金融審議会「市場ワーキング・グループ」(第19回)議事録を公表しました。

2019/03/14  金融庁  

金融審議会「市場ワーキング・グループ」(第19回)議事録

1.日時:

平成31年2月19日(火)9時30分~12時00分

2.場所:

中央合同庁舎第7号館13階 金融庁共用第一特別会議室

【神田座長】
おはようございます。それでは、時刻になりましたので、始めさせていただきます。「市場ワーキング・グループ」の第19回目の会合を開催させていただきます。

皆様方には、いつも大変お忙しいところをお集まりいただきまして、まことにありがとうございます。

このワーキング・グループでございますが、本日も、これまでどおり、委員の皆様方の座席はランダムにさせていただいております。また、今回も会合を150分間での開催とさせていただきますので、これまでと同様、途中で5分程度の休憩をとりたいと思います。

それでは、まず初めに、今回の会合に参考人としてご参加いただく方々を、事務局からご紹介、お願いいたします。

【小森市場課長】
ご紹介申し上げます。委員の先生の皆様方から見て左側のほうにお座りいただいております。

お一人目、みずほ証券の渡邉エクイティ本部共同本部長です。

そのお隣、クレディ・スイス証券、エレクトロニック・トレーディング部、東海林ヴァイスプレジデントです。

それから、東海林様のお隣に、まだいらっしゃっていませんけれども、京都府立医科大学、成本教授、ご自身のプレゼンまでにいらっしゃるご予定でございます。

【神田座長】
どうもありがとうございました。

それでは、早速、本日の議事に移りたいと思います。

本日は、テーマ2つでありまして、「高齢社会における金融サービスのあり方」と「ダークプールの現状と課題」という、この2つを取り上げさせていただきます。順番は、「ダークプールの現状と課題」について、まずご審議をいただきたいと思います。

具体的には、まず事務局から「ダークプールの現状と課題」について、平成28年の市場ワーキングにおける議論の確認を含めて、10分程度で説明をしていただきます。その後、東京証券取引所から10分程度、そして、みずほ証券とクレディ・スイス証券から、それぞれ5分程度のご報告をいただきます。

また、本日は「高齢社会における金融サービスのあり方」についても議論したいと思うのですけれども、「ダークプールの現状と課題」について、先に討議の時間をとらせていただきたいと思います。

高齢社会のほうにつきましては、昨年末になると思いますが、第18回目の会合を12月17日に、「高齢社会における金融サービスのあり方」など、国民の安定的な資産形成に関して、また年明け以降、引き続き議論をお願いするということになっておりました。そこで、本日でございますけれども、「高齢社会における金融サービスのあり方」について、今ちょっとご紹介ございました京都府立医科大学の成本先生から、医学的な視点から、「高齢者の自律的な経済活動継続への課題」ということをテーマに、20分程度のお話をいただくことになっております。その後、神戸委員から、「独立系FPによる高齢者の資産運用に関する考察」ということで、やはり20分程度のお話をいただくと、こういうことを予定しております。その後で皆様からご意見等をいただく予定です。今日も盛りだくさんでございますけれども、よろしくお願いいたします。

それでは、まず「ダークプールの現状と課題」についてから始めさせていただきます。

事務局の菅昌市場機能強化室長からご説明をお願いいたします。

【菅昌市場機能強化室長】
市場機能強化室長の菅昌です。よろしくお願いいたします。

ダークプールにつきましては、平成28年のワーキング・グループでも議論いただいたところでございますけれども、その後の状況の変化を踏まえまして、課題を再整理させていただきましたので、ご報告いたしたいと思います。

それでは、資料1の1ページ目をご覧ください。

皆さま、ご存じの方も多いと思いますけれども、まず、ダークプールそのものでございますが、定義といたしましては、電子的にアクセス可能で、取引前透明性のない、つまり気配情報を公表しない取引の場ということになっております。3つ並んでおりますけれども、一番上の証券会社が取引を取り次ぐ普通の取引、それから証券会社内で対当・約定を行う、認可が必要なPTSがあり、これらに該当しないものといたしまして、証券会社の中で注文・対当するのですけれども、それを東証の立会外市場であるToSTNeTのほうにクロス注文いたしまして約定すると、これについてダークプールというふうに呼ばれているところでございます。

次に、2ページもダークプールの概要についてでございますけれども、こちらにつきまして、ダークプールの発展の経緯といたしましては、気配が開示されない流動性というものは昔から存在していたのですけれども、新技術の活用で、さらにその活動が大幅に増大している状況にございます。

なぜ、それが投資家に利用されているかといいますと、ここに3つ並んでおりますけれども、1つは、大口注文によるマーケットインパクトが最小化できると、大口注文の執行促進ができるという観点、それから刻み幅が細かいなどありまして、価格改善の可能性があるのではないか。それから、手数料が安いこと等による取引コストの最小化ができると、こういった利点が挙げられております。

また、一方、ダークプールの問題点といたしましては、投資家に十分な注文が見えないことがあると、投資家が取引機会を判断するための価格情報が不十分となって、価格発見機能が低下するのではないか。2番目に、流動性が分散して、投資家が流動性を探すコストがかかるなど、情報分断の問題が生じるのではないか。それから、3番目に、取引情報へのアクセスについて、取引参加者間で公平性が阻害されたり、また、取引の執行方針等に関する情報が十分提供されないおそれがあるのではないかということが、IOSCO、証券監督者国際機構でございますけれども、こちらのレポートでも言われているところでございます。

3ページのほうに移っていただきまして、先ほど申し上げたように、2年前の当ワーキング・グループでもご議論いただいたところでありますけれども、その結果といたしましては、黒丸が3つありますけれども、2つ目の丸の2行目、PTSと同様に認可制の対象とした上で、一定の場合に気配情報の開示を不要にするという取扱いも考えられるけれども、そのような取扱いを検討することの要請は、現状、必ずしも強く聞かれないということになっております。

そして、3番目の丸の2行目、将来的に新たな課題や環境変化が生じた場合には、必要に応じ、制度的な対応を検討することが適当ということで、取りまとめいただいたところでございます。

それから2年ほどたちまして、現状についてでございますけども、4ページのほうをご覧いただきますと、その後、ダークプールのシェア自体は、先ほどの取りまとめ以降も大きく伸びているわけではなく、PTSと同程度で推移しているところでございますけれども、その一方で、ネット証券会社が個人投資家向けのダークプールの提供、注文をダークプールに回送することがあるという運用ですけれども、そういうことをネット証券会社等が始めるなど、個人投資家への間口が広がってきている状況にございます。※印のところにも書かれていますが、20社程度提供しているうち、個人投資家向けに5社程度がダークプールへの注文の回送を行っているというところでございます。

ここで懸念される点といたしましては、今後、個人投資家向けのダークプールの拡大が見込まれまして、何ら規制のないままとなりますと、個人投資家に不利益が発生した場合の実態把握や対応が困難になるのではないか。また、もともとこのダークプール自体が機関投資家を主に対象とした取引方法であったところでございますけれども、個人投資家が十分な理解のないままにダークプールを利用しているおそれがあるのではないかということが懸念されるところでございます。

これらを踏まえまして、4ページの一番下でございますけれども、ダークプールのあり方について、今後、対応を検討していくためにも、まずはダークプールの実態の把握を行うための仕組みを手当てする必要があるのではないかと考えているところでございます。

資料の最終ページ、5ページですけれども、当庁のほうでダークプールの実態把握に向けた対応策の案ということで、現時点、このような案を考えているところであるということです。まず1つ目、ダークプールを経由した注文の把握ということでございますけれども、東証のToSTNeTのシステムを活用しまして、立会外市場に注文を出される場合に、ダークプールで対当した注文であることを明示させて、市場の規模を把握することができないかということを1つ考えております。

それから2番目に、ダークプールの運営情報の開示等ということでありますけれども、最良執行方針というのがございますけれども、金融商品取引業者がその活用するダークプールの参加者情報、参加基準、拒否事由であるとか、または、その取引ルールの詳細、またダークプールそのものの運営者の自己勘定取引があるかどうかといったものを開示、公表させてはどうかということを考えております。

また、注文の執行に当たりまして、デフォルトでダークプールの利用が可能となっている場合には、個人顧客がダークプールを使っているということを考えないままに使われているという可能性もありますので、この旨を顧客に確実に理解させる必要があるのではないかという案も考えております。

また、括弧がございますけれども、これをさらに厳しくというか、進めますと、顧客から主体的なリクエストがなければ、ダークプールを利用させないこととするといった運用というものもあり得るのではないかということであります。

それから、3番目に価格改善の実効性の確保というところでございますけれども、ダークプール内で対当いたしましてから、立会外市場で約定すると、ここまでどうしてもタイムラグが生じますけれども、対当時の参照時間であるとか参照価格を記録・保管させることによりまして、少なくとも対当の時点では立会市場よりも有利な価格であったということ、つまり価格改善ができていたということを確認できるようにするということができないかということを考えております。もちろん、顧客が価格改善以外のメリット、大量のものを素早く売りたいというような、そういう要望があったような場合は、特に価格改善が必ずしも確保される必要はないと考えておりますが、個人顧客のような場合に、価格改善を求めている場合は、それが確認できるようにするということが必要なのではないかということも考えられると思っています。

さらに、これを進めますと、一番下の括弧でございますけれども、約定時における立会市場の最良価格より有利な価格でなければ、ダークプールから回送された注文について約定しないと、はねてしまうということまで求めるかというところは、また議論があるのではないかということを考えております。

以上、実態把握の方法について案を申し上げたところでございますけれども、本日、関係者の皆様のご意見、それから委員各位のご意見等を踏まえまして、今後さらに検討してまいりたいと考えております。

以上です。

【神田座長】
どうもありがとうございました。

それでは、続きまして、東京証券取引所執行役員の川井さんからお話をいただきたいと存じます。よろしくお願いいたします。

【川井オブザーバー】
おはようございます。本日は、説明の機会をいただきまして、ありがとうございます。東京証券取引所で株式部門を担当しております、川井と申します。

ダークプールですけれども、私どもも事務局からのご説明のとおり、市場をめぐる環境変化の中で、必要な制度化というものを行う時期に来ているのではないかなというふうに考えてございます。本日は、ダークプールの状況や諸外国のルール、これをもとに求められるであろう対応について、ご説明したいと思います。

では、2ページと書いてあるところのダークプールとPTSのシェアの推移をご覧いただければと思います。

このグラフは、東証市場全体を100としまして、PTS、ダークプールの比率を見たものでございます。

ダークプールは、事務局のご説明にもありましたとおり、売り買いの注文を対当したら、これを立会時間中に気配値段を参照しながらToSTNeTにつけ出すといったものでございますので、ここでのダークプールの代金というのは、立会時間中の立会外市場での代金をもとに推計している数値というものでございます。

大きな流れとしては、近年、ダークプールと考えられる、この取引は拡大傾向にございまして、この背景には、機関投資家の利用が進んだことに加え、ダークプールにおいて高速取引行為者を中心とした電子取引の利用というものも進展したものも一因だと思われますけれども、その水準は規制体系が確立しているPTSを超える、または同等のレベルになってございます。さらに、個人投資家にもそのサービスを提供する動きが広がったといったところが大きな環境変化かなというふうに考えてございます。

次のページ、3ページ目でございますけれども、諸外国におけるダークプール規制の状況でございます。

我が国では、ダークプールに特化して、これに対する特段の制度的な整備というものはなされておりませんけれども、諸外国では、既に市場としての特性を踏まえて、業者としての規制に加えて、情報開示、価格規制などの規制の整備がなされておりまして、下表がその一覧でございます。

大きく3つございまして、まず1つ目の情報開示でございますけれども、ダークプールは、いわばプロの投資家の方々が大口注文を円滑に執行するというものでございまして、気配を表示されずに、注文種類も多様で、各社の定める約定ロジックで取り扱われるなど、通常の立会取引のように気配が表示されて、全ての注文を価格優先、時間優先で処理するものとは異なりますので、わかりづらさといった面もございます。そのため、各国で差異はあるのですけれども、広く投資家がダークプールのことを理解して、比較できるように各種の情報の開示や公表が義務づけられてございます。一方で、日本については、個人投資家へのサービスが提供されている現状においても、統一的なルールについては整備されていないのが実情でございます。

次の価格規制ですが、価格規制につきましても、トレードアット・ルールというルールが存在しまして、小口の注文については、主たる市場の最良の気配値段よりも1ティック以上有利な価格で執行することが義務づけられておりまして、欧州では、売りと買いの気配の仲値で執行しましょうということになってございます。これはダークプールが、もともとプロ向けの、匿名性を確保しながら円滑に執行するというものである中、そうした必要性のない小口の注文については、気配が表示された、透明性の高い市場で価格形成がなされるべきという、いわば市場機能的な考え方がベースにありまして、そのため、最良気配値段よりも有利な価格で執行しようというものでございます。

一方で、日本では、ダークプールでの取引価格について、特段のルールは存在いたしません。各社のサービス内容を見ましても、最良気配や、それよりも有利な価格で約定する可能性がありますといった形でうたっているのが実情でございまして、価格改善の実効性という形では担保されていないのが現状でございます。

なお、一番右側に香港がございますけれども、香港は機関投資家について価格規制というものは存在しませんが、個人投資家に対しては、ダークプールの利用自体を禁止しておりまして、その理由を規制当局が明示的に対外公表してございます。例えば、個人投資家がダークプールで有利な価格で執行されたか確認することは困難であって、個人投資家の能力を超えているのではないかといった点や、ダークプールを利用する上では、そのダークプールにおける約定ロジックをきちんと理解することが必要不可欠だけれども、個人にはそれがなかなか難しいのではないかといった点から禁止しておりまして、香港市場では諸外国と異なり、個人投資家の取引が24%ほどと多いということからも、日本は18%ぐらいですけれども、個人投資家についての保護が必要ということで、香港では禁止されているのが現実でございます。

最後の数量規制ですが、こちらは欧米では数量規制が存在しまして、ダークプールの取引高が一定以上のシェアとなると、事実上、ダークプールでの取引が禁止されるというふうな仕組みになってございます。

次のページの4ページに移りまして、諸外国におけるダークプールの不祥事事案でございます。

ここ数年、米国を中心に、ダークプールの不祥事事案が頻発しておりまして、当局からの処分を受けている状況です。

大きく分類しますと以下の3つがございまして、一般の投資家が気配情報を見れないのに、一部の自己取引部門だとか、HFTといった先が見れるような状況になっていただとか、あとはHFTやダークプール運営会社の自己部門が取引には関与しないですよというふうにうたっておきながら、実際には多く関与していたといった虚偽の開示といったもの、また、価格規制などの法令違反といったものでございます。

