2025/12/22

トラスツズマブ デルクステカン(T-DXd/DS-8201)のHER2発現子宮内膜がんにおける術後補助療法を対象とした第3相臨床試験の開始について

第一三共 株式会社 

2025 年12月22日
第一三共株式会社

トラスツズマブ デルクステカン(T-DXd/DS-8201)の
HER2発現子宮内膜がんにおける術後補助療法を対象とした第3相臨床試験の開始について


第一三共株式会社(本社:東京都中央区、以下「当社」)は、HER2発現(IHC 3+ または 2+)の子宮内膜がんの術後補助療法を対象とした、トラスツズマブ デルクステカン(T-DXd/DS-8201、抗HER2抗体薬物複合体(ADC)*1、以下「本剤」)のグローバル第3相臨床試験(DESTINY-Endometrial02)において、最初の患者への投与を開始しましたので、以下のとおりお知らせいたします。

本試験は、全身療法歴のないHER2発現(IHC 3+ または 2+)の子宮内膜がん患者を対象として、術後補助療法としての本剤の単独療法または放射線治療との併用療法の有効性および安全性を、標準治療(化学療法)の単独療法または放射線治療との併用療法と比較して評価するグローバル第3相臨床試験です。主要評価項目は無病生存期間*2で、重要な副次評価項目は全生存期間*3です。その他の副次評価項目には、遠隔転移、局所再発および領域再発の確認、安全性等が含まれます。日本を含むアジア、欧州、北米および南米において、約710名の患者を登録する予定です。

なお、本試験の開始は、前治療歴のあるHER2発現の進行性固形がん患者を対象とした本剤の第2相臨床試験(DESTINY-PanTumor02)における、子宮内膜がん患者を対象としたサブグループ解析の結果に基づくものです。

当社は、子宮内膜がん患者さんに新たな治療の選択肢を提供できるよう、本試験および現在進行中のHER2発現の原発性進行・再発子宮内膜がん一次治療を対象とした第3相臨床試験(DESTINYEndometrial01)を含め、本剤の開発を加速させてまいります。

以 上

*1 抗体薬物複合体(ADC)とは、抗体と薬物(低分子化合物)を適切なリンカーを介して結合させた薬剤で、がん細胞に発現している標的因子に結合する抗体を介して薬物をがん細胞へ直接届けることで、薬物の全身曝露を抑えつつがん細胞への攻撃力を高めています。

*2 無病生存期間とは、治療後、再発が無く生存している期間です。

*3 全生存期間とは、原因を問わず死亡するまでの期間です。

HER2発現の子宮内膜がんについて

子宮内膜がん(子宮体がん)は、婦人科系のがんで2番目に多く、女性で6番目に多いがんと言われています。2022年には全世界で新たに約42万人が診断され、9万7千人以上が亡くなったとの報告があります。 現在、高リスク子宮内膜がん患者に対する術後補助療法として、外部照射放射線療法(EBRT)と化学療法の同時併用療法、化学療法と放射線療法の逐次併用療法、または化学療法単独が用いられています。子宮内膜がんの5年全生存率は約81%とされていますが、現在の標準術後補助療法を受けた後、高リスク患者の約39~56%が診断から18か月以内に再発または死亡するとの報告があり、新たな治療の選択肢が必要とされています。

HER2は、多くのがん細胞表面に発現するタンパク質です。子宮内膜がんの約18~56%にHER2発現(IHC 3+ または 2+)が認められ、病勢進行と関連していると言われています。現在、HER2発現の子宮内膜がんの術後補助療法を対象として承認されているHER2を標的とした治療法はありません。

第一三共のADCパイプラインについて

第一三共のADCパイプラインは、第一三共独自のADC技術プラットフォームから創製された、臨床開発段階にある8つのADCから構成されています。

その中の6つのADCは、がん細胞表面に発現する特定の抗原を標的とした抗体と、複数のトポイソメラーゼⅠ阻害剤(DXd)をリンカーを介して結合させ、がん細胞の内部へDXdを届けるDXd ADC技術を用いて創製されました。トラスツズマブ デルクステカン(エンハーツ(R)、抗HER2 ADC)およびダトポタマブ デルクステカン(ダトロウェイ(R)、抗TROP2 ADC)は、全世界(当社が独占的権利を有する日本は除く)においてアストラゼネカと共同で開発および商業化を進めています。イフィナタマブ デルクステカン(I-DXd/DS7300、抗B7-H3 ADC)、ラルドタツグ デルクステカン(R-DXd/DS-6000、抗CDH6 ADC)およびパトリツマブ デルクステカン(HER3-DXd/U3-1402、抗HER3 ADC)は、全世界(当社が独占的権利を有する日本は除く)において Merck & Co., Inc., Rahway, NJ, USAと共同で開発および商業化を進めています。DS3939(抗TA-MUC1 ADC)は当社が単独で開発を進めています。

DS-9606(抗CLDN6 ADC)は、がん細胞表面に発現する特定の抗原を標的とした抗体と、改変されたピロロベンゾジアゼピン(PBD)を結合させ、がん細胞の内部へ改変されたPBDを届けるADC技術を活用したADCです。DS3610(STINGアゴニストADC)は、STINGアゴニストとして作用する新規ペイロードを、Fc領域に変異を導入したモノクローナル抗体に結合させたADCです。

なお、イフィナタマブ デルクステカン、ラルドタツグ デルクステカン、パトリツマブ デルクステカン、 DS3939、DS-9606およびDS3610は現在開発中の薬剤です。安全性および有効性はまだ確立されておらず、各国の規制当局による薬事承認は受けていません。

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