあんまり十分にはまとまっていないのですけど、2点ほど申し上げたいと思います。
一つは、林先生のお話の中で、やっぱり先ほどの戦略的なインテリジェンスと重なってくるのですけれども、世界的な危機の時代の中で戦略的インテリジェンスが出てきているというところのポイントは非常に重要だと思うのですね。
それで、今の中間まとめの中で、その危機というものを高等教育がどういうふうに受け止めて、しかも、危機を乗り越えていく知恵をどういうふうに生み出していくのかというところについての強調はもっとしてもいいのじゃないかというふうに思いました。
全く一例ですけれども、例えば、今「はじめに」のところで、危機は今我々の足元にあるという、割と衝撃的な出だしで書き始められているのですけれども、ところが、ここで言われている危機というのは、少子化だけなのですよね。本当は、もしこの文にちょっと手をつけるとすると、これは一例ですけど、「危機は今我々の足元にある。それは、この急速な少子化だけではない」というふうに始めたほうが文章としてはよくて、そして、「もちろん、少子化は目をそらすことのできない事実であり」とずっとこの文章があって、だけど、少子化以外に、全く同時並行的に、気候変動、災害リスク、感染症、地政学的緊張、もろもろあるわけですよ。全部迫っているということですね。だから、高等教育は、それに対して新しい知を生み出すのだというふうな組立てで、少子化を抜き出して一つだけ挙げるのではなくて、少子化は、幾つか重要な非常に大きな危機のワンノブゼムであると。だけど、少子化の問題と、それから、地政学的なリスクや気候変動は全部絡まり合っているから、だから大学は必要なのだという話に書きぶりを少し変えていくほうが、よりインパクトは高まるのではないかなという気がしました。
これは最初に林先生のお話にあった、戦略的なインテリジェンスの中で大学のパフォーマンスを評価していくと。コンプライアンスをずっと守って何もしなかったら一番評価が上がるような、こんな外部評価をもうやめようという、こんな評価システムをもうやめようということにつながると思います。これが第1点です。
それから、第2点の今の愛知県の話は、いろいろな御事情は察するのですけれども、なかなか肩透かしかなという感じはしますけれども。だけれども、これは、一つは、やっぱり都道府県と地方自治体、つまり市区町村はすごく違うから、だから、本当に地域のことに入っていこうとすると、都道府県では駄目で、市区町村、基礎自治体じゃないと駄目なのですけれども。しかしながら、公立大学の多くは都道府県ベースで建てられているものが多いので、そこにギャップがあって、なかなか難しい問題がそこに発生してしまうということなのだろうと思います。
だけれども、じゃ、市区町村でそういうふうな部署がつくれるかというと、これはこれでなかなか難しい問題が出てきちゃうので、どっちもどっちということになるので、先ほど中村先生がおっしゃられたような、どっちでもない仕組みはどうやってつくれるかという、答えのない問いみたいになっちゃうのですけれども。
ただ、ポイントは、先ほど出ていた連携の話をどう誰がマネージするのかということで。ところが、連携というのは、私は連携と流動はイコールだと思うのですね。ほぼイコール。つまり、連携の仕組みは何のための連携かという、連携協定を結ぶだけでは意味がないので、その連携したところを学生ないし教員ないし職員という人が流動していかないと、何かが流動していかないと意味がない。なので、その流動の仕組みをつくっていくということと、同時に誰かが連携をコーディネートしていくセクションをつくっていくという総合的なデザインという、そういうことがやっぱり必要なのだと思います。これが2点目です。
【永田部会長】 ありがとうございます。
益戸委員、どうぞ。
【益戸委員】 ありがとうございます。
皆さんの意見でかなり出尽くしているかとも思いますが、今日の私の感想を一言で言えば、もやもや感が高まったというところです。やはり各団体ごと、それから、もちろん地方自治体でも温度差がある。この温度差は何が要因かと考えました。それは、どこに向かって考えているかという違いではないかと思います。目先、解決しなければいけない教育をやっているところ、遠くを見て教育をしているところ、政治は特に任期中の出来事をどう解決するかということだと思いますが、答申ではやはりこれをしっかり整理し統一しないといけないのではないかと思います。
