音波を用いた磁気回転効果の発見~磁気回転効果のスピンデバイス応用に道を拓く~

2020/05/28  科学技術振興機構(JST) 

令和2年5月28日

慶應義塾大学
科学技術振興機構(JST)

音波を用いた磁気回転効果の発見

~磁気回転効果のスピンデバイス応用に道を拓く~

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ポイント

  • 磁気回転効果は、磁性の起源を追求する1世紀前の基礎科学上極めて根源的な問いから見つかった効果であり、力学的な回転運動と磁気が変換できることがアインシュタインらによって発見されていた。
  • 磁気回転効果の大きさは、最新の遠心分離器の到達限界回転数でも地磁気以下の効果しかなく、物質の磁気制御を動作原理とするスピンデバイスには応用できないと考えられていた。
  • 本研究では、1秒間に10億回以上の速さで原子が回転する音波がニッケル鉄合金磁石に巨大な磁気回転効果(地磁気の10万倍以上に相当)を発生することを世界で初めて発見した。
  • 本研究で発見した音波を用いた磁気回転効果は、回転運動の保存則に基づく普遍的な効果であり、磁石の性質とは無関係なので、すべての最先端磁気デバイスに応用できる。
  • ジュール熱を伴う電流に比べてエネルギー損失の少ない音波によるスピンデバイス動作に大きく道を拓くものであり、スピンデバイスの大幅な省電力化を実現できる。

慶應義塾大学 大学院理工学研究科の栗宗 勇貴(当時修士課程2年)と理工学部の能崎 幸雄 教授、中国科学院大学 カブリ理論科学研究所の松尾 衛 准教授は、磁石に音波を注入すると、磁気回転効果により、磁気の波「スピン波」が発生することを発見しました。

磁気回転効果は、物質の磁気の源が電子の回転運動であることを示す歴史的にも重要な現象ですが、その効果はとても小さく、物質の磁気制御が不可欠なスピンデバイスへの応用が不可能とされていました。

本研究グループは、膜厚が20ナノメートルの薄膜ニッケル鉄合金磁石を作製し、固体表面を伝搬しながら結晶格子点を1秒間に10億回以上回転させる音波を注入することにより、磁気回転効果に由来するスピン波が発生することを発見しました。

本研究は、音波が巨大な磁気回転効果を生み出すことを世界で初めて実証したものであり、これまで不可能だった磁気回転効果のスピンデバイス応用に大きく道を拓くことが期待されます。

本研究成果は、2020年5月27日(米国東部夏時間)発行の米国物理学会誌「Physical Review Letters」のオンライン版で公開されました。

本研究は、科学技術振興機構(JST) 戦略的創造研究推進事業CREST「ナノ構造制御と計算科学を融合した傾斜材料開発とスピンデバイス応用(研究代表者:能崎 幸雄)」(課題番号:JPMJCR19J4)の支援を受けて行われました。

<プレスリリース資料>

  • 本文 PDF(426KB)

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