【夫婦の出産意識調査 2023】『2人目の壁』さらに高く。過去10年で最高の78.6%に~2人目以降の出産を躊躇する『2人目の壁』を感じる人の割合が過去10年間で最高値、かつ2年連続上昇~
公益財団法人 1more Baby応援団2人目の出産を躊躇する理由、経済的な理由がトップ。物価高も影響/日本は子どもを「育てやすい国」に近づいていないと感じる人が75.8%
Topics1.『2人目の壁』さらに高く。過去10年で最高の78.6%に
2人目以降の出産を躊躇する『2人目の壁』を感じる人の割合が過去10年間で最高値、かつ2年連続上昇
Topics2.2人目の出産を躊躇する理由、経済的な理由がトップ。物価高も影響
『2人目の壁』解消のために求められているのは、「出産・育児費用」や「教育関連費用」の経済的なサポート
Topics3.日本は子どもを「育てやすい国」に近づいていないと感じる人が75.8%
女性に偏った子育ての負担や、児童手当など子育て支援制度に対する不安などが主な要因に
Topics4.「『小1の壁』が存在すると思う」、約7割と高い結果に
子どもが保育園・幼稚園時よりも仕事と育児の両立が難しくなる『小1の壁』、71.5%の人が存在すると思うと回答
公益財団法人1more Baby応援団(所在地:東京都港区、理事長:吉村泰典)は、日本から少子化問題をなくしたいという思いの下、2013年から「夫婦の出産意識調査」を実施しています。今回は、出産意識と経済環境に注目するとともに、子育てに関する『2人目の壁※』と『小1の壁』という二つの壁についても実態調査を行いました。
調査は全国の既婚男女2,961人(「子どもがいない」「子どもが1人」「子どもが2人以上」)を対象に行いました。
※『2人目の壁』とは、生活費や教育費などの家計、仕事環境、年齢などさまざまな理由から、2人目以降の出産をためらうことを指します。
『2人目の壁』の存在、過去10年で最高に(2p)
●全体の78.6%が『2人目の壁』が存在すると回答。過去10年で最高値、21年から2年連続で上昇。
『2人目の壁』の対応策、求められているのは経済的なサポート(2-4p)
●『2人目の壁』を感じる理由のトップは、主に教育関連費などの「経済的な理由」(76.8%)。
●『2人目の壁』の解消に求めるのは、目前の「出産・育児費の経済的サポート」、次いで将来の「教育費の経済的なサポート」。
●『2人目の壁』を感じた具体的なきっかけのトップは、「物価上昇や増税で家計の圧迫を感じる時」(51.2%)、2位は「1人目の育児が大変だと感じる時」(45.8%)。
●『2人目の壁』を感じた子育て中の人で、「物価高により子育て費用に不安を感じている」は85.5%と高い割合に。
子どもを「育てやすい国」に近づいていないと感じる人が過去最高(5-6p)
●子どもを育てやすい国に「近づいていない」75.8%、歴代ワースト1位の結果に。
●女性が「近づいていない」と感じる理由1位、「女性に子育ての負担が偏ったままだから」、2位「児童手当など子育て支援 制度が続くか不安だから」。 l求められている働き方改革、「勤務日数の多様化」「育児支援制度が利用しやすい職場の雰囲気」「従業員全体の昇給・ベースアップ」。
●子育て中の女性が非正規雇用を選択した理由、業務内容や収入よりも「家事・育児と両立しやすいから」(71.5%)
仕事との両立に課題、有職女性「『小1の壁』が存在する」79.2%と高い結果に(7p)
●全体では、71.5%の人が「『小1の壁』が存在する」と回答。
●全体の64.8%が「『小1の壁』が新たに子どもを持つにあたり不安材料になる」と回答。
●有職女性(正規雇用・経営者・役員)の『小1の壁』、長期休暇中の育児やPTAなどの学校行事と仕事の両立が不安に。
本調査結果を受けて
本調査は、今年で11年目を迎えました。年間の出生数は、調査を開始した2013年と2021年を比較すると、20万人以上減少しました。この間、育児休業給付金の支給額の引き上げや幼保無償化など、様々な対策が行われ、そして現在、政府は「次元の異なる少子化対策」を検討しています。このような状況の中で行われた今年の本調査の結果では、『2人目の壁』を感じる人の割合は過去10年で最高となり、「日本は子どもを育てやすい国に近づいていない」と回答した人の割合は過去最高(2017年から設問)となりました。残念ながら、欲しい数だけ子どもを産み育てられる社会には、遠く及んでいないことが分かりました。