次に、5ページ目に移らさせていただきまして、先ほど情報開示、ご説明申し上げましたけれども、米国におけるダークプールの情報開示について、少しご説明させていただきます。

米国におきましては、以前から自主的な開示というのがそれぞれのダークプールで行われておりましたけれども、本年1月からForm ATS-NというSECルールによりまして、規制の整備・充実化が図られまして、利用者である顧客の視点でダークプールを理解し、利用を判断するに必要な情報が網羅され、統一フォーマットで横並び比較も可能となっておりまして、誰でも容易に入手が可能な状況に整備されてございます。

内容は、下表にありますとおり、運営会社の情報、運営の情報だとか各種ドキュメントというふうに分かれてございまして、幾つか簡単に解説しますと、参加者情報という観点では、どのような参加者、投資家層が参加しているか、利益相反などの観点から、自己部門や一部のトレーディング・ファームのようなところの関与がないかどうかといった観点でございます。機関投資家の中には、HFTの関与や利益相反などの観点から、自己勘定との間で約定するのをポジティブに受けとめない先もありまして、そういう観点からも開示が求められております。

取引ルールでございますけれども、ダークプールの場合は注文の種類も多く、各社独自のロジックで執行されるため、注文種別の具体的な内容だとか優先順位、あと、お客様にどういうふうに配分するかといったロジックなどについて、詳細な内容が求められております。

その他としては、利益相反に関する事項や、不祥事もあったことから、顧客の機密情報の漏えいの防止体制などについても求められてございます。

このように、個別に開示項目を列挙して求めているのが、米国のほかではカナダやオーストラリアも同様ですけれども、例えば、香港につきましては包括的に求めておりまして、ダークプールの利用を機関投資家に限定していても、情報開示については、ダークプールの利用者に十分かつ包括的な情報を提供して、どのようにダークプールが運用されているのかを完璧に理解させることという内容で規定してございます。このように、アプローチに差異はあれ、お客様が理解する上で必要な十分な情報を公表するということが求められているというものでございます。

最後に、6ページ目でございますけれども、こうした中で、我が国において求められるであろう対応でございますけれども、事務局からの対応策の案のとおり、3つの柱で制度的な整備を行っていくことが適当かなというふうに考えてございます。

1つ目は、ダークプールを経由した注文の把握という観点でのダークプール・フラグでございます。

現状は、取引所につけ出された注文がダークプールによるものなのかどうかということの識別はできないので、個々の取引を含めて、正確な実態把握というのは不可能な状況です。

ダークプールは取引所の気配値段を参照して、かつ市場間で裁定取引をしたり、また、場合によっては気配値段の価格形成自体に関与がある可能性がございますので、単に市場規模を把握するというだけではなくて、立会市場の価格形成とも連携した売買監理や審査が必要となりますので、HFT登録制でもフラギングを義務づけましたけれども、ダークプールでも同様に、その実態把握や売買監理のため、識別のためのフラギングを規則化することとしたいというふうに考えてございます。これが1点目です。

2点目は、情報開示と事前同意でございます。

情報開示につきましては、このワーキングでも議論がありましたけれども、重要な情報のわかりやすい提供だとか、顧客にふさわしいサービスの提供という観点からも必要でございまして、諸外国の規制と同等の、十分かつわかりやすい開示、公表が求められるというふうに思ってございます。

なお、現状、個人について見れば、かなりの投資経験者であっても、一体ダークプールというのは何なのか、また、自分の注文がどういう仕組みで取引されているかを理解できている方というのは多くないのではないかと思います。そういう意味で、個人をも対象とするのであれば、ただ情報を開示すればよいというだけじゃなくて、その内容やメリット、デメリットを十分に理解した上で、明確な意思として選択する仕組みが必要でありまして、いわゆる事前同意、指示を必要とするオプトインという仕組みを制度化することが必要ではないかなというふうに思います。この点については、少々手間になるかもしれませんけれども、そのほうが投資者保護だけではなくて、理解しないままに利用することの防止に繋がる、そのことも考えれば、大切な対応なのではないかと考えてございます。

最後が価格規制でございます。海外では、先ほど申し上げたとおりの有利な価格で執行するという価格規制がございますけれども、日本では、まだ、そのようなルールはございません。また、我々の分析では、各社ごとに現状の価格改善の状況は大きく異なりまして、10%程度価格改善が図られていない先もあれば、95%程度図られていないといった先も現実にございます。特に個人投資家にとっては、主たる市場よりも良い価格で執行できるということがダークプールを利用する唯一・最大のメリットですので、諸外国と同様に、小口注文については、立会市場より有利な価格とする価格改善の実効性の確保が制度化されることが必要というふうに思ってございます。現状、取引所の立会外取引で行われますので、取引所規則で対応することが適当かなというふうに思います。

なお、小口注文の基準でございますけど、諸外国も大体同等でございますけれども、注文数量が50単位未満だとか、あと1,000万未満を小口注文と定義してございまして、こうした水準が適当かなというふうに思ってございます。

こうした価格改善の義務づけを、事務局資料にありましたとおり、店内対当時点で判断するか、取引所での約定時点のどちらにするかという点ですけれども、当方としては、各ダークプールから対当した注文が取引所に出されて、最終的に約定する時点で判定するほうが、約定結果通知をもとに投資者が評価する上で、また透明性だとか実効性の観点からは好ましいのではないかなというふうに思っております。

なお、事務局資料で店内対当時ということでご提案をいただいておりまして、店内対当時の最良気配値段をもとに価格改善を義務づけて、それがきちんと果たされているかを記録、保管するという案も提示されておりますけれども、当方としても、これも1つの方法ではないかなというふうに考えてございます。

ただ、その場合に十分留意すべきなのは、各ダークプールで最良気配の受信だとか、注文処理のシステムの仕組みや性能などについてはばらつきがありまして、そうした投資家からは見えない中で、店内対当時に判断されるということになります。そのため、統一的な定義、基準のもとで、投資家がきちんと自分の注文の価格改善が果たせたかどうかということを事後的に取引報告書などで知ることができることや、各ダークプールの比較ができるといったことも適当ではないかなというふうに思ってございます。そのためにも、もとより気配値段の受信処理が遅延して判定したり、処理されることがないよう、システムの性能面での対応や管理、あと詳細なタイムスタンプの保持、また時刻同期など、価格改善の実効性確保、あと投資者への詳細な説明、さらには事後検証といった観点からの対応が必要になってこようかなと思ってございます。

説明は以上でございますけれども、ダークプールについてご説明申し上げましたベースとしての制度的な整備を行うことは、適切な形でいろいろな執行サービスが提供されることになりますし、それによって投資者の真の利便性向上や市場全体の健全な発展につながるものと考えてございます。取引所としても、今回の制度化を通じて、実態の把握、あとは売買監理の徹底など、市場の公正性といった観点からも、その役割を果たしていきたいと考えてございます。

少々長くなりましたけれども、説明は以上でございます。

【神田座長】
どうもありがとうございました。

それでは、続きまして、みずほ証券、エクイティ本部共同本部長の渡邉さんからお話をいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

【渡邉参考人】
おはようございます。みずほ証券の渡邉でございます。本日は、このような機会をいただきまして、ありがとうございます。

それでは、早速でございますけれども、弊社、みずほ証券のダークプールについて、簡単にご説明をさせていただきたいと思います。資料の3とナンバリングした資料を使って、ご説明申し上げたいと思います。

まず、資料1ページ目をご覧ください。

株式の注文執行サービスの一環としまして、弊社では、お客様のご注文を他の注文と店内でシステム的につけ合わせまして、取引所立会外クロスにおきまして約定いたします、いわゆるダークプールのサービスを2013年8月より運営開始しております。運営開始当初は、国内外のホールセール、すなわち機関投資家のお客様対象にサービスを提供してまいりましたが、2015年の5月より、国内のリテールのお客様へも、このサービスの提供を開始してございます。

資料の2ページ目にお移りいただきまして、当社のダークプールの特徴について、簡単にご説明申し上げます。

まず、当社のダークプールの特徴といたしましては、今申し上げましたように、ホールセールと、あとリテールのお客様の両方が参加しているという点かと思います。したがいまして、ダークプールへのアクセス方法も、ほとんどの機関投資家のお客様が利用されている、いわゆるFIXプロトコルによる電子的な発注方法に加えまして、店頭あるいは電話等によってお客様からご注文を受注し、当社の職員がマニュアルで発注するといった形態にも対応してございます。また、取引所に比べまして、小さい呼値単位でのつけ合わせを採用しておりまして、立会市場の最良気配、すなわちBBOの内側で約定するといった条件を設定できたり、あとダークプールを利用することによって、取引所で板を待つ時間を低減させるという、いわゆるキュージャンプといった効果を得る機会もご提供申し上げております。

こうした当社のダークプールをご利用いただいた注文に関する取引データ等は、一定期間、保存しておりまして、お客様のご要望に応じまして、過去の取引状況について、情報をご提供できる体制を整えております。

資料、次の3ページ目にお移りいただきまして、当社のダークプールの運用状況についてでございますけれども、まず、当社ダークプールの仕様概要について、このページの一番上にまとめてございますが、立会市場のBBO内での約定、あるいは呼値単位を立会市場に比べまして小さくしますスモールティックのご提供、サービス提供の時間等々、他社が一般的に提供している仕様とほぼほぼ同様の仕様をご提供しているという状況になっております。

あと、弊社のダークプールの規模でございますけれども、1日当たりの売買代金は、大体数百億円規模で推移しているといった形でございます。

クロス率、あるいはその価格の改善状況でございますけれども、これは相場状況だったりとか、あるいは注文の内容によって大きく変動いたしますけれども、過去1年間、平均値をとりますと、クロス率が大体40%程度、BBOよりも価格改善した率というのが80%ぐらいになっておりまして、その幅が、約数ベーシス・ポイントといった形になっております。

リテールのお客様についてでございますけれども、当社で株式の取引をいただいておりますお客様の0.5%程度のお客様が、このダークプールのサービスをご利用いただいているといった状況になっております。

続いて、資料4ページでございますけれども、投資家への説明、あるいは外部への公表状況でございますけれども、まず、お客様への説明について、このページの表にまとめてございますように、まず事前説明といたしまして、ホールセールのお客様に対しては、ダークプールの仕様説明を兼ねました同意書、これをeメールで送付させていただきまして、同意の旨、返信を受けて、サービスを提供開始させていただくという形をとっております。一方、リテールのお客様でございますけれども、リテールのお客様に対しましては、当社の営業担当者が取引説明書を使いまして、取引内容をお客様に対して十分説明をした上で、ご同意いただいたお客様については、いわゆる同意書をご提出いただくという形でサービスを提供させていただくという形をとってございます。

一方、事後説明についてでございますけれども、取引報告書におきまして、ダークプールでの執行があった場合には、これを明示させていただいて、ご報告するといったことをやっております。

そのほかにも、価格改善効果、あるいはその他の運用状況の情報等については、お客様からのご要望に応じて対応するといった体制をとっております。

なお、Web等を使いまして、無制限に閲覧者を対象者にしたような公表というのは、現在のところ、当社ではやっておりません。

最後、ページ、5ページ目でございますけれども、ダークプールの対応策について、若干コメントさせていただきます。

まず1番目のダークプールを経由した注文の把握といったことでございますけれども、注文に何らかのフラグ等を立てて、ダークプールの全体規模、あるいはその推移を把握することについては、特段、違和感はございません。

2番目のダークプール運営情報の開示についてでございますけれども、これは利用者がダークプールを正確に理解して、より有効にご活用いただくといったことに必要な情報はぜひ開示すべきかというふうに考えております。そうした意味で、特にリテールのお客様に対する事前説明と、あとご意向の確認といった部分は非常に大事な部分かと思います。したがいまして、ここら辺の、ある意味、ルール化というのは必要なのではないかというふうに考えております。

ただ一方で、これは各論にはなろうかと思いますけれども、過度な情報開示といったことによりまして、ダークプールの運営自体が必要以上に制約されてしまわないように、ここら辺は丁寧な議論が必要なのではないかというふうに考えております。

最後、価格改善の実効性でございますけれども、価格改善につきましては、運営会社、証券会社が取引に関する諸々のデータ、例えば、つけ合わせ時の参考価格あるいは参照時間、これについては一定期間の保存をするといったことによって、事後の検証がしっかりとできるような体制を整えまして、その実効性を確保するといったことが必要なんじゃないかというふうに考えております。

一方、ダークプールでの約定を立会市場のBBOの内側にするといったことをルール化するといった案もあろうかと思いますけれども、先ほども申し上げましたように、ダークプールのメリットというのは、価格改善に加えまして、例えば、インパクト低減の効果あるいは執行のスピードをご提供するといったような、利用者に応じまして、多様な目的が考えられますので、これも広く、そういった多様なメリットも考えつつ、議論が必要なのではないかというふうに弊社では考えてございます。

以上、駆け足ではございますけれども、弊社のダークプールの取り組みについて、ご案内させていただきました。ありがとうございます。

【神田座長】
どうもありがとうございました。

それでは、続きまして、クレディ・スイス証券のヴァイスプレジデントの東海林さんからお話をいただきます。どうぞ、よろしくお願いいたします。

【東海林参考人】
ただいまご紹介にあずかりました、クレディ・スイス証券、エレクトロニック・トレーディング部の東海林と申します。今から5分ほど、私からダークプールの運営に関してのお話をさせていただきます。限られた時間ですので、早速、弊社のダークプールの概要からご説明をいたします。

配付資料の3ページ目をご覧ください。

弊社のダークプールは、Crossfinderという名称で提供しておりまして、対象ユーザーは、弊社で口座開設をしていただいた全ての機関投資家及び社内の自己勘定トレーダーということになっております。

デフォルト設定に関しましては、また後ほど詳細をご紹介いたしますが、海外籍の機関投資家に関しましてはON、国内籍の機関投資家に関してはOFFとさせていただいております。

なお、設定方法ですけれども、基本的には各担当者から設定のご指示を口頭でいただいて、それからの設定になりますが、次のページでご紹介するオプション等で、細かい設定が発生する場合には、文書で指示をもらうようにしております。

基本的なルールですが、まず第1に東証のBBO内でのクロスがございます。その他、項目に関しては記載のとおりですので、後ほどご覧いただければと思います。

次の4ページに移りまして、ここでは先ほど申し上げた設定可能なオプションに関してのご説明をさせていただきます。

ここでは、主な3つのオプションを紹介しております。

まず1つ目が、Mid or Betterの設定。これは東証のビッド・オファーの仲値、またはそれよりも有利な値段でのみのクロス設定になります。つまりは、例えば、買いのご注文であれば、0.5円よりも下からベストビッドまでの範囲内でのみのクロスということになります。

