抗体-薬物複合体PADCEVTM(エンホルツマブ ベドチン) 局所進行性または転移性尿路上皮がんに対するペムブロリズマブとの併用療法について中国で適応追加に関する承認を取得
アステラス製薬 株式会社抗体-薬物複合体PADCEVTM(エンホルツマブ ベドチン) 局所進行性または転移性尿路上皮がんに対するペムブロリズマブとの併用療法について中国で適応追加に関する承認を取得
2025年01月08日
- 40年近くにわたり進行性尿路上皮がんの標準治療であった
白金製剤を含む化学療法に代わる、中国で最初の治療選択肢1 -
アステラス製薬株式会社(本社:東京、以下「アステラス製薬」)は、Pfizer Inc.(本社:米国ニューヨーク州、以下、「Pfizer」)と共同で開発を進めている抗体-薬物複合体(Antibody-Drug Conjugate:ADC)であるPADCEVTM(一般名:エンホルツマブ ベドチン(遺伝子組換え))とMerck & Co., Inc., Rahway, NJ, USA(米国とカナダ以外ではMSD)の抗PD-1抗体KEYTRUDA(R)(一般名:ペムブロリズマブ(遺伝子組換え))の併用療法について、局所進行性または転移性尿路上皮がん(locally advanced or metastatic urothelial cancer:la/mUC)に対する治療法として、中国の国家薬品監督管理局(National Medical Products Administration:NMPA)から適応追加に関する承認を取得しました。
中国において、膀胱がんは罹患率と死亡率が高く、2022年には92,000人以上が新たに膀胱がんと診断され、41,000人以上が死亡しています2。膀胱がんの90%を占める尿路上皮がんは、進行が早く3、特にがんが進行したステージで診断されると生存率が著しく低いことが多く、患者さんの生存期間を延ばす新たな治療選択肢が求められています。
本承認取得は、治療歴のないla/mUC患者を対象とした第III相EV-302試験(KEYNOTE-A39試験)の結果に基づいています。エンホルツマブ ベドチンとペムブロリズマブの併用療法群(以下、「併用療法群」)は、全生存期間(overall survival:OS)の中央値と無増悪生存期間(progression-free survival:PFS)の中央値において、白金製剤を含む化学療法群(以下、「化学療法群」)と比較して、統計学的に有意かつ臨床的に意義のある改善を示しました。OSの中央値は、併用療法群で31.5カ月(95%信頼区間[Confidence Interval:CI]:25.4-未到達)、化学療法群で16.1カ月(95%CI:13.9-18.3)であり、併用療法群は化学療法群と比較して死亡リスクを53%減少させました(ハザード比[Hazard Ratio:HR]=0.47、95%CI:0.38-0.58、P<0.00001)。PFSの中央値は、併用療法群で12.5カ月(95%CI:10.4-16.6)、化学療法群で6.3カ月(95%CI:6.2-6.5)でした。併用療法群は、化学療法群と比較して、がんの進行または死亡のリスクを55%減少させました(HR=0.45、95%CI:0.38-0.54、P<0.00001)。併用療法群の安全性は、以前に報告した試験の結果と同様であり、新たな安全性の懸念は確認されませんでした1。
本件によるアステラス製薬の業績への影響は、通期(2025年3月期)連結業績予想に織り込み済みです。
詳細は、2024年3月28日に開示したプレスリリース「抗体-薬物複合体エンホルツマブ ベドチン 中国国家薬品監督管理局の医薬品評価センターが生物学的製剤一部変更承認申請を受理」をご覧ください。
以上
膀胱がんと尿路上皮がんについて
尿路上皮がんまたは膀胱がんは、尿道、膀胱、尿管、腎盂、およびその他の臓器の内側を覆う尿路上皮細胞で発生します4。尿路上皮がんは、膀胱がんの90%を占め、腎盂、尿管および尿道にもみられます3,5,6。がんが周囲の臓器や筋肉に転移している場合、それは局所進行疾患と呼ばれます7。がんが体の他の部分に転移した場合、それは転移性疾患と呼ばれます8。診断時に約12%の症例が局所進行性または転移性尿路上皮がんと診断されています9。
中国では、2022 年の膀胱がんの発生率はすべてのがんの中で11番目に多く、新規患者は推定92,000例以上でした2。中国における膀胱がんの 5 年生存率は、100,000例あたり2.5例、つまり276,102例と推定されます2。継続的な治療と観察が必要になるため、膀胱がんは他のがん腫と比べて、生涯にわたって治療費が最も高額になると言われています10。
EV-302試験(NCT04223856)について
