2024/12/25

議事要旨(第8回中央銀行デジタル通貨に関する連絡協議会)

日本銀行 

2024 年 12 月 25 日
日本銀行決済機構局

「中央銀行デジタル通貨に関する連絡協議会」第8回会合の議事要旨

1.開催要領

(日時)2024 年 11 月 25 日(月)15 時 00 分~16 時 30 分
(形式)Web会議形式
(参加者)別紙のとおり。

2.日本銀行からの説明等

●冒頭の加藤理事からの挨拶1に続き、事務局から、パイロット実験の進捗状況(資料21~18 ページ)について説明を行った。その後、財務省から「CBDCに関する関係府省庁・日本銀行連絡会議」における検討状況について説明した。最後に事務局より、海外動向(資料 19~33 ページ)について説明を行った。

3.主な意見等

(全国銀行協会)CBDCフォーラムには、当協会の会員企業も参加しているが、非常に有意義な議論が各ワーキンググループで行われていると聞いており、適切に運営いただいていることに感謝申し上げる。そのうえで、個々のワーキンググループに関してコメントしたい。

まず、ワーキンググループ2で行っているAPIサンドボックスプロジェクトについては、ユースケースの研究やイノベーションの創出という観点で非常に重要な取り組みと認識しており、引き続き活発な議論を期待している。

次に、ワーキンググループ3に関連して申し上げる。現在、金融審議会においてパーミッションレス型を含む特定信託受益権型ステーブルコインのAML/CFT上のリスク管理強化に関する議論が進んでいると承知して

1 https://www.boj.or.jp/paym/digital/dig241125a.pdf 参照。
2 https://www.boj.or.jp/paym/digital/dig241125b.pdf 参照。

いるが、パーミッションレス型のステーブルコインについて、管理が厳しくなり過ぎるとパーミッションレス型のステーブルコインとしての特徴がなくなるのではないかと考えている。CBDCにおいてもAML/CFTへの対応を厳しくすると、既存の預金との差がなくなり、CBDCの導入意義が薄れる可能性もあると思われるので、その点については留意しながら検討いただきたい。

(国際銀行協会)不正検知に関連して、プライバシー配慮の観点から利用者情報や取引情報を顧客管理部分においてのみ取り扱い、台帳管理部分とは切り離して管理するということであれば、金融機関が顧客情報を管理している現状の枠組みと大きな違いはないという印象を持った。その観点から申し上げると、全国銀行協会が設立したマネー・ローンダリング対策共同機構が運用を開始するAIスコアリングサービスにおいても、今回の実験用システムの考えと同様に利用者情報は保持しないと聞いている。こうした取り組みで得られる知見も参考にしつつ検討を進めると良いのではないか。 また、実験用システムにおいて検討されている、仲介機関の台帳管理部分をつなぐ台帳間ネットワークの構築主体および管理主体、そのガバナンスについての考え方をお伺いしたい。

(事務局)台帳間ネットワークに関しては、実験用システムにおいて技術的な検証を行ううえでの設計であり、管理の仕組み等について現時点で何か決まっているものはない。

(電子決済等代行事業者協会)実験用システムにおいて検討されているプライバシーへの配慮については、極めて適切な形であると考えている。他方で、個人が自分の決済データにどこまでアクセスできるかという点は非常に重要なポイントである。諸外国では自分の決済データへのアクセス権に関して法律を整備のうえ権利として守っていく動きがあるが、日本においてはハードローとしては制定されていない。もっとも最近では、政府の会議体等で取り上げられてきているため、そうした議論も参考にしながら今後検討していただきたい。

また、CBDCがアプリ面も含めて仲介機関への依存度が高いモデルとなるのであれば、仲介機関によってCBDCの使い勝手に差が生じるといったことがないように慎重に調整していくことが求められる。例えば、ガイドラインの制定といった取り組みを通じて、仲介機関間で使い勝手に差が生じないよう検討していくことが必要である。この点、ワーキンググループ5での検討が今後活きてくるものと思われるが、高齢者や子供でも使い易いシステムを構築していくことが求められる。

