2025/09/16

間質性肺疾患治療薬「KRP-R120」の第3相臨床試験結果のお知らせ

杏林製薬 株式会社 

2025 年9月16日
杏 林 製 薬 株 式 会 社

間質性肺疾患治療薬「KRP-R120」の第3相臨床試験結果のお知らせ

当社は、aTyr Pharma, Inc.(本社:米国サンディエゴ、CEO and President:Sanjay S. Shukla、以下、aTyr 社)が創製し、当社が日本における開発、販売に関する独占的権利を保有する間質性肺疾患治療薬「KRP-R120 (一般名:エフゾフィチモド(遺伝子組換え))」について、aTyr社が国際共同第3相臨床試験(EFZO-FIT 試験、以下、本試験)の結果を公表しましたので、お知らせいたします。

本試験は、肺サルコイドーシスを対象疾患として、日本を含めた10の国と地域で実施されたKRP-R120を静脈内投与した際の有効性及び安全性を評価する無作為化、二重盲検、プラセボ対照試験であり、KRP-R120の2つの用量(3mg/kg、5mg/kg)を4週毎に合計12回静脈投与し、プラセボと比較しました。

その結果、主要評価項目である「経口ステロイド(OCS)漸減終了後におけるOCSの1日平均投与量のベースラインからの変化量」において、プラセボと比較し統計学的に有意な差が認められず、主要評価項目は達成されませんでした(p=0.3313)。48 週時点での OCS の 1 日平均投与量は 5mg/kg 群で平均2.79mg、プラセボ群で平均3.52mgでした。

一方、本試験の統計解析計画は階層的評価に基づいて設計されているため、主要評価項目が達成されなかったことから、参考情報としての解析結果となりますが、5mg/kg 群において、48 週時点でのステロイドフリーの達成率は52.6%(プラセボ群40.2 %、p=0.0919)、KSQ-Lungスコアの48週時点でのベースラインからの改善は、10.36(プラセボ群6.19、 p=0.0479)、48 週時点で KSQ-Lung スコアの改善かつステロイドフリーを達成した患者の割合は、29.5%(プラセボ群14.4%、p=0.0199)でした。

なおKRP-R120 は良好な忍容性、及びこれまでの知見と一致した安全性プロファイルを示し、新たなリスク等は認められませんでした。

本試験の解析結果については、2025 年 9月30日に開催される欧州呼吸器学会議(ERS)で発表する予定です。

本試験結果についてのaTyr社のプレスリリース全文は、以下のリンクをご参照ください。

“aTyr Pharma Announces Topline Results from Phase 3 EFZO-FIT(TM) Study of Efzofitimod in Pulmonary Sarcoidosis” (https://investors.atyrpharma.com/news-releases)

本試験結果を受け、当社とaTyr社は、KRP-R120に関する今後の開発計画について協議を進めていきます。

なお、本試験に係る費用は2026年3月期の連結業績予想に織り込み済みです。

以 上

【参考資料】

aTyr 社について

aTyr 社は線維症及び炎症性疾患への治療法を開発するため、tRNA合成酵素の生物学を活用するバイオテクノロジー企業です。tRNA 合成酵素は、太古から存在する必須タンパク質であり、ヒトにおいては細胞外のさまざまな経路を制御する独自のドメインを進化させてきました。aTyr 社の創薬プラットフォームは、20種類すべての tRNA 合成酵素に由来する独自のドメインライブラリを活用し、これらのドメインが引き起こすシグナル伝達経路を解明することで、まだ知られていない治療の可能性を探っています。aTyr 社の主要な治療候補薬はエフゾフィチモドで、肺の炎症や進行性の線維化(瘢痕化)を引き起こす可能性のある自己免疫疾患群である間質性肺疾患の治療薬として臨床開発中の、ファーストインクラスの生物学的免疫調節剤です。詳細については、https://www.atyrpharma.com/をご覧ください。

肺サルコイドーシスについて

サルコイドーシスは原因不明の炎症性疾患であり、1つから複数の臓器における肉芽腫、炎症細胞の集積がみられることが特徴で、主に50歳以下で発症し、そのピークは20~39歳です。この疾患は通常、肺、皮膚、またはリンパ節で始まり、ほかの臓器にも影響を及ぼします。

サルコイドーシスで最も侵されやすい器官は肺で肺サルコイドーシスと呼ばれ、患者の90%以上が罹患しています。その病態の予後は良性または自己寛解型から慢性型や進行性のため死に至る重症なパターンまで様々です。さらに肺サルコイドーシスは肺間質組織の急速な線維化を引き起こす免疫関連疾患である間質性肺疾患の主病態です。有病率は国によってさまざまですが、現在米国では約 20 万人が罹患しています。一方、日本においては肺サルコイドーシスの難病受給者証保持者数は15,858人(2022年度)となっています。現在、治療にはステロイドや免疫抑制剤が使用されていますが、強い副作用が課題となっており、安全性の高い効果的な治療薬が求められています。

KRP-R120(一般名:エフゾフィチモド(遺伝子組換え))

ヒト抗体のFc領域にNRP2へ選択的に結合するヒスチジンtRNAシンテターゼ免疫調節ドメインを融合させた融合タンパク製剤であり、肺の炎症病態において自然免疫反応及び獲得免疫反応を下方制御させる作用が期待されます

*NRP2(Neuropilin-2)の作用について

NRP2 はリンパ管の発達や炎症反応の調節に重要な役割を果たす細胞表面受容体です。近年、NRP2は様々な免疫細胞において特に炎症状態など細胞が活性化した状態でその発現が増大し、細胞遊走、貪食作用、細胞間相互作用といった多様な免疫機能に関連することが示唆されています。またaTyr社は肺サルコイドーシス患者の肺病変において NRP2 の発現を確認しており、病態との関連を示唆するデータを保有しています。

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