タンパク質解析技術を応用した日本発のISO規格が発行されました

2018年11月08日  経済産業省 

タンパク質解析技術を応用した日本発のISO規格が発行されました

カシミヤ製品の公正な取引に貢献する試験方法のISO規格

2018年11月8日

経済産業

今般、日本が提案した「カシミヤ等獣毛繊維のペプチド法による試験方法」が、国際標準化機構(ISO)(※)において承認され、ISO規格として発行されました。これは、動物の種類によって毛に含まれるタンパク質の構造が異なることを利用し、カシミヤなどの獣毛繊維を正確に識別し、その混合比率を測定する方法です。これにより、カシミヤ繊維の偽装を防止し、国際的に公正な取引が促進されることが期待されます。

(※)日本は本ISO規格が審議されたISOの技術委員会(Technical Committee 38:Textiles)の幹事国です。

1.背景

カシミヤは高級繊維として人気が高く、セーター、コートなどに使われています。しかし、獣毛の種類を特定し、その組成を正確に分析することは難しく、例えば、カシミヤとヤクのように見た目が非常によく似ているものや、加工を繰り返すことで毛の表面が損傷を受けたものは、判別が困難になることが少なくありません。顕微鏡を利用したカシミヤの鑑別には高度な技術と経験が求められているものの、技術の隙間を狙った偽装事例(羊毛などで代替)が発生することも少なくありません。
このため、顕微鏡法に加えて客観的な試験方法の開発は、消費者の安心のために喫緊の課題となっていました。

2.規格の概要

動物の毛の重さの約90%は、ケラチンと呼ばれる多種類のタンパク質で構成されています。このケラチンは動物の種類により異なりますが、非常に似ており、アミノ酸の並び方がわずかに違う点を利用して、動物種を判別します。

毛を細かく砕き、還元剤と呼ばれる物質を加え、加熱して溶かします。こうして得られた溶液中から、分析に使うケラチンIを取り出すため、電気泳動という方法を使います。得られたケラチンIをトリプシンという酵素で処理し、短いペプチドに変え、このペプチドをMALDI-TOF質量分析計で分析すると、動物種に特異的なピークが観察されます。ピークの出る位置(図2の横軸)から動物の種類、ピークの高さ(図2の縦軸)から毛の混合率を求めることができます。


図1:試験方法の概要



図2:MALDI-TOF質量分析計による分析結果例

3.期待される効果

この試験方法では、強く染色された製品、傷んだ繊維なども科学的・効率的に分析可能です。繊維に含まれている動物種全体の情報を得ることができ、1本の毛であっても分析可能であるため、食品などの混入異物の検査にも応用可能です。

本ISO規格に基づく試験方法が国際的に浸透すれば、カシミヤ繊維の鑑別精度が向上し、世界各国の流通市場においてカシミヤ製品の偽装が防止され、公正な取引の促進や、消費者の安心が高まることが期待されます。

規格番号 規格名称 概要
ISO 20418-2 Qualitative and quantitative proteomic analysis of some animal hair fibres —Part 2: Peptide detection using MALDI-TOF MS タンパク質解析技術を用いて、カシミヤ繊維などを識別する試験方法を規定

担当

産業技術環境局 国際標準課長 藤代
担当者:永田、昇
電 話:03-3501-1511(内線 3423~5)
03-3501-9277(直通)

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