自動車用ケミカル&マテリアルの世界市場を調査

2022/11/24  株式会社 富士経済 

自動車用ケミカル&マテリアルの世界市場を調査
リサイクルやバイオ技術などを利用した環境配慮材料の採用が広がる

―2035年世界市場予測(2021年比)―
■自動車用ケミカル&マテリアル
1億5,209万トン(27.0%増)/40兆8,481億円(66.3%増)
電動化の進展や軽量化ニーズの高まりにより、エンジニアリングプラスチックの需要が増加
■環境配慮樹脂材料 262万トン(10.9倍)/1兆6,375億円(15.3倍)
2027年以降欧州を中心に採用が広がり、2035年に採用比率は10%近くに拡大

マーケティング&コンサルテーションの株式会社富士キメラ総研(東京都中央区日本橋 社長 田中 一志 03-3241-3490)は、EV化に伴う部品・材料の変化や、リサイクルなど環境に配慮した材料の広がりが予想される自動車業界におけるケミカル&マテリアル(樹脂材料、金属、加工品)の世界市場を調査した。その結果を「2023年 自動車用ケミカル&マテリアル市場調査総覧」にまとめた。

この調査では、汎用樹脂、エンジニアリングプラスチック、熱硬化樹脂、ゴム・エラストマー、金属、加工品の市場を調査し最新の動向をまとめた。またカーボンニュートラル達成に有望な材料を環境配慮材料と定義してMR(マテリアルリサイクル)、CR(ケミカルリサイクル)、バイオ、その他利用技術ごとに2035年までの採用動向を展望した。

◆調査結果の概要

■自動車用ケミカル&マテリアルの世界市場

 

2022年見込

2021年比

2035年予測

2021年比

汎用樹脂

663万トン

98.7%

883万トン

131.4%

2兆3,611億円

123.6%

3兆5,949億円

188.1%

エンジニアリングプラスチック

249万トン

98.8%

358億円

142.1%

1兆5,917億円

126.3%

2兆5,679億円

2.0倍

熱硬化樹脂

182万トン

93.3%

246万トン

126.2%

1兆4,675億円

109.9%

2兆1,356億円

159.9%

ゴム・

エラストマー

975万トン

98.4%

1,275万トン

128.7%

3兆8,640億円

118.3%

5兆1,664億円

158.2%

金属

7,511万トン

98.6%

9,668万トン

126.9%

9兆3,915億円

117.8%

13兆9,194億円

174.6%

加工品

2,200万トン

98.2%

2,778万トン

124.0%

10兆7,240億円

121.7%

13兆4,639億円

152.8%

合 計

1億1,779万トン

98.4%

1億5,209万トン

127.0%

29兆3,997億円

119.7%

40兆8,481億円

166.3%

※市場データは四捨五入している。

2022年は新型コロナウイルス感染症の流行や半導体供給不足の影響で自動車生産台数が前年を下回ることから、数量ベースでは前年に達しないとみられる。金額ベースは為替の影響や原料価格高騰に伴う値上げにより二桁増が見込まれる。

2035年の市場は数量ベースで2021年比27.0%増と予測される。自動車の軽量化や、電動化の進展に伴い内燃機関関連部品が減少しているため、数量ベースの成長率は自動車生産台数の成長率を下回る。金額ベースの市場は原燃料価格高騰の影響に加え、単価の高い環境配慮材料の採用増加により、2021年比66.3%増が見込まれる。

汎用樹脂は意匠性のニーズに合致するPMMAやPC/ABSの需要が増加するとみられる。また、PPでは2022年時点で環境配慮材料の量産が始まっているため、2035年に向けて構成比が高まっていくと予想される。

エンジニアリングプラスチックは最も高い成長率が予想される。電装部品での採用が増加することや、電動化による新規需要の創出が期待できることが要因である。

熱硬化樹脂は電装化に伴ってECU搭載個数が増加することにより、エポキシ(基板用)が伸長し、市場をけん引するとみられる。

ゴム・エラストマーは合成ゴムと熱可塑性エラストマーが含まれる。合成ゴムはEV化が進むことで内燃機関関連部品向けの伸びは抑制されるが、S-SBRは低燃費タイヤに用いられることから需要が増加するとみられる。熱可塑性エラストマーは電装部品、電動化に伴う新規需要獲得が期待できるため、市場拡大が続くとみられる。

金属は軽量化のため鉄からアルミニウム合金板やマグネシウム合金へと需要がシフトしている。また、鉄の中でもより軽量な高張力鋼やホットスタンプ材へのシフトにより数量ベースの伸びは緩やかになるとみられる。

加工品はガラス/グレージングとタイヤのウエイトが大きい。自動車生産台数の増加に伴って伸びるが、軽量化が進むことから数量ベースの伸びは自動車生産台数の伸びを下回ると予想される。

■環境配慮材料の採用予測(樹脂材料)

2022年見込

2021年比

2035年予測

2021年比

24万トン

100.0%

262万トン

10.9倍

1,318億円

122.9%

1兆6,375億円

15.3倍

樹脂材料(汎用樹脂、エンジニアリングプラスチック、熱硬化樹脂、ゴム・エラストマー)における2022年の環境配慮材料の採用量は24万トンで、全体の1%強と見込まれる。PPやポリウレタンでMRによる量産が行われているほか、CRも一部実績がある。バイオ技術利用ではPA11・PA12などが量産されている。自動車メーカーは物性がコントロールされた回収・MRシステムとしてCar to Carリサイクルを積極的に検討していることから、今後もMRによって量産される材料が中心となって需要が高まっていくとみられる。