EV-302試験は、治療歴のないla/mUC患者を対象として、エンホルツマブ ベドチンとペムブロリズマブの併用療法と化学療法を比較評価する非盲検無作為化第III相試験です。PD-L1の発現程度に関係なく、シスプラチンまたはカルボプラチンを用いた化学療法に適応の、治療歴のないla/mUC患者886人が登録されました。被験者はエンホルツマブ ベドチン+ペムブロリズマブ併用療法群、または化学療法群に無作為に割り付けられました。本試験の主要評価項目は、OSと盲検下独立中央判定(Blinded independent Central Review:BICR)によるRECIST v1.1に基づくPFSです。副次評価項目には、BICRによるRECIST v1.1に基づく客観的奏効率(ORR)と奏効期間(DOR)、および安全性が含まれます1。
併用療法群と関連のあるグレード3以上の有害事象(3%以上)は、斑状丘疹状皮疹、高血糖、好中球減少症、末梢性感覚ニューロパチー、下痢、貧血でした。EV-302試験における併用療法群の安全性は、各単剤療法でこれまでに報告されている安全性プロファイル、ならびに以前に報告したシスプラチン不適応の治療歴のないla/mUC患者を対象に実施したEV-103試験と同様の結果で、新たな安全性上の問題は確認されませんでした1。
本試験は、尿路上皮がんやその他の固形がんの複数のステージにおいて、この併用療法を評価する広範にわたるプログラムの一部です。本試験の結果は、2023年欧州臨床腫瘍学会で発表され、New England Journal of Medicineに掲載されました1。
EV-302試験の詳細は、www.clinicaltrials.gov.を参照ください。
PADCEVTM(エンホルツマブ ベドチン(遺伝子組み換え))について
エンホルツマブ ベドチンは、ほぼ全ての尿路上皮がん細胞に発現し、細胞間の接着に関連するタンパク質であるネクチン-4を標的とするファーストインクラスのADCです11。非臨床試験データから、エンホルツマブ ベドチンの抗腫瘍活性は、がん細胞上でエンホルツマブ ベドチンがネクチン-4に結合して標的細胞内に取り込まれると細胞障害性物質であるモノメチルアウリスタチンE(Monomethyl auristatin E:MMAE)が放出され、細胞増殖抑制(細胞周期停止)および細胞死(アポトーシス)が生じることによることが示唆されています12。
PADCEVTMは中国において、白金製剤を含む化学療法およびPD-1またはPD-L1阻害剤による治療歴のある局所進行性または転移性尿路上皮がんに対する単剤療法、ならびに局所進行性または転移性尿路上皮がんに対するKEYTRUDA(R)との併用療法について、適応を取得しています。
アステラス製薬株式会社について
アステラス製薬は、科学の進歩を患者さんの「価値」に変えることを目指すグローバルライフサイエンス企業です。私たちは、がんや、眼科・泌尿器疾患、免疫、ウィメンズヘルスなどの多様な領域において、革新的な治療法を提供しています。研究開発プログラムを通じて、アンメットメディカルニーズの高い疾患領域において新たなヘルスケアソリューションを開拓しています。
アステラス製薬の詳細については、www.astellas.comをご覧ください。
Pfizer、MSDとの提携について
Pfizerとアステラス製薬は、治療歴のない転移性尿路上皮がん患者を対象に、PADCEVTM(エンホルツマブ ベドチン)とMSDのKEYTRUDA(R)(ペムブロリズマブ)の併用療法を評価するために、臨床開発の提携契約を締結しています。KEYTRUDA(R)はMerck & Co., Inc., Rahway, NJ, USA(米国とカナダ以外ではMSD)の子会社であるMerck Sharp & Dohme Corp.の登録商標です。
注意事項
このプレスリリースに記載されている現在の計画、予想、戦略、想定に関する記述およびその他の過去の事実ではない記述は、アステラス製薬の業績等に関する将来の見通しです。これらの記述は経営陣の現在入手可能な情報に基づく見積りや想定によるものであり、既知および未知のリスクと不確実な要素を含んでいます。さまざまな要因によって、これら将来の見通しは実際の結果と大きく異なる可能性があります。その要因としては、(i)医薬品市場における事業環境の変化および関係法規制の改正、(ii)為替レートの変動、(iii)新製品発売の遅延、(iv)新製品および既存品の販売活動において期待した成果を得られない可能性、(v)競争力のある新薬を継続的に生み出すことができない可能性、(vi)第三者による知的財産の侵害等がありますが、これらに限定されるものではありません。また、このプレスリリースに含まれている医薬品(開発中のものを含む)に関する情報は、宣伝広告、医学的アドバイスを目的としているものではありません。
参考文献