急速な少子化が進行する中での将来の社会変化への考え、国力が落ちるわけですよね。ですから、そこを見ないといけないはずなのに、今日は、皆さまの考えは、ばらばらだったということがはっきりしました。この点については、冒頭でしっかりと示す必要があります。
又、地方自治体との意見統一は非常に難しいなということもよく分かりましたが、その難しいなと思う気持ちは無視をして、こうあるべきだということをはっきり言わないと、せっかくこれだけの議論を進めてきたわけですからもったいないと感じました。
以上です。
【永田部会長】 そのとおりです。それが先ほど申し上げたように、お金などがそこに落ちていくように、例えば、地方創生に働くところにきちんと行くようになっていって、地方自治体も当然参加するのだというのが当たり前になっていくものは考えるでしょうから、その意味では、強く書いておいて、具体的に国会を通すときに、うまくその辺を抽出できるといいです。
両角委員、どうぞ。
【両角委員】 ありがとうございます。
今益戸先生おっしゃった、ばらばらだったというのが同じような印象を受けました。ほとんどのご発表が、現状の仕組みの中でそれぞれに果たしている役割についてお話をされましたので、まあそうでしょうという感じでした。この特別部会では2040年という今後のあり方についての議論を私たちはしているつもりではあるのですけれど、今はこうですというお話が多く、今後の話がほとんどないなというのが一番の感想でした。
多分それは、それぞれの団体のところで、自分たちのところで質をこうしたいとかということはできても、全体の枠組みをまだ私たちが提示していないということが大きい理由なのではないかと思います。費用負担の問題もそうですし、あと、規模の議論は極めて重要なテーマですが、今日はほとんど何も話題に上がらなかったと思うのですけど、今後どういう規模を考えてやっていく必要があるのかというようなことの見通しというか、幾つかのシナリオを出した上で、それぞれのシナリオの実現可能性や課題をどう考えるのかという聞き方をしないと、うちはこうです、うちはこうやって頑張っています、というところで議論が止まってしまうのだなということを今日ずっと聞いていて感じました。
自治体の問題は、私も同じ印象を持ちながら聞いていたのですけれど、じゃ、ニンジンぶら下げるというか、インセンティブを出せばいいのかというと、そこもどう設計するかって難しいなというふうに思っていました。私は、以前の自分の発表のときに紹介した韓国のRISEという新しい政策の例ですと、文部科学省が持っている一部の予算と権限を地方自治体に渡したら、やっぱり自治体は目の色が変わっているというのが、韓国の地方自治体の人と話した感触でした。これまで全然興味なかった地元の私学や専門学校も含めて、どのような機関がどのようなことをしているのかを真剣に見始めたと話してくれました。
ただ、そうやって真剣に見始めていい面と危ない面と両方あるように感じています。やはり自治体は割と直近のところで見るので、韓国の場合、専門大学という日本の専門学校に近いところに対する関心と評価が高くなっている話でした。現在の職業とか現在の産業、経済状況を何とかするために考えるので、具体的な職業に直結した分野のはやしている役割を再評価することにつながっているようです。もちろんそのことはとても大事なのですが、大学の価値というのは、もっと将来的な視野、たとえば今はまだない職業とかも含めてどう考えていくか、というところにあると思うのですが、地域も衰退していて、人も減っていて余裕がなくなっていると、そうした側面に目が行きにくくなるというような傾向も同時に感じています。RISEをきっかけに自治体が、必死に大学のほうを向くようになったのですが、それだけだと行き先を間違えるんじゃないかというようなことを、韓国のこれから本格的に動き出す、準備段階の話を見にいって感じたことでした。
あと、もう一点だけですけれど、今日の林先生の話で、大学間連携のヨーロッパの事例を話してもらって改めて感じたのが、日本での連携という議論の仕方が、あまりに狭い範囲を対象とした議論が多過ぎるのではないかという気がしました。もちろん、地域での連携はすごく大事で、地域の自治体、そこの企業とか大学で組んで一緒に考えていくというのは大事なのですけれど、ヨーロッパであれだけの連携ができているというのは、エラスムスをはじめとした大きな制度的な仕組みがある上で、それを活かしてどうしようかということをしています。日本は小さい国なのに、その中でももっと小さいところでどう連携しようかということを促進する議論だけで、もっと大きな枠組みが足りないのではないかというようなことを感じて、今後私たちはそういうことをしっかりと議論しなければいけないのではないかなということを思いました。
