経済産業省 武藤大臣記者会見 - 2025年1月7日 - 質疑応答 ●日本経済の見通しと経済産業省の政策課題、日本製鉄によるUSスチール買収 ●日本製鉄によるUSスチール買収、ロシアによる攻撃対象リスト ●日本製鉄によるUSスチール買収 ●日本製鉄によるUSスチール買収
経済産業省武藤経済産業大臣の閣議後記者会見の概要
2025年1月7日(火曜日)
10時30分~10時42分
於:本館10階記者会見室
冒頭発言
なし
質疑応答
日本経済の見通しと経済産業省の政策課題、日本製鉄によるUSスチール買収
Q:2点お聞きします。1点目、今年の日本経済の見通しと経産省の政策課題について、大臣の御所見をお願いいたします。
もう一点、バイデン大統領によるUSスチールの買収禁止命令の無効を求めて、日本製鉄が提訴を発表いたしましたが、その受け止めと、昨日は大臣、この件に関して何らかの支援についても言及がありましたが、今後の日本政府の対応について改めてお伺いできますでしょうか。よろしくお願いします。
A:まず、今年の日本経済についてでございますが、賃金上昇が物価上昇を上回ることで消費が増加をし、企業の国内投資が堅調なトレンドを維持できれば、緩やかに成長していくと、政府の経済見通しでは見込んでいるところであります。逆に言いますと、賃金や国内投資が増加する好循環を維持できるかどうかが、成長を実現するための鍵となると思います。
一方で、足下の消費、まだ、これは年末もそうですけれども、力強さを欠いており、賃上げも地域や業態によってばらつきがあるところであります。地域の中堅・中小企業を含めて継続的な賃上げや国内投資、これを実現し、好循環を定着させることが2025年の経済産業政策の最重要の政策課題と考えております。
そのために、総合経済対策、あるいは補正予算を総動員し、賃上げ・国内投資の前向きな潮流をしっかりと後押しをしていかなければならない年であります。
具体的に申しますと、中堅・中小企業の生産性向上を支援するとともに、賃上げの原資を確保するための価格転嫁や取引適正化の徹底を図ってまいります。AI・半導体、宇宙、量子、バイオ、スタートアップなど、成長分野への投資を後押しするといった点にも最大限注力をしてまいりたいと思います。
また、GX・エネルギー分野は、昨年末に取りまとめた方針の下で、再エネも原子力も最大限に活用し、脱炭素電源を新しい産業集積の起爆剤にするための具体的なものを一つでも進捗をしていく、これが今年であります。
米国で新政権が誕生する中、日本の国益に資する形で、日米の経済環境を一層発展させられるよう、対話を進めてまいります。
大阪・関西万博を成功に導き、最先端技術の社会実装、あるいは地方創生にこれをつなげていくということも大事です。
能登半島地震からの復旧・復興、福島復興と東京電力福島第一原子力発電所の安全かつ着実な廃炉などの課題に対しましては、国民の皆様の声、現場の声を大切にしながら一つ一つ着実に前進をしてまいります。これが我々の経済見通しについてであります。
加えて、昨日に続いて日本製鉄の話でありますけれども、日本製鉄が提起する訴訟につきましては、同社の企業経営上の御判断の中で行われて、米国の司法手続に沿って判断が下されるものと、私ども日本政府としてこの件についてコメントすることはこの段階では控えていきたいと思います。昨日も申し上げましたけれども、政府としましては日本製鉄の今後の対応を踏まえた上で、具体的にどのような支援ができるかを検討してまいりたいと思います。米国に対しては日本企業が安心して投資できる環境を整備することの重要性を伝えてまいりたいと思います。以上です。
日本製鉄によるUSスチール買収、ロシアによる攻撃対象リスト
Q:2点お伺いさせていただきます。
1点目、今の日本製鉄の関連なんですが、バイデン大統領が買収阻止を表明したことを受けて、USスチールのCEOが「北京の中国共産党幹部は街頭で踊っている」というふうにコメントしたそうです。このように今回の買収計画は中国の脅威への対抗という意味合いもあったと思いますけども、大臣として、対中国という文脈で今回の米大統領の判断をどう捉えていらっしゃるかをお聞きしたいのが1点目で。
もう1点目は、インフラ関係の安全保障の話なんですが、一部海外メディアがロシア軍が日本と韓国の原子力施設や防衛施設の160か所を攻撃対象としているリストを作成していると報道がありました。報道によれば、茨城県東海村の原子力発電所も含まれているそうです。電力業界を所管する経産省として、現在のこういった対応がどうなっているかを確認したいのと、今回の報道を受けて何か追加で対応方針、した方がいいことがあれば教えてください。