続いて、カウンターパーティの制限です。これはクロスの相手方となる、いわゆるカウンターパーティの指定、制限が可能になっております。具体的には、いわゆるHFTという顧客タイプに属するシステマチックのフロー、それから自己勘定のフロー、そして、それ以外の全てのナチュラルの委託フローというぐあいにフロータイプで分けて、その中から、どのタイプをクロス相手の対象として外すのかというような設定が可能になっております。その他に関しましては、また後ほど、記載をご確認いただければと思います。

次のページに移りまして、運営情報の開示・公表に関してですけれども、弊社では、ご覧のようなダークプールのユーザーガイドをつくっておりまして、日本を含めた各国で配布をしております。このユーザーガイドには、今ご説明させていただいたルール、それからオプション設定のほかに、リスクの説明等にも言及しておりまして、ダークプールをご利用いただく全ての顧客に内容を確認していただいておる次第でございます。

次の2ページに関しましては、時間の関係で詳細は割愛させていただきますけれども、弊社では、ダークプールの約定明細、それが6ページ目ですね。それから、7ページ目のようなダークプールの透明性を確認いただけるようなレポートを、これは顧客からのリクエストベースでご提供しているところでございます。

非常に駆け足になってしまいましたが、まとめとしまして、次のページ、ダークプールの運営における対応策に関するクレディ・スイスの見解を述べさせていただきます。

最初に、ダークプールの約定のフラグによるシェア把握ですけれども、現在のように単純なToSTNeTのフラグですと、ダークプールでの約定なのか、それともいわゆるブロックトレードによるものなのか、これが判明しないため、ダークプール専用のフラグを立てて、それによってダークプールのシェアが明確になるということに関しては、非常に良いことだというふうに思っております。

続いて、2番目の運営方法の開示・公表に関してですけれども、このこと自体は、先ほどご説明したように、弊社が既に行っているようなことですので、必要なことだとは思います。ただし、どの程度のレベルかということに関しては、弊社としては、欧米レベルの開示要件はあまりにも多過ぎるという印象ですので、香港などのアジアレベルの開示要件が適切だというふうに考えております。

次に、オプトインによる明確なダークプール発注指示に関してですけれども、まず、海外のお客様に関しては、既にほかのマーケットでの取引実績、それからダークプールの利用実績というのが豊富にある場合がほとんどですので、オプトアウトでダークプールをご利用することに問題はないというふうに考えておりますが、反対に、国内の顧客に関しましては、日本株のみが取引対象となっている場合も多いので、ダークプールの設定は、その都度、確認するオプトインが望ましいのではないかというふうに考えております。

最後に、価格改善の担保に関してですけれども、これは弊社の考えとしては、各ダークプール運営ブローカー自身が、それぞれのシステム上でチェック、ブロックをかけることが必要不可欠だというふうに考えております。例えば、オーストラリア証券取引所のように、取引所自体によるリジェクトを行う市場もありますけれども、日本においては、あくまでもBBOの範囲内でのクロスというルールのもとで、各ブローカーが取り組みをしっかりとしていれば問題はないというふうに考えております。

以上、非常に駆け足になってしまいましたが、私からのダークプールのご説明を終わらせていただきます。ご清聴ありがとうございました。

【神田座長】
どうもありがとうございました。

それでは、委員の皆様方から、ご質問、ご意見をお出しいただきたいと思います。

大崎委員、上柳委員の順で、大崎さんからどうぞ。

【大崎委員】
ありがとうございました。

川井さんに1つご質問させていただいて、その後、私の意見を申し上げたと思います。

東証としてのご提案で、立会市場よりも有利な価格とすることを制度化しという、取引所規則で対応というふうに書いておられるのですが、これはおっしゃっているのは、どの時点で立会市場と比較するかはともかくとして、有利でないと判定した場合には、ToSTNeTでの約定を拒否して、発注証券会社に差し戻すということをお考えなのでしょうか。

【川井オブザーバー】
幾つかアプローチあるというふうに考えておりまして、1つは、今おっしゃったとおり、我々のほうで最良気配との比較で、来た注文、クロスで出された注文を判断して、リジェクトするという方法があろうかと思っていて、それは先ほどクレディ・スイスさんがおっしゃられたオーストラリアタイプだと思うのですけれども、最終的に、いろいろなところから出されたものを取引所自身でチェックできますので、透明性だとか公平性という観点からは好ましいのではないかなと考えております。

ただ、一方で、事務局もそうですし、みずほさん、クレディさんからもおっしゃられたとおり、参加者、ダークプールの中で最良気配というものの中で約定していくことを義務づけるということについても1つの方法であろうかなというふうに思っていまして、それをルール化する、そのときの取引記録について求めるというのも1つのアプローチかなというふうに考えています。

【大崎委員】
少なくとも私は取引所でリジェクトするという方法は、ダークプールが価格改善だけを100%望む人ばかりではない、それこそ大口注文のマーケットインパクトを低減するというニーズから歴史的にも出発してきたということを考えると、即時執行を排除してしまうような仕組みは全く好ましくないというふうに思います。

また、皆さんが、BBO、BBOと盛んにおっしゃっているのですが、私、ちょっと気になりますのは、日本には東証さん以外にも株式を上場している金融商品取引所がございまして、札幌、名古屋、福岡と3カ所ありまして、それぞれの市場の注文状況を確認した上で発注している証券会社とか機関投資家さんというのがあるのかという根本的な問題がございます。東証のBBOとの比較だけで良いとか悪ということをあまり言い過ぎると、各地方取引所も含めたナショナルBBOというのはどうなのかという、正直に言えばあまりやる意味のない議論に突入してしまう気がしまして、私は少なくとも日本の現状において、価格改善ということにあまりにこだわり過ぎるのは、特に機関投資家注文も含めた場合、かえって弊害が大きいのではないかなと考えております。

その上で、ちょっと事務局から挙げていただいた対応策についてコメントしたい、意見を申し上げたいのですが、まず、前はダークプールについては従来どおりでいいのではないかとしていながら、この時点で何らかの制度対応が必要だという議論をするということ自体、私は大賛成でございます。一番大きな理由は、個人投資家の注文をダークプールに回送するという動きが出てきているということでございまして、これは機関投資家がいわば完全な自己責任と証券会社との対等な交渉能力のもとでやっていたものが、そういう状況ではなくなるということですので、制度対応は必要であると思っております。

1番目に挙げられました、ダークプール注文にフラグを立てるということ、これはもう全く賛成でございまして、ぜひやっていただきたいなと、私みたいな統計でグラフをつくったりすることを仕事にしている人間からしても、今のところダークプールのシェアというのは推計しかできませんので、ぜひ、きちんとやっていただきたいなと思っております。

次のダークプール運営情報の開示でございますが、何らかの情報というのは要るんだろうというところについては私も異議はないのですけれども、例えば、これを個人投資家保護という観点から開示するのであれば、詳しくやることにあまり意味はないと思っております。むしろ、個人投資家の保護という観点ですと、証券会社サイドの、どういう場合にダークプールに注文を回送するのかという、そこをはっきりさせることのほうが大事だと思っておりまして、例えば、東証の最良気配よりも価格改善が見込める場合にのみダークプールに回送しますというようなことを最良執行方針に記載して開示するというのはいいでしょうし、その場合、回送先となり得るダークプールは以下の3つなり4つであって、それぞれはこういう、例えば、運営会社がクレディ・スイス証券会社さんですとかいう、そのぐらいは必要だと思うのですが、これ、うんと詳しく開示しても、果たして意味があるのかというのは大いに疑問だと思っております。むしろ、そういうことに関心を持つ個人投資家さんがおられたら、それは証券会社に問い合わせて、証券会社からダークプール運営会社に問い合わせて、可能な範囲で資料提供するというような対応をしていただくのがいいかなと。

また、機関投資家さんは既にやっておられると思いますけど、当然、自分がそのダークプールを利用するかどうか判断する上で、非常に詳しい説明を求める方もおられれば、適当にやっといてという方もおられる。それは機関投資家の自己責任ということでいいのかなと思っております。

また、デフォルトでダークプールの利用が可能となっている場合云々、オプトイン、オプトアウトという話ですが、これも基本的には私はオプトインという考え方が適切だと思うのですが、ただ問題は、デイトレーダーと呼ばれるような人たちが利用しているようなオンラインサービスで、発注の都度オプトインすべきかというのは、これは若干疑問があって、下手をすると発注画面が1枚増えるということになるわけで、つまり、通常でしたら、ぱっといけたものが、何か新しい画面が出てきて、ダークプールへの回送を希望しますか、しませんかと聞かれるので、マウスをクリックするなどして対応しなければならない。それでは今の非常にスピードの速いマーケットでトレードをしたいという、それがいいか悪いかは別としてですが、したいという個人投資家の方からすれば大変なストレスになるわけでありまして、もう少し包括的な形で、どこかの段階でオプトインする仕組みが必要ではないかと思います。ただ、口座開設時に1回、ダークプール回送の可能性を了承しますというのをティックすればいいというのは私はちょっと行き過ぎだと思うのですが、例えば、年に1回確認をするとかですね。これはただ、証券会社各社が顧客本位の観点から適切な方法を考え、それを顧客本位のやり方になっているかどうかを監督していただくというのがいいのかなと、あまり硬いルール化はしないほうがいいのではないかなと思っております。

それから、最後の価格改善でございますが、先ほどちょっと申し上げたこととも関係いたしますが、私は機械的な価格改善を、特に東証立会市場との関係だけで要求していくことはあまり適切ではないと思っております。

ただ、先ほど申し上げましたように、例えば、オンライン証券会社が、個人の注文については、自分で東証の立会市場に比べて価格改善があるという場合に限って回送するというようなことを明確にしていくことで投資家保護を図るべきだと思います。

機関投資家に関しては、繰り返しになりますが、価格改善以外にも、いろいろなニーズございますので、一律義務づけは適切ではないと思います。

最後に、長くなって申しわけないのですが、どなたもおっしゃらなかったことなので、ぜひ言っておきたいのですが、ダークプールは注文執行の場、ベニューという意味では、PTSと競合する、もう一つの取引所に対するオルタナティブという位置づけになると思うのですけれども、このPTSにおいて、従来は個人投資家の信用取引注文は取り扱わないということが監督指針で定められておりましたが、市場ワーキング・グループでの審議も踏まえて、今般、それが変わることになっております。多分、この夏ぐらいから信用取引を取り扱うだろうと言っております。

それについて、どういう形で信用取引を認めるべきか、証券業協会でも議論したのですけれども、結論として申し上げますと、いわゆる一般信用取引は取り扱わない、制度信用取引に限ると、そういう整理になっております。これは何かと申しますと、PTS運営会社と注文を集めてくる証券会社との間に、例えば、親子関係とかがあったりしまして、ここに一般信用取引認めますと、親会社である証券会社が信用を供与して、それでPTSで信用取引が活発に行われるというようなことになりますと、言ってみれば証券会社と顧客の間の利益相反が顕在化してしまうという、こういう問題があるので、その可能性が低い制度信用に限って認めると、こうしたのですね。ダークプールの場合は、運営会社と証券会社が親子どころか一体であるということもしばしばあるわけで、つまりダークプール運営の証券会社さんがリテール口座も持っているという場合もあるわけですから、ここに一般信用取引をやってもらうというのは、PTS以上に利益相反の可能性が大きいわけですね。ですので、全然どなたもおっしゃらなかったのですが、ダークプールに信用取引注文を回送するという場合には、これは制度信用の注文に限るというふうにしたほうがよろしいのではないかと私は思います。

長くなりましたが、以上でございます。

【神田座長】
どうもありがとうございました。

上柳委員、どうぞ。

【上柳委員】
私、結論としては事務局の方向性に賛成です。実態把握をした上で、情報開示をきちんとすること。この点について、香港程度でというご趣旨のご発言もクレディ・スイスさんからありましたけれども、香港は基本的には個人投資家の参入、あるいは小口投資家の参入が制限されているということは踏まえなければいけないと思います。

それから、価格についても、きちんとした規制が必要であり、その際に、記録の問題ですけれども、これはやはり事務局がおっしゃるように、対当時の記録が残ってないと、後で検証はしにくいのではないかというふうに思いました。ただ、システムの問題があるのかもしれません。

加えて、2つ質問がありまして、1つは事務局にですけれども、私の理解では、もともとこのダークプールというものは、法人向けといいますか、大口向けということで、解禁というのか、運営がされていて、知らない間に個人取引も入ってきたと言うと語弊があるのかもわかりませんが、もともとの趣旨はどうだったかということの確認と、なぜ、それが許容されてきたのか、そこの仕組みがもしわかれば教えていただきたいと思います。

それから、もう1点、クレディ・スイスさんへの質問なのですが、個人投資家との関係での取引がないということなのかもわかりませんが、この資料を見させていただきましたら、2016年1月に問題を起こされているということで、これは批判する趣旨ではなくて、どういう点が御社のような会社でも問題になり得るのか、どういうことを改善されたのか、もしお手元で情報がありましたら教えていただきたいと思います。

以上です。

【神田座長】
それでは、質問があった点について、事務局。

【菅昌市場機能強化室長】
ダークプールの件ですけれども、もともとは機関投資家が大口注文の際に、最終的に売り捌くために始まったものだというふうに考えておりますけれども、こちらの説明でも示しましたが、新技術がありまして、コンピューターで取引ができるようになってきた関係で、個人のほうにも活用の場が増えていったものというふうに理解しております。

【神田座長】
よろしいでしょうか。

では、クレディ・スイスさん、どうぞ。

【東海林参考人】
先ほどの委員のご質問ですけれども、米国における先ほどの資料の指摘にありましたのは、HFTのお客様に絡んだところでの情報開示だったかと思います。これに関しては、先ほど私からのご説明でも述べさせていただきましたが、米国の情報開示の要件というのが、かなり多岐にわたっていて、我々ブローカーとしても、かなり対応が大変なほどの数、量になっております。その中で、我々クレディ・スイスの米国のほうで、お客様への説明の義務を怠ってしまったと、説明しなければいけないところの部分が抜けてしまっていたということでの事案だったかと思います。東京に関しては、先ほどおっしゃられたように、基本的には機関投資家のお客様とのおつき合いしかない状況です。

我々の見解としては、先ほども申し上げたように、例えば、香港、SFCが求めている情報開示の要件、これに関して、我々東京法人としては必要十分だというふうに思っておりますので、今後、もし、こういった議論で情報開示をどのレベルまでするかということに関しては、クレディ・スイスの見解としては、香港のようなレベルが適切なのじゃないかというふうに考えております。

