SCSKの量子AI研究論文、『Quantum Machine Intelligence』誌に掲載

2024/06/14  SCSK 株式会社 

2024 年 6 月 14 日

SCSK の量子 AI 研究論文、『Quantum Machine Intelligence』誌に掲載

SCSK株式会社(本社:東京都江東区、代表取締役 執行役員 社長:當麻 隆昭、以下 SCSK)は、イオントラップ方式※1の量子コンピュータを用いて量子カーネル法※2の実機検証を実施しました。このたび、その研究内容が専門家による査読を経て、国際学術誌『Quantum Machine Intelligence』に掲載されました。SCSKは、今後も AI や量子コンピューティングなどの先進技術を活用して社会課題の解決に取り組んでいきます。

1.研究内容

量子コンピューティングと AI を融合した量子 AI は、様々な科学や産業分野で高い効果を発揮することが期待されています。今回の研究では、量子サポートベクター分類(QSVC)※3および量子サポートベクター回帰(QSVR)※4モデルに焦点を当て、量子回路シミュレータおよび量子コンピュータを使用して調査しました。QSVC には不正なクレジットカード取引データや画像データを、QSVR には金融データや材料データを使用しました。

研究結果として、ノイズを含む実際の量子コンピュータを使用した QSVC モデルの予測性能は、量子回路シミュレータや従来の AI と同等であることが確認されました。また、QSVR モデルでは、ノイズを含む量子カーネルに低ランク近似※5とハイパーパラメータチューニングを適用することで、ノイズの影響を軽減し、予測性能を一定程度維持できることが確認されました。

結果として、浅い量子回路で記述される量子カーネルは QSVC および QSVR の両方で効果的であり、ノイズに対する耐性と様々なデータセットへの適応性が示されました。今後の展望として、量子機械学習の可能性を最大限に引き出すため、量子カーネルに基づく手法のさらなる発展が必要であると考えます。

お知らせ

2.掲載論文について

タイトル: Quantum support vector machines for classification and regression on a
trapped-ion quantum computer
(イオントラップ方式量子コンピュータを用いた分類と回帰のための量子サポートベクターマシン)
著者: Teppei Suzuki(鈴木 鉄兵)、Takashi Hasebe(長谷部 嵩)、Tsubasa Miyazaki(宮﨑 翼)
掲載誌: Quantum Machine Intelligence
掲載先: https://doi.org/10.1007/s42484-024-00165-0
掲載日: 2024 年 5 月 18 日

3.『Quantum Machine Intelligence』について

Springer Nature 社の『Quantum Machine Intelligence』 は、量子コンピューティングと AI の融合領域における最先端の研究を広めるための学術誌の一つです。同誌は、量子コンピューティングを用いたより効率的な AI アルゴリズムの設計とその実社会の問題への応用に関する理論的および実験的研究を広めることを目的の一つとしています。

4.用語説明

※1 イオントラップ方式:
量子コンピュータの実現方法の一つです。電磁波を用いて安定的に捕捉したイッテルビウムイオンなどを量子ビットとし、レーザーを使ってイオン間の相互作用を制御することで、高精度な量子計算を実行する技術です。今回の研究では、米 IonQ 社の Harmony 量子プロセッサの 4 量子ビットを主に使用し、補助として同社の Aria 量子プロセッサの 8 量子ビットを使用しました。
※2 量子カーネル法:
機械学習の一つであるカーネル法の量子版であり、カーネル行列を量子回路によって実現する手法です。
※3 量子サポートベクター分類(Quantum Support Vector Classification: QSVC):
量子カーネルを活用した教師付き機械学習の一つであり、分類問題を解決するための手法です。
※4 量子サポートベクター回帰(Quantum Support Vector Regression: QSVR):
量子カーネルを活用した教師付き機械学習の一つであり、回帰問題を解決するための手法です。
※5 低ランク近似:
高次元のデータを低次元に近似する手法です。特異値分解などが一般的な低ランク近似の手法です。今回の研究では、ノイズを含む量子カーネルに対して、小さい特異値を無視することでノイズ成分を除去し、データの本質的な部分を抽出します。

本件に関するお問い合わせ先
SCSK株式会社
技術戦略本部 先進技術部
E-mail: tsd-info@scsk.jp

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