ハイチ地震:地震発生から1カ月、保健・医療が崩壊~65万人が緊急支援必要【プレスリリース】

2021/09/16  公益財団法人 日本ユニセフ協会 


レカイ(Les Cayes)にある病院の中庭に設置されたユニセフのテントの中で、治療を待つ人たち。(2021年8月17日撮影) (C) UNICEF_UN0503650_Rouzier
【2021年9月14日 ポルトープランス(ハイチ)/パナマシティ 発】

ハイチ南西部を襲ったマグニチュード7.2の地震から1カ月が経過した今も、26万人の子どもたちを含む65万人の人々が緊急の人道支援を必要としていると、ユニセフ(国連児童基金)は警鐘を鳴らしました。

ユニセフ・ラテンアメリカ・カリブ海諸国地域事務所代表のジーン・ゴフは「ハイチの子どもたちは、家、学校、保健施設、そしてコミュニティ全体を崩壊させた地震の余波を受け、いまだに苦しんでいます」と述べました。

「ハイチ南西部では、保健サービスがほとんど機能していません。多くの病院が損傷・損壊しています。子どものいる家族の多くは、残された数少ない保健施設で治療を受けることができるか心配しています。安全な水や基本的な保健サービスへのアクセスが限られていることで、幼い命が危険に晒されているのです」(ゴフ)

地震の被害にあい、足首の骨が砕けてギブスを付けている16歳の男の子。(2021年8月31日撮影) (C) UNICEF_UN0516352_Haro
1万2,000人が負傷し、最も被害の大きかった地域では82カ所の保健施設が損傷・損壊したと推定されており、保健システムはそのニーズに対応することが難しくなってきています。1カ月経った今でも、農村部のいくつかのコミュニティは、インフラの損傷により、機能している保健施設を利用できていません。保健・医療にも限界がきており、傷口からの感染症や破傷風など、健康リスクが高まっています。

多くの産科病棟や外科病棟が出産に対する安全基準を満たしていないため、定期的な保健・医療サービスが受けられず、妊産婦や新生児の死亡リスクが高まっています。また、栄養不良の予防や発見、治療などを行う保健医療当局も、地震によってうまく機能できていません。

このようなニーズの高まりに対応するため、ユニセフはパートナーと協力して、必要不可欠な医薬品、医療物資・機器、栄養治療食の提供や、損傷・損壊した保健センターの保健・医療サービス再開の支援、保健・医療のサプライチェーンマネジメントの強化などを行っています。

ユニセフは、24の移動式クリニックに必要不可欠な医療機器と医薬品を配備し、遠隔地に住む人々に、急性栄養不良の発見と治療を含む、総合的な保健・栄養サービスを提供しています。

「地震発生後、子どものいる家族が保健施設を利用できない場合、子どもの死を防ぐためにも、命を守る保健サービスを提供することが重要です。ユニセフは、子どもたちの健康を守るために、より多くの移動式クリニックを配備しています。何千もの家族や子どもたちが緊急に医療を必要としている中、保健施設の再建を待つことはできません」(ゴフ)

その他、保健・医療面での主な成果は以下の通りです。

被災者の緊急ケアに携わった19カ所の主要な病院において、5万人を対象に必要不可欠な医療物資3カ月間分を提供
30万人に3カ月間必要な個人用防護具(PPE)を提供



倒壊した家の下敷きになり、治療を受ける12歳のシモーヌさん。(2021年9月6日撮影) (C) UNICEF_UN0516288_Crickx
乳児と妊産婦の健康については、ユニセフは保健省および世界保健機関(WHO)と緊密に協力し合い、子どもたちと女性のためのプライマリ・ヘルスケアの継続を優先しています。今後6カ月間、25万1,000人以上の子どもたちと女性を対象にした必要不可欠な保健・栄養サービスを支援し、一般的な小児疾患を治療するための必需品も提供します。

その他、3万5,000人の子どもたちを対象に定期予防接種の拡大、急性栄養不良の子どもたちの発見と治療、栄養不良を防ぐための乳幼児への栄養補給を支援するプログラム、妊産婦や新生児、子どもたちのケアなど、保健・医療支援の拡大が予定されています。

また、被害を受けた30カ所の病院やプライマリ・ヘルスケアセンターの再建・修復を支援するとともに、医療施設のスタッフやコミュニティの保健員3,000人に対して、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)予防の継続やPPEの提供など、感染予防管理(IPC)に関するトレーニングを実施する予定です。