【神田座長】
よろしゅうございますでしょうか。

【上柳委員】
はい。

【神田座長】
ありがとうございます。

それでは、札を立てていただいている順番だと思うのですけれども、野村委員、鹿毛委員、永沢委員、中野委員、野尻委員、黒沼委員、竹川委員、神作先生の順で、大変申しわけないのですが、そこまでとさせていただいて、その後、次のテーマに移らせていただきますことをお許しいただきたいと思います。

野村委員、どうぞ。

【野村委員】
ありがとうございます。非常に手短に。

多分、私があまり理解できていないということにすぎないのだと思うのですけれども、先ほど来ありますとおり、もともとの経緯ということからすると、個人向けのダークプールの意味というか、意義やいかにというところが、いまひとつ、ぴんときていないこともあるわけですが、今回取り上げられたのは、そうはいっても、個人向けに普及する形になりそうだということだと理解しております。心配し過ぎなのかもしれませんけれども、そういう形で、個人という形で世の中に出て、何かの拍子で、ダークプール自体がネガティブにとられてしまったりですとか、もともとの大口・機関投資家向けも含めていかがなものか、やめたほうがいいのではないですかといった、違った方向の議論になることだけはないようにする必要があるという所感を持ったところでございます。

以上です。

【神田座長】
どうもありがとうございました。

それでは、鹿毛委員、どうぞ。

【鹿毛委員】
は、これまで、どちらかといいますとセルサイドの議論が多いと思いますので、若干、バイサイドのコメントを申し上げます。

機関投資家、年金等の資金運用を預かる運用機関の場合、最良執行の受託者責任がありますので、基本的には、今日、事務局、あるいは東証さんからご指摘のあったような情報開示については、方向性としては望ましいと思います。現状のダークプール取引においては、取引内容や価格について最良執行であることの裏づけが、必ずしも明快でないので、そうした点について一層の開示が必要という意見がありました。

それから、細かいことですが、対応している証券会社の中での情報管理について、どういうルールがあるのかということについての若干の心配があるようです。ダークプール取引についての社内の情報管理がきちんとされているということが信頼感も高めるのではないかという感じです。

ところで、プリミティブな話で恐縮ですが、大口機関投資家の場合は、大口注文の円滑処理ということで、確かにこういった取引のメリット、特に価格改善効果というのも想定されるわけですけど、個人や小口取引の価格改善というのは、具体的にはどういうことなのか疑問があります。つまり、取引は売りと買いと両方あるわけですから、買い注文に価格改善があったとしたら、その反対取引は価格改悪があるわけですよね。実はトータルとしては、これゼロサムゲームではないのかなというのが素朴な疑問ですが、どなたかお答えいただければありがたいです。

以上です。

【神田座長】
ありがとうございました。

それでは、川井さん。

【川井オブザーバー】
ダイレクトなお答えになるかわからないのですけれども、おっしゃるとおり、買い手がちょっと有利であれば、売り手が不利な部分がありますので、そういう観点からだと思うのですけれども、MiFID 2では、最良気配を参照して取引を行うという、参照価格方式でつける場合については、売り買いの仲値ということで、双方がイーブンな形で約定ができるように求めているという制度がございます。

【神田座長】
どうぞ、渡邉さん。

【渡邉参考人】
おっしゃるとおり、価格の改善があれば、その裏には価格の改悪があるというところだと思うのですけれども、お客様によっては、多少、例えば、仲値よりも不利な値段でも、そのときの流動性が必要だといったお客様の志向もございますので、そういった志向によって、うまくマッチングするといったところで、改善を希望するお客様と、改善ではなくてというか、流動性をより重視した、流動性がオーダーとマッチングして約定に至るといった理解でございます。

【神田座長】
よろしゅうございますでしょうか。

【鹿毛委員】
はい。

【神田座長】
ありがとうございました。

それでは、永沢委員、どうぞ。

【永沢委員】
ありがとうございます。

まず、みずほ証券様に2点質問させていただいた後に、事務局説明資料に若干のコメントをさせていただきたいと思います。

まず、みずほ証券様への質問ですが、ご提示いただいた資料に関して2点ほどございます。まず、3ページ目のところの3番目に、「中値オアベター率」は80%超にて推移という数字を出していただいておりますけれども、この数字というのは、リテールの顧客を対象としたときに、業界全体として、どのような数字として評価されていますでしょうか。これはよいほうなのでしょうか。業界全体の数字を持ち合わせていないものですから、この80%超にて推移というのが、個社固有のものなのかどうかというところを、まずお答えいただきたいと思います。

それから、2点目は、次の4ページ目でございますけれども、今ここに出てきていらっしゃる各社様は、同意書の提出だとか、個人ビジネスはやっていないとおっしゃっていましたけれども、それは業界で一般的に行われていることなのかどうかをお尋ねさせてください。先ほどの事務局の資料によりますと、デフォルト云々という話も出てきておりましたけれども、一般個人を対象としたリテール・サービスとしてこうしたサービスを提供されている社においては、先ほどご説明があったような措置というのは、どの程度一般的なのかという2点について、お答えいただくのは事務局か、みずほ証券か、どちらが適当かよくわかりませんけれども、情報提供をお願いしたいと思います。

続いて、意見を申し述べさせていただきます。今回審議対象となっているダークプールについては、前回の市場ワーキング・グループでも議論しており、そのときに、どなたからか意見もありましたけれども、自己責任が徹底している機関投資家の行うものだから、あえてそこまで規制を入れる必要はないのではということで、そのときには終わったと記憶しておりますが、今日お話しいただいた情報によりますと、一般の個人投資家向けにもダークプールの利用がが始まっており、その利用も広がっていることという実情に鑑みますと、事務局資料の3ページ目の一番下にある、環境変化が生じていると考え、制度的な対応を真面目に検討する時期に来ていると私は思いました。

細かいことですが、4ページ目の懸念させる点のところですが、個人投資家が十分な理解のないままじゃなくて、認識がないままというところが特に問題になっていると私は思いますので、今回事務欲より挙げていただきました、後ろの3つの項目については、いずれも検討すべき項目であると思います。

また、運用の情報開示と価格改善の実効性の確保のあり方については、いろいろお話を聞いていますと、議論があるようですので、私としては、こういう場ではなく、一般の個人顧客でダークプールを利用されている方なども交えた上であり方について検討されてはどうかと思います。

また一方で、もともと個人のための市場ではないので、個人投資家の保護を重視するあまりにこの市場を殺すようなことがあってはならないのかもしれないとも感じました。

最後に、こうしたサービスが個人向けにサービス提供が宣伝され始めているようではございますが、機関投資家も利用するとか、何か価格改善があるというような形容詞をつけて、さもいいサービスであるかのようなPRがされているとするならば、その辺は自粛されて、個人を参加させることについては慎重に様子を見ていくことや、情報を集めた上で、望ましいルールを入れていくことが必要ではないでしょうか。繰り返しになりますが、それはかたいルールではなくて、もう少し柔軟なルールである必要があるのかもしれないというふうにも感じたところです。

以上でございます。

【神田座長】
どうもありがとうございます。それでは、ご質問のあった点について、渡邉さん。

【渡邉参考人】
ありがとうございます。

まず、最初のご質問についてですけれども、資料3ページ目、クロス率、価格改善の状況の中で、議題にございますように、仲値オアベター率が80%というふうに記してございますけれども、ご質問は、これが例えば他社比較でいいものかという部分だと思いますけれども、先ほどのご質問ともかかわってくると思うのですが、違う言い方をしますと、仲値オアワースが、やはり80%あるといったことでございます。

ここで何を私申し上げたかったかというと、これが他社さんと比較して、いいのか悪いのかというのは、他社さんのデータ等が開示されていないので、これはわからないのですが、先ほど申し上げましたように、価格改善を希望されるお客さんに加えて、流動性を求めて、我々のダークプールをご利用いただいているお客さんもいると。すなわち、多様な流動性が弊社のダークプールにはございますといったことが申し上げる趣旨で、ここにこういった数字を出させていただいております。

ご質問のお答えとしては、他社の数字が公表されていないので、他社比較というのは、ちょっとわかりかねますといったことでございます。

ご質問の2点目、資料の4ページ目でございますけれども、中段の表にございます事前説明のところで、弊社、説明のところ、プレゼンテーションのところでご説明申し上げましたけれども、お客様に、特にリテールのお客様に対しては、営業担当員が取引説明書をもって取引内容についてのご説明を申し上げた上で、ご同意をいただいたお客様から同意書といったものを受け入れた上でサービスを開始するといった形をとっております。これが他社の、特にリテールのお客様へダークプールを提供されている方々と比較して丁寧なのかというのも、他社さんの、今、内容についての詳細を、すいません、把握しておりませんので、コメントなかなかできないのですが、弊社としては、でき得る限りご利用いただくリテールのお客様に、弊社のダークプールの内容、取引内容、これを十分ご理解いただく努力を尽くして、ご同意いただいて、ご確認をいただいた場合に限りサービスを提供させていただいているといった形でございます。

以上でございます。ありがとうございます。

【神田座長】
ありがとうございます。

事務局よりございますでしょうか。

【菅昌市場機能強化室長】
価格改善の状況につきましては、今、みずほ証券さんからの説明もございましたけれども、いろんな投資家のニーズもございますし、各社において、いろいろばらつきがあるものというふうに聞いております。

それから、説明の方法でございますけれども、みずほ証券さん、今ありましたけれども、きちんと事前に説明しているというのもあれば、最良執行方針の中で、ダークプールにこれを取り次ぐということを特に明示しないままに、いろいろな市場によって有利なところがあれば、そちらに発注しますというような、自分が発注する先がはっきりしないままに説明がなされているという例もあるのではということで把握しているところでございます。

【神田座長】
ありがとうございました。

では、中野委員、どうぞ。

【中野委員】
すいません。中野でございます。

テクニカルな議論がたくさん出ておりますので、ごくシンプルに。そもそもの、このダークプールという制度、仕組み自体の原理原則と存在意義に立脚して、ちょっとお話をしたいと思います。

私ども、例えば、投資運用業者にとって必要な存在、これがもともとのダークプールの存在意義だったと思いますが、1つは顧客の資産に対する最良執行義務であること。そして、もう一つは、それを担保するものでありますが、大きなポジションの構築と解消、これを可能にすること。ということであれば、当然、この制度は、いわゆる機関投資家、インスティテューションに向けた制度であるであろうというのが原理原則であろうと思います。

そして一方で、ブローカーとしてのダークプールの存在意義で言うと、ブローキングとは何のために社会的な機能があるのかということであれば、一番大きな機能は、市場における流動性を提供するということにあり、この2つの機能、あるいは社会的使命に鑑みますと、価格規制は一定の部分、例えば、小さな取引であれば必要でありましょうが、では、先ほどからの議論の中で、必ずしも、ほんとうの意味での価格の改善だけを求めたことではないということは、機関投資家の日々の行動においては考えなきゃいけないことであろうと思います。

一番、今の日本のダークプールにおいて欠落しているのは、やはり透明性における部分の最低限の部分が欠けていると思います。言ってみれば、手口がわからないといいますか、取引そのものは後で出てくるのですけど、どのブローカーがどうだかわからないといったことなので、基本的には、まずブローカーの実績というものをつまびらかにすることで、法令違反等も防げる一助になるでしょうし、何より、これが見える化なるものの第一歩であろうと思います。一定の見える化がダークプールにおいても必要でありましょう。

それから、もう一つ、機関投資家、大口の流動性確保ということに前提があるのであれば、個人投資家の取引が、ダークプール経由で必要かどうかということが、議論されるべきだと思うのですが、これは先ほど申し上げた流動性の提供というブローキングの社会的機能に基づけば、小さい取引は、やはり取引所に戻すべきだと考えます。僕自身は、そこへの一定のルールづくり、峻別が、原理原則においては求められることなのかなと思います。

それから、最後にMiFID 2が1つの規制のゴールなのかもしれないですけど、日本において、ダークプールは一体どれだけの大きさを果たしているかといえば冒頭のお話にあったとおり、せいぜい5%程度ですか。逆に言うと、価格形成機能は専ら東証さんが9割ぐらいのシェアを持って果たしているということでありますから、今そこを深く議論していく必要はそれほどないでしょう。この比率が1割を超え、2割に近づいてきたら改めて、この重要性を議論すればいいのではないでしょうか。

以上でございます。

【神田座長】
どうもありがとうございました。

それでは、野尻委員、どうぞ。

【野尻委員】
ありがとうございます。

自分の知識の不足があるので、ちょっとお恥ずかしい質問なのかもしれないんですが、個人投資家と機関投資家を分けた議論をする場合、どこら辺で線引きができるのかというのが、ちょっとよくわかっていません。先ほど、みずほ証券様の資料では、リテール口座の0.5%弱程度が対象になっているとか、大崎委員からは、オンライントレーダーだと、オプトインというのは煩わしいのじゃないのかとかご指摘がありましたが、私の頭の中に、個人投資家というところが、オンライントレーダーの話がメインなのか、普通の小口の投資家なのか。いやいや、これ、価格のメリットがあるといった点では、そんな小さな投資家では意味がないのであれば、もっと大きな投資をする人なのかとか、機関投資家なのか、大口、小口なのか、どういうところに線を引きながら議論したらいいのかというのが少し見えてないと思っています。なので、どんな人たちを対象にして個人投資家なのだと、ここで議論する必要があるのかというところが、もう少し詰める必要のあるところなのではないかというふうに思っています。

事務局のほうからのご提示のポイントは、全て納得というか、いいなと思っているところではあるんですが、1点、その点でいくと、個人への開示と機関投資家への開示にレベルみたいなものを分けることができるのかというところは、先ほども線引きをしっかりしたうえで少し議論する必要があるのかもしれないなというふうに思いました。

先ほど、アメリカの情報開示は多過ぎて、アジアンルールがいいというクレディ・スイスの東海林さんのお話がありましたけど、個人に情報開示をどこまでする必要があるのか、求める必要があるのかというのも、注文の大きさという問題もあるのかもしれないのですが、議論する必要が出てくるんではないかなというふうに思った次第です。感想と言うべきかな、これ。

ちなみに、もしよろしければ、0.5%弱というのが、どんな投資家なのかを教えていただけると、もう少し周知できるような気がします。

【渡邉参考人】
弊社でダークプールをご利用いただいている個人の投資家さんですけれども、一概に1つの基準でもって分けることは難しいかと思うのですけれども、やはり比較的株式の預かり資産も大きく、取引量も比較的大きな形で取引されるお客様が多いかなといった感じでございます。したがいまして、全体の中でも、非常にそういったダークプールの趣旨をご説明してご賛同いただくお客様というのは、それほど多くないといった形で、この0.5%という数字になっているのかなといった感じでございます。

