目のない線虫は光を感じる?~光受容に関わる遺伝子や神経を発見~
科学技術振興機構(JST)令和6年11月15日
広島大学
科学技術振興機構(JST)
目のない線虫は光を感じる?
~光受容に関わる遺伝子や神経を発見~
ポイント
- 線虫Pristionchus pacificus(以下P.pacificus)において光反応に必要な遺伝子および神経を発見しました。
- それらの一部は、比較対象として用いられる線虫Caenorhabditis elegans(以下C.elegans)とは異なっており、線虫における光受容のメカニズムに多様性が存在することが分かりました。
- 線虫は1億種以上も存在しているとされ、その一部は植物や動物に寄生し、人間社会に甚大な被害をもたらしています。光は線虫にとって有害であるため、本研究の成果は、光による新たな駆除法の研究に寄与することが期待されます。
広島大学 大学院統合生命科学研究科の中山 賢一 博士研究員(研究当時)、奥村 美紗子 准教授らの研究グループは、線虫P.pacificusの光忌避行動に関与する遺伝子および神経を明らかにしました。本研究成果は、線虫における光受容メカニズムの進化の解明に貢献することが期待されます。
光受容はほぼ全ての生命が持つ重要な感覚系の1つです。地球上で最も多様な動物分類群の1つである線虫は眼を持っておらず、一般的な動物が持つ光受容たんぱく質が存在しません。しかし、いくつかの種で光反応性が確認されていました。
本実験で用いたP.pacificusは、C.elegansと比較可能な進化生物学のモデルとして確立された線虫であり、感覚神経の構造などさまざまな比較研究が行われています。C.elegansにおいては光受容のメカニズムが明らかになっていましたが、その他の線虫種においてどのように光を受容しているのかは分かっていませんでした。
今回、研究グループは線虫P.pacificusが光を感知できること、その光反応に関わる遺伝子や神経を明らかにしました。また、それらの一部はC.elegansとは異なるものを使用していることが分かりました。
本研究は、国際学術雑誌「PLOS Genetics」のオンライン版で2024年11月14日(アメリカ東部時間)に公開されます。
本研究は、以下の支援により実施しました。
・日本医療研究開発機構(AMED) 革新的先端研究開発支援事業 ソロタイプ「健康・医療の質の向上に向けた早期ライフステージにおける分子生命現象の解明」研究開発領域における研究開発課題「光環境に応答する表現型多型の分子・神経制御機構(研究開発代表者:奥村 美紗子)」
・科学技術振興機構(JST) 創発的研究支援事業「動物における第4の光受容体が拓く光生物学の新領域(研究代表者:奥村 美紗子)、課題番号JPMJFR214M」
<プレスリリース資料>
- 本文 PDF(415KB)
<論文タイトル>
- “cGMP-dependent pathway and a GPCR kinase are required for photoresponse in the nematode Pristionchus pacificus”
- DOI:10.1371/journal.pgen.1011320
<お問い合わせ先>
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<研究に関すること>
奥村 美紗子(オクムラ ミサコ)
広島大学 大学院統合生命科学研究科 生命医科学プログラム 准教授
Tel:082-424-7633
E-mail:okumuramhiroshima-u.ac.jp -
<JST事業に関すること>
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<報道担当>
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