漢方薬原料「酸棗仁」による認知機能改善効果の新発見について[帝人]

2024/09/19  帝人 株式会社 

2024 年9月19日
帝 人 株 式 会 社

帝人とセレブロファーマによる共同研究成果
漢方薬原料「酸棗仁」による認知機能改善効果の新発見について


帝人株式会社(本社:大阪市北区、社長:内川 哲茂)は、セレブロファーマ株式会社(本社:大阪市中央区、代表取締役:富山 貴美)と共同研究を実施し、酸さん棗そう仁にん(*1)の全粒粉の投与により、認知症モデルマウスの認知機能が健常マウスと同程度に改善することを新たに発見しました。今回の研究結果は、酸棗仁の全粒粉が認知症という社会課題に対するソリューションとなる可能性を示唆しています。なお、本研究成果は2024年9月13日に学術誌「eLife」において掲載されました。 (*1)クロウメモドキ科サネブトナツメの種子で、抽出エキスが漢方薬の原料として使用されており、鎮静・鎮痛・血圧上昇作用を有する。

1.背景・経緯

(1)認知症は 2030 年には日本国内で推定患者数が830万人に達し、高齢者の約2割が罹患すると予測されており(平成 29 年度版 内閣府高齢者白書)、この増加を食い止めることが喫緊の社会課題になっています。

(2)帝人は、医薬品事業および在宅医療事業で培った研究開発力や臨床評価技術を活用し、「ニュートラシューティカル(*2)製品」の研究開発・製造販売を行っており、NMN(ニコチンアミドモノヌクレオチド)や、本わさび由来の 6-MSITC(6-メチルスルフィニルヘキシルイソチオシアネート)を含有したサプリメントなどの研究開発・製造販売を行っています。

(*2)健康の維持を目的として、明確な科学的根拠に基づいて開発された日常的に摂取可能な食品のこと。

(3)セレブロファーマは、大阪市立大学(現 大阪公立大学)大学院医学研究科の研究成果をもとに設立された大学発のベンチャー企業で、認知症の原因といわれるタンパク質であるアミロイドβやタウを減少させる天然成分を発見し、それらが認知症予防に有効であることを見出しました。

(4)ニュートラシューティカル素材の探索研究の成果として製品の上市実績のある帝人と、認知症改善に関する先端知見をもつセレブロファーマは、認知症予防・治療のソリューションを社会実装することで社会貢献することを目指し、2019年から共同研究を行ってきました。

2.今般の共同研究について

(1)前頭側頭型認知症モデルマウス(Tau784 マウス)、アルツハイマー病モデルマウス(APP23マウス)、パーキンソン病モデルマウス(αSyn マウス)を、酸棗仁の全粒粉を摂取させる群(全粒粉摂取群)、酸棗仁の抽出エキスを摂取させる群(抽出エキス摂取群)および酸棗仁を摂取しない群(コントロール群)にそれぞれ分け、1か月後にモリス水迷路行動試験法(*3)を4 日間行い、認知機能の変化を健常モデルマウスと比較し、評価しました。

(*3)空間学習能力と記憶力を測定するための行動試験。水を張ったプールにラットを浮かべ、プール内に設置された透明の足場に退避するまでにかかる時間を計測して評価する。

(2)その結果、Tau784 マウス、APP23 マウス、αSyn マウスのすべてにおいて、全粒粉摂取群と抽出エキス摂取群のいずれも、退避行動にかかった時間が短縮され、認知機能の改善が見られました。ただし、抽出エキス摂取群は、退避行動にかかる時間は短縮されましたが、その程度は健常マウスには及びませんでした。一方で、全粒粉摂取群は、退避行動にかかる時間が健常マウスと同程度に短縮されており、認知機能が改善されることが分かりました。

(3)さらに、このような認知機能の改善と脳の関係を生化学的に解析したところ、全粒粉摂取群の脳では認知症病原タンパク質であるタウの集合体などの蓄積が除去されていました。

(4)これらの結果により、酸棗仁の全粒粉は認知症病原体タンパク質の除去を介して、幅広い認知症の治療や予防に有効である可能性が示唆されました。

3.今後の展開

酸棗仁(サネブトナツメの種子)

帝人は、今回の試験での結果を踏まえ、今後、酸棗仁の全粒粉についてヒトでの安全性や有効性の確認を進めながら、認知機能改善へのソリューションとして社会実装することを目指し、セレブロファーマと健康食品の開発などを進めていきます。

【参考:論文情報】

「 Simply crushed Zizyphi spinosi semen prevents neurodegenerative diseases and reverses age-related cognitive decline in mice 」

著者:Tomohiro Umeda, Ayumi Sakai, Keiko Shigemori, Ryota Nakajima, Kei Yamana, Takami Tomiyama
掲載誌:eLife
掲載URL:https://doi.org/10.7554/eLife.100737.1

以 上

【 当件に関するお問合せ先 】
帝人株式会社 コーポレートコミュニケーション部 TEL:(03)3506-4055

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