2024/07/05

2024年上半期の倒産4887件、2014年以降で最多 負債額が小規模な企業の倒産が目立つ― 全国企業倒産集計2024年上半期報

株式会社 帝国データバンク 

負債総額は6810億1500万円、2年連続で前年同期を下回る

帝国データバンクは、2024年上半期の企業倒産件数(負債1000万円以上の法的整理が対象)について集計し、分析を行った。




<概況>
- 2024年上半期の倒産件数は4887件(前年同期4006件、22.0%増)と、前年同期に比べて881件多く、2年連続で前年同期を上回った。2014年上半期(4756件)以降で最多となった
- 負債総額は6810億1500万円(前年同期9065億8400万円、24.9%減)と、2年連続で前年同期を下回った。負債額が小規模な中小零細企業の倒産が目立った







<主要ポイント>
- 業種別にみると、全7業種中6業種で前年同期を上回った。『サービス業』(前年同期958件→1228件、28.2%増)は15年ぶりに1200件を超えた。『小売業』(同834件→1029件、23.4%増)
- 「飲食店」(同378件→435件)が2000年以降で最多となった
- 主因別にみると、『不況型倒産』の合計が4029件で、全体の8割を占めた。「経営者の病気、死亡」は、2000年以降で最多となった
- 態様別にみると、「破産」は4595件発生し、2015年以来9年ぶりの4000件超となった
- 規模別にみると、負債「5000万円未満」の倒産が2898件で、小規模な倒産増加が目立った
- 業歴別にみると、「30年以上」が1564件で全体の32.0%を占めた。業歴100年以上の老舗企業の倒産が74件発生し、2000年以降で最多となった
- 地域別にみると、上半期としては2年連続で全9地域が前年を上回った。このうち、『北海道』『中部』『四国』を除く6地域で、上半期としては過去10年で最多となった。『関東』(前年同期1433件→1732件、20.9%増)は、10年ぶりに1700件台となった

集計期間:2024年1月1日~2024年6月30日
発表日:2024年7月5日
集計対象:負債1000万円以上法的整理による倒産
集計機関:株式会社帝国データバンク
※調査結果は下記ホームページでも掲載している
https://www.tdb.co.jp/tosan/syukei/index.html
■ 業種別 全7業種中6業種で前年同期を上回る 「医療」「飲食店」は過去最多
業種別にみると、全7業種中6業種で前年同期を上回った。『サービス業』(前年同期958件→1228件、28.2%増)が最も多く、『小売業』(同834件→1029件、23.4%増)、『建設業』(同795件→917件、15.3%増)が続いた。『サービス業』は上半期としては2009年(1234件)以来15年ぶりに1200件を超え、過去2番目の水準となった。

業種を細かくみると、『サービス業』では、「医療業」(前年同期64件→100件)が2000年以降で初の100件超となった。『小売業』では、「飲食店」(同378件→435件)が2000年以降で最多の400件台に達した。資材価格の高騰や人手不足の影響を受けた『建設業』は、上半期としては3年連続で前年を上回り、特に「職別工事」(同353件→418件)と「総合工事」(同244件→307件)の増加が目立った。





■ 倒産主因別 『不況型倒産』は4029件 「経営者の病気、死亡」は2000年以降で最多
主因別にみると、「販売不振」が3951件(前年同期3130件、26.2%増)で最も多く、全体の80.8%を占めた。「売掛金回収難」(同22件→33件、50.0%増)などを含めた『不況型倒産』の合計は4029件(同3197件、26.0%増)と、上半期としては3年連続で前年を上回り、2013年(4336件)以来11年ぶりに4000件を超えた。

「経営者の病気、死亡」(前年同期132件→164件、24.2%増)は、2000年以降で最多を更新した。このほか、「設備投資の失敗」(同12件→26件、116.7%増)は2000年以降で最少だった前年同期からの反動もあり倍増となった。
※倒産主因のうち、販売不振、輸出不振、売掛金回収難、不良債権の累積、業界不振を『不況型倒産』として集計