【神田座長】
よろしゅうございますでしょうか。

【野尻委員】
はい。

【神田座長】
ありがとうございました。

それでは、黒沼委員、どうぞ。

【黒沼委員】
ダークプールの問題というのは、もともと立会外市場は大口の注文が市場インパクトを避けつつ、迅速に執行できるようにつくられたものであるところ、そこに価格改善を求める小口の注文も入ってきて、従来の規制では不十分であるということが明らかになってきたことが背景にあると考えています。

事務局の対応策では、ダークプールの実態把握に向けた幾つかの案が書かれておりまして、あたかも金融庁が実態把握をするためのルールをつくろうというふうに読まれかねないのですけれども、この中の提案には、例えば、運営情報の開示についても、顧客からのリクエストがなければダークプールを利用させないといった委託に関するルールの提案もあり、価格改善については、価格改善がなければ取引を執行させないという取引ルールも含まれています。実態把握に向けた対応策と全部がくくられているのですけれども、市場に入ってきている小口の投資家を保護するためのルールもまざっているわけで、この両者をきちんと区別した上で議論することが重要ではないかと思います。

例えば、最初に大崎委員が言われたように、運営情報の開示は、顧客保護の観点から、あまり意味がないと。それはまさにそのとおりでありまして、何のための運営情報の開示かということを、2つの面を分けて議論することが必要でしょう。その点では、顧客保護の観点から、最良執行方針において、きちんとどういったシステムに取引が回送されるかが明示されていればいいのですけれども、どうも、実態を見てみると、現在の最良執行方針の開示は不十分であって、規制の趣旨に合致していないのではないかとも疑われます。この点は、どういうルールにするかはともかく、ルールの改善が必要だと考えます。

それから、価格改善の実効性の確保の点ですが、やはり小口投資家が入ってきていることを前提にしますと、価格改善を事後的に確認できるだけでは足りず、約定時の取引規制が望ましいと思います。ただし、その場合に、個人投資家と機関投資家をどう区分するのかとか、大口注文と小口注文をどこで分けるのかといった技術的な問題があり、何が最も効率的な規制かという点は非常に難しい問題だと思いますので、例えば、取引所において約定を拒否することが技術的に難しいのであれば、証券会社の段階で、大口の投資家にオプトアウトさせるルールか、あるいは小口の投資家にオプトインさせるルールを設けて、委託時の規制とすることが考えられるように思いました。

以上です。

【神田座長】
どうもありがとうございました。

それでは、竹川委員、どうぞ。

【竹川委員】
ありがとうございました。

そもそも個人投資家がダークプールを利用することを認める必要があったのかということころからよく理解できません。

保護の観点からいうと、デイトレーダーのような方は別かもしれませんが、資産形成を目的として投資を行う個人投資家にダークプール利用をそもそも認めるべきなのか、このまま推し進めていいのかから考えたほうがいいのではないかというふうに思いました。

その上で、今、ネット証券などすでにダークプールの提供等を始めているわけですけれども、今回、個人投資家向けの最良執行方針を見ても、ダークプールについてきちんと記載していないケースも見受けられました。また、ダークプールについて、名称、サービス名もばらばらですし、個人投資家がそれを見て、これがダークプール利用なのか否かということが判断できないケースが多いと思います。そうした中で、ダークプール利用がデフォルトになっている点は非常に問題ではないかと考えます。

顧客本位の業務運営ということで、これまで議論を進めてきたわけですが、従来、対面の証券、銀行向けの議論が多かったように思います。ダークプールに限らず、今後、ネットを利用していく投資家層が増えていくわけですから、情報開示などについてはネットやロボ(アドバイザー)についても今後は議論が必要なのではないでしょうか。ダークプールの件に戻りますと、今の開示ではダークプール利用がデフォルトになっている点に気づかない人がほとんどでしょう。小さい字で書かれた最良執行方針も読んでいない人も多いですし。繰り返しになりますが、こうした中で個人のダークプール利用が認められてしまっているのは問題だと思います。そこから改めて議論をしていただければと思います。

【神田座長】
どうもありがとうございました。

それでは、神作委員、どうぞ。

【神作委員】
ありがとうございます。

私も、ダークプールの本来のと申しますか当初の意義は、大口取引を行うプロがマーケットインパクトを避けたり、あるいは迅速かつ確実な執行をしたりするために発生したものと理解しています。それがプロの間でも、HFTなどによって小口の発注等も行われるようになり、次第次第にリテールの参加も認められるようになってきたという経緯をたどっているものと思われます。このような状況は、多くの諸外国が採用していますように、本来はダークプールに対して市場としての規制と申しますか、市場としての情報開示規制を課すことが、将来的には必要になると思われますけれども、現状、日本において、そこまでの必要がないということだとしても、少なくとも業者規制として、一般投資家の保護を図ることが重要であると思います。

事務局のご提案の5ページの1は、ある意味で市場規制的な効果を持つと思いますけれども、2の、ダークプール運営情報の開示等も、実質的には、ダークプールにおける取引が、カウンターパーティがいる相対取引であるということに鑑みると、一体どのような相手と取引することになるのかに関する情報は、非常に重要だと思います。参加者に関する情報等を充実させるということは、少なくとも市場規制にまで踏み込まないという段階においては、とりわけ重要だと考えられるからです。さらに、最良執行義務を実質的に担保すること、実効的にそれをエンフォースすることを可能にするために、事務局資料の5の3に指摘があります価格改善の実効性を確保することは非常に重要であると思います。

非常に簡単ではございますけれども、以上でございます。

【神田座長】
どうもありがとうございました。

大変申しわけありませんが、次の議題もあるものですから、「ダークプールの現状と課題」については、これまでとさせていただきます。多くの貴重なご意見をいただき、大変ありがとうございました。

ご意見をいただく時間がなかった方もいらっしゃると思いますけれども、ぜひ、事務局までご意見をお寄せいただければ、ありがたく存じます。

本日いただきましたご意見、それから今後、事務局に寄せられるかもしれないご意見等を踏まえ、事務局のほうで具体的な検討をしていただいて、また皆様方にお諮りしたいと思います。

それでは、ここで5分間の休憩をとらせていただきます。よろしくお願いいたします。

( 休 憩 )

【神田座長】
それでは、そろそろ再開をさせていただきたいと思いますけれども、よろしゅうございますでしょうか。

それでは、再開をさせていただきます。

本日の2つ目のテーマであります「高齢社会における金融サービスのあり方」についての議事に移らせていただきます。

本日は、京都府立医科大学から成本先生にお越しいただいております。どうもお忙しいところ、お越しいただきまして、ありがとうございます。

まず、成本先生から、医学的な視点から、「高齢者の自律的な経済活動継続への課題」と題して、ご説明とお話をいただきます。どうぞよろしくお願い申し上げます。

【成本参考人】
よろしくお願いいたします。京都府立医科大学の成本と申します。

私、大学ということで、教育機関に属してはいるのですけれども、精神科医でして、認知症の専門医ということで、ふだん、診療を中心にしております。この時間帯は、いつも滋賀県の病院で外来をしているのですけれども、今日、休診にさせていただいて、参りました。そういうようなことですので、本当に診療というか、地域医療とか、そういったところで見聞きしている状況とかを皆様にお伝えさせていただいて、金融機関の高齢のお客様、それから認知症を患われたお客様に対する実務について、改善していかれることについて、何かご参考になればと思って、お話しさせていただきたいと思います。

それでは、資料5をご覧ください。

まず、2ページ目ですけれども、これは皆様もよくご存知の統計かと思いますが、2012年に全国の認知症患者の調査が行われまして、推計値ということで462万人という報告が出ております。

その下のグラフですけれども、これは各年代における認知症の有病率を示すグラフであります。75歳から79歳ですと13.6%、85歳から89歳が41.4%ということで、人生百年時代、高齢を迎えれば迎えるほど、認知症のリスクというのも上がってくるということになります。ですので、金融機関の皆様が、例えば、65歳のときに100人のお客さんがおられますと、ずっとそのお客さんの年代が上がっていくにつれて、一定の割合で認知症の方が出現してくるということで、認知症を発症されるお客さんが出てくるということを踏まえたような対応ということが求められているのではないかというふうに考えております。

次のページ、お願いいたします。

そういった対応を考えるときに、認知症の原因になる病気というのは70以上あるというふうに言われておりまして、ただ、その中でも代表的な病気ということになりますと、アルツハイマー型認知症ということになります。

4ページに示しておりますとおり、種々の統計によって違いはあるのですけれども、アルツハイマー型認知症の方が5割以上を占めるということになっております。ですので、私たち医療・介護の体制も、基本的には、やはりアルツハイマー型認知症の方が、まず、うまく生活できるような体制づくりということを意識して構築をしてきておりますので、金融機関におかれましても、このアルツハイマー型認知症のことを、まずは知っていただいて、そういったお客様が出てきたときに、どういうふうに対応していかれるかということをお考えいただけるといいのではないかというふうに考えております。

次のページへ行っていただきまして、アルツハイマー型認知症の特徴について、少しご説明したいと思います。

私たちの言葉、神経変性疾患と申しまして、脳の神経細胞が徐々に壊れていくような病気ということになります。ですので、あるとき急に何もかもできなくなるということではなくて、最初はごくごく軽い変化から始まって、徐々に進行していくという病気ということになります。

6ページのところに症状の経過を書いておりますけれども、最初のころは、本当に加齢による生理的な物忘れと区別がつかないような軽い物忘れから始まりまして、それが徐々に顕在化してきて、日付を忘れたりというようなところが出てきまして、中期以降は、少し、家の中での日常生活、入浴であったり、服の着替えであったり、そういった基本的なところにも影響が及んでくるというような経過をたどります。

中期以降は、私たち医療・介護のほうで対応するということになるかと思うのですが、実は、私たちが出会うのは、初期から中期あたりになって、認知症が顕在化してきて、ようやく出会うということですので、金融機関の方々はじめ企業の方々は、健康な高齢のお客さんという形で対応されているところから、この発症前期あるいは初期のあたりのところで、お元気なときから、こういった発症後にかけて、ずっと継続的にかかわっておられるということになりますので、私たちより、実は、ひょっとしたらご経験が、初期のころについてはあるのかもしれないというふうに思います。

次のページへ行っていただきまして、認知症で苦手になること、生活でさまざまな支障が出てくるわけですけれども、2つに分けて考えておりまして、手段的日常生活動作と、それから、より基本的な日常生活動作に分けることができます。先ほどの経過でいいますと、ごく初期の段階では、この手段的日常生活動作とされる買い物とか金銭管理、そういった複雑な日常生活に支障がまずあらわれます。それから進行してきますと、家の中での日常生活動作に影響が出てくるというような経過をたどります。そういった経過ですので、まず8ページに示すような社会生活上の困難というのが発症の初期段階で生じてくるということになります。金融機関との関連では、通帳を何度も紛失するとか、同じものを何度も購入するとか、あるいは詐欺被害に遭うといったことも、こういった段階で、よく生じてくることかと思います。

次のスライド、9ページですけれども、私たちの医療・介護の世界では、早期診断、早期治療、早期介入ということを目標にしておりまして、認知症の中でも、70以上ある認知症の原因になる病気のうち、治療によって改善させることのできる病気もございますので、そういった病気については、早期に発見して、治療に結びつけるということが重要になります。ただ、アルツハイマー型認知症の場合は、現在のところ、有効な治療というものが開発されておりませんので、基本的には病気のことを知って、今後の進行に備え、対応するというところが中心になってまいります。

ただ、早くわかればわかるほど、軽い段階でわかればわかるほど、生活の工夫、再構築であったりとか、健康維持のための工夫であったりとか、さまざまな対応が可能になるということが言えます。

次の10ページ目に行きたいと思いますけれども、ただ、この早期診断ですけれども、実は非常に難しい点がございまして、特にアルツハイマー型認知症の場合、そうなのですが、認知症によって、ご自身の能力が低下してきているということに自分は気づかないという問題があります。これは、他の障害であれば、自分でその障害を知って、それをカバーするような対応、歩けなくなれば車椅子を使うとか、視力が悪くなれば眼鏡を使うとか、自分で対応することができるのですけれども、認知症に関しては、ご自身での能力低下、特に記憶力の低下、判断力の低下等に自分では気づけない方がかなり多いということが問題としてあります。

幾つか論文でもありますし、これ、下のほうは私どもの病院のデータですけれども、少し解説いたしますと、赤で示しているのがアルツハイマー型認知症の方のデータ、緑がMCIと呼ばれる軽度認知障害のデータで、NCが健常高齢者の方のデータになりますが、これは右に寄れば寄るほど、自分のほうが記憶力を高く見積もっていて、介護者、家族の方の評価と差があるということなのですが、このようにかなりアルツハイマー型認知症の方は右に寄っていて、患者さんご自身のほうが、家族よりも自分の能力を高く見積もっているということが言えます。

次のページに行っていただいて、こういった医学的な観点を、実は私たち、医療・介護の分野で、高齢者の方、とりわけ認知症の方の地域生活を支えることについては、我々、業界関係者ができることというのは一部でありまして、当然、金融機関で資産の管理、金銭管理をしないと生活していけないわけですし、それを使ってスーパーマーケットでの買い物、あるいは交通機関を使った移動、そういった他の業界と接しながら地域で生活されているわけですので、私たちの医療に関する知識を、そういった他の業界の方にお伝えをして、高齢者の方で、その中から発症してこられる認知症の方も安心して生活できるような社会システムをつくりたいということで、この研究事業を行っております。これはJST(科学技術振興機構)の助成を受けて行っておりまして、弘前大学が受託している研究のサテライト拠点として活動しているものです。

12ページに示しますとおり、高齢者の方、ご承知のように、退職されてから、さまざまな意思決定、わりと重大な意思決定を迫られる場面がございます。金融機関、資産管理というのも、もちろん非常に大きな部分でしょうし、例えば、遺言をしないといけないというようなこと、あるいはこれまで住んできた一戸建てからマンションに移るというような居所の移動の決断とか、さまざまな意思決定をしながら暮らしていかないといけないわけですが、これがご高齢になられるだけでも少し判断能力は低下してきますし、とりわけ認知症を発症された場合は、その意思決定の能力が低下するということで、ご自分でご自分の生活をデザインすることが難しくなるということがございます。そういったときに、周囲の者が、その方の意思決定を支援して、その方の生活の安寧を守るというようなことを目標に、研究開発をしております。

次のページ、13ページをご覧いただけたらと思うのですが、多くの企業の方、大学の方に参入いただきまして、共同研究をしております。金融機関に関しましては、昨年のこのワーキングでもご発表いただいたと思うのですが、三井住友信託銀行様と京都銀行様、それからみずほ情報総研様にご参画いただいて、「認知症の人に優しい金融機関」というテーマのもとに、これまで研究をしております。

