【小学生から高校生の親子の「幸せ実感」の追跡データ】 子ども・保護者ともに3割が「とても幸せ」と回答
株式会社 ベネッセホールディングス親子の幸せは相互に影響しており、子どもだけでなく親自身が幸せを実感できることが重要
株式会社ベネッセコーポレーション(本社:岡山市、代表取締役社長:小林 仁)の社内シンクタンクであるベネッセ教育総合研究所は、子どもが幸せを実感できる環境をどのように築いていくかを考えるために<親子の幸せについて考えるデータ>をまとめました。
今回のデータは、小1~高3まで12学年の約2万組の親子の意識・行動の変化を、2015年から継続して追っている日本最大級の親子調査「子どもの生活と学びに関する親子調査」(東京大学社会科学研究所との共同プロジェクト)の調査結果を新たに分析したものです。結果からは、親子の「幸せ実感」が相互に関連していること、家族関係は子どもにとって幸せの基盤であること、親が幸せを実感するためには親自身の生活の充実が重要であることなどがわかりました。ベネッセ教育総合研究所では、本データを参考にして、親子の幸せを実現するための方策を提案してまいります。
【主な分析結果】
1.子ども・保護者ともに3割が「とても幸せ」と回答
子どもは「とても幸せ」が32.6%、「まあ幸せ」が52.5%、「幸せではない」が14.9%、保護者は「とても幸せ」が30.9%、「まあ幸せ」が58.3%、「幸せではない」が10.9%だった。☛図1
2.保護者の幸せ実感と子どもの幸せ実感は関連がある
「とても幸せ」と回答した保護者の子どもは、46.6%が「とても幸せ」と回答したのに対して、「幸せではない」と回答した保護者の子どもは「とても幸せ」が17.6%しかいない。☛図2
3.保護者の幸せ実感と子どもの幸せ実感は相互に影響している
同じ子ども・保護者を6年間追跡した結果では、保護者の幸せ実感が3年後の子どもの幸せ実感に、子どもの幸せ実感が3年後の保護者の幸せ実感に影響していることがわかった。☛図3
4.家族との関係に対する満足度は子どもの幸せ実感に強く関連
「自分の性格」「自分の成績」「家族との関係」「友だちとの関係」「学校の先生との関係」の中で、「家族との関係」に対する満足度は、子どもの幸せ実感にもっとも相関が強かった。☛図4
5.学習場面では勉強の「意味づけ」や努力の「承認」が大切
学習場面での保護者のかかわりと子どもの幸せ実感の関連をみたところ、「勉強の意味や大切さを教えてくれる」「結果が悪くても努力したことを認めてくれる」などの項目で、それらを肯定する子どもは幸せ実感が高かった。☛図5
6.保護者自身の幸せのためにふだんの生活の充実が必要
ふだんの生活の中で「趣味やスポーツを楽しむ」「自分の能力を高めるための勉強をする」「友人とすごす・話をする」「近所の人と話をする」といった機会があると回答する保護者ほど、幸せ実感が高い。☛図6
7.子どもの幸せ実感は世帯年収による差が小さい
子どもの幸せ実感を世帯年収別にみたところ、「とても幸せ」は「400万円未満」の世帯の子どもは30.2%だったが、「800万円以上」の世帯の子どもは34.2%だった。差はあるがとても大きいとまでは言えない。☛図7
【解説】
今回の分析では、東京大学社会科学研究所とベネッセ教育総合研究所が共同で行う「子どもの生活と学びに関する親子調査」の結果をもとに、親子の幸せについて考えました。
最初に、親子の幸せ実感の状況を確認したところ、子どもは「とても幸せ」が32.6%、「まあ幸せ」が52.5%、「幸せではない」が14.9%、保護者は「とても幸せ」が30.9%、「まあ幸せ」が58.3%、「幸せではない」が10.9%となり、いずれも3割が「とても幸せ」という実感をもっていました。☛図1
次に親子の幸せ実感の関連をみたところ、「とても幸せ」と回答した保護者の子どもは46.6%が「とても幸せ」と回答しており、「幸せではない」は10.0%しかいませんでした。これに対して、「幸せではない」保護者の子どもは「とても幸せ」が17.6%にとどまり、31.6%が「幸せではない」と回答しました。親子の幸せ実感には関連がみられます。☛図2
