2026/05/09

顎を形づくる組織間の連鎖反応を解明

国立研究開発法人 理化学研究所 

2026年5月9日

理化学研究所

顎を形づくる組織間の連鎖反応を解明

-隣接する上皮の折り畳みが空間制約を生み、顎形成を導く-

理化学研究所(理研)生命機能科学研究センター 発生幾何研究チームの細田 和孝 特別研究員、森下 喜弘 チームディレクターらの国際共同研究グループは、脊椎動物の顎の形成過程において、脳から分泌される因子の制御を受けた口腔上皮[1]の複雑な折り畳み運動により、顎のもととなる組織である下顎原基[2]の伸長と融合が駆動されるという、複数の組織にまたがる器官形成の新たな形態形成原理を発見しました。

本研究成果は、複雑な3次元構造である顔の形成を理解する重要な手がかりになるとともに、これにより今後さまざまな器官で同様の原理に基づく形態形成過程が発見される可能性があります。

一般に、動物の器官は複数の組織から構成され、それぞれの組織や近接する組織の相互作用によって最終的な形が決まります。しかし、組織の変形や動きが周囲の組織に与える影響については、十分に解明されていませんでした。

今回、国際共同研究グループは、ゼブラフィッシュ[3]の発生過程における顎形成に着目し、高解像度の生体イメージングを用いて組織と細胞の動きを詳細に解析しました。その結果、下顎元基を覆う口腔上皮が能動的に形を変えて折り畳まれることで周囲に空間的な制約を生み出し、顎形成の初期イベントである下顎原基の伸長が導かれることが明らかになりました。さらにこの口腔上皮の折り畳みには脳の腹側から分泌されるタンパク質が関与しており、脳-口腔上皮-下顎原基の物理化学的な連鎖による器官形成の仕組みが示されました。

本研究は、科学雑誌『Science Advances』オンライン版(5月8日付:日本時間5月9日)に掲載されました。

下顎形成を駆動する隣接組織の間の物理化学的な因果連鎖

背景

動物の発生過程では、受精卵から個体になるまでにさまざまな器官が形成されます。器官はそのもととなるシンプルな組織のまとまり(原基)から形を変え、最終的に複雑な形状を獲得します。器官の形は機能と密接に関係しており、「器官の形がどのようにして決まるのか」という問いは発生学における重要な課題です。

これまでに、各組織が細胞集団運動などを通じて能動的に形を変えることは明らかになっていました。他方で、多くの器官は複数の組織から構成されるため、その形態形成には隣接する組織間の相互作用が関与すると考えられてきました。しかし、形態形成に関わる遺伝子やタンパク質の研究が進む一方で、物理的な側面から各組織の変形がどのように隣接する組織に影響し、器官の形態決定に寄与するのかについてはほとんど明らかになっていませんでした。

国際共同研究グループはこの問題に取り組むため、ゼブラフィッシュ胚の発生過程における顎形成に着目しました。顎は主要な脊椎動物の大部分が持つ器官であり、「食べる」「呼吸する」「発声する」といった生命活動の根幹を支えています。顎形成は、複数の組織から構成される顔面の骨格形成過程において、最も初期に起きる重要なイベントの一つですが、その形成メカニズムには未解明な点が多く、進化や疾患の研究において重要なテーマとなっています。

ヒトを含む有顎脊椎動物では、顎のもととなる組織(顎原基)が左右に離れて存在します。下顎の形成過程では、左右の顎原基の一部が伸長して正中線で融合することで、一体となった骨格が形成されます。

従来、下顎原基の伸長は、細胞が正中線方向に偏って分裂することで生じる(細胞分裂のバイアスモデル)と考えられていましたが、このような顎原基の形態変化を支える仕組みや、異なる組織間の関係性については十分に解明されていませんでした。