今日ずっともやもやしながら聞いていまして、こんなにいろいろ引っかかるのは何でだろうかと考えていましたが、中間まとめまでの私たちの議論の内容や論点でまだ足りない点があるというか、むしろこれから議論していくべき論点がその辺にあるのだなというようなことを改めて認識しました。
以上です。
【永田部会長】 すごいです。皆さん同じ気分で聞いているところが何とも言えないです。
松塚委員、どうぞ。
【松塚委員】 ありがとうございます。
全体を通じて二つ、求められたことがあったような気がします。それが今の両角先生がおっしゃった枠組みという観点と捉えられるのではないかと思います。その二つとは、まず一つは、ヨーロッパにあって、そして日本にもあってほしいという声があったナショナル・クオリフィケーション・フレームワーク、質保証枠組み。二つ目は国大協の、将来どのような職業とかスキルが必要となって、そのために何を組み立てていけばいいかという議論が大切という、これもやはり枠組みだと思います。
例えばアメリカですと、労働省による「エンプロイメント・アウトルック」があって、10年後、20年後にどのような職業が生まれたりなくなっていたりするのか、そうなったときに、どのようなスキルが問われるのか、そのスキルを養成するためにはどうすればいいのかというところまで落とし込んだ情報提供が国レベルで行われています。もちろん、日本も厚生労働省がやっていますけれども。今無いどのような職業が生まれてくるのかというところまで見込み、情報を提供していくことが必要になっていくと思いました。
これはやっぱり今おっしゃられた枠組み、吉見先生もおっしゃられた、枠組みがあって人が動くという、二層か三層か分からないのですけれども、その仕組みをナショナルレベルで期待されているということが今日は確認できたのではないかと思いました。
【永田部会長】 ありがとうございます。
そのほか、先ほど両角委員と益戸委員がおっしゃったとおりで、やはり首長さんは政治家ですから、当選しなければただの人なので、それは喫緊の課題解決に必死なのだろうと思うのです。ですから、10年先の展望と言われても、多分ほとんど持ち得ないのではないでしょうか。展望を持っていたとしても、それを行えないのではないかと思うのです。10年先の話を行ってしまったら、多分今の問題が解決しないではないかという有権者からの問いがあるだろうと思います。
ですから、もっとこちらから示していかないと、そこに目が行かないと思います。教育行政上と、産業なら産業でもいいのですが、何か地方がそこを向けるように、自然と持っていける方法はなかなかないのかもしれないですが、示さないといけないと思います。御本人は、数年後にまた投票があって、どうなるか分からないという状況だし、暮らしている方々も今幸せになりたいと思っているはずです。ここにいる方は、未来を考えて幸せになればいいと思っていらっしゃると思います。
大野委員、どうぞ。
【大野委員】 本日はありがとうございました。私もちょっと枠組みについてです。
高専の方が、モンゴル、タイ、ベトナムにシステムを輸出しているというお話があって思ったのは、今はいいなと思っていると思いますけれども、その仕組みの客観性というか、通用性が枠組みとして保証されていないと、多分、国際的にもしかしたら行き詰まることが出てくるのではないかと。今検討中と思いますが、ぜひ国家レベルで資格・学位の枠組みをつくっていただいて、できたらそこに戦略的に予算配分、国家的に、博士どのぐらいのレベルとか、修士どのぐらいのレベルとか、何かそういうふうな仕掛けを持つと、多分みんなその方向に向かって走っていくインセンティブになるのではないかと思って、資格の枠組みはとっても大切だなと思ったということです。
以上です。
【永田部会長】 そうです。
平子委員、どうぞ。