■ 倒産態様別 「破産」は4595件、2015年以来9年ぶりの4000件超
倒産態様別にみると、『清算型』倒産の合計は4758件(前年同期3884件、22.5%増)となり、全体の97.3%を占めた。『再生型』倒産は129件(同122件、5.7%増)発生し、上半期としては2年連続で前年を上回った。

『清算型』では、「破産」が4595件(前年同期3758件、22.3%増)で最も多く、上半期としては2015年(4095件)以来9年ぶりに4000件を超えた。「特別清算」は163件(同126件、29.4%増)と、3年ぶりに前年同期を上回った。

『再生型』では、「民事再生法」が129件(前年同期121件、6.6%増)発生した。このうち、個人事業主が84件、法人が45件となった。





■ 規模別 負債「5000万円未満」が全体の59.3%を占める
負債額規模別にみると、「5000万円未満」の倒産が2898件(前年同期2307件、25.6%増)で最も多く、全体の59.3%を占めた。次いで、「1億円以上5億円未満」は1009件(同823件、22.6%増)発生し、上半期としては2014年(1102件)以来10年ぶりに1000件を超えた。

資本金規模別では、『個人+1000万円未満』の倒産が3464件(前年同期2720件、27.4%増)発生し、全体の70.9%を占めた。





■ 業歴別 業歴100年以上の老舗企業が74件、2000年以降で最多
業歴別にみると、「30年以上」が1564件(前年同期1331件、17.5%増)で最も多く、全体の32.0%を占めた。このうち、老舗企業(業歴100年以上)の倒産は74件(同38件)発生し、2000年以降で最多となった。

業歴10年未満の『新興企業』[「3年未満」(前年同期193件→190件、1.6%減)、「5年未満」(同267件→363件、36.0%増)、「10年未満」(同694件→966件、39.2%増)]は1519件(前年同期1154件、31.6%増)と、上半期としては3年連続で前年を上回った。内訳を業種別にみると、「サービス業」(同343件→477件)が最多、「小売業」(同291件→388件)、「建設業」(同235件→285件)が続いた。





■ 地域別 業歴100年以上の老舗企業が74件、2000年以降で最多
地域別にみると、上半期としては2年連続で全9地域が前年を上回った。このうち、『北海道』『中部』『四国』を除く6地域で上半期としては過去10年で最多となった。『関東』(前年同期1433件→1732件、20.9%増)は、10年ぶりに1700件台となり、特に「東京」(同713件→908件)が全体の件数を押し上げた。『東北』(同212件→291件、37.3%増)は、東日本大震災直後の2011年(246件)を超え、3年連続で前年同期を上回った。

このほか、『中国』(前年同期172件→238件、38.4%増)は、2011年(238件)以来13年ぶりに多い水準となった。『九州』(同340件→415件、22.1%増)は、「福岡」(同179件→241件)の増加もあり、上半期としては2009年(515件)以来15年ぶりの高水準。





注目の倒産動向
ゼロゼロ(コロナ)融資後倒産 2024年上半期は390件発生 年半期ベースで過去最多
「ゼロゼロ(コロナ)融資後倒産」は、390件(前年同期305件、27.9%増)発生、年半期ベースで過去最多を更新した。2020年以降に実際の融資額が判明した約490社のゼロゼロ融資借入額の平均は約5800万円となり、「不良債権(焦げ付き)」に相当するゼロゼロ融資喪失総額は推計で約940億1100万円にのぼった。





後継者難倒産 2024年上半期は268件発生 前年同期から減少も高水準で推移
「後継者難倒産」は、268件(前年同期272件、1.5%減)発生した。上半期としては3年ぶりに前年同期を下回ったものの、250件を超え高水準で推移している。業種別では、『建設業』(56件)が最多で、『サービス業』(44件)、『卸売業』(43件)、『小売業』(43件)が続いた。