同じ子ども・保護者を6年間追跡した結果で見たところ、保護者の幸せ実感は3年後の子どもの幸せ実感に、子どもの幸せ実感は3年後の保護者の幸せ実感に影響していることがわかりました。親子の幸せは相互に影響しあい、循環する関係にあります。☛図3
そもそも子どもにとって「家族との関係」は重要であり、「自分の性格」「自分の成績」「家族との関係」「友だちとの関係」「学校の先生との関係」の中で、「家族との関係」に対する満足度は、子どもの幸せ実感にもっとも相関が強いという結果も得られました。☛図4
それでは、どのようなかかわりが大切なのでしょうか。学習場面で保護者がどのようにかかわっているかをたずねた結果では、「勉強の意味や大切さを教えてくれる」「結果が悪くても努力したことを認めてくれる」といったかかわりがあると、子どもの幸せ実感が高い傾向がみられました。保護者の役割として、勉強の「意味づけ」や努力の「承認」が重要と言えそうです。☛図5
また、保護者の幸せ実感が子どもに影響することを考えると、保護者自身が幸せを実感できるような生活を送ることも大事です。調査の結果からは、ふだんの生活の中で「趣味やスポーツを楽しむ」「自分の能力を高めるための勉強をする」「友人とすごす・話をする」「近所の人と話をする」といった機会があると回答する保護者ほど、幸せ実感が高いことがわかりました。☛図6
最後に、子どもの幸せ実感を世帯年収別にみたところ、両者の関連はそれほど強くありませんでした。子どもが幸せを感じられるかどうかは、経済的な要因が決定的な影響をもっているわけではありません。☛図7
今回の調査結果をヒントにして、ご家庭で親子の幸せをどのように築いていくかを、考えるきっかけにしてみてはいかがでしょうか。
【資料編:親子の「幸せ実感」について考えるデータ】
※データはすべて「子どもの生活と学びに関する親子調査」→調査概要P.6参照
1.子ども・保護者ともに3割が「とても幸せ」と回答
子どもは「とても幸せ」が32.6%、「まあ幸せ」が52.5%、「幸せではない」が14.9%、保護者は「とても幸せ」が30.9%、「まあ幸せ」が58.3%、「幸せではない」が10.9%だった。
図1:子どもと保護者の幸せ実感
*幸せ実感は、「自分は今、幸せだ」に対して、「とてもそう思う」を「とても幸せ」、「まあそう思う」を「まあ幸せ」、「あまりそう思わない」と「まったくそう思わない」を「幸せではない」とした。
*「子ども」は小4~高3生、「保護者」は小1~高3生の保護者の回答。数値は、小1~3生:小4~6生:中学生:高校生=1:1:1:1になるように重みづけを行った。
2.保護者の幸せ実感と子どもの幸せ実感は関連がある
「とても幸せ」と回答した保護者の子どもは、46.6%が「とても幸せ」と回答したのに対して、「幸せではない」と回答した保護者の子どもは「とても幸せ」が17.6%しかいない。
図2:保護者の幸せ実感と子どもの幸せ実感の関連
*幸せ実感は、「自分は今、幸せだ」に対して、「とてもそう思う」を「とても幸せ」、「まあそう思う」を「まあ幸せ」、「あまりそう思わない」と「まったくそう思わない」を「幸せではない」とした。
*「子ども」「保護者」ともに小4~高3生の回答。数値は、小4~6生:中学生:高校生=1:1:1になるように重みづけを行った。
3.保護者の幸せ実感と子どもの幸せ実感は相互に影響している
同じ子ども・保護者を6年間追跡した結果では、保護者の幸せ実感が3年後の子どもの幸せ実感に、子どもの幸せ実感が3年後の保護者の幸せ実感に影響していることがわかった。
図3:子どもと保護者の幸せ実感の6年間の追跡
*幸せ実感は、「自分は今、幸せだ」に対する各調査時点の回答(「とてもそう思う」~「まったくそう思わない」の4段階)。
*統計的に有意だった箇所に矢印を記載した。
4.家族との関係に対する満足度は子どもの幸せ実感に強く関連
「自分の性格」「自分の成績」「家族との関係」「友だちとの関係」「学校の先生との関係」の中で、「家族との関係」に対する満足度は、子どもの幸せ実感にもっとも相関が強かった。
図4:満足度と幸せ実感の関連(相関係数)
*数値は相関係数。「-1」から「+1」の範囲の値をとり、数値が「+1」に近いほどブラスの関連が強いことを示す。**p <0.01。
