「1on1、その限界と可能性の中心」株式会社Maxwell’s HOIKORO/ HYAKUNENが、近年流行の人事施策「1on1」の効果の実態を明らかにした、調査レポートの前編部分を公開
株式会社 Consulente HYAKUNEN〈HRダダ〉レポート第1号「1on1、その限界と可能性の中心」前編 マネジメント力のない上司に求められる1on1とは?
株式会社Maxell's HOIKORO(マクスウェルズ ホイコーロー、代表:前山匡右、本社:大阪府大阪市西区)は、「本当の人的資本経営を実現する唯一のサーベイアプリケーション」を標榜する「TSUISEE(ツイシー)」を提供するスタートアップ企業です。この度、コンサルティングファームの株式会社Consulente HYAKUNENと共同で行ったオンラインイベント「HRダダ」にて公開した「1on1」の調査内容をレポート化し、その前編部分を公開しました。
「HRダダ」とは何か?レポートを発信する意味について
私たち株式会社Maxwell’s HOIKORO(マクスウェルズ ホイコーロー)、Consulente HYAKUNEN(コンスレンテ ヒャクネン)は、人と組織のデータ解析を行い、あらゆる企業のコンサルティングを行ってきました。
実際に、人と組織を変革していく現場で格闘し、その現場から多くの知見を得て、今日も活動を続けています。
これを読む多くの人は、過去に一度でも、ご自身の組織の状態をより良くしなければと、「人と組織に介入したい」、「組織を変革したい」と思われたことがあるのではないでしょうか。
一体、何を変えていけばいいのか。
本や最新の人事施策、キーワードを紹介する記事に目を通し、それをヒントにご自身の組織を観察してみたりします。
とはいえ、「組織を変えるために、一体何が必要なのか」はなかなか確信をもっては見えてきません。
ハッキリとは分からないけれど、上手くいっていない違和感は確かにある。そうなってくると「他社もやっているから、とりあえず・・・」と言ったかたちで、施策や打ち手を導入せざるを得ない。
人や組織に無関心な経営層がいるなら、なおさら他社と横並びの施策の方が理解を得やすい。
もしかすると、そんな風にして、1つのキーワードや施策が、HR業界で市民権を得ていくのかもしれません。
最新の「流行している」ように見える施策の導入それ自体が目的になり、そのために仕事をするようなことを繰り返してしまう。
実際、近年は当たり前のようにHR領域で流行が生まれては消える、というサイクルが繰り返されています。
振り返ると、そんな流行に振り回される数年間を過ごしてきた、という担当者の方も決して少なくはないようにお見受けします。
人と組織に対して、真摯に向きあう姿勢が、いつの間にか妙なサイクルに飲み込まれてしまっている。
人や組織のことを真剣に悩む人に対して、ミスリーディングさせるような情報を渡すこと。
こうした態度から距離を置いて、プロという立場から情報発信することに、私たちは年々、大きな意味を感じます。
私たちの主催するイベント<HRダダ>とそのレポートでは、数多くの介入の現場を経験した私たちだから発信可能な、地味で、地道で、正直で、誠実な、知見をお伝えしています。
「1on1」への違和感 【前編】
この度、私たちが発信する第1号のHRダダレポートでは、「1on1」を題材に扱います。
最初に、この題材を取り上げた理由は明白です。
上司が部下と話す、という日常あるべき職場の様子に、「1on1」という特別な名称がつけられ、人事施策として認識されています。
こんな違和感に、私たちが反応しないわけにはいきません。
私たちのクライアントの多くの企業でも実際に行われ、今後導入を検討されている方にもお会いします。
上司と部下、その二者が良好な関係を構築し、話し合うことを通じて、組織がより良い状態に変わっていく。
確かに、関係性が悪い状態よりも、お互いが意識的にフラットな会話を行うと、例えば部下の仕事のモチベーションが上がったり、パフォーマンスが上がったり、成長が促されたり、キャリア形成に役立ったり、エンゲージメントが向上するような、そんな効果を期待できるような気がしてしまいます。
しかし「1on1」にそんな効果はあるのでしょうか?