【平子委員】 両角先生のおっしゃるとおりで、今後の話をしていかないとブレークスルーは出てこないと思いました。その意味では、これからの10年、20年は、恐らくAI、特に生成AIの出現で、劇的に世の中が変わっていくはずです。働き方とか職業の中身はどんどん変わる。なくなる職業もあれば、形を大きく変えていく職業もあると思いますので、それを想定した上で、今後どういう教育が必要なのかというところに行き着くと思います。ここはもう少し産業界の見方も取り入れて、何がどう変わっていくのかについてある程度想定しながら、求められる知の総和の向上を考えていかなければいけないなと改めて思いました。
したがって、これから先の社会、産業界と大学、あるいは自治体も含めて、この三者の中でどういう形で新しい社会課題に対して解決策を探っていけるような人材の育成を図っていくのか、ここをやはり議論していかなければならないと考えますので、その仕組みづくりをより具体化できたら良いのではないでしょうか。
【永田部会長】
我々は3つ、質と規模とアクセスと考えて、今中間まとめを出しているわけです。それに対しては、ほとんど言及がなかったのではないでしょうか。国大協から若干ありました。それでも、自分たちでこんなに統合したのだからいいだろうみたいに最後は終わっていましたが、少し意識していた感じでした。残りは、なかなかそこまでの感じはなかったのではないでしょうか。
アクセスについては、地域の学生さんというのは皆さんおっしゃっているので、それはそうなのですが、それに対して、全体でどうするかというのは、個々の生き残り戦略次第という雰囲気があります。
質の問題は、林先生がきちんと話されたので、その後も結構それに近いことがあって、私からの提案は、最後に言いましたが、認証評価そのものをもっと機能的にすることで、つまり、現在の認証評価ではなく、認証評価は大学全部の申請書のようなもので、我々は次の10年間でこういう教育とこういう研究を行います、そのためにこれだけの準備をしています、ここはまだできていませんが、年次計画でこのように準備するつもりですということを本来書かなければいけなくて、そのために自分たちはこういうインフラとこういう人材をそろえています、だからうちはできますということが評価対象になるわけです。
今の認証評価は、異様に細かいところまで聞いています。教育については、徹底的に評価するのですが、少し毛色の異なることを考えないともういけないのではないでしょうか。実際に行いたいことのためにどうするかであって、設置基準上から見て、何が整っていますか、何はどうなっていますかという問いはもう当然だと思うのです。その上で、次の何年間かでこういう道を歩くために行いますという評価にしてはどうでしょうか。ですから、成果は何年後にしか出ないので、申請書は前向きの内容で、私はこれを行います、このような準備をしていますというように、少し変えていってもいいのではないでしょうか。そうしないと、評価できないです。なぜかと言ったら、先ほど申し上げたように、教育には時間もかかるし、その成果は10年も15年もかかりますが、こういうことを行って、こういうプログラムを起動して5年間行ってみますというのはできるわけで、その成果がまたさらに5年、10年後に出るわけですから。
認証評価そのものが、もともとそうなのです。その大学が存続しうる価値を実現できるかどうかを見ることが根本的には認証評価なので、それが一応法的に設置の基準に沿って行われているかどうかを見るというところに重点が置かれているが、もっと機能のほうに重点を置いたものに変わると、かなり変わるだろうと思います。
申請書も同じで、研究単位なり、研究室単位なりで申請書は皆さん真剣に書きます。それと同じものを大学単位で書くわけですから、そうあってしかるべきではないでしょうか。
これは提案です。実は事務局のほうには、これとは別に、たくさん話し合った中に、設置基準改定に関わるものはたくさん含まれています。勝手に皆さんこうしたらいい、ああしたらいいとおっしゃっているのですが、それを全て再度認識し直さないといけません。規模の縮小とか、学生の流動化とか、定員管理とか、学期をいつにしてどうするかとか、たくさんあるのですが、実は法的に決まっているものがたくさんあるので、それを変えない限り変わらないのです。それを明確にしないと、できないのです。ですから、こういうものはこういうところを変えなければいけないということを言い切らないといけないと思うのです。