CBDCフォーラムは民間の知見を幅広く取り入れる運営となっており、非常に重要な意義を持っていると感じている。フォーラムでの議論の全てがCBDCの導入の際に活かされるわけではないとは思うが、より本格的にCBDCを検討していく段階においては、フォーラムでの議論の内容をどう活かしていくかという点が大事になるだろう。そうした観点から、時期尚早かもしれないが、今後ワーキンググループをどのように取り纏めていくのか、現時点でお考えはあるか。

(事務局)各ワーキンググループにおいて様々な論点について議論していただいており、多くの有益なご意見をいただいている。また、1つのワーキンググループのテーマの範囲内には収まらない、複数のワーキンググループに跨るようなテーマもでてきている。こうした背景も踏まえ、全体としてのまとめ方も意識しながら、今後運営をしていきたい。

(金融情報システムセンター)各ワーキンググループでの議論が進むにつれて、既存の決済システムや制度との関係性を意識する場面が増えてきていると感じた。CBDCの発行については国民的な議論を経て決まるべきものであるものの、既存のシステムや制度との関係を踏まえつつ、CBDCシステムがどのようなものになるのか、どのような機能を実現するかといった観点での議論が今後必要になるだろう。

(全国地方銀行協会)4点申し上げる。1点目は、ワーキンググループでの今後の議論の進め方についてである。説明にあった海外動向を伺う限り、リテールCBDCからホールセールCBDCへと検討がシフトしつつあるように感じた。パイロット実験ではリテールCBDCに関する検討を進めているものと理解しているが、日本において既に多様なデジタル決済手段が存在していることを踏まえると、ホールセールCBDCを意識した議論も必要なのではないか。

2点目は、ワーキンググループにおける議論の着地点を意識して運営していただきたいということである。日本においてCBDCを導入するかどうかは決まっていないため、着地を見据えた議論が難しいことは重々承知しているが、可能な範囲で議論の着地に向けた動きが見えるようにしていただけるとありがたい。

3点目は、以前から申し上げている点であるが、仮にCBDCが導入された場合には、我々金融機関は、現金とCBDCという2つに関する事務を担うことが想定される。このため、システムや事務面も含めた業務・コスト負担のあり方について、関係者と密に意見交換をしながら議論していただきたい。

4点目は、金融仲介機能への影響についてである。今年に入り政策金利が引き上げられたこともあり、金融機関における預金の重要性が高まってきている。こうした点を踏まえ、CBDCが導入されると金融仲介機能にどのような影響があるかといった論点についても、関係者との丁寧な議論・意見交換をお願いしたい。

(事務局)1点目については、ご指摘のとおり、一部の国においてリテールCBDCからホールセールCBDCに力点がシフトしつつあるというのは事実である。一方、日本の文脈において、リテールCBDCの必要性はどのようなものなのか、決済システムの将来像の中でリテールCBDCをどう位置づけるのかという観点からの検討は重要であると考えているため、引き続きご協力いただきたい。また、ホールセールの分野においては、本年9月に公表した決済システムレポートでも言及したとおり、プロジェクト・アゴラ等を通じて、CBDCに限らない形で検討を進めている。

2点目については、検討事項や論点が多岐に亘るなかにおいて、現時点において今後の着地点等をお示しするのはなかなか難しい点はご理解いただきたい。皆様のご協力をいただきながらパイロット実験は着実に進んでおり、当初想定していたテーマ、作業内容との関係でいえば、ざっくり半ばあたりに来ていると言えると思う。もっとも、これまでの検討や議論を踏まえると当初想定よりも検討事項や論点はあると考えられる。今の段階で検討範囲を広げる予定があるわけではないが、今後の進め方については、内外の情勢も踏まえつつ、今後検討してまいりたい。