私たちは「1on1」に期待されている「とにかく部下とコミュニケーションを定期的にとることで、様々な上司・部下、組織内の問題は解決する、緩和される」という前提を疑います。
なんでも放り込んでしまいさえすれば、どうにかなる。
そんなゴミ箱のように扱われる「1on1」の実際の効果はどのようなものなのか?
私たちの調査結果を通じて、レポートでは前編と後編にわたってその実態を明らかにしていきます。
その前編として「マネジメント力のない上司に求められる1on1とは?」を主題に、今回公開するレポートでは次のように議論を進めていきます。
〈HRダダ〉レポート第1号「1on1」【前編】マネジメント力のない上司に求められる1on1とは?
マネジメント力が欠けている上司は、社員のパフォーマンス、エンゲージメント、そして離職率を大きく悪化させます。明確な目標や役割、フィードバックを提供しない上司のもとでは、部下が仕事や会社に対して前向きな気持ちを持ち続けることは、きっと難しいのでしょう。
近年、このようなマネジメント力の不足を補うために、多くの企業が1on1の導入を進めています。
導入企業の担当者の皆さんの多くは、定期的な上司・部下とのコミュニケーションの場を設けることで、日常のマネジメントにおける上司の弱点を補うことを期待されています。
それでは、マネジメント力のない上司は、どのような1on1を行うべきでしょうか。
私たちは、ビジネスパーソン約1,000名を対象に行った調査をもとに、その実際の様子を追いかけました。
〈図1〉 部下のパフォーマンス(縦軸)が高くなっているのは、右側の二本の棒グラフです。上司のマネジメント力が高いと、1on1がパフォーマンスに与える影響に、あまり差はありません。ただ、左側の赤い棒グラフを見ると、1on1が、マネジメント力の不足を補っているように見えます。
まず、図1の右側の2つの棒グラフ(赤色と灰色の棒グラフ)を見てください。これらは、マネジメント力のある上司がオープンな1on1を行った場合(赤色の棒グラフ)と行っていない場合(灰色の棒グラフ)の、部下のパフォーマンスの高さを示しています。この2つの棒グラフの高さがほぼ同じです。この結果から、マネジメント力のある上司にとって、1on1を行うかどうかは、部下のパフォーマンスに影響しないということが分かりました。
逆に、左側の2つの棒グラフ(赤色と灰色の棒グラフ)を見ると、その高さに差があることが見て取れます。このことから、マネジメント力のない上司がオープンな1on1を行わない場合(灰色の棒グラフ)よりも、行った場合(赤色の棒グラフ)の方が部下のパフォーマンスが向上している結果が見えました。
これらの結果をもとにすると、1on1にはマネジメント力の不足を補う効果があると言えます。マネジメント力のない上司は、部下の声や悩みに耳を傾けるオープンな1on1を行うことで、パフォーマンスの低下を防ぐことが出来そうです。これは、管理やマネジメントが苦手な一方で、部下に寄り添うことが得意なタイプの上司にとっては朗報でしょう。1on1の場では、無理に部下の管理を行う必要はなく、気持ちや悩みに寄り添うことにフォーカスすればよいのです。
しかし、ここで疑問が湧きます。というのも、「管理やマネジメントが日常的にも1on1の場にも存在しないのに、どうして部下のパフォーマンスの悪化が抑えられているのか?」という点です。小規模なスタートアップなどの極端なケースを除き、マネジメントがなされていない組織において、部下のパフォーマンスを維持することは容易ではないはずです。この疑問に答えるために、私たちはさらなる解析を行いました。
〈図2〉 部下のパフォーマンス(縦軸)が高くなっているのは、一番右側の赤色の棒グラフです。先輩社員が仕事のアドバイスを十分に行っていると、上司による1on1は、大きな効果を発揮します。
〈図3〉 この図でも、部下のパフォーマンス(縦軸)が高くなっているのは、一番右側の赤色の棒グラフです。先輩社員が成長のサポートを十分に行っていると、上司による1on1は、大きな効果を発揮します。
解析の結果、マネジメント力のない上司であっても、先輩社員がマネジメントを代行するような役割を担っている場合ならば、オープンな1on1はパフォーマンスを高める効果を発揮するという事実が明らかになりました。つまり、先輩社員が後輩社員のマネジメントをしっかりと行っている職場では、上司は部下に寄り添うオープンな1on1を行うことで、パフォーマンスの低下を抑えられるのです。