もっと根本的に、林先生が今火をつけてくれて、皆さんももう本気でやらないといけないかなと思っていらっしゃいます。結局、透明性があって公平でと言っているのだが、全くそうではないわけです。今の点は、どこかが決めた指標で行ってきています。そうではなく、自ら、どこの大学も、それをやるのは仕方がない、絶対やらなければいけないと思う基準で行わないからです。省いていい基準と省いてはいけない基準を選別しないで、法律上の設置基準の基準から今行っているからです。それをやはり変えていかないといけなくて、別にそれ以上のことをやって悪いわけではなくて、設置の基準に沿っているということは最低限見るが、それに上乗せして見ていくというのはあると思いながら聞いていました。もやもやしているのだが、それを行うと少しは、全体の質の部分は上がると思います。
それを幾ら行ってもアクセスは変わらないのです。ですから、書かせれば書きます。アクセスとして、自分たちはこの地域に責任を持ちますとか、うちは地域ではない世界を対象にした大学ですと書くところは出てくるでしょうから、それはアクセスの保証というところに出てくるのではないかと思うわけです。それは自分のミッションの再定義と同じなので、自分の大学はこういう大学ですという思いの丈を書くわけです。書いただけでは駄目で、その準備が整っていますということを言わないとアクレディテーションできないわけです。
これは、一案です。それを書いてくださいと申し上げているわけではありませんが、これからその段階に入るわけです。中間まとめの次は、中間まとめまで考えたことを、どうしたら実践できるのか、どのようなお金の配分が来たらできるのか、そこを考えないと絵空事になってしまうので、そういう意味で、あえて今わざと申し上げました。これを書き込めという意味ではありません。例えばそのように考えないといけないのではないかと思っています。
そのほか、いかがでしょうか。次回、短大とか、私立大学の協会とかのヒアリングを聞いて、何でそんなに違うのだろうかとなると思います。もやもや感が出るのは仕方がないいとして、楽しみといえば楽しみです。
よろしいでしょうか。松塚委員、どうぞ。
【松塚委員】 ありがとうございます。
欧州のケースで、あれだけアライアンスが進んだ背後には、やはり仕組みがあったからだと思います。それが築かれたのは、ボローニャ・プロセスを通してだと思うのですけれども、その仕組みが築かれるときに質を維持し、これに流動性が一体化したというのが、欧州のアライアンスがうまくいった大きな理由だと思います。
そういった意味では、まず大学が、自分たちが何を教えられるのか、何を教えたいのか、何に強いのかということを自分たちで確認しながら外に出す、そうすると、Aという大学がそのような情報を出したとき、Bという大学が、あ、うちにはそれはないねとなったときに人が動くという考え方だと思うのですね。ですから、自分たちの大学にあるもの、全く同じものを学ぶために学生は動かないという前提からすると、自分たちの大学では十分でないもの―環境の問題ももちろんあると思うのですけれども、カリキュラムにまず焦点を当てた場合は―そういった無いものを求めて動くというところ、そして、そこで学べるものの質は保証されている、となると、学生は動くということだと思います。
ですから、枠組み・仕組みをつくるということと、質を維持しながら人を動かすということは、同じ方法、共通する方法で組み立てていけるのではないかという感じを受けました。
【永田部会長】 ありがとうございます。
伊藤委員、どうぞ。
【伊藤委員】 今の松塚委員の話に追加なのですけれども、要は、ヨーロッパのECTS、European Credit Transfer Systemという単位で統一されていて、それが認められているところではクレジットがトランスファーできるということになっていて、1学期で30単位ですか、ECTSを取るということで、例えば、我々がヨーロッパと一緒にダブルディグリーをやるというときも、その30単位はどういうふうに同じようなレベルでやってくれるかということを徹底的にチェックされた上で、内容がチェックされた上で、じゃ、これでダブルディグリーを向こうとしては認めることができると。
