「ラファの60万の子どもに安全な行き場はない」ユニセフ、強制移動の回避を求める【プレスリリース】

2024/05/07  公益財団法人 日本ユニセフ協会 

6万5,000人の障がい児など、脆弱性高い子どもも


ハンユニスからラファへ避難した7歳のロジーナさんと母親。「娘は多動症と診断されていますが、必要な治療を受けられていません」と母親は話す。(ガザ地区、2024年4月14日撮影) (C) UNICEF_UNI556614_El Baba
【2024年5月6日 ニューヨーク発】

ガザ地区の人道危機が悪化の一途をたどる中、ユニセフ(国連児童基金)は、ラファの軍事的包囲や同地への地上侵攻は、現在同地に避難している60万人の子どもに大惨事の危険をもたらすと警鐘を鳴らしています。

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戦闘機によって破壊されたラファの自宅の中で立つ12歳のサマさん。「今すぐに戦争をやめてほしいです。何度も何度も避難したくないです」と話す。(ガザ地区、2024年3月撮影) (C) UNICEF_UNI544672_El Baba
10月に南部への避難指示が出たことを受けて、かつて約25万人が暮らしていたラファには現在、約120万人が避難していると推定されています。その結果、ラファの人口密度は、1平方キロメートル当たり2万人となり、それは1平方メートル当たり1万1,300人のニューヨークの約2倍となっています。人口の約半分は子どもで、その多くは避難を何度も繰り返し、テントや不安定かつインフォーマルな住居に身を寄せています。

ラファでは、極めて脆弱で生存の危機に瀕している多くの子どもがひしめきあっています。子どもたちの人口密度の高さに加え、避難経路となり得る場所には地雷が仕掛けられたり不発弾が散在したりなど激しい暴力が予想され、さらには避難施設および避難先地域でのサービスも不十分である非常に高い可能性があります。そのためユニセフは、軍事作戦は、民間人に膨大な数の死傷者を出し、生き延びるために必要な、わずかに残された基礎的サービスやインフラを完全に破壊するなど、子どもたちにとってさらなる大惨事を招くと、警鐘を鳴らしています。

ユニセフ事務局長のキャサリン・ラッセルは、次のように述べています。「200日を超える戦争は、子どもたちの生活に想像を絶する犠牲を強いています。ラファは今や、子どもたちの街です。ガザの中で安全な行き場を失った子どもたちの街、です。大規模な軍事作戦が始まれば、子どもたちは肉体的にも精神的にもすでに弱っているときに、暴力だけでなく、混乱やパニックからの危険にもさらされるのです」

おとなと比べて、子どもはガザ地区での戦争の壊滅的な影響を特に受けやすい状況にあります。子どもたちが殺傷される数は不釣り合いに多く、医療と教育が中断され食料と水が手に入らないことに、より深刻な被害を受けています。パレスチナ保健省の最新の推計によると、この紛争ですでに1万4,000人以上の子どもが死亡したと報告されています。

同時に、ラファでは、何十万人もの子どもが、障がいや疾患をはじめとする脆弱性を抱えていると推定され、同市に迫り来る軍事作戦によって、さらに大きな危険にさらされています。以下はその例です。
推定約6万5,000人の子どもに、見ること、聞くこと、歩くこと、理解することおよび学ぶことが困難であるなど、既存の障がいがある。

7万8,000人の子どもが2歳未満の乳幼児である。

8,000人近くの2歳未満児が急性栄養不良状態にある。

約17万5,000人の5歳未満児、つまり10人に9人が、1つ以上の感染症を発症している。

ほぼすべての子どもが、すでにメンタルヘルスケアと心理社会的支援を必要としている。



ラファにあるテントで、ユニセフの心のケアを受ける子どもたち。(ガザ地区、2024年4月3日撮影) (C) UNICEF_UNI551230_Eliean
これらの脆弱性の多くは、相互排他的なものではありません。つまり、同じ子どもが、怪我と病気の両方を抱えていたり、栄養不良で乳幼児の両方であったりすることもあります。

ラッセル事務局長はまた次のようにも述べています。「現在ラファに押し込められている何十万人もの子どもは、怪我をしたり、病気にかかったり、栄養不良であったり、トラウマを負ったり、障がいを抱えたりしています。多くの子どもが何度も住む場所を追われ、家や親や愛する人を失っています。子どもたちは、保健医療施設や避難施設などの、彼らに必要な、残っているサービスと共に、保護されなければなりません」

ユニセフは、「イスラエルに対し、国際人道法および国際人権法に基づき、食料と医療用品を提供し、支援活動を円滑にする法的義務を果たすよう求めるとともに、世界の指導者たちに対し、さらに深刻な大惨事が起きないようにすることを求める」との機関間常設委員会の要請を今一度、繰り返します。

ユニセフはまた、子どもたちが特に脆弱な状況に置かれていることに焦点をあて、以下を呼び掛けています。
即時かつ長期的な人道的停戦。人質の即時解放と、すべての子どもに対する重大な権利侵害を停止する。

民間人と、病院や避難所などの彼らの基礎的ニーズを支えるインフラを攻撃や軍事利用から守る。

避難指示に従えない、または従いたくない場合、子どもとその家族は引き続き保護されること。人々は安全な場所へ自由に移動できるべきであり、決して強制されてはならない。

人道支援組織や人道支援従事者が、ガザ地区のどこであろうと、子どもとその家族に命を守るための支援を届けることができるよう、彼らに安全で恒常的なアクセスを確保する。



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注記
障がいのある子どもに関するデータポイントは、2019~2020年パレスチナ複数指標クラスター調査(MICS)の結果に基づいています。これは、ガザ地区に関する入手可能な最新のMICS調査であり、以降に発生した可能性のあるこの指標の変化を反映していません。しかしながら、この指標は障がいのある子どもの発生率の有効な下限値を示しています。

■「ガザ人道危機緊急募金」受付中
ガザの最も支援を必要としている子どもたちとその家族に支援を届けるため、(公財)日本ユニセフ協会は、ユニセフ「ガザ人道危機緊急募金」を受け付けています。詳しくはこちらをご覧ください。
https://www.unicef.or.jp/kinkyu/gaza/

■ ユニセフについて
ユニセフ(UNICEF:国際連合児童基金)は、すべての子どもの権利と健やかな成長を促進するために活動する国連機関です。現在約190の国と地域※で、多くのパートナーと協力し、その理念をさまざまな形で具体的な行動に移しています。特に、最も困難な立場にある子どもたちへの支援に重点を置きながら、世界中のあらゆる場所で、すべての子どもたちのために活動しています。ユニセフの活動資金は、すべて個人や企業・団体からの募金や各国政府からの任意拠出金で支えられています。 https://www.unicef.or.jp/
※ユニセフ国内委員会(ユニセフ協会)が活動する33の国と地域を含みます

■ 日本ユニセフ協会について
公益財団法人 日本ユニセフ協会は、33の先進国・地域にあるユニセフ国内委員会の一つで、日本国内において民間で唯一ユニセフを代表する組織として、ユニセフ活動の広報、募金活動、政策提言(アドボカシー)を担っています。 https://www.unicef.or.jp/

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