ここからは、少し契約、意思決定の能力、そのあたりを医学的な視点から見た、そういった意思決定能力、それから契約能力といったものについて、解説してまいりたいと思います。

私たち医療の分野でも、インフォームドコンセントということで、何らかの治療を行うときには、ご本人に説明をして、ご本人に了解をいただいて、ある意味、契約を結んで、治療を行うということをいたします。その医療に関する同意をするということができるということの能力を医療同意能力というふうに呼んでおります。この医療同意能力から少し契約能力を、そこから敷衍して見ていくということをしたいと思います。

次のページへ行っていただけたら。15ページですけれども、この医療同意能力ですけれども、認知症になったら、途端に医療に関してご自分で同意することができなくなるかといいますと、そういうことではございませんで、その方の能力の度合いと、それからそのときに求められている判断の複雑さ、リスクというものが比例の関係にあるというような考え方をいたします。

16ページにございますように、例えば、予防接種のように、メリットもはっきりしていて、安全性も高いことがわかっているような治療に関しては、低い能力でもご本人の同意が可能ですが、大腸がんの手術になりますと、非常に手術のリスクも高いですし、その後、人工肛門等をつくらないといけないということで、その人工肛門を管理できるかといったことで、非常にメリットについても複雑な点がございますので、そういった治療について、ご本人の同意だけで治療を進めようということになりますと、高い能力が必要というようなことになりまして、その意思決定の内容によってグラデーションがあるというような考え方をいたします。

次のページへ行っていただきまして、それから、この同意能力の評価ですけれども、4つの要素に分けて評価するということが行われておりまして、1つ目が、理解する力、認識する力、それから論理的に考える力、選択を表明する力の4つの要素に分けて評価するということをいたします。今日は時間の関係で、ここを詳しくはご説明できませんけれども、こういった4つの要素に分けて評価をするという考え方は、他の意思決定場面、あるいは、例えば、金融商品を購入する、契約する、何らかのサービスを契約するといったときにも応用できる考え方ではないかなというふうに考えております。

21ページ、ご覧いただきますと、医療の世界では、私たち、同意能力の評価をして、能力が低下している場合には、我々、医療・福祉関係者、あるいはその他の関係者が集まって、その方の意思を推定しながら、治療方針を決定していくというプロセスをとるのですけれども、そういったことを進めていくための指針というもの、これは私が仮に案としてつくったものですけれども、このようなことを大事にしながら、患者さんの意思を尊重しながらも、ご本人の最善の利益が図れるような治療方針を決定するというようなことを、取り組みをしております。

22ページにありますように、なかなか医療機関も多忙な業務の中でやっておりますので、個別に個々の事例について詳しく、先ほどの4つの要素について評価するというのはなかなか難しいのですが、現場で目安をつけながら、ただ、非常にその方のその後の治療、生活にとって、大きな影響を与えるようなリスクの高い治療については、少し立ちどまって、ご本人の意向を丁寧に聞き取りながら、ご本人の同意能力も評価しながらというような、そういった進め方をしております。

23ページ、ご覧いただけたらと思いですが、では、財産管理能力ということになりますが、財産管理能力は、金銭管理のための具体的なスキルと、それから自分の生活をよくするための選択ができる能力に分けて考えられています。自分の生活をよくするための選択ができるかどうかということですけれども、そこには自分にとって損になるか得になるかといった損得勘定であるとか、自分の価値観や希望に合わせて運用することができているかといった点が重要な点になります。これは医療同意よりも経験や知識にばらつきが大きく、それから教育歴や社会経済的な状況に関連するというふうに考えられております。

24ページですけれども、財産管理と一口に言いましても、さまざまな意思決定場面があるかと思います。それを先ほどの医療行為と同様に、メリットとか安全性の軸で少し分類をいたしまして、見たものです。

同様に、認知症になると全ての意思決定ができなくなる、周りで決めないといけなくなるというわけではなくて、それぞれ意思決定の複雑さ、リスクといったものについてはグラデーションがありますので、その方の能力を的確に評価をして、可能な限りご本人の同意、ご本人の意思に沿った形で契約を結んでいくということが、高齢者の方、あるいは認知症の方を排除しないためには重要なのではないかというふうに考えております。

次のページに行っていただいて、そのためには意思決定能力の評価をしないといけないのですが、これが、我々は医療機関ですので、能力の評価ということは、ある意味、専門でもあるのですが、それが他の業界でどのように可能か、行うかということは非常に課題だというふうに思います。

2つの方法がありまして、認知機能検査といいますのは、長谷川式に代表されるような、例えば、日付が言えるかどうかを聞いたりとか、記憶力を評価したりとか、そういったものを組み合わせた検査になります。これで、ある程度、その方の意思決定能力を推定するということはできるのですけれども、ただ、そのときに求められている意思決定の能力を直接評価するものではありませんので、そのあたりが課題になるかと思います。

それから、もう一つは、実際の意思決定に基づく評価です。例えば、ある商品を購入しようという場面であれば、その商品の性質とかについて、どの程度理解されているか、あるいは、なぜその方がその商品を買おうとしているのかといったことを評価しながら、きちんとそういった契約の能力があるかを確認していくという方法があります。ただ、これは妥当性を検証することが難しいことや、正常範囲というものを決めるのが難しいといった点がございますので、実際には、この2つを組み合わせながら評価をして、その妥当な契約を結んでいくということになろうかと思います。

26ページは、私が考える提案ですけれども、公平な契約を高齢者の方で、その中に認知症を発症されている。どの方が認知症を発症されているのかというのは、医療機関以外の方にはわからないことが多いと思うのですが、そういった中でも公平な契約を結んでいくために必要と思われることをまとめておりますので、ご参考にしていただけたらと思います。

27ページには、これはもう皆様のご承知のとおり、適合性の原則ですけれども、私たち医学の側面から見ますと、特に重要と思われるのが、もちろん、そういった契約の性質について理解しているかどうかを確認するということも重要ですけれども、契約を締結する目的、商品購入の目的というものですね。そういったことについて、ご自分のためになるというふうなことを、あるいは自分の価値観に照らして、こういう商品契約を締結するという、そのプロセスですね。そのようなプロセスが妥当なものかどうかということを検証していくということも重要なことではないかなということと、あと、2番の一律に75歳以上には、もう販売しないとか、そういった対応というのは、ここにも必ずしも制度の趣旨に合いませんと書かれていますけれども、高齢者の場合、非常に個人差が大きいというところが特徴としてございますので、できれば、もちろん一律の対応というのが一番シンプルでやりやすいということはあるとは思うのですが、個々の能力とか状況とかを勘案しながら、個別の対応ということが、実務上、できる限り達成していただけたらというふうに思っております。

28ページのところは、医療同意能力の評価と財産管理能力の評価について、比較の表というものを少しつくってみましたので、ご参考にしていただけたらと思います。

こういったことが、医学的な観点から見た金融における契約等に重要と、関連すると思われる内容ですけれども、ここからは、私どもの取り組みについて、簡単にご説明したいと思います。

こういった私たちの医学的な視点を他の業界に広げていくという観点で、さまざまな業界の方にご協力いただきながら進めております。

29ページ目は、多くの金融機関にご協力いただきましてまとめました『金融ガイド』というものです。

30ページにありますのは、法律家の先生方と一緒にまとめました、遺言能力の観察式のチェックリストになります。これは先ほどお示しした4つの要素に分けて能力を評価するというものをベースに、法律家の先生と相談して、妥当な遺言を残すために必要な能力を確認するためのチェックリストというものをつくっております。

このようなことを社会に普及させていくという目的で、昨年、一般社団法人日本意思決定支援推進機構というものを立ち上げまして、さまざまな領域での意思決定能力の評価、それからサポートの方法について研究をしているところでありまして、その次のページに行っていただきますと、33ページにありますように、現在は京都府からの委託を受けたようなセミナー等の開催をしております。

私たちの構想ですけれども、現在、認知症になられた方、意思決定能力が低下した方の権利を擁護する制度として成年後見制度がございますけれども、成年後見制度も非常にいい制度だと思うのですけれども、その利用の前の段階、お元気なときから、少しグレーゾーンの段階もございますので、そういったところを包み込むような意思決定サポートシステムというものが実現されるといいというふうに思っておりまして、これはさまざまな業界で、ガイドラインやマニュアル、あるいは実務の改善、工夫、そういったもので達成されるようなやわらかいサポートの仕組みというものが達成されればというふうに思っております。

35ページは、そういったことが達成されて、さまざまなセクターの方が、高齢者の方が安心して生活できるような契約関係、安定した契約関係を結べるような社会が実現すればというふうに考えておりまして、さらには36ページで、少しICTが進んできておりますので、そういったものも、ぜひ応用しながら、種々のサービスを開発していただけたらというふうなことで書いております。

37ページは、私たち、そういった企業の方々の活動をバックアップするための意思決定サポートセンターというものを、最終的にはつくっていきたいというふうに考えております。

38ページ、少しご参考のために、私どもの施設で行いました調査の結果ですけれども、これ、認知症の病名のある方、認知症の患者さんの介護者の方にお聞きしている財産管理の現状になります。これを見ていただきますと、やはり6割以上の方、介護者の方がかわって管理をされていて、実は成年後見制度を利用されている方、2名ぐらいしかおられなかったという現状で、実際には家族がおられる方は、家族がインフォーマルな形で財産の管理をされているというのが現状ということで、ご参考にしていただけたらと思います。

その次のページは、ICTを用いる取り組みの一例ということで、預金の動きとか購買行動をモニターすることで、能力の低下に早目に気づいて、それを支援するようなシステムをつくれないかということで、株式会社マネーフォワード様と一緒に取り組みを始めているということと、あと高齢者の方にICTを利用していただくに当たって、やはりインターフェースのところが問題になりますので、そこのインターフェースのところはエージェントを使って解決できないかということで、株式会社エルブズ様と一緒に『御用聞きAI』というものを開発するというような取り組みをしております。

あと、41ページのところは、京都府で開催しております多業種による協議会を立ち上げて、今、活動を始めておりまして、金融界も非常に重要な1つの役割を果たされるのではないかと思いますが、高齢者の方、とりわけ認知症の方の生活を支えている他の業種の方々との連携をより深めていただくことで、よりよいサービスができるのではないかというふうに期待をしているところで、そういった意味から、最後、42ページ、提言になりますが、健常なときから能力が低下したときまで、切れ目なく、本人の意思を尊重しながら生活を支援する金融サービスの開発をお願いしますということです。

それから、そのためには、自分の能力の低下に気づかないこと、それから他人に管理を任せるのをためらう気持ちに配慮した仕組みが必要だと考えます。

それから、現状は家族がおられる場合は、多くの家族は善意の家族であり、インフォーマルにご本人の意向も聞きながら、生活を支えているわけですが、今後、独居の方、身寄りのない方が増えていく中で、そういったことにかわるようなサポート、高齢者の生活を支えている異業種との連携とICTを使って実現できないかというふうに思っておりますので、ぜひよろしくお願いを申し上げます。

以上です。

【神田座長】
どうもありがとうございました。

それでは、続きまして神戸委員から、「独立系FPによる高齢者の資産運用に関する考察」ということで、お話をいただきます。よろしくお願いいたします。

【神戸委員】
ありがとうございます。

私は実務家の代表として、このワーキング・グループに参加させていただいているわけですが、前回の市場ワーキング・グループの報告書の中に、顧客本位の業務運営の確立・定着に向けて、生活者に対してアドバイス等を行う担い手の多様化が重要であるという項目が記載されました。その担い手の候補の1つとして、我々のような独立系アドバイザーもあるのかと思っております。

独立系アドバイザーといわれましても、委員の方々でも、どんなことをやって、金融機関などのアドバイザーとどこが違うのだろうというところが、もう一つおわかりいただけていない可能性があるやもしれないと思いまして、今回、この頂戴した時間を有効に使わせていただけたらと考えております。

お手元にお配りしてある資料6をご覧いただきたいのですが、弊社のお客様は9割方が、50代から80代の方で、今回の議論の対象になっているご高齢の方を中心にアドバイスさせていただいております。まず、1ページは、これまでこのワーキング・グループで議論してまいりました、「人生百年時代」におけるライフステージに応じた資産形成・資産運用全体のイメージをまとめたものです。以前、野尻委員のご説明にもありましたが、昨年のワーキング・グループで議論されたのが、左側の収入が支出より多い時期に積立式投資で資産形成を図っていくべきで、これに対応する制度が、その下にありますiDeCoやつみたてNISAということでいいと思いますが、今回再開されたワーキング・グループでは、右側の収入よりも支出のほうが多くなってしまう時期に対応する金融商品やサービスはどうあるべきかというところを議論しているということになります。

その時期をさらに、2つに分けてみました。運用しながら取崩す期間と取崩すだけの期間とを分けましたのは、先ほど成本先生のお話にもありましたように、70代と80代では、認知能力にもそれなりの差があるということで、一応、80歳で2つに分けているのですが、別々に考える方がいいのではないかと思っております。いずれにしても、基本的には年金式に受け取れる商品が必要になると考えられますが、それについては後で詳しく説明させていただきたいと思います。

次の2ページですが、高齢の方向けの金融商品やサービスについて議論する場合、、金融資産を2,000万円ぐらい持っている世帯が一般的だというイメージがありまして、この平均的な世帯に対してどうしたらいいかという議論が行われがちですが、こちらは総務省の資料ですが、実は正規分布にはほど遠い状況でありまして、金融資産の金額が600万円未満の方が、全世帯の3分の1、65歳以上の場合でも4分の1の世帯がここにあたると。一方、右側のほうですね。全世帯の5分の1、高齢世帯では4分の1が3,000万円以上ということで、両端の比率が一番高いという状況です。よく使われる全世帯平均額の1,877万円というのは、見ていただくとわかりますが、3%、4%しかないと。つまり比率が一番低い、ボトムにあたるということですね。中央値で見ましても、全世帯の中央値が1,000万円程度、65歳以上で1,500万円程度ということですので、いずれも10%未満の数値となっています。その結果、平均額程度の金融資産を保有している層をイメージして議論を行うだけでは、不十分ということになってしまいかねないと思います。

私なりに考えましたのは、3つぐらいに分けてそれぞれ議論すべきではないかということで、次の3ページの図表を用意致しました。今、お話ししましたように600万円ぐらいまでの層、3,000万円以上の層、その中間の層ということで分けてみましたけれども、現役世代の方は、前回までの議論の通り、とにかく積立式に資産形成していただくということでよろしいかと思いますが、リタイア世代となると、これから資産形成というのは非常に難しいということがありまして、図表の左側の600万円未満の金融資産をお持ちの方については、このワーキング・グループの議論だけではどうしても限界があり、厳しいだろうと、厚労省さん中心に議論が行われることも必要だと思います。