図2と、図3の2つの図を見てください。どちらのグラフにおいても、左側の2つの棒グラフ(赤色と灰色の棒グラフ)が低い位置にあり、あまり差のない水準です。これは、先輩が仕事に対するアドバイスや成長を促すサポートを後輩に与えていない場合、上司がオープンな1on1を行ってもパフォーマンスが改善しないことを明らかにしています。後輩にアドバイスとサポートを与えている先輩社員がいる場合のみ、上司の質を伴った1on1がパフォーマンスを向上させることができるのです。
以上の結果からわかることは、本当の意味で、上司のマネジメント力の欠如を1on1で補うことはできないという事実です。マネジメント力の不足を補っているのは1on1ではなく、後輩の面倒をしっかり見て、支える先輩社員です。そのような先輩がいる職場では、熱心な先輩のマネジメントに疲弊した部下のガス抜きを、上司がオープンな1on1の場で行うことによって、パフォーマンスの悪化を抑えることに成功しています。
上司の役割は、マネジメント活動を通じて、人を育て、組織全体のパフォーマンスの発揮を促すことです。マネジメント活動がしっかりと出来ていない上司は、この本丸となる役割を担えていません。そのような上司が、1on1を行っても、組織のパフォーマンスの向上には直接的にはつながらない。そのような上司が1on1を行って、組織の状態が改善しているように見えた場合でも、それは1on1自体の持つ力によるものではなく、1on1の「外」にあるプレーヤーである先輩社員との暗黙的な役割分担が機能しているに過ぎないのです。
上司は、結果的に1on1という場で「ガス抜き」をしているに過ぎないのですから。
この部分までの解析では、1on1それ自体には、マネジャーの管理力の不足を補い、補強する力は無い、と言わざるを得ません。それでは、管理力の不足する上司とは逆に、部下の声や気持ちに配慮し職場へ心理的安全を作り出すことが苦手な上司が、部下に対して1on1を行うことには意味があるのでしょうか。どのような1on1をすれば、そのような上司は心理的安全を作り出せないという弱みを、1on1で補うことができるのでしょうか。この調査結果については、次のレポートで議論していきたいと思います。
ハイライト -〈HRダダ〉レポート第1号「1on1」【前編】まとめ
一. マネジメント力がある上司にとって、1on1を行うかどうかは、部下のパフォーマンスに影響しない。
一. マネジメント力のない上司が部下に寄り添うような「オープンな1on1」を行うと、確かに部下のパフォーマンスは向上している。この結果から、「オープンな1on1」はマネジメントを代替する効果があるように見える。ただし、マネジメントなされないのに、どうして部下のパフォーマンスは悪化していないのかについて、検討する必要がある。
一. マネジメント力のない上司の下で、先輩社員がマネジメントを代行している場合のみ、質の伴う「オープンな1on1」が効果を発揮するということが明らかになった。
結論
マネジメント力のない上司が1on1を行うことで、部下のパフォーマンスの悪化を抑えようとするとき、先輩社員等の1on1の「外」にいるプレーヤーの役割が不可欠となる。
そこでは、上司の「オープンな1on1」は、先輩のマネジメントの下で疲弊した部下の「ガス抜き」的に機能しているにすぎない。上司はその点で、謂わばマネジメント機能の大半を部下に依存している状態と言える。1on1施策の導入は、本当の意味でマネジメント機能を補うことには直結しない。
株式会社Maxwell’s HOIKORO
Chief Development Officer
武蔵野大学 経営学部経営学科准教授
宍戸 拓人
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【レポートのダウンロードはこちらから】
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【第二回 「HRダダ」への参加お申込みはこちらから】
https://www.maxwellshoikoro.com/event
【会社概要】
株式会社Maxell's HOIKORO
代表取締役社長 前山匡右
大阪府大阪市西区土佐堀2-1-6 TOSABORI IVY3階
URL(提供アプリケーション) https://tsuisee.com
URL(弊社WEBサイト) https://www.maxwellshoikoro.com
協力 株式会社Consulente HYAKUNEN
URL http://hyakunen.com
提供元:PRTIMES