1 Powles T, Valderrama BP, Gupta S, et al. Enfortumab vedotin and pembrolizumab in untreated advanced urothelial cancer. N Engl J Med. 2024;390:875-888.
2 International Agency for Research on Cancer (IARC). Global Cancer Observatory. China factsheet. (2022). Available at: https://gco.iarc.who.int/media/globocan/factsheets/populations/160-china-fact-sheet.pdf. Last accessed: January 2025.
3 Leslie SW, Soon-Sutton TL, Aeddula NR. Bladder Cancer: StatPearls. (Updated 2024 Aug 15]. Available at: https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK536923. Last accessed: January 2025.
4 National Cancer Institute. What is bladder cancer? (February 2023) Available at: https://www.cancer.gov/types/bladder. Last accessed: January 2025.
5 Leow JJ, Liu Z, Tan TW, et al. Optimal management of upper tract urothelial carcinoma: Current perspectives. Onco Targets Ther. 2020;13:1-15.
6 Petros FG. Epidemiology, clinical presentation, and evaluation of upper-tract urothelial carcinoma. Transl Androl Urol. 2020;9(4):1794-8.
7 National Cancer Institute. NCI dictionary of cancer terms: Locally advanced cancer. Available at: https://www.cancer.gov/publications/dictionaries/cancer-terms/def/locally-advanced-cancer. Last accessed: January 2025.
8 American Cancer Society. If you have bladder cancer. (March 2024). Available at: https://www.cancer.org/cancer/types/bladder-cancer/if-you-have-bladder-cancer.html. Last accessed: January 2025.
9 National Cancer Institute. Cancer stat facts: bladder cancer. Available at: https://seer.cancer.gov/statfacts/html/urinb.html. Last accessed: January 2025.
10 Aly A, Johnson C, Doleh Y, et al. The real-world lifetime economic burden of urothelial carcinoma by stage at diagnosis. J Clin Pathw. 2020;6(4):51-60.
11 Challita-Eid PM, et al. Enfortumab vedotin antibody-drug conjugate targeting nectin-4 is a highly potent therapeutic agent in multiple preclinical cancer models. Cancer Res. 2016;76(10):3003-13.
12 PADCEV [package insert]. Northbrook, IL: Astellas Pharma US, Inc.
抗体-薬物複合体PADCEVTM(エンホルツマブ ベドチン) 局所進行性または転移性尿路上皮がんに対するペムブロリズマブとの併用療法について中国で適応追加に関する承認を取得