要は、連携イコール、今おっしゃったみたいに、単位をどういうふうに移動できるのか。そうなっていったときに、前に話があったみたいに、3つのポリシーに基づく学位授与機構の、ここの大学だから、こういう建学の精神に基づいて、3つのポリシーに基づいてということにあまりにもこだわり過ぎると、そういう流動性ができなくなっていくというのはもう一つの大きなポイントで、さらには、マイクロクレデンシャルの話も途中でありました。今日はなかったですけれども。さっき昼休みのときに話していたのですけど、いろんな形で、一遍ドロップアウトした人でも、既に取っている単位を基に、ECTS的な感じで、また復活して、最終的には学位が取れる、学士が取れるようにするとか、そういったようなことを、じゃ大学だったらどことでも組めるのかというと、そこはまた違うレベルで、この単位はお互いに互換できますよということをしっかり見ていき、そのときに、今まで議論していたように、2040年に向けて必要とされる高等教育の中身と、それから、社会との連携もあるでしょうけど、そのときにどういう単位の認定方法で、それがトランスファーしていって、場合によってはマイクロクレデンシャル的なところも含めて、システムとしてつくっていけるのかというのは結構重要なのかなというのは、今日ずっと聞きながら私は思ったことです。
【永田部会長】 ありがとうございます。
この議論は、次のヒアリングも聞いた後にまた復活するので、そのときまで、また皆さんいろいろと温めていただきまして、残りの時間は、審議というよりは、御報告事項を簡潔に申し上げたいと思います。
最初は、令和7年度の文部科学省からの概算要求について、事務局から御報告をお願いいたします。
【吉田高等教育企画課長】 失礼いたします。資料8に基づきまして、この末に取りまとめました概算要求について、高等教育関係の主要事項を御説明申し上げたいと思います。
1ページ目をまず御覧いただければと思います。
まず1つ目は、基盤的経費の関係でございます。国立大学につきましては、国際頭脳循環の実現や研究力強化などに向けた教育研究組織改革、あるいは、研究設備、基盤的設備などの整備の重点支援などを行うために、運営費交付金等を確保するという観点から、対前年度370億円増の1兆1,205億円を要求しております。
同様なことを、高等専門学校につきましても、半導体・デジタル等の先端技術分野に対応して教育などの実施、高専教育の高度化・国際化を推進するための予算として、96億増の725億円。
それから、私立大学等の改革の推進といたしまして、必要な基盤経費、経常費等の確保、あるいは、設備・施設等の改善のための支援を行うために、392億円増の4,475億円を要求しております。
大きな2つ目が、高度専門人材育成の関係でございます。
まず1つ目は、大学院教育改革でございます。3月にまとめました博士人材活躍プランを踏まえまして、徹底的な国際拠点形成や産学連携教育を行うために、世界トップレベルの大学院教育を行う拠点を形成するための取組といたしまして、来年度新規に70億円を要求させていただいております。
また、半導体につきましては、人材育成の拠点ということで、各大学の特色や地域などの特性を踏まえつつ、ネットワークを生かした教育プログラム展開などを行っていくための拠点形成といたしまして、こちらも新規で18億円要求しております。
一番下、数理・データサイエンス・AIの関係は、これまでの取組を行っていくために、今年度とほぼ同額の要求をさせていただいております。
2ページに移ります。一番上が、高度医療人材養成の関係でございます。各大学病院がそれぞれ置かれております実情等を踏まえて取り組に、人材養成プログラムを実施するために必要な最先端の医療機器の導入などを支援するための予算といたしまして、新規で50億円要求しております。
なお、参考のところで、これは高等教育局ではなくて、研究振興局でございますけれども、同じく大学病院や医学部の研究力強化を行うための予算といたしまして、26億円新規に要求しておるところでございます。
次のまとまりが、グローバル社会の関係でございます。
一番上が、留学生の派遣の関係でございます。こちらにつきましては、留学生派遣のために、支援の人数の拡充、また、物価上昇などを踏まえまして、奨学金の適切な単価を改定していくという観点も今回含めまして、46億円増の135億円を要求しております。
2つ目が、留学生の受入れの関係でございまして、こちらも日本の留学に対します情報発信の強化でございますとか、留学生の国内定着を行うための取組を支援するための予算といたしまして、271億円要求しております。