物価高(インフレ)倒産 2024年上半期は484件発生 450件を超え、過去最多を大幅に更新
物価高(インフレ)倒産は、484件(前年同期375件、29.1%増)発生した。年半期で初めて450件を超え、過去最多を大幅に更新した。このペースで推移した場合、2024年通年の件数は900件を超える可能性がある。業種別では、『建設業』(124件)が最も多く、『製造業』(109件)、『運輸・通信業』(91件)が続いた。


今後の見通し
2024年の企業倒産は1万件突破も視野に
2024年上半期の企業倒産は4887件に急増し、前年同期(4006件)を22.0%上回った。物価高、人手不足、コロナ支援策の縮小を受け、上半期としては2014年(4756件)以来10年ぶりの水準まで増加した。急速な円安進行、力強さを欠く個人消費など、下半期も中小企業を取り巻く経営環境は厳しく、2024年の企業倒産は1万件突破も視野に増加基調が続く見通しである。
 粉飾決算で金融機関から融資金を詐取したとして、ベアリング販売の堀正工業(2023年7月破産、負債282億6600万円)元代表らが6月18日に逮捕された。40超の金融機関が虚偽の決算書でだまされ、過去に類を見ない“世紀の大粉飾”となった。その後に相次いだ「粉飾倒産」の端緒ともなったが、破産からわずか1年あまりでのスピード立件となりそうだ。事件後、金融機関は融資先の粉飾可能性をこれまで以上に厳しく精査するようになり、今なお粉飾事案の発覚が続いている。今年下半期にかけても、こうした動きはしばらく続くに違いない。
ゼロゼロ融資の返済が困難な企業は選別へ
政府は6月7日に「今後の中小企業向け資金繰り支援について」を公表し、金融機関に対してコロナ資金繰り支援策の転換を踏まえた事業者支援の徹底等を要請した。具体的には、新型コロナに焦点を当てた支援策は6月末で終了する一方で、今なおコロナ禍の影響に苦しむ事業者の再生支援を強化する。また、円安等に伴う資材費等の価格高騰対策として実施中の「セーフティネット貸付」は12月末まで継続する。一部の制度を除き、コロナ禍前の平時に戻される形となり、ゼロゼロ融資の返済が難しい企業の選別がどこまで進むのか注視したい。
“私的整理の多数決導入”に向けた議論が再び動き出した。これまでにも、政府は多数決原理に基づく倒産前手続(=私的整理手続)を可能とする法制化を検討してきたが、意見がまとまらず今日に至った経緯がある。経済産業省は6月28日、制度を議論するための新たな有識者会議となる「事業再構築小委員会」を立ち上げ、初回会合を開いた。2025年にも国会での議論に進む可能性がある今回の法制は、債務減免が必須な再生案件の増加が見込まれるなかで、中堅・中小企業の早期かつ迅速な事業再構築の動きを後押しすることになりそうだ。

円安、利上げ、2024年下半期も小規模事業者の淘汰進む
円安の動きが止まらない。7月3日の外国為替市場で一時1ドル=161円90銭台まで下落し、1986年12月以来37年半ぶりの円安ドル高水準となった。財務省は「急速な円安進行に深刻な懸念を有している」との認識を示しているが、日米金利差を意識した円売り・ドル買いの動きは当面続くとみられる。帝国データバンクの調査では、企業の想定為替レートは平均1ドル=140円88銭と、実勢レートとの間で20円近くの隔たりがある。企業側の想定を上回るスピードで進む円安が事業遂行面に影響を与えるほか、輸入物価の上昇を通じて企業収益がさらに悪化しかねない。

追加利上げがいよいよ現実味を帯びつつある。日本銀行が6月24日に公表した6月の金融政策決定会合の「主な意見」では、一部の政策委員が「円安は物価見通しの上振れの可能性を高める要因であり、(中略)適切な政策金利の水準は、その分だけ上がると考えるべき」と述べるなど、物価や賃上げの動向を踏まえて早期の追加利上げに前向きな意見が出された。企業向け貸出金利は足元ではすでに上昇に転じているが、これからが本番だ。今後は金利負担に耐えられない小規模事業者の倒産が、2024年下半期にかけてさらに増える可能性が高い。

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提供元:PRTIMES

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