3点目、4点目については、重要な論点であると承知しており、我々としても十分に意識して議論していきたいと考えている。

(第二地方銀行協会)多様な民間デジタル決済手段が提供されている我が国において、CBDCの導入に備えた国民的な議論を進めるには、CBDCを導入する意義や地域におけるユースケースのイメージを各関係団体が自分達の事として捉えることが大変重要であると考えている。ついては、可能な限り手触り感のあるユースケースのイメージをこうした場で広く共有いただけるとありがたい。

また、実験用システムは、あくまでも実験のために日本銀行が主体となって構築されているものと理解しているが、CBDCを発行することになった場合に民間金融機関も担うであろう仲介機関の役割に関して、今後の更なる検討を通じて、明確にしていただくことが必要であると考えている。

最後に、CBDCの法定通貨としての公共財的な位置づけや民間金融機関が前向きにCBDCの導入に取り組む観点から、CBDC導入コストの公的負担についても検討いただきたい。

(事務局)CBDCの具体的なユースケースに関しては、ワーキンググループを通じて様々なアイデアをいただいていることもあるため、今後の検討状況も踏まえ、可能な限り皆様に共有してまいりたい。ユースケースについては、数年先を見据えた短期的な視点での検討に加えて、決済制度や決済手段がどのように発展していくのか、そうした場合にどのようなユースケースが考え得るのかという、中長期な視点での検討も必要であると考えている。いずれにせよ、様々な時間軸を意識しながら、引き続き意見交換をさせていただきたい。

(Fintech 協会)2点伺いたい。1点目は、CBDCの検討における政府と日本銀行の役割分担についてである。本協議会の参加者として、政府と日本銀行の2つの主体をどのように意識しておくのが適切なのか、教えていただきたい。

2点目は、ホールセールCBDCについてである。先ほどの説明にもあった諸外国の動向を踏まえると、リテールCBDCに加えてホールセールCBDCの検討も同時並行的に進める必要があるのではないか。プロジェクト・アゴラ等の様々な取り組みが行われていることは承知しているが、ホールセールCBDCを本協議会のテーマとして取り上げる、もしくは異なる枠組みでの議論の場を立ち上げるといった予定はあるのか。

(財務省)1点目の政府と日本銀行の役割分担について申しあげる。これまで日本銀行は主に技術面を中心とした検討を、政府は制度面・法律面に関する検討を進めてきたところであるが、引き続き、政府・日本銀行が連携し、諸外国の動向を見つつ、主要論点に関する基本的な考え方や選択肢等を明らかにするなど、制度設計の大枠の整理等を一体となって進めてまいりたいと考えている。

(事務局)2点目のご質問に関してだが、本協議会は、パイロット実験の円滑な実施に資するよう、その内容や進捗状況等を皆様に共有し、今後の進め方について協議していただくことを目的としているため、この場で取り扱うテーマはリテールCBDCに関連したものが適当と考えている。他方、ホールセールCBDCについては、先ほどご紹介した決済システムレポートでも触れているように、必要な情報発信を適時、適切に行っていきたいと考えている。

以上

別紙

「中央銀行デジタル通貨に関する連絡協議会」参加者

(メンバー)
全国銀行協会 安地企画委員長
全国地方銀行協会 小野一般委員長
第二地方銀行協会 南出一般委員長
国際銀行協会 鳥海事務局次長
全国信用金庫協会 菅野常務理事
全国信用組合中央協会 吉澤専務理事
全国労働金庫協会 西村専務理事
日本証券業協会 森本政策本部共同本部長
日本資金決済業協会 長楽専務理事
電子決済等代行事業者協会 瀧代表理事
Fintech 協会 沖田代表理事会長
金融情報システムセンター 照内常務理事
金融庁 堀本政策立案総括審議官
財務省 辻理財局次長
日本銀行 武田決済機構局長、臼井同審議役

(事務局)
日本銀行 清水決済機構局参事役

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