HITO 病院における生成 AI 活用事例と、ヘルスケア分野におけるマイクロソフトの最新の取り組み

2024/08/16  日本マイクロソフト 株式会社 

HITO 病院における生成 AI 活用事例と、ヘルスケア分野におけるマイクロソフトの最新の取り組み

2024年8月16日 | Japan News Center

※本ブログは、2024 年 7 月 24 日に開催した報道関係者向け説明会を抜粋し、再構成したものです。

日本マイクロソフトは、ヘルスケア分野における生成 AI 活用事例として HITO 病院での事例と、ヘルスケア分野における当社の取り組みについて紹介するメディア向け説明会を開催しました。

日本マイクロソフト株式会社 執行役員 常務
パブリックセクター事業本部長
佐藤 亮太

誰一人取り残されない、豊かな未来へのかけはしに

マイクロソフトでは「地球上すべての個人とすべての組織がより多くのことを達成できるようにする(Empower every person and every organization on the planet to achieve more)」ことを、グローバル ミッションとして掲げています。ひとまとめの「all」ではなく、「every」という表現に込められているのは、収入や地域、ジェンダーなどの点で、異なる環境下にある方々一人ひとりに対し、テクノロジの進化がもたらす豊かさを届けたいという思いです。このミッションのもと、私たちパブリックセクター事業本部では、誰一人取り残されない日本のデジタル社会の実現を通じ、より豊かな未来につながる「かけはし」となることを目指し、様々な社会課題の解決に取り組んでいます。

■AI 活用で変革が加速するヘルスケア分野

日本マイクロソフト株式会社
業務執行役員 ヘルスケア統括本部長
大山 訓弘

パブリックセクター事業本部 ヘルスケア統括本部では、「より良いヘルスケアのかたちへ」と掲げ、厚生労働省、医療機関をはじめ製薬企業、医薬企業とその先の患者や個人を念頭に活動しています。AI トランスフォーメーションを通じ、持続可能なヘルスケア社会の実現と日本の医療の課題解決を目指し、中でもプレシジョン医療と、医療の質の均てん化の実現に注力しています。プレシジョン医療において重要な病気の早期発見と予測、治療の個別化の実現に向け、パーソナル ヘルスケア レコード (PHR) やゲノミクスなどを取り込み、AI を活用したプラットフォームの提供を進めています。

近年、日本のヘルスケア分野では DX 案件の増加に伴い、クラウド利用が大きく伸長しています。マイクロソフトのクラウドや AI を活用し、医療業務の変革や経営改革、業務改革をすすめている医療機関や製薬会社が増加しています。

ヘルスケア分野でマイクロソフトの製品をご活用いただくには、パートナー様の存在が不可欠です。2018 年と比較してパートナーの数は約 3 倍に増加しており、日本のヘルスケア市場の成長が見て取れます。

一方グローバルでは、マイクロソフトの研究機関である Microsoft Research と米医療機関大手の Providence、米ワシントン大学にて、医療向け AI モデル「GigaPath」を開発。デジタル病理画像を分析する AI モデルで、13 億枚もの病理画像タイルをモデルに事前学習し、がんの種類や特徴をより正確に見分けることができます。実際のデータで大規模な事前学習を行った初めての全スライド画像基盤モデルで、世界に類を見ない取り組みです。

多岐に渡る AI 活用の事例

診療記録の補助や医療事務作業の支援をはじめ、研究や患者向けのサービスなど、医療機関における AI 活用のシーンは多岐に渡ります。一般企業同様、日々の業務における AI 活用のニーズもあります。大規模な医療機関だけでなく、民間、公立含め大小様々な医療機関ですでに AI 活用が始まっており、ここ 1 年ほどで、医療業務の変革に取り組む医療機関は増えています。

■マイクロソフトが考えるヘルスケア分野の AI 活用事例

Microsoft Copilot を活用した、当直表の作成

Copilot を活用し、医療従事者の当直表を自動で作成。カレンダーを認識し、医師の専門性も加味した上で、担当を割り振ります。さらに人事データなどを組み合わせることで、人間関係も考慮したより質の高いシフト表の作成も可能です。

介護スケジュールの作成

Microsoft Copilot for Microsoft 365 を活用し、Word 上で要介護者に対するスケジュールを作成。要介護者の状況や条件をプロンプトとして入力することで、対象者に対し、個別にパーソナライズされた方針を Copilot for Microsoft 365 が提案します。

このほか、国内だけでなく世界中で様々な形式がある健康、医療データの相互運用の実現に向けて、AI の利活用が期待されています。医師の書いた診断メモやウェアラブルデバイスからの健康データなど、多種多様なデータを国際規格の FHIR 形式へ生成 AI で自動変換することで、医療データの有効活用を支援する可能性があります。

社会医療法人石川記念会 HITO 病院様の事例

社会医療法人石川記念会 HITO 病院
DX 推進室 CXO/脳神経外科部長
篠原 直樹先生

HITO 病院は、愛媛県四国中央市にある病床数 228 床の二次救急病院で、患者だけでなく医療従事者や市民の皆様など、「誰からも選ばれ、信頼される病院を目指す」ことをミッションに掲げています。デジタル化が進めば進むほど、病院名の HITO の頭文字である 4 つの言葉、Humanity、Interaction、Trust、Openness が重要になると考えています。組織内での迅速な情報共有のためにコラボレーションツールの活用が求められる今、HITO 病院での DX 事例と AI の活用事例を通じ、地域に密着した病院における ICT や AI 活用について紹介します。