ユニセフは、今後6カ月間にわたって、ハイチでの地震による人道支援ニーズに対応し、保健、教育、水と衛生、栄養、ジェンダーに基づく暴力(GBV)を含む子どもの保護といったあらゆる分野において緊急支援を行うために、7,330万米ドルの資金を必要としています。しかし、これまでに確保できた資金は、その11%に届きません。

その他、ユニセフの主な成果と対応は以下の通りです。

25万人以上の被災者に197万2,386リットルの安全な飲料水を給水車で提供した。
5,598セットの衛生キットを2万8,000人に配布(備蓄されていた2,300セットの衛生キット、41ロールの防水シート、15基の貯水ブラッダー、塩素剤を含む)した。さらに、3基の水処理装置、41基の貯水ブラッダー、防水シート、3万1,200セットの衛生キットなど追加の支援物資が、3カ月間で15万6,000人に届く予定である。
11カ所の水処理プラントと51基の貯水ブラッダー(総容量41万5,000リットル)の設置、および給水車の燃料補給を行った。
70の取り外しと再利用が可能なトイレと手洗い設備を設置した。
約340人の子どもたちが暮らす10カ所の児童養護施設に防水シートと浄水器を配布した。
レカイ(Les Cayes)のレクリエーションスペースにおいて、178人の子どもたち(96人の女の子と82人の男の子)を対象にした心理社会的支援活動を実施している。また133人が子どもの搾取や人身売買のリスクについての知識を得た。
今後6カ月間で、150万人以上の子どもたちと女性が、性的搾取や虐待を報告し、専門的な支援サービスを受けるための安全な手段を利用できるようにする。
900室の安全で半永久的な学習スペース(教室)の設置と、一部損壊した400室の教室の修復を行い、10万人の子どもたちが質の高い教育と就学前教育を確実に受けられるようにする。
最も厳しい状況にある子どもたちや妊娠中の女性がいる最大2万世帯に対して、必要不可欠なサービスを受けたり、非食料物資を入手できるよう、緊急現金給付支援を行った。
南県、グランダンス県、ニップ県のユー・レポーター(ユニセフと共に活動する若者)450名以上に、性的搾取と虐待からの保護(PSEA)、ジェンダーに基づく暴力、緊急時の衛生とメンタルヘルスの管理についてのトレーニングを実施した。


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ユニセフ「自然災害緊急募金」ご協力のお願い
地震や津波、洪水、台風やサイクロン、干ばつなどの自然災害に苦しむ子どもたちのために、ユニセフは緊急支援を行っています。その活動を支えるため、(公財)日本ユニセフ協会は、ユニセフ「自然災害緊急募金」を受け付けております。ハイチの地震で被災した子どもたちを含む、最も支援を必要としている子どもたちとその家族に支援を届けるために、ご協力をお願い申し上げます。

1. クレジットカード/コンビニ/ネットバンクから
https://www.unicef.or.jp/kinkyu/disaster/2010.htm

2. 郵便局(ゆうちょ銀行)から
振替口座:00190-5-31000/口座名義:公益財団法人 日本ユニセフ協会
*通信欄に「自然災害」と明記願います。
*窓口での振り込みの場合は、送金手数料が免除されます。
※公益財団法人 日本ユニセフ協会への寄付金には、特定公益増進法人への寄付として、所得税、相続税、法人税の税制上の優遇措置があります。また一部の自治体では、個人住民税の寄付金控除の対象となります。

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■ ユニセフについて
ユニセフ(UNICEF:国際連合児童基金)は、すべての子どもの権利と健やかな成長を促進するために活動する国連機関です。現在約190の国と地域※で、多くのパートナーと協力し、その理念を様々な形で具体的な行動に移しています。特に、最も困難な立場にある子どもたちへの支援に重点を置きながら、世界中のあらゆる場所で、すべての子どもたちのために活動しています。 https://www.unicef.or.jp/
※ ユニセフ国内委員会(ユニセフ協会)が活動する33の国と地域を含みます
※ ユニセフの活動資金は、すべて個人や企業・団体からの募金や各国政府からの任意拠出金で支えられています

■ 日本ユニセフ協会について
公益財団法人 日本ユニセフ協会は、先進工業国33の国と地域にあるユニセフ国内委員会のひとつで、日本国内において民間として唯一ユニセフを代表する組織として、ユニセフ活動の広報、募金活動、政策提言(アドボカシー)を担っています。 https://www.unicef.or.jp/

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