研究手法と成果

顎のように複雑な3次元構造が物理的にどのように形を変えていくのかについては、定量的な情報がほとんどありません。そこで本研究では、まず、単一細胞分解能での長時間生体イメージングを用いて顎原基の細胞一つ一つの軌道を計測し、細胞の動きから組織の変形ダイナミクスを数値化しました(図1A、B)。その結果、顎原基の他の部分では前後方向に偏った伸長が見られるのに対し、将来下顎となる領域でのみ、顔の正中線方向への特徴的な伸長が起こることが明らかになりました(図1C)。この下顎伸長の機構を知るために、まず細胞分裂の影響を調べました。解析の結果、細胞分裂の方向と組織伸長の方向が一致しないこと、さらに細胞分裂を阻害しても伸長が維持されることが示されました(図1D)。加えて、細胞動態の解析から、下顎の伸長は特定の方向に偏って細胞が再配列することで実現されることが明らかとなりました(図1E)。これらの結果から、下顎原基の伸長は従来の細胞分裂のバイアスモデルでは説明できず、細胞集団の極性運動s[4]によって生じる新たな形態形成様式であることが明らかになりました。

図1 下顎原基の組織ダイナミクス

  • Aゼブラフィッシュ胚の全身像と、頭部組織および器官のポリゴン表示(立体の多面体近似:ここでは三角形メッシュを使用した)。発生中の脊椎動物の咽頭部には咽頭弓(いんとうきゅう)と呼ばれる左右で対になった構造が形成され、顎は最前部の第1咽頭弓(PA1)から形成される。左下には、PA1から形成される顎軟骨(がくなんこつ)を模式的に示した。
  • B発生に伴うPA1の形態変化の様子をポリゴン表示で腹側から示した図と、受精後36時間(36hpf)および48時間(48hpf)の追跡した細胞の分布を示した(右)。48時間後の細胞の位置から逆算して、36時間後におけるPA1の構成細胞を四つの群(上顎突起、口蓋方形軟骨原基、背側後方領域、下顎原基)に分類すると、下顎原基の細胞のみが正中線方向への伸長を示した。
  • CPA1の変形解析結果。各線分は、各場所で組織(細胞集団)が伸長する方向を表す。
  • D細胞分裂の阻害実験。正常な個体(上)と同様に、細胞分裂阻害(阻害剤aphidicolin処理)個体(下)も下顎原基の伸長と融合が起こっている。
  • E細胞運動に関するデータ解析から、下顎原基の伸長は、特定の方向に偏って細胞が再配列することで実現されることが分かった。

次に、下顎原基の伸長を駆動する要因を明らかにするため、下顎原基に隣接する口腔上皮に着目しました(図2A)。口腔上皮は腹側と背側の2層から成る細胞シートです。観察の結果、下顎原基の伸長と同じタイミングで、腹側の口腔上皮が複雑に折り畳まれ、下顎原基全体を包み込む特徴的な動態を示すことが明らかになりました(図2B)。そこで、前述した下顎原基と同様の組織変形解析を行い、口腔上皮の折り畳みダイナミクスを定量的に解析しました。その結果、腹側口腔上皮の中でも前側方の限られた領域において、細胞の再配列が頻繁に起こり、この局所的な変形が折り畳みを駆動していることが明らかになりました(図2C)。

上皮における細胞再配列は、活性型の非筋ミオシン[5]が極性を持って細胞境界に集積し、収縮を引き起こすことで生じることが知られています。腹側口腔上皮でも、前側方の領域において、シートの伸長方向に対して直交する方向に偏った活性型ミオシンの極性集積が観察されました(図2D)。さらに、薬剤投与によって胚全体でミオシンを阻害すると、細胞再配列と折り畳みの両方が消失したことから、ミオシン依存的な能動的細胞運動が口腔上皮の折り畳みを駆動していることが明らかになりました。

図2 口腔上皮の折り畳みダイナミクス

  • A受精後36時間(36hpf)における頭部のポリゴン表示。下に、下顎原基および口腔上皮が良く見えるように拡大図を示した。
  • B口腔上皮の組織ダイナミクスを、背側と前側方から観察した図。発生の進行に伴い、下顎原基を包み込むように折り畳まれる様子が観察された。口腔上皮(薄い赤色)の下に隠れている下顎原基の外形を破線で示した。口腔上皮の折り畳みに伴って左右の下顎原基が正中線方向に伸長し、融合する。
  • C口腔上皮の変形パターン解析。大きく四つの領域に対応したパターンが認められた。特に前側方領域では、細胞の再配列により前後軸に沿った収縮と、正中線-側方軸に沿った伸長を伴う特徴的な変形が観察された。
  • Dミオシン集積のパターン解析。細胞の形状を紫(F-actin染色)、ミオシンの局在を緑(pMLC染色)で示した。前側方領域において、細胞再配列の方向(図の左右方向)と直交するミオシン集積の極性パターンが検出された。

