2025/12/22

RC造袖壁付き柱で鉛直スリットを使用しないスマートスリット構法(R)を開発

西松建設 株式会社 

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RC造袖壁付き柱で鉛直スリットを使用しないスマートスリット構法(R)を開発

お知らせ 2025年12月22日

-鉛直スリット使用時と同等の耐震安全性を確保、現場業務の省力化に貢献-

当社は、共同住宅などに多く用いられる鉄筋コンクリート造(RC造)袖壁付き柱※1 に目地を設けることで、鉛直スリット※2 を使用しないスマートスリット構法(R)を開発しました。本構法の活用により、鉛直スリット使用時と同等の耐震安全性を確保します。また、スリット設置に伴う作業や検査の簡略化を実現し、現場業務の省力化に貢献します。

■背景
RC造袖壁付き柱は、主に共同住宅などに設置される部材で、一般的に袖壁と柱の間には鉛直スリット、袖壁脚部と梁の間には水平スリット※3 を設置します(写真1参照)。両スリットを設置することで、地震が起こった際、スリットによって設けられた隙間が地震の揺れによる力を分散させ、建物全体の倒壊リスクを低減します。そのため、スリットの設置は施工上重要な作業であり、多くの時間と工程、そそして人手が必要となります。また、設置に付随して複数回の目視検査や検査記録表の作成※4 が必要となることから、建物の耐震安全性を最優先に、スリットの使用を減らす構法の研究を進めてまいりました。

写真1 一般的な共同住宅のRC袖壁付き柱
(袖壁の配筋実施前の写真)



■構法の概要
本構法は、RC造袖壁付き柱に目地を設けることで、水平スリットのみの使用により耐震安全性を確保します。
施工にあたっては、袖壁と柱の間に目地※5 を設けます。袖壁内の鉄筋のうち、縦方向の鉄筋は上階の梁の中に定着※6 しますが、横方向の鉄筋は振れ止め筋※7 を除き目地があるため、柱には定着しない構造となります。(図1,図2参照)。本構法の施工は目地の形成も含め、一般的なRC造の施工手順と大きく変わらず、容易に実施できます。
開発にあたっては、構造実験(写真2~4参照)や解析的な検討を繰り返し実施しました。その結果、本構法は一般的な設計で想定される変形の約4倍の変形状態に至っても、建物に脆性的な破壊は生じず、耐震安全性が確保されていることを確認しました。
本構法は、一般財団法人 日本建築総合試験所から建築技術性能証明(スマートスリット構法 -鉛直目地と水平スリットを併用した袖壁接合工法- GBRC 性能証明 第25-29号)を取得しています(図3参照)。なお、開発にあたっては秋田県立大学の西田哲也・菅野秀人両教授、ならびに日本大学の髙橋孝二教授よりご指導いただきました。

■期待される効果
このたび、本構法を15階建ての共同住宅に適用した試設計を実施しました。その結果、鉛直スリットが必要とされる複雑な形状の袖壁付き柱を除き、RC造袖壁付き柱の多くで本構法を適用し、建物全体における鉛直スリットを約50%削減することができました。これにより、建物の安全性を損なうことなくスリット設置に伴う関連業務の削減でき、現場作業の効率化、省力化につながります。

図3 性能証明書



■今後の展開
当社は今回開発した本構法を積極的に採用し、建物全体の構造安全性を担保しつつ、さらなる現場作業の効率化、省力化を展開できるよう技術開発を進めてまいります。

  1. ※1柱の両側若しくは片側に壁が取り付いた形状の柱。
  2. ※2袖壁と柱の一体性を無くすために設ける隙間。隙間には、コンクリートよりも柔らかい材料を配置することが一般的
  3. ※3袖壁脚部と梁の一体性を無くすために設ける隙間。隙間には、コンクリートよりも柔らかい材料を配置することが一般的。
  4. ※4鉛直・水平スリットは、設置時、コンクリート打設前、コンクリート打設後に全数目視確認を行い、記録写真を添えて検査記録を作成することが一般的
  5. ※5袖壁の断面を欠き込んだ部分の名称。
  6. ※6鉄筋が抜け出さないように他の部材に鉄筋を埋め込むこと。
  7. ※7目地にひび割れが生じた際などに袖壁の面外方向の過大な変形を防止するための鉄筋。

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