今回の調査結果で特筆すべき点は、物価高などの影響によって、多くの子育て世代がより大きな経済的不安を抱えているということです。不安の大きな要素は大学や高校など将来の教育費であるものの、日々の食費への不安も高く、経済的な支援を希望する対象については、目の前の出産・育児費がトップという結果となりました。幼保無償化などによって子育て家庭の負担は一部軽減されていますが、社会環境は大きく変化しており、出産意識の改善には早急な追加支援が求められています。
また、多くの子育て世代が児童手当などの子育て支援制度の継続性に不安を感じており、現行制度が将来、自分が受けられる制度であるのか疑問を感じていることも分かりました。
「日本は子どもを育てやすい国に近づいていない」理由として女性が回答した割合のトップは、女性に偏った育児の負担でした。女性の就業率が7割を超えた現在も、女性に偏った育児負担は大きく変わっておらず、ほとんどの家事・育児を一人でこなしながら、仕事に従事している状況が想像されます。
また、非正規雇用の女性が現在の働き方を選択した理由については、業務内容や収入よりも、子育てと仕事の両立のしやすさを優先していることが分かりました。子育てによって女性だけがキャリアや収入を諦めるのではなく、男女ともに仕事と子育てを両立できる柔軟な制度や風土が必要です。
欲しい数だけ子どもを産み育てられる社会を実現するためには、全ての子育て世代に対する長期的且つ継続性のある経済的な支援と、女性の育児負担の軽減が求められています。経済的な支援については、支援制度の確立とともに、子育てに関する将来的な費用が見える情報発信を積極的に行い、子育て世代の「安心」につなげていくことが必要です。また、女性の育児負担の解消については、一人ひとりが感じる『2人目の壁』の要因が複数且つ多様である点を踏まえ、男性の家事・育児参加はもちろんのこと、 利用制限のない子どもの一時預かりなど、より柔軟性のある支援なども必要です。
これらを実現することによって、幸せな子育て家庭を見ることによって次の世代が子どもを欲しいと思える社会の循環につながっていくのではないかと考えます。
(専務理事 秋山 開)
「夫婦の出産意識調査2023」調査概要
■実施期間:
事前調査 2023年4月4日(火)~4月13日(木)、本調査 2023年4月8日(土)~4月13日(木)
■調査手法:インターネット調査
■調査対象:全国、女性20~39歳、男性20~49歳の既婚者(※1)(男性は妻が39歳以下かつ結婚14年以下の既婚者) 合計2,961人
各都道府県ごとに、1.既婚で子どもなし 2.既婚で子ども1人 3.既婚で子ども2人以上 の3分類を均等回収(各21人×47都道府県=987人)した上で、対象年齢の全既婚者における各都道府県の構成比、および既婚者の子どもの人数の構成比を令和2年国勢調査より算出し、男性の条件も加味しウエイトバックをかけています。
その結果、1.既婚で子どもなし815人 2.既婚で子ども1人993人 3.既婚で子ども2人以上1,152人 となっています。
■調査主体:公益財団法人1more Baby応援団
■調査協力:国立社会保障・人口問題研究所 研究員 中村真理子
■調査委託先:株式会社電通マクロミルインサイト
※1:調査対象の既婚者は、調査時点で配偶者がいる人のことを指し、既婚でも「死別」「離別」などで配偶者がいない人は含みません。
調査データの構成比(%)は小数第2位以下を四捨五入しているため、合計が100%にならない場合があります。また、人数の合算が合計と合わない場合があります。
Topics1.2人目以降の出産意識、改善せず
『2人目の壁』を感じる人、過去10年で最高の78.6%に
■2人目以降の出産をためらう『2人目の壁』
全体の78.6%が『2人目の壁が存在する』と回答 過去10年で最高値
2人目以降の出産を躊躇する『2人目の壁』が存在すると回答した人の割合が78.6%となりました。この割合は2021年から2年連続で上昇し、過去10年間で最も高い結果となりました[グラフ1]。『2人目の壁』が、欲しい数だけ子どもを持つことのハードルとなっていることが推察されます。
Topics2.現在から将来にわたり、長期的に抱える不安
2人目の出産、経済的な壁が依然高く 物価高も大きく影響
■『2人目の壁』を感じる理由のトップは「経済的な理由」
『2人目の壁』が存在すると回答した2,326人に対してその理由を聞くと、「経済的な理由」(76.8%)が最も多くなっています。2位以降は「ゆとりのある時間、自由な時間が取りにくくなる」(45.3%)、「第一子の子育てで手いっぱいのとき」(45.2%)など、ほぼ同じ割合で複数の「理由」が挙げられており、『2人目の壁』にはさまざまな要因が影響していることが分かります[グラフ2]。