次に、口腔上皮の折り畳みダイナミクスと下顎原基の伸長との因果関係を検証しました。ミオシン活性を阻害できる遺伝子改変ゼブラフィッシュを用いて、右側の口腔上皮でミオシン活性を抑制したところ、右側口腔上皮の折り畳みが阻害されるとともに、右側の下顎原基の伸長も低下し、融合不全が生じました(図3A)。これにより、口腔上皮の折り畳みが下顎原基の伸長を駆動していることが示されました。さらに、発生の進行に伴い、ミオシン活性を阻害していない左側の下顎原基が正中線を越えて過剰に伸長することが観察されました(図3B)。また、片側の下顎原基をレーザー照射により除去した場合も、残存側が過剰に伸長することが確認されました(図3B)。これらの結果から、左右の下顎原基はあらかじめ決められた位置で停止するのではなく、運動可能な空間が存在する限り伸長し続けること、そして正常発生においては、左右の伸長のバランスによって正中線での融合が実現されていることが明らかになりました。以上を踏まえ、国際共同研究グループは、口腔上皮の折り畳みが下顎原基を包み込むことで新たな空間制約を生み出し、細胞運動の方向を正中線方向に制限することで伸長を導く、という新しいタイプの組織間相互作用に基づく形態形成モデルを提案しました(図3C)。

図3 顎原基の伸長と口腔上皮の折り畳みダイナミクスの間の因果検証

  • Aミオシン活性阻害の実験結果。組換え遺伝子の発現誘導処理を、口腔上皮を標的として胚の右側のみに行った(緑色の発現細胞)。ミオシン活性阻害効果のない緑色蛍光タンパク質(EGFP)のみを発現誘導させた正常個体(左)では、処理側も無処理側も正常な形態形成が起こる。一方、ミオシン機能阻害遺伝子(EGFPを付加して発現を可視化)を発現させた個体(右)では、処理側において折り畳みが不全となり、下顎原基の伸長も正中線方向へ伸長せず、融合不全が生じた。
  • B受精後4日の胚の軟骨組織の観察(アルシアンブルー染色)。Aと同様に片側の口腔上皮でミオシン機能阻害処理を行って折り畳みを阻害した個体(左)では、無処理側の下顎原基が正中線を超えて過剰に伸長している様子が観察された。レーザー照射で片側の下顎原基を除去した個体(中央)でも、同様に残存側の過剰伸長が観察された。各個体の下顎軟骨の模式図を下に示した。
  • C口腔上皮の物理的な作用を示した下顎形態形成モデル。発生中の下顎原基は、背側を口腔上皮に、側方を基底表皮に、後方を血管(第1大動脈弓)に囲まれており、これら3方向への移動が制限される。そして口腔上皮の折り畳みによりさらに空間制約が生じ、下顎原基の伸長方向が正中線方向に制限される。

ここまでの結果から、下顎原基の正常な形態形成を導くのが口腔上皮であることが示されました。国際共同研究グループは最後に、口腔上皮に作用して細胞の再配列と折り畳みダイナミクスを駆動する因子が存在するかを探索し、候補として分泌タンパク質ソニックヘッジホッグ(Sonic hedgehog; Shh)[6]に着目しました。Shhは口腔上皮に近接する脳の腹側領域で強く発現しており(図4A)、口腔上皮ではShhの受容体であるパッチド(Patched)[6]の発現が広く認められます。また、森下チームディレクターらのこれまでの研究から、Shhシグナルが上皮組織の細胞極性運動を制御することが知られています注)。Shhシグナルを阻害する薬剤をゼブラフィッシュ胚に投与したところ、口腔上皮前方側方部におけるミオシン集積の極性と細胞再配列の頻度が低下し(図4B)、口腔上皮の折り畳みおよび下顎原基の伸長が共に阻害されました(図4C)。以上の結果から、脳から分泌されるShhを起点として、口腔上皮の極性化と折り畳みを介して、下顎原基の伸長が制御されるという、一連の発生過程における物理化学的な因果連鎖が示されました(図4D)。