A:まず、USスチールの中国の案件ですけれども、報道は承知しておるところであります。企業側のコメント一つ一つに私どもから見解を述べることは差し控えたいと思います。その上ででございますけれども、日本製鉄はこの買収案件について日米の鉄鋼企業が先端技術を融合し、競争力を高めるための取組であって、米国内での鉄鋼の生産能力ですとか雇用を維持することに貢献するものであると説明してきたところであります。経済産業省としてもこうした取組は世界の中での日米の鉄鋼産業の競争力強化につながるものと考えているところであります。ということで、あまり中国という話ではないんだというふうに思っています。
そして、もう一つのロシアの案件でありますけれども、これも報道は承知をしているところですけれども、こうした報道の1つ1つにコメントすることは差し控えたいと思います。その上で、日本政府としては原子力施設へのミサイル等の武力攻撃に対しては、イージス艦あるいはPAC-3などによって対応するほか、事態対処法ですとか国民保護法の枠組みの下で、原子力施設の使用停止命令とか住民避難等の措置を準備しているところであります。また、平素から自衛隊と警察による共同訓練を行うなど関連機関相互の連携強化にも不断に取り組みながら、政府としてあらゆる事態への対応に万全を期していくという私どもの姿勢で、対応でありますので、ということでのコメントとさせていただきたいと思います。
日本製鉄によるUSスチール買収
Q:USスチールの関係で2点ほどお伺いさせてください。
先ほど大臣、今後の対応を踏まえて具体的な支援を検討されていくとおっしゃっていましたけれども、そもそもこの訴訟というフェーズに差しかかっている中で、日本政府としてどういう支援が可能なのかというか、もう少しどういう選択肢があり得るのかというのを具体的に教えていただければなというのが1点と、また、この買収計画に関して、昨日、トランプ次期大統領が自身のSNSで、買収計画を改めて反対する趣旨の投稿を行っていました。今後は新政権との交渉というのも重要な一つのポイントになってくると思うんですが、そもそももう実際に実行されているのかとか、今後される予定があるのかということについて教えてください。
A:日米の経済関係についての問合せだというふうに思いますけれども、二国関係の土台がいわゆる経済関係の中で成り立っている中で、この投資案件は、安心して企業が投資できる環境を整えていかなきゃいけないというのが我が国のスタンスだというふうに思います。
また一般論で申し上げれば、国際的な枠組みの中でルールに基づく国際経済の秩序の維持ですとか強化への取組を我が国がリードしていく中で、今後もそうした取組は続けていかなきゃいけない、我が国のスタンスとしてやっていかなくてはいけないことだろうと思います。
また、米国に対しても、日本企業が安心して、さっきも申し上げましたけど、投資できる環境づくり、このことの重要性をアメリカ政府にも今後とも伝えていきたいというふうに思います。
そして、トランプ大統領のSNSの発信の件でいらっしゃいます。トランプ次期米国大統領の御指摘の発信については承知をしているところでありますけれども、次期政権発足後の米政府の政策について現時点で予断をすることは差し控えたいと思います。
いずれにしましても、強固な経済関係が二国間関係の基盤であって、日本企業が安心して投資できることの重要性を新政権にも伝えていかなくてはけないというのが我々のスタンスだと思います。
日本製鉄によるUSスチール買収
Q:先の日本製鉄の関連ですけれども、鉄鋼だけじゃなくて、恐らく日本企業の中でも米国の連邦政府を相手として訴訟を起こすのは、そういったケースは極めてレアな案件であろうと承知をしておりますけれども、本件のアメリカ政府に対する訴訟の意義としては、大臣の認識についてもしございましたら教えてください。
A:極めてレアなケースだというふうに思います。日本が、要するに訴えるということはですね。
CFIUSの案件からすると、今まで承知をしているのは中止命令が出たものが※1約8件で、ほとんどが中国案件、1件はたしかシンガポールというふうに聞いていますけれども、日本に対して中止命令※2が行われたというのは初めてのケースだと承知をしています。
ある意味で、そういう意味で日本とアメリカの、先ほど来申し上げてきたとおり、信頼関係を引き続いて、これは経済安全保障も含めてですけれども、大事な基盤ということでこれからも両国の関係を訴えていかなきゃいけないということだと、それに尽きていくということだと思います。次期政権が新しくなってもこれはきっと同じで、我々の日米関係の同盟の中で公益関係を引き続いて御理解いただくようにこれからも頑張っていかなきゃいけないということだろうと思っています。
※1 事実関係を踏まえ、一部文言を追記しました。
※2 実際の発言は「訴訟」でしたが、事実関係を踏まえ上記のとおり修正しました。
以上
最終更新日:2025年1月7日