■負担に感じる費用は、教育費関連。日々の食費も負担に
また、 経済的な理由と答えた1,787人にどのような費用が負担に感じるかと聞くと、1位が「大学の教育費」(63.9%)、2位が「高校の教育費」(58.0%)、3位が「食材・食品費」となっており、将来の教育関連の費用に加え、日々の食費について負担を感じている人の割合が高いことが分かりました[グラフ3]。
■『2人目の壁』の解消に求めるのは、
目前の「出産・育児費の経済的サポート」、次いで将来の「教育費の経済的なサポート」
グラフ1で『2人目の壁』が存在すると答えた2,326人に、どうすれば『2人目の壁』が解消するか聞きました。すると、最も多くの人が回答したのが「出産・育児費用における経済的なサポート」(73.9%)、次いで「教育関連費用における経済的なサポート」(60.0%)の順となりました[グラフ4]。
「負担に感じる経済的な費用」 [グラフ3]では「大学の教育費」がトップでしたが、『2人目の壁』を解消するためには、まずは出産や育児に関する目前の費用、次いで将来的な教育費のサポートが強く望まれているようです。
■『2人目の壁』を感じた具体的なきっかけ
1位「物価上昇や増税で家計の圧迫を感じる時」、2位「1人目の育児が大変だと感じる時」
また[グラフ1]で『2人目の壁』が存在すると答えた人のうち、現在子どもがいる1,648人に、『2人目の壁』を感じたきっかけを聞きました。すると、「物価上昇や増税で家計の圧迫を感じる時」(51.2%)が最も高く、次いで、「1人目の育児が大変だと感じる時」(45.8%)が挙げられました。また、3位には「身体的な疲労や、体力の衰えを感じる時」(45.0%)が挙がり、この背景には晩産化や仕事と子育ての両立、孤独な子育てなど、多くの社会課題が影響することが推測されます[グラフ5]。
■「『2人目の壁』を感じた」子育て中の人の85.5%は、物価高により子育て費用に不安を感じている
また、物価高により子育て費用に不安を感じるかと聞くと、「『2人目の壁』を感じた」子育て中の人では85.5%が不安を感じると回答しており、物価上昇は出産意識や子育てに大きな影響を与えているようです[グラフ6]。また、子育て支援に関する所得制限について聞いたところ、現在子育て中の人の70.3%が「制限も設けるべきでない」と回答しており、現在子育て中の多くの方が、子育て家庭に向けた平等な支援を求めていることが分かりました。
Topics3.追いついていない子育て支援
日本は子どもを「育てやすい国」に近づいていないと感じる人が75.8%
■子どもを育てやすい国に「近づいていない」75.8% 歴代ワースト1位の結果に
全ての調査対象者に日本は子どもを「産みやすい」「育てやすい」国に近づいているか聞きました。すると、「近づいている」と回答した人はどちらも2割台しかおらず、75.1%は産みやすい国に「近づいていない」、75.8%は育てやすい国に「近づいていない」と回答しています。2017年からの調査結果と比較すると、産みやすい国と答えた人は歴代ワースト2位、育てやすい国と答えた人は歴代ワースト1位でした[グラフ7]。
■女性が子どもを産み・育てやすい国に「近づいていない」と感じる理由1位、「女性に子育ての負担が偏ったままだから」、2位「児童手当など子育て支援制度が続くか不安だから」
上記で子どもを産みやすい・育てやすい国に「近づいていない」と答えた男性600人、女性1,849人に、「近づいていないと思う理由」を挙げてもらいました。その結果を男女別で見ると、男性は「児童手当の金額が十分でない」(48.9%)がトップですが、女性は「女性に子育ての負担が偏ったままだから」(61.0%)を挙げた人が最も多く、次いで「児童手当など子育て支援制度が続くか不安だから」(58.0%)となっています[グラフ8]。日本が子どもを産み・育てやすい国となるために必要なのは、出産・育児にまつわるさまざまなジェンダーギャップの改善や、子育て世代が長期的に安心できる子育て支援策であると推察されます。
■求められている働き方改革は「勤務日数の多様化」「育児支援制度が利用しやすい職場の雰囲気」「従業員全体の昇給・ベースアップ」
では、子どもを持ち育てる上でどんな制度や働き方を望むか全ての調査対象者に聞きました。すると、週休3日制など「勤務日数の多様化」(42.3%)、「育児支援制度が利用しやすい職場の雰囲気」(37.8%)、「従業員全体の昇給・ベースアップ」(37.1%)が上位に挙げられました[グラフ9]。仕事と育児を両立させるためには、より柔軟性のある職場の制度に加え、制度を利用しやすい職場の雰囲気が求められています。