図4 口腔上皮の折り畳みを駆動する上流因子

  • Ashh遺伝子(ピンク)の発現解析。受精後24時間(24hpf)では、脳を含めた神経管の腹側で発現が検出される(左)。前脳を通る横断面(中央)では、脳の腹側(直下に口腔上皮が位置している)でのshh遺伝子の発現が認められる。右にその模式図を示した。
  • Bミオシン集積の極性解析。受精後36時間(36hpf)における腹側口腔上皮を背側から示した。細胞の形状を紫(F-actin染色)、ミオシンの局在を緑(pMLC染色)で示した。正常個体(上)と比較して、Shh阻害個体(下)では極性の異常が生じている。また、Shh阻害により前側方領域の細胞再配列の頻度低下が観察された。
  • CShh阻害により、口腔上皮の折り畳みが不全となり、下顎原基の伸長および融合も不全となった(右)。
  • D下顎形成を駆動する隣接組織間(脳-口腔上皮-下顎原基)の物理化学的な因果連鎖。これらの過程では、従来は形態形成の重要な要素と考えられていた細胞分裂の寄与はない。

今後の期待

これまで、遺伝学的手法や網羅的な遺伝子発現解析により、器官形成に関与する遺伝子は数多く明らかになってきました。一方で、器官がどのように形を変え、最終的な形に至るのかという「形の変化そのものを決める仕組み」については、十分に理解されていませんでした。本研究は、上皮組織の変形が新たな空間制約を生み出し、それによって隣接組織の変形方向を制御するという、新しい器官形成の仕組みを示しました。これは、器官の形態が遺伝子の働きだけでなく、組織間の物理的な相互作用によっても決定されることを具体的に示した重要な成果です。この仕組みは下顎形成にとどまらず、他の器官やさまざまな生物にも共通する可能性があります。今後、同様の原理に基づく形態形成過程の発見が期待されます。また、こうした仕組みと遺伝子の働きとの対応関係を明らかにすることで、ヒトを含む動物における複雑な3次元器官の形の決定機構や、生物種間での形態多様性の理解が進むと考えられます。さらに、器官の形態異常がどのように生じるのかを理解する手がかりとなることも期待されます。

加えて、近年開発が進むミニ臓器(オルガノイド)研究においては、細胞分化制御に関する知見は蓄積されている一方で、組織形態の成熟過程は未解明な点が多く残されています。本研究で見いだした仕組みは、培養組織の形態成熟化やその制御に向けた新たな指針となる可能性があります。

補足説明

  • 1.上皮
    細胞が隙間なく敷き詰められシート状になったもの。体表や管腔(かんくう)の表面を覆って、さまざまな生理的機能を果たす組織として機能する。
  • 2.下顎原基
    下顎を形成する骨格組織(軟骨や骨)のもととなる組織。脊椎動物初期胚の咽頭部には咽頭弓と呼ばれる左右で対になった構造が形成され、下顎原基は最前部の第1咽頭弓(1st pharyngeal arch; PA1)に由来する。
  • 3.ゼブラフィッシュ
    脊椎動物モデルとして発生や行動研究などに用いられる小型魚類。発生が早く受精卵が透明であるため、発生過程の観察や長時間の生体イメージングに適している。
  • 4.極性運動
    方向性を持った細胞の移動や変形。物理化学的な細胞外環境や、細胞を構成する細胞膜・細胞内成分の非対称的な分布により駆動される。
  • 5.非筋ミオシン
    ミオシンは、ATP(アデノシン三リン酸)を分解したエネルギーを使って、アクチンという繊維状タンパク質と相互作用しながら力を生み出すモータータンパク質。筋肉が収縮して体を動かすことができるのは、このミオシンの働きによる。細胞内には、筋肉で働くものとは異なるタイプのミオシン(非筋ミオシン)が存在し、細胞の移動や形状変化、再配列など力を必要とするさまざまな細胞現象に関わっている。
  • 6.ソニックヘッジホッグ(Sonic hedgehog; Shh)、パッチド(Patched)
    ソニックヘッジホッグは、細胞外に分泌される形態形成因子(モルフォゲン)の一つ。脳や四肢などを含むさまざまな臓器の形成に関与し、細胞の増殖や分化状態を制御することが明らかになっている。パッチドは膜貫通タンパク質であり、ソニックヘッジホッグの受容体として働く。また、パッチドの発現はShhシグナルによって制御される。