*幸せ実感は、「自分は今、幸せだ」に対する各調査時点の回答(「とてもそう思う」~「まったくそう思わない」の4段階)。
*それぞれの満足度は、「とても満足」「まあ満足」「あまり満足していない」「まったく満足していない」の4段階でたずねた。
5.学習場面では勉強の「意味づけ」や努力の「承認」が大切
学習場面での保護者のかかわりと子どもの幸せ実感の関連をみたところ、「勉強の意味や大切さを教えてくれる」「結果が悪くても努力したことを認めてくれる」などの項目で、それらを肯定する子どもは幸せ実感が高かった。
図5:保護者のかかわりによる子どもの幸せ実感の違い
*幸せ実感は、「自分は今、幸せだ」に対して、「とてもそう思う」を「とても幸せ」、「まあそう思う」を「まあ幸せ」、「あまりそう思わない」と「まったくそう思わない」を「幸せではない」とした。保護者のかかわりは、「とてもあてはまる」「まああてはまる」を「教える」「認める」、「あまりあてはまらない」「まったくあてはまらない」を「教えない」「認めない」とした。いずれも子どもの回答。
*小4~高3生の回答。数値は、小4~6生:中学生:高校生=1:1:1になるように重みづけを行った。
6.保護者自身の幸せのためにふだんの生活の充実が必要
ふだんの生活の中で「趣味やスポーツを楽しむ」「自分の能力を高めるための勉強をする」「友人とすごす・話をする」「近所の人と話をする」といった機会があると回答する保護者ほど、幸せ実感が高い。
図6:保護者のふだんの生活の様子と幸せ実感
*しあわせ実感は、「自分は今、幸せだ」に対して、「とてもそう思う」を「とても幸せ」、「まあそう思う」を「まあ幸せ」、「あまりそう思わない」と「まったくそう思わない」を「幸せではない」とした。
*世帯年収は保護者による回答。
*小4~高3生の子どもの回答。数値は、小4~6生:中学生:高校生=1:1:1になるように重みづけを行った。
【分析データ】
●子どもの生活と学びに関する親子調査(東京大学社会科学研究所・ベネッセ教育総合研究所による共同調査)
【調査テーマ】子どもの生活と学習に関する意識と実態(子ども調査)/保護者の子育て・教育に関する意識と実態(保護者調査)……同一の親子を対象に2015年から継続して追跡する縦断調査
【調査時期】各年7~9月
【調査方法】調査依頼は各回とも郵送で実施、回収は2015年郵送・WEB併用、16~20年郵送、21年郵送・WEB併用、22~23年WEB
【調査対象】各回とも約2万組の調査モニターに協力を依頼、発送数・回収数・回収率(%)は以下の通り
※今回の分析では、図3以外はすべて、2023年調査のデータを用いた。
●本調査の詳細は、以下にまとめています。
https://benesse.jp/berd/special/childedu/
【ベネッセ教育総合研究所】
ベネッセ教育総合研究所は1980年に発足した株式会社ベネッセコーポレーションの社内シンクタンクです。子ども、保護者、学校・教員を対象に、さまざまな調査・研究を行っております。また教育内容や方法、評価測定などについても研究開発を進めています。調査・研究で得られた知見は、ベネッセ教育総合研究所のWebサイト(https://benesse.jp/berd/)にて公開し、子どもの成長・発達を取り巻く環境の改善に役立てていくように情報発信を行っています。
【詳細データ】
今回と同様の分析を以下のサイトでもご覧いただけます。
URL:https://benesse.jp/berd/special/datachild/datashu05.html
※結果はほぼ同様ですが、扱っている変数が違うため、算出された数値は異なっています。
【本分析の担当】
●木村 治生(きむら・はるお) ベネッセ教育総合研究所 調査研究室長・主席研究員
【分析協力】
●野澤 雄樹(のざわ・ゆうき) ベネッセ教育総合研究所 所長
●松本 留奈(まつもと・るな) ベネッセ教育総合研究所 主任研究員
●岡部 悟志(おかべ・さとし) ベネッセ教育総合研究所 主任研究員
●福本 優美子(ふくもと・ゆみこ) ベネッセ教育総合研究所 研究員
●朝永 昌孝(ともなが・まさたか) ベネッセ教育総合研究所 研究員
※所属・肩書は2024年12月現在
提供元:PRTIMES