■子育て中の女性が非正規雇用を選択した理由、業務内容や収入よりも「家事・育児と両立しやすいから」71.5%
現在、非正規雇用で働いている子育て中の女性に現在の働き方を選んだ理由について聞きました。その結果、「家事・育児と両立しやすいから」(71.5%)がトップとなり、「自分の都度の良い時間に働けるから」(32.0%)、「子どもの成長に合わせて仕事を変えられるから」(25.1%)と続きました。一方、「希望の業務内容だったから」(13.1%)、「希望する収入を得られるから」(3.5%)と回答した人の割合は低く、非正規雇用で働いている多くの女性が、希望する業務内容や収入よりも、育児との両立を実現させること優先させていることが分かりました[グラフ10]。
Topics4.多くの有職女性が抱える不安
「『小1の壁』が存在すると思う」、約7割と高い結果に
■71.5%が直面すると予想する『小1の壁』 、有職女性※では79.2%とさらに高く
■全体の64.8%が「『小1の壁』が新たに子どもを持つにあたり不安材料になる」
※有職女性:ここでは正規雇用・経営者・役員の方を指しています
子どもが小学校に上がった際、保育園や幼稚園に通っていた時よりも仕事と育児の両立がしにくくなることが『小1の壁』と呼ばれ、社会問題となっています。そこで、全ての調査対象者に自身の家庭には『小1の壁』が存在するか、子どもがいない人には将来発生すると思うか回答してもらいました。すると、71.5%が「『小1の壁』が存在する」と回答しました。自身が正規雇用・経営者・役員などの有職女性では、79.2%とさらに高くなっています[グラフ11]。また、『小1の壁』が子どもを持つにあたり不安材料になるかと聞くと、64.8%が「不安材料になる」と回答し、有職女性では72.5%と不安度がさらに高くなっています[グラフ12]。
■有職女性の『小1の壁』、長期休暇の育児やPTAなどの学校行事と仕事の両立が不安
次に、小学生以上の子どもを持つ595人に、子どもの小学校入学により苦労したり不安に感じたことを聞きました。すると、 「子の勉強のサポート」(41.6%)、「夏休みなどの長期休暇中の育児」(40.9%)、「PTA・保護者会など学校活動と仕事や家事育児との両立」(37.5%)、「子の交友関係の広がりやトラブル」(33.9%)などが挙げられました。有職女性は、苦労したスコアがいずれも高く、「PTA・保護者会など学校活動と仕事・家事育児との両立」は56.5%が苦労したと回答しています[グラフ13]。『小1の壁』には、様々な不安があり、解決すべき課題があることが分かりました。
調査主体「公益財団法人1more Baby応援団」について
公益財団法人1more Baby応援団
理想の数だけ子どもを産み育てられる社会を実現するため、結婚・妊娠・出産・子育て支援に関する情報提供およびその実現に必要な事業を行い、将来の活力ある社会環境の維持・発展のために寄与することを目的に活動。
「1more Baby応援団」ポータルサイトと公式Facebook ページでは、出産に関するママ・パパの意識を把握するための調査結果や、「もうひとり、こどもが欲しい」という家族の想いを応援する情報を発信しています。
設立日:2015年1月15日(2017年10月公益財団化)
所在地:東京都港区高輪3丁目22番9号
電話:03-6840-8836
理事長:吉村 泰典
<活動内容・実績>
●定点調査「夫婦の出産意識調査」の実施と発表
全国の子育て世代約3,000人に対し、「2人目の壁」をはじめとする出産・子育てへの意識調査を毎年4月に実施し、発表している。
●2人目の不妊治療を応援するサイト「2人目不妊ウェルカム病院」公開(2020年5月)
●ユネスコ「国際セクシャリティガイダンス」に基づいた妊娠・出産に関する知識啓発サイト「SEXOLOGY」公開(2020年5月)
同サイトがキッズデザイン賞「子どもたちの創造性と未来を拓くデザイン」部門、賞審査員長特別賞を受賞(2021年9月)
他、妊娠や出産、子育てや働き方に関するシンポジウムやセミナー、交流会を多数開催。
●「20代の結婚と出産に関する意識調査」の実施(2022年5月)
<出版物>
●18時に帰る~「世界一子どもが幸せな国」オランダの家族から学ぶ幸せになる働き方~
●なぜあの家族は二人目の壁を乗り越えられたのか? ママ・パパ 1045 人に聞いた本当のコト
「1more Baby応援団」 ポータルサイト http://1morebaby.jp
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提供元:PRTIMES