国際共同研究グループ

理化学研究所 生命機能科学研究センター 発生幾何研究チーム
特別研究員 細田 和孝(ホソダ・カズタカ)
研究員 大塚 大輔(オオツカ・ダイスケ)
技師 李 尚雨(イ・サンウ)
チームディレクター 森下 喜弘(モリシタ・ヨシヒロ)

カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA、米国)
研究員 川平 直史(カワヒラ・ナオフミ)
(理研 生命機能科学研究センター 発生幾何研究チーム 客員研究員)

東京科学大学
生命理工学院 助教 河西 通(カワニシ・トオル)

研究支援

本研究は、理化学研究所運営費交付金(生命機能科学研究)で実施し、日本学術振興会(JSPS)科学研究費助成事業研究活動スタート支援「顔発生時の器官間の協調的な制御機構の解明(研究代表者:細田和孝、18H06488)」、同特別研究員奨励費「適切な相対配置を実現する器官間の協調的な制御機構の解明-顔発生過程をモデルに(研究代表者:細田和孝、19J01205)」、同若手研究「『上皮包み込み運動』を駆動する細胞・分子機構の解明、および下顎発生時の機能的役割(研究代表者:細田和孝、22K15132)」、同新学術領域研究(研究領域提案型)「多細胞システムにおける細胞運動と運命決定の情報処理特性の解析(研究代表者:澤井哲、19H05801)」、同基盤研究(B)「個体サイズ変化に対する組織・細胞の応答解析を起点とした臓器サイズ制御機構の解明(研究代表者:森下喜弘、24K03037)」、科学技術振興機構(JST)戦略的創造研究推進事業CREST「組織変形動態解析を起点とした種間・器官間で保存された形態形成則の解明(研究代表者:森下喜弘、JPMJCR2025)」による助成を受けて行われました。また、本研究では、ナショナルバイオリソースプロジェクト(NBRP)の支援により提供されたゼブラフィッシュ系統(RIKEN Wild-type strain)を使用しました。

原論文情報

  • Kazutaka Hosoda, Daisuke Ohtsuka, Sang-Woo Lee, Naofumi Kawahira, Toru Kawanishi, Yoshihiro Morishita, "A Cross-Tissue Physicochemical Causal Chain Underlying Vertebrate Mandibular Morphogenesis", Science Advances

発表者

理化学研究所
生命機能科学研究センター 発生幾何研究チーム
特別研究員 細田 和孝(ホソダ・カズタカ)
チームディレクター 森下 喜弘(モリシタ・ヨシヒロ)

細田 和孝

森下 喜弘

発表者のコメント

1種類の組織の動きを詳細に解析するだけでも一つの論文が成立するほど重要な研究テーマになりますが、今回は隣接する二つの異なる組織の動きに着目して解析し、その関係性を明らかにしました。その結果、上皮組織の形の変化が、隣り合う内部の組織(間葉)の伸長方向を制御するという、新たな形態形成原理を示すことができました。同様の仕組みは、まだ気づかれていないだけで、さまざまな生物の器官発生で働いていると考えられます。本研究成果が発生学・形態形成学の理解をさらに深めるとともに、将来的には応用として人工的に培養した組織の形を制御する技術の発展にもつながることを期待しています。(細田 和孝)

動物の体や臓器の形と関連する遺伝子は多数知られていますが、複雑な3次元構造がどのように形づくられるか、その物理的な仕組みについてはほとんど明らかになっていません。今回の研究では、下顎という顔形成過程における初期の重要なイベントの一つに着目して解析を行いましたが、同様の解析を頭部全体に広げて行うことで、最も複雑な構造の一つである顔全体がどのように出来上がるのか、その仕組みやルールを解明していけたらと考えています。形態形成の実体である細胞の運動や組織の変形、さらにそれらを駆動する要因についての定量的な理解は、いまだ極めて限定的であり、情報が不十分ということは人工知能(AI)にとっても十分な学習ができず、答えを教えてくれないことを意味します。ここで行ったような基礎的知見の蓄積は、形態形成の原理解明だけでなく、AIを援用したサイエンスの発展にも重要だと考えています。(森下 喜弘)

報道担当

理化学研究所 広報部 報道担当
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