一方、600万円から3,000万円の層、あるいは3,000万円以上の層というところに関しては、運用によって何とかまかなえるようにするという方法と、特に中間層である600万円から3,000万円ぐらいの層に関しては、「自宅」のキャッシュフロー化という方法がポイントになると考えています。金融資産を3,000万円以上お持ちですと、確かに運用しながら取り崩すという方法で、人生百年時代、100歳までもたせることも可能といえるでしょうが、1,000万円~2,000万円程度という状況ですと、ある程度、ほかに収入を得る手段を用意しておかないと足りなくなる可能性が高いと考えられます。現状、この層の方の主要財産というのは自宅という不動産である場合が多いので、それからいかにキャッシュフローを得るかというところが、もう少し議論されないとまずいと思います。国交省さんもおっしゃっておられる住み替えとか、あるいはリバースモーゲージというのは、制度、商品としては存在していますが、あまり活用されていないという現状をどうするべきかという議論が必要になると思います。

先ほどのお話にありました認知能力低下への対応というのは、金融資産の額に関わりなく、全ての方に必要と思われますが、その場合のアドバイザーという立場を考えるには、やはりどういうアドバイスが必要なのかということを考えなくてはいけないだろうと思っております。

そういったニーズが考えられる中で、実際、私ども独立系アドバイザーというのは、どういうアドバイスをしているのかというところを、4ページ以降で、ご説明させていただきたいと思います。

私どもの場合、4ページに、6つのステップと書かれていますが、このような手順でご相談に応じております。私が持っておりますCFP、サーティファイド・ファイナンシャル・プランナーというFP資格は世界の主要国20カ国以上で採用されておりまして、その資格保有者が行うべき6つのステップということになります。

最初のステップである顧客との関係確立というのは、お客さんにアドバイザーは自分の味方だと思っていただけないと、なかなか本当の話を伺えないということで、どうやって関係を作るかということです。通常、購買代理と呼んでいますが、買う側つまり顧客の代理人として、アドバイスを行うという立場をお客さんとの間に確立しようとするのですが、ここが最初のハードルになります。独立系のアドバイザーは、一般的にはブランド力がないわけでありまして、どのアドバイザーが信用できて、どのアドバイザーは信用できないのかというところがお客さんに判断して頂きにくい状況では、なかなか、この関係確立が難しいわけです。実際、私どものお客様も、私のセミナーを直接聞かれた方とその方のご紹介というのが大半でありまして、新規の顧客を獲得するのはかなり難しいというのが現状です。この関係が確立できますと、あとはお医者さんと非常によく似たプロセスを経て相談を進めて行きます。FPは、お金、財産のホームドクターなどと呼ばれることもあるのですが、医師が行う診断に当たりますのが、2番目と3番目のステップです。特に2番目の顧客のデータを収集してゴールを明確化する、これが最も重要になるのですが、このゴールの明確化を、従来、金融機関等はあまり行ってこなかったのではないかというイメージを持っております。

その診断を行う中で、まずい点があるのかどうかを判断するというのが3番目のステップです。

その判断に基づいて、処方箋を書くのが4番目の対策の立案ということで、こんな改善策があるというのを示します。

その処方箋をもとにして、治療を行う段階が5番目のステップで、ここで初めて商品の提供、あるいは提案内容の実行のサポートということになるのですが、当然ながらその前にお客さんの意思を確認します。幾つかある提案のうち、やりたくないものは行う必要ありませんので、やってもいい、やりたいというものに関して、実行の援助を行います。そして、プラン通りにうまくいっているかどうかを定期的に見直していくという6つ目のステップがあるわけです。

この中でも一番重要と考えておりますのが、先ほどお話しした通り、5ページにありますゴールの確認ということになります。このゴールというのは、いわゆる将来のライフプランや目標ということになるのですが、現役世代の方とセカンドライフ世代の方では異なってきます。現役世代の方は、一般的にはリタイアまでに、金融資産で退職金を含めて3,000万円なり3,500万円を作るには、どういうふうに資産形成していけばいいのかということになります。これが60代、リタイア直前ぐらいの方になりますと、ゴールが変わりまして、人生百年時代であれば、100歳まで金融資産が保つのかどうかということになるわけです。ゴールにたどりつくまでの間に、お金を使うどんな予定があるのかというのをまとめて、通常、我々は、次の6ページにあるようなキャッシュフロー表というものを作成します。お医者さんの世界ですと、これはレントゲンを撮ることに当たる部分かと思います。誤診をしないために、現状で想定される資金の流れ、キャッシュフローがどうなっていきそうなのかを確認するわけです。現役の方であれば、現状のままでリタイア時までに3,000万円以上たまりそうなのかというのをチェックします。リタイア後の方なら100歳時点、あるいは90歳時点で金融資産が残っていそうかどうかを確認します。

今のままでは足りなくなりそうということになりますと、足りるようにするための対策、処方箋を書くということになるのですが、その処方箋に当たるものが7ページです。キャッシュフローの改善を図るということですので、切り口は3つあります。支出を減らす、収入を増やす、運用するという、この3つの切り口で、複数の具体的なご提案を行うというのが私どもの仕事になります。

将来収入の増加が見込める現役の方ですと、節約、倹約だけでも、勤労収入が増えて行くことで、キャッシュフローが大幅に改善していくケースも多いのですが、反面、今の生活に潤いがなくなり、パサパサの状態になってしまいかねませんので、パサパサにならないコストカット方法として、保険の見直しとか、ローンの借りかえ、iDeCoを使って節税を行うといった話もさせていただくわけです。

2番目の切り口である収入を増やす対策として、ご本人の勤労収入を増やすというのと同時に、不動産有効活用が挙げてありますが、その具体策としてリバースモーゲージや、住み替え等によるキャッシュフローの生成というのも入ってくると思っています。

3番目の運用するという切り口で、金融資産の活用が考えられるわけですが、これらの対策のうちどれをやりたいか、やりたくないかというのを、お客様に確認していくということになります。やりたくないことは、強いてやって頂く必要はないのですが、弊社に来られるお客様で、金融資産の運用が嫌だと言う方はまずおられません。ただ、具体的にどうすればいいのかがわからないという方が大半という状況です。

弊社にお見えになるお客様でも、3人中2人は、それまで全く投資運用を行っていない方です。では、そういう方に対して、投資運用のアドバイスを、どういう手順で行っているかというのが、次の8ページです。

弊社の場合、退職金が出て相談に来られる方が多いわけですが、それまで投資を行っていない方に最初に行うアドバイスが、金融資産の分別です。この、分別を行わないと大失敗につながりかねません。まず、生活資金と書いてありますが、必ず支出される生活費の3カ月分から半年分程度は流動性重視で商品を選びます。投資運用はもってのほかです。次の取崩し予定資金というのは、今から10年以内に取崩す予定のある資金です。弊社の場合は、長期運用というのは、10年以上の運用と考えております。それ以内の運用期間では、取崩す時期にマイナスになっている可能性もあるということで、安全性、安定性が商品選びのポイントになります。収益性をある程度犠牲にしても、そういう商品を中心に手当てをします。商品例として書かれています年金式受取型商品の多様化がもう少し進むといいと考えております。現状は具体的な商品としては、生命保険会社の年金保険と、分配型投資信託を年金式受取型商品としてアドバイスしています。保有金融資産から以上の生活資金と取崩し予定資金を除いて、残った部分だけ、右側の増やす、あるいは残す資金として、長期運用を行い、収益性を考えた商品選択を行うということで、ポートフォリオ運用のアドバイスを行うことになります。

ただし、退職金など、まとまったお金をお持ちの場合でも、一度にまとめて商品を購入するようなアドバイスはいたしません。※印にある通り、多額の資金の運用の場合、ご高齢であっても積立式で、ポートフォリオを何年かかけて組んでいっていただくというのがアドバイスの基本になっております。

次の9ページですが、まず、先ほどお話ししました、取崩し予定資金に当たる年金受取型商品についてです。リタイア後10年間程度の不足資金のカバーを目的に、商品を選択します。定額型と変額型の年金保険と分配型投資信託が候補となりますが、現状存在しないのが、元本の取崩しプラス分配金で定額ないし定率の受け取りが可能なタイプの商品です。そういった商品があるといいと考えています。

もともと年金受取型商品というのは、受け取るのが目的の商品と考えられます。生命保険の10年定期年金であれば、10年間受け取ったあとには何も残りません。終身年金保険も一生もらえますが、相続財産としては何も残らないわけです。必要と思われる金額を一定期間受け取るのが目的の商品ですので、リタイア後の当初10年間、しっかり受け取りたい金額を確保するということなのですが、現状の分配型投信でカバーしようとすると多額の資金が必要になってしまいますので、元本と合わせて定額や定率で受け取れる商品があるといいと思っています。

保有している金融資産から生活資金と取崩し予定資金を差し引いて、残った部分にあたる増やす(残す)資金のためのポートフォリオ作成について、通常、私どもが行っておりますのが、(3)にある手順です。

まず、そのお客様が、どの程度までなら値下がりしても、精神的に不安定な状況にならなそうかという、リスク許容度を確認します。例えば、1,000万円の元本が、とんでもないことが起こったとき、幾らぐらいまでなっても、精神的に耐えられそうですかといった質問を顧客にします。最悪の場合には、2標準偏差分くらい値下がりするという認識で捉えておりますが、その顧客の場合どれくらいまでなら大丈夫そうかというところを確認して、リスク許容度の範囲内で、かつ90歳なり100歳までお金を保たせるには、どの程度の運用が必要なのかということで、ポートフォリオを提案しています。

ご存知の通り、ブレ幅の9割以上がアセット・アロケーションで決まると言われておりますので、リスク・コントロールについては、ここが一番重要と考えています。その後、リスク資産についてはアセット・クラスごとに商品を個別に選択して行き、ポートフォリオ構築後はリバランス中心のメンテナンスのアドバイスを行うというのも私どもの仕事になっております。

10ページにはご参考までに、弊社が考えるリタイア層向けのリスク資産部分についてのポートフォリオ例を上側に、現役層の方向けを下側に挙げてあります。それぞれの標準偏差も記載してありますが、その2倍程度最大で下ブレする可能性があるということをご説明します。つまり、1,000万円の元本が、上の例ですと850万円ぐらいまで値下がりする可能性もあると、下の例ですと750万円ぐらいの可能性があるといった話をさせていただきます。このリスク資産の組み合わせを、さらに無リスク資産である預貯金などと組み合わせて、増やす資金全体のポートフォリオを組むことで、その方のリスク許容度内に、ポートフォリオ全体の値動きを抑えていくというアドバイスを行うわけです。

従来型のアドバイザーと私どものアドバイスの最大の違いについては、次の11ページをご覧ください。従来型の投資アドバイスは左側のスタイルについてのアドバイスが大半です。「趣味としての投資」と名づけておりますが、経済に関心がある、それなりに自分の判断に自信がある方が行っている投資が、この左側のスタイルだといえるでしょう。投資を楽しみたい、うまくいけばもうけたいと考える場合、重要になるのが、相場観、タイミング、銘柄選択ということで、それが難しいので、知識や経験のない自分には少々無理があるというように感じる方が多いのではないかと思います。

いずれにしても、より大きな上ブレを取りに行こうとするリスクテイクのスタイルで、一番もうかりそうなものに集中投資という方法が一般的だろうと思います。うまくいけば面白いし、ドキドキして楽しいなどという方もおられますが、そういったタイプの方というのは、基本的に投資信託を嫌うケースが多いです。特にバランス型は買いたくないと。もうかりそうもないものも含まれている商品を買うなんてあり得ないということで、個別株投資がお好きな方が多く、投信を買うならテーマ型、中には短期スタンスでブルベア型まで利用する方もおられます。従来、金融機関は、この趣味の投資家向けのアドバイスを中心に投資信託を売って来たがゆえ、テーマ型の比率が高くなったという側面もあるのではないかと思っています。

このスタイル向けのアドバイスで一番重要になるのは、おそらく売り方のアドバイスになるでしょう。これを買いましょう、あれを買いましょうとばかり言ってくるアドバイザーは、二流、三流と言われておりまして、いつ、どういう売り方をするのかというところのアドバイスのできるアドバイザーが優れていると言えるでしょう。

しかし、残念ながら、この趣味としての投資を行っている、あるいは潜在的に行いたい方というのは、日本人の場合10人中2人ぐらいに過ぎないと言われています。

一方、我々が多くの方にやっていただきたいと考えている投資は、この図表の右側の「仕事としての運用」というスタイルでありまして、従来こういった概念はなかったと思います。こちらのほうは、投資に興味はないが、定期預金の利率が0.01%ではたまらない、もう少し何とかしてほしいというニーズに応えるための投資スタイルです。この、お金にもある程度は働いてもらいたいという場合には、左側のスタイルと異なり、あえて言ってしまえば、相場観や知識はあまり必要とされません。投資を行う場合のハードルの一つとなっている知識は、それほど求められないわけです。そのかわりに、私が「投資観」と呼んでいるものが求められるということになります。投資観とは何を指すのかといいますと、金融庁さんが提唱されておられる、長期、分散、積み立て、それらが何でいいのか、必要なのかがわかっているということです。長期、積み立て、分散を行う理由がおなかに落ちていませんと、ポイントとして書いてある、続けることというのが難しくなってしまいます。マーケットが下落した局面でも我慢して続けていただく必要があるのですが、何で長期で積み立て、分散するのかを納得できていないと、ついつい解約してしまう、積み立てるのをやめてしまうといったことになりかねませんので、それらの理由をしっかり理解していただく必要があるわけです。

投資スタイルは、長期国際分散投資、積立型投資でありまして、それはいずれもリスク・コントロールが目的だからです。投資信託を買いますから、リスクはもちろん取るわけですが、そのリスク、つまりブレをどうすればコントロールできるかという考え方で商品を選ぶことになるので、左側の趣味としての投資とは全く違う商品の選び方になります。ここに書いてある通り、全くおもしろくないでしょうし、退屈でしょう。何でそんなつまらないことをやるのかといったら、仕事だからということですね。趣味は楽しいと思うからやるはずなので、左側のスタイルの投資では、損しても、それは趣味にかかったお金ということで諦めていただく必要がありますが、仕事としての運用のスタイルでは、お金にしっかり働いてもらいたいわけですので、確実に収入を得るためには、つまらない運用、面倒な運用を行う必要があると説明しています。