その下、大学の世界展開力強化事業につきましては、これまでも取組を行ってきておりますけれども、来年度新たにインドやASEAN、アフリカ、中南米といったグローバルサウスの国々との大学間交流の構築・強化を行うために、17億円を要求しております。
一番下、高等教育の修学支援の充実につきましては、こども家庭庁の計上分を含む金額ということで事項要求という形になっておりますけれども、昨年末に決まりました世帯の学生等につきます所得制限のない無償化の関係、それから、大学院などで今年度からスタートしております授業料後払いなどの着実な実施として、必要な経費を要求させていただいているところでございます。
3ページ以降は、各個別の事業の資料になっておりますので、また後ほど御覧いただければと思います。
それから、ちょっと資料はございませんけれども、今日の議論の中で、地方の体制整備、それから、文部科学省のほうの国の体制整備ということで話がございました。中間まとめの48ページのところにも、国における司令塔機能を果たすための組織体制の充実・強化という観点は記載いただいているところでございますけれども、こちら、来年度の文部科学省の機構定員の要求の中で、高等教育局の中に新たに地域の振興を行います室の設置などを含めました体制整備を行いまして要求を行っているところでございまして、こちらにつきましても、来年度の整備に向けて、今後関係部署にも説明をしていきたいというふうに考えているところでございます。
説明は以上でございます。
【永田部会長】 ありがとうございます。
財務省に出ていったところで、これから文部科学省の本気のお仕事が始まるわけです。うまく通るといいと思います。ありがとうございます。
次に、国立大学法人等の機能強化に向けた検討会について、これも事務局から御報告をお願いいたします。
【井上国立大学法人支援課長】 失礼いたします。資料9を御覧ください。
こちらの特別部会の中間まとめでも国立大学についても記載いただいておりますけれども、特に国立大学法人また大学共同利用機関法人につきましては、法人化という大きな制度改正から20年ということが経ちましたので、法人化の成果や課題の現状についてしっかり分析を行うということをまず行い、そして、それも踏まえて、国立大学法人また大学共同利用機関法人が全体としてその強化を機能して役割を果たしていくことができるよう、具体的な対応策を深掘りして検討するというために、この会を7月に設置しております。
今御覧いただいている資料の2ポツにございますが、1ポツの現状分析、また、課題については、年内のめどに一定のまとめを行いたいと考えておりまして、特に、全体の高等教育の中での国立大学法人等ということでございますので、この検討会での議論をこちらの特別部会のほうにも報告をさせていただきながら、この全体の特別部会の議論におきましても、こちらの検討会の要素とか、大きな観点とか、そういったところも織り込んでいただきながら、こちらの特別部会のほうの議論を深めるというところに貢献してまいりたいと思っております。
そして、2ポツの現状及びその分析を踏まえた今後の対応策につきましては、年明け以降、議論を深めるという段取りで考えております。
以上です。
【永田部会長】 ありがとうございます。
この部会は平子委員が入っていらっしゃいます。よろしくお願いします。
そのほか、よろしいですか。これまで2回ぐらい使ってやっているので、まだまだ議論が続くのだと思います。
それでは、こちらで用意しました議題は以上でございますが、話しておきたいことがあれば、お聞きいたします。よろしいでしょうか。
それでは、次回以降の日程等につきまして、事務局のほうから御説明お願いします。
【花田高等教育企画課課長補佐】 失礼いたします。本日も活発な御議論いただきまして、誠にありがとうございました。
次回の特別部会は、9月27日金曜日、9時からハイブリッド形式での開催を予定してございます。
本日御発言できなかった内容がございましたら、事務局まで御連絡ください。
以上でございます。
【永田部会長】 定刻より数分前です。議事の進行がスムーズにできました。ありがとうございました。
9月27日もまだ暑い盛りないかと思います。皆さんも健康に気をつけられて、またお会いしたいと思います。

御協力ありがとうございました。

── 了 ──

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