■正解のない時代こそ AI が必要

複雑で変化の激しい現代は正解のない時代ともいわれますが、医療、介護の現場も同様です。対応に迷う時、これまでは先輩に聞くほか、カンファレンスなどを実施し方向性を定めてきましたが、人材不足に加え働き方改革が進む中、従来の対応が難しくなっています。HITO 病院では、場所や時間に縛られることなく対話を増やせるよう、一人 1 台スマートフォンを支給し、チャットを活用しながら連携強化を図っています。常に知識の更新や学びが求められる医療現場では、学びを強制したり、周りが教えたりするのではなく、自ら学べる環境づくりや知能拡張にスマートフォンを活用しています。さらに Microsoft Teams とモバイル電子カルテ NEWTONS Mobile2 を活用して、スマートフォンから電子カルテを閲覧できるようにし、スタッフステーションからベッドサイドへ働く場所をシフト。患者のそばにいながら、情報収集やスタッフ同士の円滑なコミュニケーションを促し、様々な職種の方と幅広く意見交換しながら助け合える環境へ、多職種協働セルケアシステム(R)️を実現しています。

HITO 病院における AI 活用事例

セキュリティの課題から、電子カルテのネットワーク活用が進まない病院も多々あります。HITO 病院ではマイクロソフトと電子カルテベンダーの力を借りて、医療系ネットワークと Microsoft Azure を連携。電子カルテの中に埋れていた情報を活用し、働き方改革や経営改革につなげます。まず、電子カルテにある医療、看護必要度を一元的に統合。ダッシュボードを作成し、Microsoft FabricPower BI を活用して病院やチームの業務負担を可視化。リアルタイムに分析することで看護師の適正配置を予測し、業務の最適化を図っています。

また、医療スタッフのスマートフォンに Copilot を導入。看護師やリハビリスタッフなどを中心に活用が進みます。グループワークにも Copilot を取り入れることにより、参加者間の知識の垣根がなくなり、積極的な発言につながっています。

1: 患者対応チャットボット

糖尿病の患者一人ひとりのパーソナルデータを元にした、食事指導やリハビリメニューなどの考案に AI を活用しています。HITO 病院の糖尿病チームが作成したレシピや情報を SharePoint に格納し、ナレッジソースとして利用。個々の患者に必要な情報を AI が抽出します。院内の教育用資料としてだけでなく、今後は糖尿病の教育入院の患者にも利用予定です。

2: チャットの自動翻訳

院内で活躍する海外からの看護補助者とのコミュニケーションに、多言語対応自動翻訳機能を活用。海外看護補助者一人での夜勤対応も可能となり、人手不足の解消および看護師の負担軽減を実現しています。

3: 文書の自動生成

Azure OpenAI Service と電子カルテの情報を用い、高額な診療報酬請求の際に必要な、症状詳記を自動生成しています。文書作成を担う医師や医師事務作業補助者の負担を軽減し、より専門性の高い業務に注力できるようになります。

4: Teamsによる議事録作成

Copilot for Microsoft 365 を活用し、院内で行われる会議の議事録を自動作成しています。議事録作成の手間を省くだけでなく、会議の内容がすぐにチャットで配信できるため、これまで多くの時間を割いていた申し送りを減らし、本来業務に集中できるように。また、会議の内容から To Do リストもすぐに作成でき、迅速に共有することができます。

5: 医療教育の支援

外部情報や医学文献 DB から検索でき、Azure OpenAI Service が質問と検索結果を参照してテキスト生成を行うシステムを構築し、初期臨床研修医の教育、学習に活用しています。外国語の論文も自動で翻訳、要約可能です。これまで慣習化していた先輩へのお伺い文化もなくなり、属人的でない膨大な情報から得られる新しい発想や価値創出につながる可能性があります。

今後はより専門性の高い課題解決につながる、機能特化型の AI も検討しています。また企業と連携し、独自のカスタマイズした AI の導入の可能性も探っています。現在導入している Teams と Copilot は、医療現場の未来を切り開くインフラとして、地域医療や介護を支えていく上で必要不可欠です。持続可能な医療を支えるために、事務スタッフや若手医療職などの専門性が高くない部分を入り口に、AI 活用を進めていきます。

■ヘルスケア向けに特化した Microsoft Fabric を提供

マイクロソフトでは、ヘルスケア分野で扱うテキストデータ、画像データやウェアラブルデータといった多様な形式のデータを、生成 AI の機能を活用し一元的に利活用、分析できるプラットフォームを提供しています。国内のガイドライン、各種法制度といったレギュレーションにも対応しています。

■医療情報セキュリティへの取り組み

医療情報セキュリティは喫緊の大きな課題です。2024 年 6 月、大阪急性期・総合医療センター様と日本ソフトウェア協会、そして日本マイクロソフトは情報セキュリティ強化と DX 推進に係る連携、協力に関して提携し、医療情報セキュリティの強化に取り組みます。また社会貢献の一環として、厚生労働省からの委託事業「医療情報セキュリティ研修及びサイバーセキュリティ インシデント発生時初期対応支援・調査事業」に参画しています。講習の対応やインシデント対応など、昨年度は 1,000 以上の病院に対し研修を実施。今年度も継続して取り組みます。

日本マイクロソフト パブリックセクター事業本部 ヘルスケア統括本部はこれからも患者に寄り添いながら、AI トランスフォーメーションを通じ持続可能なヘルスケア社会の実現を目指し、医療機関の皆様を支援します。

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Tags: Case Studies, Cloud Computing, Corporate News, Digital Transformation, Workstyle Innovation, 人工知能 (AI)

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