この場合は、図表にある通りバランス型の投資信託が有力な候補商品になりまして、中でも複利運用が行われる無分配型の利用が基本ということになります。この仕事としての運用のための制度が、つみたてNISAやiDeCoであるというところも、しっかりお客さんに理解していただく必要があると思っております。

先ほどお話し致しました投資観というものについてもう少しご説明させていただきたいと思います。まず、私どもが顧客に対してしっかり説明しておりますのは、投資のリスクとは、ブレであるということです。リスクとは損・元本割れだと思っているケースがほとんどです。保険のリスクと投資のリスクの違いを1度も教えてもらっていないわけです。保険の世界のリスクであれば、損、危険、危ないという意味でいいでしょうが、投資のリスクも同じだと思っていると、リスクを覚悟しろと言われても、覚悟しにくいわけです。それまで投資を行っていない方で、損・元本割れを覚悟できる方というのはごく少数だと思います。

保険のリスクと投資のリスクは異なるというところをしっかり認識していただくために、私がよく使っている話をご紹介してみます。タクシーの例を使ってお話しするのですが、目の前にタクシーが2台いるとしましょうと。1台は、10回乗ると10回事故を起こす、とんでもないタクシーで、もう1台は10回乗ると1回事故を起こします。どちらのタクシーのリスクが高いと思いますかと質問をします。保険の世界では、10回乗って、10回事故を起こす方が、皆さん当然、リスクが高いと考えるわけですが、この2台のタクシーが投資の世界に行くと、10回乗って10回事故を起こすタクシーのリスクはゼロですよ、10回乗って1回事故を起こすほうがリスクが高いタクシーになりますと言うと、ほとんどの方が狐につままれたような顔をされます。そこで、投資の世界では10回乗って9回事故を起こすタクシーと、10回乗って1回事故を起こすタクシーのリスクは同じということになります。なぜなら、9回同じ結果で、1回だけ結果がブレるわけですからと。このブレが投資のリスクなのですという話をすると、初めてリスクとはブレだというのがおなかに落ちるようです。こういった話をせずに、50回、100回、リスクはブレだ、ブレだ、といくら言い続けても、右の耳から左の耳へとなってしまいますので、どういう説明のしかたをすればおなかに落として頂けるのかというのが最大のポイントだと思っております。

次に、なぜ『長期』投資なのかということの説明も重要です。ここには「投機」と「投資」の違いと書いてあります。あまり時間がないので、詳しいご説明はできないのですが、両者の違いについては、ゼロサムのマーケットで勝ち組に入ろうとする行為が投機で、そのためには自分にもうけさせてくれる人が必要になるとお話しします。一方、投資対象自体が価値を増してプラスサムになるのを待つのが投資であり、この場合、もうけさせてくれる人は要りません。そのかわりに、プラスサムになるのを待つわけで、どうしてもある程度時間がかかるわけです。投資の本質は成長で、成長するのには時間が必要になる、だからこそ長期投資が王道といわれるのだという説明をしています。機関投資家と違って、個人の長期投資では期間損益を追う必要はありませんので、時間の裁量に関してだけはプロよりも有利なのですという説明をしています。

③の、なぜ『分散』投資なのか。これについても、わかりやすい説明を心がけています。長期運用だからこそ複利効果が重要になるのですが、複利効果というのは、ご存知の通り両刃の剣的な存在といえ、勝ったり負けたりを繰り返すと、マイナス側に複利が働いてしまうケースがあると申し上げています。元本1,000万円の運用の例を出して、上側が趣味としての投資、もうかりそうなものを当てに行くスタイルでブレが大きいケース、下側が仕事としての運用で、ブレをあえて分散投資することで小さくしているケースです。そうすると、年平均騰落率が低い下の方が金融資産額は大きくなるという説明をしています。3勝1敗で1,161万円がいいか、1勝3敗でも1,189万円がいいかという話をさせていただくと、10人中10人、下の方がいいという答えが返って来ます。だったら分散投資をするべきでしょうということで、これもおなかに落としていただくことを意識したご説明をしております。

13ページですが、実際に分散投資を行った場合の効果例です。左上は国内株式だけへの集中投資のケースで、年初投資の年末回収を毎年行ったとしたら国内株だけだと、過去20年では13勝7敗で、7回複利効果がマイナス側に働いてしまいますが、左下の日米の株式と債券の4つに均等に分ける分散投資ですと15勝5敗で、明らかにマイナスの回数が減るということを示し、国際分散投資がリスク・コントロールの基本だということをご確認いただくわけです。

この5回の負け数をさらに減らすことを考えるのが仕事としての運用では求められることで、分散した上で長期保有するケースが、次の14ページでご紹介してあります。4つに分散した上で、5年保有するケースだと、まだマイナスが起こり得るというのが左上のグラフです。リーマン・ショックを挟むとマイナスになってしまっているのですが、だからこそ10年以内に取崩す予定の資金は安全性を重視するべきとお話しします。ただ、取崩す時期が10年以上先であれば、右側のグラフを見ていただくとわかりますが、マイナスのケースは一度もありません。単純な日米の4資産への均等分散でもです。ということで、基本的に、長期運用というのは10年以上ということだと考えて頂きたいという説明をしております。

同時に、このグラフを用いて積み立て形式が重要なことをご説明します。先ほどの右上のグラフで、2001年スタートでまとめて運用しまして、2011年に満期を迎えた場合には、0.1~0.2%しかプラスにならなかったことがわかります。しかも、このシミュレーションはそれぞれ指数を用いて行っておりますので、投資信託を用いて信託報酬を支払うと、マイナスになってしまったでしょう。これは、結果的に運用をスタートした時期がまずかったということですが、まとめて一度に投資せずに、ここに出ています11回のケース、2007年エンドから2017年エンドですが、分けて投資していただきますと、運用成果が平均化して行きます。右上のリバランスなしの場合で年平均3.14%、年1回リバランスした左下の場合だと3.84%という数値になります。これが積み立て形式でやっていただく理由だという説明をしています。

また、リバランスを行うことで、この場合ですとリターンが年0.7%向上しているわけです。このようにリバランスを行うとリターンが向上するケースが一般的ですので、先ほどお話ししましたが、ポートフォリオのメンテナンスのアドバイスをずっと行っていくという形をとっているわけです。

最後に、15ページの下の方に四角で囲ってありますが、退職金や相続財産など、多額の資金の運用の場合には、リタイア層であっても、まとめて一度に投資するのではなく、できれば四、五年、少なくとも二、三年はかけて、積み立て形式でポートフォリオ構築していただいているということを再度確認しておきたいと思います。退職金の場合、積立形式ではなくても、少なくとも5回に分けてポートフォリオを作って行きます。総額の5分の1だけ買って、半年あけて2回目の分を買い、また半年あけて3回目の分を買うといった方法をアドバイスしております。金融機関などは、できればまとめて買ってもらいたいと考えてきたでしょうが、弊社の場合は、あえて積み立て方式でポートフォリオを構築していただいています。それが私ども独立系アドバイザーにとって、あるべきアドバイスの仕方ではないかと思っています。

時間がなくなってしまったのですが、16ページ以降は、なぜ積み立てなのかということについての説明で用いている資料です。リタイアまでに3,000万円なり3,500万円なりを用意したいということをお話ししましたが、、iDeCoやつみたてNISAを活用して、早いうちから資産形成を始めていただけば、毎月3万円ずつ3%程度の運用を行うことで充分に可能だということを認識していただくための資料が16ページです。ただし、預貯金で積み立てたのでは現在のような金利では半分程度にしかなりませんので、かわりに投資信託の活用が求められるわけです。

しかし実際は、まとまったお金がないから投資しないという方が多くおられます。あるいは、地道にためて、ある程度まとまってから投資を考えるべきだという方も多いと我々は感じています。17ページでは、もしも地道に安定的な、例えば定期預金で積み立てますと、月3万円ずつ、20年間で元本720万円が今の金利なら720万1,000円か2,000円になるわけですが、折れ線グラフのうち2,500円幅で上下を繰り返しているのがピンク色の線ですね。一方、5,000円幅で上下しているのが紺色の線です。実際にこんな値動きをする投信はないでしょうが、最終的にいずれももとの値段に戻ってしまったというケースで計算すると、両方とも定期預金の場合よりも多くなっています。特に注目すべきなのは、ブレ幅が大きい紺色の方が圧勝するという結果です。実は、積み立て段階こそブレ幅の大きな商品を活用すべきなのです。定額の積み立て投資では、ブレ幅が大きい商品のほうが効率的に資産形成につながる可能性が高いのです。

18ページは、投資をしたくない最大の理由と考えられる、買った後の値下がりが嫌だという方向けの説明用資料です。ご覧の通り、積み立て開始後の投信の値動きが4パターン作ってあります。上がって下がったケース、着実に1.5%ずつ値上がりしたケース、そして下がった後で元値まで戻ったケースと、下がって戻り切らなかったケースの4つです。ほとんどの方は、右肩上がりで、順調に値上がりし、最終的に1万1,617円で終わっている紫色のケースが一番いいと考えるのですが、資産形成が一番進み、資産残高が大きくなるのは、その下の黄色のケースなのですね。もっと驚くのは、下がった後、もとの値段まで戻り切らなかった水色のケースが、順調に1.5%ずつ値上がりした紫色のケースよりも資産残高が大きくなるということです。定額の積み立て式投資なら、投資開始後の値下がりは全然怖くない、資産形成をスタートしてしばらくは、むしろ下がったほうがたくさん買えていいくらいだといったご説明をさせていただくと、運用をスタートするときや値下がり局面の精神的なストレスが非常に小さくなると、実務家として感じています。

こういったアドバイスを行うアドバイザーが増えてくれば、間違いなく報告書にあるアドバイザーの多様化にもつながるであろうと考えております。

頂いていた時間を少々過ぎてしまいました。申しわけありません。ありがとうございました。

【神田座長】
どうもありがとうございました。

本日、皆様方からご意見をお出しいただく時間がございませんで、次回、またご意見を出していただきたいと思いますけど、せっかく成本先生にお越しいただいているので、成本先生へのご質問があれば、ぜひ、ここでお出しいただきたいと思います。

上柳委員、どうぞ。

【上柳委員】
すいません。恐縮です。

成本先生の24ページの、この図のつくり方について、ヒントがいただければと思いました。

この分類をどういうふうにしてつくられたのか、先生の直感的ご判断ということなのでしょうか。

【成本参考人】
そうです。直感的判断でして、医学のほうですと、私たちでつくれるのですけれども、これは多分、皆様がお持ちの金融商品とかの性格とか特性に応じてつくる必要があるのではないかなというふうに思っております。

【神田座長】
よろしゅうございますでしょうか。

【上柳委員】
はい。

【神田座長】
ほかにご質問はありますでしょうか。

野村さん、どうぞ。

【野村委員】
私も実は同じページに注目しまして、直前の医療同意よりも経験や知識のばらつきが多いという23ページのご指摘のとおりだなと思うところなので、おそらく、特に⑧の金融商品の契約というのが、先生が前のほうで分解された医療行為と同じぐらいばらばらに分解される世界だろうと思います。質問というよりはコメントみたいになってしまうのですけれども、この⑧をいかに分解するのかというところが、これからいろいろ議論を求められるところではないかなと思います。

【神田座長】
ありがとうございます。

ほかにご質問ございませんでしょうか。

野尻委員、どうぞ。

【野尻委員】
ありがとうございます。本当に情けないのですが、認知症有病率、80代後半、41.4%という数字、この数字の中にもグラデーションがあるのだという理解でよろしいですよね。

【成本参考人】
はい。

【野尻委員】
要は、これ見ると、やっぱり80代後半になると、4割は金融取引としては無理だよねと思ってしまいがちです。我々、どうしても認知症の有病率というのが先に先に出てくるのが多くて、でも、ここの中でもグラデーションがあって、できることとできないことがある、こういう理解でいいですか。

【成本参考人】
そうです。おっしゃるとおりです。認知症のパターン、認知機能の低下のパターンもさまざまですし、ご高齢になってから発症されるアルツハイマーの方は記憶障害が中心にありまして、意外と理解力、判断力は保たれる方も多かったりしますので、記憶のところさえカバーすれば、十分契約とか遺言ができたりする方も多くおられますので、年代によって、この統計だけすると、認知症かどうかという有病率になってしまいますけれども、その中は結構グラデーションがあるということ、おっしゃるとおりだと思います。

【神田座長】
高田委員、どうぞ。

【高田委員】
お伺いしたかったのが、先生のご議論の中で適合性の原則のところがございまして、よく業界の中では、やっぱり一定の年齢、例えば75歳とか、そういった形で切られるケースが多いと思うのです。それは実務上しようがない部分は大きいと思うのですが、先生、先ほど、年齢とか、そういったことではなくて、ちゃんと実態のことを把握しながら対応すべきだというご指摘がありました。現実問題として、金融機関なり現場を含めて、どういうふうな基準、もしくは、例えば、先生のような方が隣におられて対応すればいいのかもしれないのですけれども、そういう、もしくは全体的な目安みたいなものだとか、いろいろ評価のこれまでも簡易的なものはあるのでしょうか。また、それを現場で対応するわけにも、なかなかいきにくい部分もある中で、どういう形を今後とっていったらいいのでしょうか。我々、金融全般的にしても、先生方のような、こういったものとの一体感というのでしょうか、総合的なものが非常に重要だなということを改めて感じたのですが、その辺の、アドバイスをいただければと思いました。

【成本参考人】
ありがとうございます。

皆様、他の業界にやっていただくのは、認知症の診断ではないと思っていまして、当該の取引とか契約ができるかどうかということが評価できればいいと思っていますので、そのためには、その方がこれまでしている経済活動みたいなものに変化が出てないかどうかを確認するというのが、まず第一歩じゃないかなというふうに思っています。だから、認知症というのは、発症すると必ず、その方の生活機能の中で、とりわけ複雑なものがうまくできなくなってきますので、こういった金融取引をずっと継続的にやってらっしゃる方ですと、その中で必ず変化が出てきますので、そういった変化が捉えられる体制をとるという、その方の生活のパフォーマンスの変化というものに着目するということがいいのではないかなというふうに思っております。

【神田座長】
いかがでしょうか。よろしゅうございますでしょうか。

あっと言う間に予定の時間を過ぎてしまっておりますけれども、本日も大変熱心にご審議をいただきまして、ありがとうございました。

次回以降も、「高齢社会における金融サービスのあり方」を中心にご議論を深めていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

具体的な日程等につきましては、後日、事務局からご案内させていただきます。

それでは、以上をもちまして、本日のワーキング・グループの会合を終了といたします。どうもありがとうございました。

―― 了 ――

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