2024/10/02

体積を従来方式の1000分の1以下に小型化!業界最小(※)のテラヘルツ波発振デバイス・検出デバイスのサンプル提供を開始

ローム 株式会社 

価格も従来方式の10分の1以下。低コストかつ省スペースでのテラヘルツ波アプリケーション開発が可能に


ローム 製品写真 テラヘルツ波発振デバイス・検出デバイス

ローム株式会社(本社:京都市)は、半導体素子である共鳴トンネルダイオード(Resonant Tunneling Diode: RTD)(*1)を用いた、業界最小(※)のテラヘルツ波発振デバイス及び検出デバイスのサンプル提供を開始しました。テラヘルツ波は、非破壊検査、医療・ヘルスケア分野でのイメージングやセンシング、将来的には超高速通信技術への応用が期待されています。本デバイスの提供を通じて、テラヘルツ波を活用したアプリケーションの発展に貢献していきます。



共鳴トンネルダイオード(RTD)テラヘルツ波デバイス

今回ロームが開発したのは、0.5mm×0.5mmサイズのテラヘルツ波発振用及び検出用のRTD素子です。周波数320GHz(Typ.)、出力10µW ~20µWのテラヘルツ波を発振、検出できます。このRTD素子を、LEDなどに用いるPLCCパッケージ(*2)(4.0mm×4.3mm)に搭載したサンプル品の提供を開始します。従来方式(*3)の発振装置と比べて体積は1000分の1以下と小型であり、限られたスペースでも手軽にテラヘルツ波アプリケーションの開発環境を構築できます。
発振デバイス及び検出デバイスのアンテナ面を10mmの距離で対向させた場合、ダイナミックレンジ(*4)で40dB(Typ.)の検出性能を得ることができます。発振デバイス、検出デバイスともに駆動時の消費電力を10mW(Typ.)に抑えたほか、室温でテラヘルツ波を発振及び検出できることから、一部の従来方式で必要とされた装置の冷却も不要です。小型で省電力かつ使用環境に左右されないデバイスであり、さまざまなアプリケーションへの活用が可能です。

テラヘルツ波の周波数帯と想定される市場

ロームでは2024年10月から、テラヘルツ波の発振・検出デバイスのサンプル品を、従来装置の価格に対して10分の1以下となるサンプル価格10万円/個(税抜)で販売します。また、研究・開発環境を手軽に構築できる評価ボードなどをセットにした評価キットも用意しています。詳しくは担当営業、もしくは、ロームWebのお問い合わせ先よりお問い合わせください。なお、サンプル品及び評価キットの販売には、事前にロームとのNDA(機密保持契約)の締結が必要です。
東京工業大学 科学技術創成研究院 未来産業技術研究所 鈴木 左文 教授
テラヘルツ波は、優れた特性と安全性の高さからイメージングやセンシング、無線通信など様々な分野への応用が期待されていますが、一方で商用化に向けた研究開発には大掛かりな装置や莫大な費用が必要でした。
こうした中で、ローム社との長年の共同研究を通じて開発したRTDテラヘルツ波デバイスは、今までの常識を覆す4.0mm×4.3mmの極小サイズであり、かつ驚異的な低消費電力と導入コストの低さが特長です。デバイスサンプルの提供開始により、多くの民間企業や研究機関がテラヘルツ波の研究に参入すると期待しています。
私たちは、テラヘルツ波がさまざまな分野で活用されることにより、これまで困難だった機能を持った新しいアプリケーションが生み出されることを期待しています。これからもローム社との連携によるテラヘルツ波デバイスの開発を通じて社会に貢献していきます。

ニュースリリース:https://www.rohm.co.jp/news-detail?news-title=2024-09-30_news_terahertz&defaultGroupId=false

※2024年9月 ローム調べ(対象:製品化されているテラヘルツ波発振デバイスおよびテラヘルツ波検出デバイス)
背景
電波と光の中間の周波数領域に位置する電磁波「テラヘルツ波」は、電波のような優れた透過性とレーザー光線のような直進性、高分子材料などに対する特有の吸収特性などのさまざまな特性を持つことから、放射線を使わない人体、物質の非破壊検査や従来の無線通信に代わる高速通信、高精細なレーダーセンシングなどへの活用が期待されています。一方で、従来の方式では装置のサイズが大きく、導入コストも数百万円~数千万円以上と高額だったため、民間企業による研究や事業化は難しいのが実情でした。
ロームでは2000年代後半から、東京工業大学や大阪大学など多くの大学や研究機関と共同研究を行い、RTDを使ったテラヘルツ波発振・検出デバイスの開発を進めてきました。また、総務省と情報通信研究機構(NICT)、科学技術振興機構(JST)が主催する国プロ(政府研究開発プロジェクト)、XGモバイル推進フォーラムやテラヘルツシステム応用推進協議会など、複数のコンソーシアムに参画しています。ロームは今後も、デバイス開発に注力しながらテラヘルツ技術の早期産業化と社会実装に貢献していきます。
サポート情報
ロームは、テラヘルツ波の研究及びアプリケーション開発のサポートに注力しています。各種サポートコンテンツを準備するほか、デバイスと評価ボードなどをセットにした評価キットを用意しております。
Digilent社が販売するAnalog Discovery 3(TM)などの計測ツールなどとパソコン、ソフトウェアを組み合わせることで、テラヘルツ波の発振・検出デバイスを簡単に駆動できます。デバイス、評価ボードともにサイズを小型化したことで、卓上などの限られたスペースでも研究・開発環境を構築することが可能です。詳細につきましては、担当営業もしくは、ロームWebのお問い合わせ先よりお問い合わせください。



RTDテラヘルツ波デバイス評価キット

*Analog Discovery 3(TM)はDigilent社の商標又は登録商標です。
鈴木 左文 教授 プロフィール
東京工業大学科学技術創成研究院未来産業技術研究所教授、工学博士。研究対象は、共鳴トンネルダイオード(RTD)をもちいたテラヘルツ波デバイスの開発。
経歴
2009年3月 東京工業大学大学院総合理工学研究科博士課程修了
2009年4月 同大大学院総合理工学研究科助教
2014年4月 同大工学部准教授
2024年8月 同大科学技術創成研究院未来産業技術研究所教授
用語説明
*1) 共鳴トンネルダイオード(RTD)
半導体素子を用いたテラヘルツ波光源の1つで、小型で低消費電力、室温で発振できるなどのメリットがある。
ロームでは、多くの大学や研究機関との研究開発の末、効率的なテラヘルツ波の発振と検出が可能なRTDデバイスの内製化に成功した。
*2) PLCC
Plastic Leaded Chip Carrierの略で、半導体集積回路のパッケージの一種。
*3) 従来方式
テラヘルツ波発振の従来方式として、電気信号の周波数を整数倍に変換して出力する「周波数逓倍方式」と、波長の異なる2つのレーザー光をフォトミキサで混合したときに生じる差周波から生成する「フォトミキシング方式」の2つが挙げられる。いずれの方式も、テラヘルツ波の発生に高額かつ大型の装置が必要となる。
*4) ダイナミックレンジ
アナログデバイスの性能指標の1つで、扱うことのできる信号の最大値と最小値の差や比率を指す。テラヘルツ波の場合、単位には他の電波と同様に電力比を表すデシベル(dB)が用いられる。

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提供元:PRTIMES

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