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次世代海底ケーブルシステム向けの新たなマルチコアファイバ接続光部品を開発

2024/05/27  湖北工業 株式会社 

2024 年 5 月 27 日

次世代海底ケーブルシステム向けの新たなマルチコアファイバ接続光部品を開発

湖北工業株式会社(本社:滋賀県長浜市、代表取締役社長 石井 太)は、株式会社 KDDI 総合研究所(埼玉県ふじみ野市、代表取締役所長 中村 元)と共同で、次世代海底ケーブルシステム向けの新たなマルチコアファイバ(※1)接続光部品(ファンイン/ファンアウト光デバイス(※2))を開発し、マルチコアファイバとしては世界最長となる 18,090km の光ファイバ伝送の実証に貢献しました。

近年、海底ケーブルシステムの更なる大容量化に向けて、光ファイバ内に複数のコアを有するマルチコアファイバを用いた光伝送システムの開発が進んでいます。特に、標準クラッド外径(※3)を有する 2 コアファイバは従来システムからの大幅な設計変更を伴わずに伝送容量を拡大出来ることから、マルチコアファイバの最初の商用利用として期待されています。一方で、マルチコアファイバを用いたシステムには、コア間クロストーク(※4)の抑制やファンイン/ファンアウトの過剰損失の低減などの課題があり、これまで太平洋横断レベルの超長距離伝送が実証されていませんでした。

KDDI 総合研究所はこれらの課題に対し、2 コアファイバのコア間で光伝搬方向を逆(対向光伝搬)にしてクロストークを抑制するとともに、光ファイバ増幅器(※5)に組み込まれる光アイソレータ(※6)とファンイン/ファンアウトを複合化して過剰損失を低減する光伝送システムを考案しました(下図)。湖北工業は、この新たなシステムを実現するファンイン/ファンアウトの開発と試作を行い、φ12×83mm のサイズで、2 コアファイバの対向光伝搬に対応したアイソレーション機能を有し、C バンド(※7)における最小挿入損失が 0.47dB の低損失化を実現したファンイン/ファンアウトを開発しました。そして、この光デバイスが組み込まれた 2 コアファイバ用光伝送システムにおいて、フル C バンドのトータル伝送容量が 29.89Tb/s(1 コアあたり 14.94Tb/s)で、18,090km を超える世界最長の光伝送が実証されました。本成果は、これまでに報告されている標準クラッド外径のマルチコアファイバを用いた C バンドにおける伝送システムの最長距離 12,040km(1 コアあたり 13.99Tb/s)(※8)を 1.5 倍延伸し、2 コアファイバが従来のシングルコアファイバを用いたシステム(例えば、太平洋横断の海底ケーブル Bifrost は 10.4Tb/s、16,460km)(※9)と同様に太平洋横断の超長距離でも使用出来ることを示しており、今後、マルチコアファイバの適用が加速することが期待されます。

両社は、光通信分野に関する世界最大級の国際会議 OFC2024(2024 年 3 月 24 日~28 日開催)のポストデッドライン論文として、今回の研究成果を発表しました(※10)。

<マルチコアファイバ(MCF)を用いた光伝送システム>
<今回開発したアイソレーション機能を有するファンイン/ファンアウト光デバイスの外観写真>

<今後の展望>
湖北工業株式会社は長年にわたり、海底ケーブル用の高信頼光部品の製造、販売を行ってきました。現在、海底ケーブルの飛躍的な伝送容量拡大と消費電力の低減が期待されるマルチコアファイバを用いた次世代の空間分割多重技術に対応するファンイン/ファンアウトやマルチコアファイバ用光アイソレータなどの新たな光部品の開発を行っております。2024 年からサンプル出荷を進めており、順調に進めば、2026 年以降の量産化が期待されます。

<用語説明・補足説明>
(1) マルチコアファイバ
光ファイバの中で信号光が伝搬する経路(コア)が 1 個の従来のシングルコアファイバに対して、複数個のコアを有する光ファイバです。マルチコアファイバを用いることで、信号光を空間的に高密度化できるため、伝送容量の拡大が期待されます。

(2) ファンイン/ファンアウト光デバイス
マルチコアファイバの各コアとシングルコアファイバのコアを接続する光部品です。

(3) 標準クラッド外径
国際規格で決められているガラス部分(クラッド)の外径が 0.125mm の光ファイバ。現在の海底ケーブルで使用されている光ファイバは標準クラッド外径を有しており、マルチコアファイバにおいても同一外径とすることにより高い機械的信頼性が期待されます。

(4) コア間クロストーク
コア間の信号光の漏れの程度を表す量で、クロストークが大きいと隣接するコアを伝搬する光との干渉が生じて信号品質が劣化し、伝送容量の低下につながります。

(5) 光ファイバ増幅器
希土類添加光ファイバに信号光を通して光のまま信号を増幅する装置で、光アイソレータや WDM カプラなどの光部品が組み込まれています。エルビウム添加ファイバ増幅器(EDFA)などが知られています。

(6) 光アイソレータ
光を一方向のみ通す光部品です。海底中継器などに組み込まれ、戻り光による光増幅の不安定化を抑制します。

(7) C バンド
波長 1530~1565nm の帯域で、光ファイバの損失が低く、長距離伝送システムで一般的に用いられます。

(8) 出展:D. Soma et al.
, Opt. Express 30, 9482 (2022)

(9) 出展:Bifrost, FCC Public Notice, SCL-00419NS (2023)

(10)OFC2024 の発表内容
光通信分野における世界最大級の国際会議と展示会(OFC : Optical Fiber Communication Conference and Exhibition)において発表しました。発表題目は、「18,090-km 2-core Fiber Transmission Using Circulatory Directional Fan-in/Fan-out Devices」(Th4A.4)です。

<湖北工業株式会社の概要>
湖北工業株式会社は、1959 年にアルミ電解コンデンサのリード端子製造メーカーとして創業、その後 2000 年に光部品・デバイス事業に進出しました。現在では売上のうちリード端子事業が 53%、光部品・デバイス事業が 47%の構成となっています。光部品・デバイス事業において、海底ケーブル向け光アイソレータ市場で市場シェア 50%を有し、この分野におけるリーディングカンパニーとなっています。また第三の成長事業としてスラリーキャスト法を用いた高純度石英ガラス事業の事業化を進めています。

以上

<この件に関するお問い合わせ先>
湖北工業株式会社 広報・IR 室
TEL:(0749)85-3211、E-Mail:ir@kohokukogyo.co.jp

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