採用比率は2026年までは1%台で推移するが、2027年以降に欧州を中心として環境配慮材料の採用が推進され、関連する政策や規制も導入されることにより、高まっていくとみられる。2035年には汎用樹脂やエンジニアリングプラスチックで市場が形成され10%近くまで拡大すると予想される。

環境配慮材料はバージン材料より平均して単価が高い事が採用障壁の一つであり、特にバイオマス原料やCRではバージン材料の2倍以上の価格となる。量産供給の広がりによってコストが低下し、採用が増えると予想される。

◆注目市場

●光学レンズ用樹脂(COP・COC、共重合PC、他)【エンジニアリングプラスチック】

2022年見込

2021年比

2035年予測

2021年比

630トン

116.7%

1,880トン

3.5倍

30億円

142.9%

88億円

4.2倍

ビューイングカメラやセンシングカメラに用いられる樹脂レンズの原料が対象である。従来はガラスが採用されてきたが、成形性や量産性、軽量性、低コストの追求などを理由に樹脂の採用が増加している。主にビューイングカメラで採用されており、米国や欧州、日本では新型車へのバックビューカメラの搭載が義務化されたことに加え、1台に4個のカメラを必要とするサラウンドビューシステムの搭載率も上がっていることから、今後の高成長が予想される。またセンシングカメラでは一部でCOP・COCの採用があり、ガラスからの置き換えで市場が底上げされるとみられる。

現在センシングカメラの機能を備えたビューイングカメラの採用が増加しており、将来的にはビューイングカメラがセンシング機能を担うと予想される。このため、信頼性の面からよりガラスに近い物性の樹脂が求められており開発が進められている。

●マグネシウム合金【金属】

2022年見込

2021年比

2035年予測

2021年比

13万9,120トン

102.6%

43万3,710トン

3.2倍

807億円

84.7%

2,141億円

2.2倍

マグネシウム合金は非常に軽量な金属であり、鉄の約四分の一、アルミ合金の約三分の二の重さであり軽量化を目的に採用される。自動車での使用可能箇所の増加により1台あたりの使用量が増えている。ステアリングとキーロックへの使用が主体であるが、欧州や北米ではトランスミッションやシリンダーブロック、オイルパンなど、エンジン周辺部品での採用も増えている。

2021年に主要産出国の中国で供給量が低下し価格が高騰したが、2022年は価格が下落したため金額ベースでは前年を下回った。

EVの需要増加により、航続距離の延長を目指した軽量化を目的としてマグネシウム合金への注目度が高まっており、今後も適用部位は増加していくとみられる。また、現状アルミ合金の採用が一般的なタイヤホイールで将来的な採用が予想される。タイヤホイールに採用されることにより1台あたりの使用量が増加するため、市場は大幅な拡大が期待される。

●エポキシ(基板用)【熱硬化樹脂】

2022年見込

2021年比

2035年予測

2021年比

9万2,500トン

103.1%

19万3,300トン

2.2倍

1,106億円

127.6%

3,123億円

3.6倍

市場は自動車に使用されるプリント基板、ひいては基板が使用されるECUの搭載個数と連動する。2022年は自動車生産台数が前年を下回るとみられるものの、電動系アプリケーションでの需要増加に加え、自動車メーカーや一次サプライヤーで在庫確保の動きがみられたことからプリント基板の需要は好調なため、市場は拡大が予想される。

2023年以降は自動車生産台数が回復することにより、市場は順調に拡大すると予想される。自動車の電動化や運転支援機能の搭載数増加がECUの搭載個数増加や基板の多層化に繋がるため、市場は自動車生産台数の伸びを上回って成長するとみられる。

◆調査対象

汎用樹脂

 

 

 

・PP

・PMMA

・PC/ABS

 

・PE

・ABS・ASA・AES

・ポリエステル繊維

 

エンジニアリングプラスチック

・PC

・PA11・PA12

・変性PPE

・光学レンズ用樹脂(COP・

・PBT

・耐熱PA(PA46、PA4T、

・PPS

COC、共重合PC、他)

・POM

PA6T、PA9T、

・LCP

・フッ素樹脂

・PA6・PA66

PA10T、PA11T)

・高耐熱樹脂(PEEK、PAI、TPI)

 

熱硬化樹脂

 

 

 

・エポキシ(構造材用)

・ポリウレタン

・フェノール樹脂

 

・エポキシ(基板用)

・不飽和ポリエステル

 

 

ゴム・エラストマー

 

 

 

・NR

・NBR・HNBR

・フッ素ゴム

・TPO・TPV

・IR

・S-SBR

・シリコーンゴム

・TPC

・クロロプレンゴム

・ACM

・α-オレフィン

・TPU

・EPDM

・ECO

コポリマー

 

金属

 

 

 

・アルミニウム合金板

・マグネシウム合金

・鉄(軟鋼、高張力鋼、ホットスタンプ材)

加工品

 

 

 

・構造用接着剤

・内装用接着剤

・ガラス/グレージング

・タイヤ

2022/11/24

上記の内容は弊社独自調査の結果に基づきます。 また、内容は予告なく変更される場合があります。 上記レポートのご購入および内容に関するご質問はお問い合わせフォームをご利用ください、 報道関係者の方は富士経済グループ本社 広報部(TEL 03-3241-3473)までご連絡をお願いいたします。

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