2024/07/05

新しく定義された「中堅企業」は全国7,749社、国内全売上高の16% 約6割が億単位の設備投資進める

株式会社 帝国データバンク 

「中堅企業」の実態分析




新たな事業の創出及び産業への投資促進を目的とした「改正産業競争力強化法」が、2024年5月31日、参議院本会議で可決・成立した。アフターコロナで日本経済が回復局面を迎えている中、課題として浮かび上がってきたのが労働生産性の問題や賃金格差。これらの課題解決のため、産業構造の変革と新陳代謝を促す目的で、中堅企業・スタートアップへの集中支援等の措置を講じることを決めた。

従業員2,000人以下で同法上の中小企業に該当しない企業を、新たに「中堅企業」と定義。経済産業省は2024年を「中堅企業元年」と位置づけ、ポテンシャルを秘め成長意欲を持つこれらの企業に対して、大型設備投資やM&Aによる事業拡大を税制面でサポートし、雇用増や賃上げといった地域経済の牽引役としての貢献に期待を寄せる。

そこで、帝国データバンクでは、企業概要ファイルCOSMOS2(147万社収録)から、改正産業競争力強化法の定義に基づく「中堅企業」を抽出し、実態を分析した。

<調査結果(要旨)>



- 地域経済の牽引役としての中堅企業:「大阪府」では中堅企業の売上高が域内の22%占める
- 中堅企業の推移:2019年からの5年で820社減少、コロナ禍での「減資」が影響
- 中堅企業の成長意向(設備投資):8割が2024年度中の設備投資へ
- 中堅企業の成長意向(賃上げ):2023年度は8割が賃上げ実施、2024年度は「様子見」か

※中堅企業の定義:本調査では、「産業競争力強化法」に基づく「中小企業」に該当しない、従業員数(正社員数)が2,000人以下の企業を「中堅企業」と定義。該当する「会社」(株式会社、有限会社、合同会社、合資会社、合名会社)を抽出した(データは2024年5月時点)



地域経済の牽引役としての中堅企業 ~「大阪府」では中堅企業の売上高が域内の22%占める
2024年5月時点で「中堅企業」に該当する企業は、7,749社。国内企業全体(※)に対する該当率は0.53%であり、概ね200社に1社程度が「中堅企業」に該当する。なお、「大企業」の該当率は0.06%、「中小・その他法人」は99.41%。

また、「中堅企業」7,749社の総売上高(2023年以降の最新期売上高)は324兆6,809億円であり、これは国内全企業の総売上高の15.68%(本稿では「市場占有率」と表記)を占める。大企業の市場占有率21.60%に迫る規模で、国内経済に中堅企業がもたらす影響は大きい。

都道府県別に見ると、中堅企業が最も多いのは「東京都」の3,729社で、全国の中堅企業の約半数が所在する。都内企業に対する該当率は1.90%、50社に1社が中堅企業となっている。次いで、「大阪府」の773社(該当率0.72%)、「愛知県」の432社(同0.58%)と、大都市圏が続く。市場占有率で見ると、最も高いのは「大阪府」の22.90%で、大企業の市場占有率(21.42%)を上回っており、中堅企業の存在感が極めて大きい地域と言える。続いて高いのは「山口県」の17.54%。同県には大企業が存在せず、中堅企業が地域牽引の主役となっていることが分かる。





中堅企業の推移 ~2019年からの5年で820社減少、コロナ禍での「減資」が影響
過去データを元に、2014年以降5年毎の中堅企業数の変動について分析すると、2014年時点では8,623社が該当。その5年後となる2019年時点では、54社減少して8,569社とほぼ横ばいで推移した。総数に大きな変動はなかったものの、5年間で新たに該当した企業(表上「In」と表記)もあれば、条件に該当しなくなった企業(同「Out」)もある。2014年から2019年にかけては、1,578社が新たに中堅企業に該当し、1,632社が該当しなくなった。新たに該当した理由で最も多いのは「従業員増」で、全体の約半数。該当しなくなった理由では、「減資」や「従業員減」が多いが、「中堅企業から大企業へ」成長した企業も140社ある。

2019年から2024年の5年間では、新たに中堅企業に該当した企業1,367社に対し、該当しなくなった企業が2,187社と、総数では820社の大幅減少となった。該当しなくなった理由で最も多かったのは「減資」の973社で、2014年-2019年(364社)の約2.7倍に増加している。これは、2020年春に発生したコロナ禍での急速な経済収縮に伴い、資本の取り崩しや税制優遇のある中小企業となることを選択した企業が多かったものと推察される。

一方で、「中堅企業から大企業へ」成長した企業も127社あり、コロナ禍にあっても中堅企業の成長ポテンシャルが発揮された例と言えよう。2014年以降の傾向を見ると、5年間で概ね1,500社前後が入れ替わっており、一定の新陳代謝が発生している。





中堅企業の成長意向(設備投資) ~8割が2024年度中の設備投資へ
帝国データバンクが2024年5月に発表した「2024年度の設備投資に関する企業の意識調査」をもとに、中堅企業の設備投資動向を分析した。

中堅企業のうち、2024年度に設備投資を「実施」「予定」「検討」している企業は79.3%にのぼり、全企業の58.8%を大きく上回った。投資内容では、全企業と比べ「省力化・合理化」「IT化」「DX」の項目が目立つほか、「研究開発」への投資も活発であるという特徴が見られた。

設備投資額では「1億円以上10億円未満」が構成比36.7%と最も多く、「10億円以上」の19.3%と合わせ、設備投資に動いている中堅企業の約6割が億単位の投資を進めている。全企業に比べて投資規模が大きいことが分かった。これらに対する資金調達方法では、全企業に比べ「金融機関からの長期借入」の割合が低く、「親会社やグループ会社からの借り入れ」の割合が高い。中堅企業は、グループなどから安定した資金供給が得られる体制であることも判明した。





中堅企業の成長意向(賃上げ) ~2023年度は8割が賃上げ実施、2024年度は「様子見」か
国データバンクが2024年2月に発表した「2024年度の賃金動向に関する企業の意識調査」をもとに、中堅企業の設備投資動向を分析した。

中堅企業のうち、2023年度に賃上げが「あった」と回答した企業は81.1%となり、全企業の74.4%を上回った。2024年度の実施予定については、「ある」が55.1%と全企業を若干下回ったが、「分からない」と回答した企業が38.0%と大きく、「ない」と明確に回答した企業は6.9%と全企業(13.9%)よりも低い。2024年度内の賃上げについては、「様子見」の傾向が見られた。

賃上げ理由としては、全企業に比べて「同業他社の賃金動向」を挙げている企業が多い(中堅企業44.0%、全企業25.3%)傾向が見られた。今年度の賃上げが様子見傾向にある背景とも言えよう。また、「採用力の強化」(中堅企業56.0%、全企業35.8%)も全企業に比べて多く、人材面への成長投資意向が強い傾向も見られた。




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提供元:PRTIMES

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