VYLOYTM(ゾルベツキシマブ) 局所進行性または転移性胃腺がんおよび食道胃接合部腺がんに対する化学療法との併用として欧州で承認取得

2024/09/24  アステラス製薬 株式会社 

VYLOYTM (ゾルベツキシマブ) 局所進行性または転移性胃腺がんおよび食道胃接合部腺がんに対する化学療法との併用として欧州で承認取得

2024年09月24日

- 欧州でファーストインクラスの抗CLDN18.2モノクローナル抗体 -

アステラス製薬株式会社(本社:東京、以下「アステラス製薬」)は、VYLOYTM (ゾルベツキシマブ)について、Claudin(CLDN)18.2陽性、HER2陰性の切除不能な局所進行性または転移性胃腺がんおよび食道胃接合部腺がんの一次治療におけるフッ化ピリミジンおよび白金製剤を含む化学療法との併用として、欧州委員会(European Commission:EC)から9月20日(現地時間)に販売承認を取得しました。欧州医薬品庁(European Medicines Agency)は胃腺がんおよび食道胃接合部腺がんの予後不良を認識しており、ゾルベツキシマブのオーファンドラッグ(希少疾病用医薬品)指定を維持することを推奨しています。

ゾルベツキシマブは、CLDN18.2陽性の治癒切除不能な進行・再発の胃癌を効能・効果として、世界で初めて日本で承認を受けた抗CLDN18.2モノクローナル抗体です。ゾルベツキシマブの第III相試験では、切除不能な局所進行性または転移性胃腺がんおよび食道胃接合部腺がんの成人患者の約38%がCLDN18.2陽性でした1,2 。ゾルベツキシマブは、がん細胞表面のCLDN18.2に結合することにより、抗体依存性細胞傷害(antibody-dependent cellular cytotoxicity:ADCC)と補体依存性細胞傷害(complement-dependent cytotoxicity:CDC)の2つの異なる免疫系経路を活性化し、がん細胞死を誘導します3

今回の承認取得は、CLDN18.2陽性、HER2陰性の切除不能な局所進行性または転移性の胃腺がんおよび食道胃接合部腺がんの一次治療を目的とした第III相SPOTLIGHT試験およびGLOW試験の結果に基づいています。両試験において、ゾルベツキシマブ治療群は、対照群と比較して、無増悪生存期間(progression-free survival:PFS)および全生存期間(overall survival:OS)を統計学的に有意に改善しました1,2 。第III相SPOTLIGHT試験では、ゾルベツキシマブ+mFOLFOX6療法(オキサリプラチン、ロイコボリン、フルオロウラシルを組み合わせた療法)群で、PFSの中央値が10.61カ月に達したのに対し、プラセボ+mFOLFOX6療法群では8.67カ月でした。OSの中央値は、それぞれの治療群で18.23カ月と15.54カ月でした1 。GLOW試験でも同様の有効性を示しており、ゾルベツキシマブ+CAPOX療法(カペシタビンとオキサリプラチンを組み合わせた療法)群と、プラセボ+CAPOX療法群を比較して、PFSの中央値が8.21カ月と6.80カ月、OSの中央値が14.39カ月と12.16カ月でした2 。両試験において治験薬投与下に認められた重篤な有害事象(treatment-emergent adverse event:TEAE)の発生率は、ゾルベツキシマブ治療群と対照群で同程度でした。ゾルベツキシマブ治療群で見られた最も頻度の高いTEAEは、悪心、嘔吐および食欲減退でした1,2

本承認取得は、欧州連合(EU)に加盟している全27カ国の他、アイスランド、リヒテンシュタイン、ノルウェーで有効であり、最近更新された欧州臨床腫瘍学会(European Society for Medical Oncology:ESMO)胃がん治療ガイドラインに準拠しています。このガイドラインでは、CLDN18.2陽性、HER2陰性の切除不能な局所進行性または転移性胃腺がんおよび食道胃接合部腺がんの一次治療の化学療法にゾルベツキシマブを併用することを検討可能と記載されています4 。アステラス製薬は、ゾルベツキシマブが治療効果をもたらす可能性のある患者さんがこの新しい治療薬にできるだけ早くアクセスできるよう、EU内の各国の規制当局や医療技術評価機関と緊密に連携しています。

今回の欧州におけるゾルベツキシマブの承認取得は、2024年3月の日本におけるビロイ(R) 点滴静注用100mg(一般名:ゾルベツキシマブ(遺伝子組換え))の、CLDN18.2陽性の治癒切除不能な進行・再発の胃癌を効能・効果とした、製造販売承認取得、2024年8月のthe UK Medicines and Healthcare products Regulatory Agencyに続くグローバルで3例目になります5,6 。アステラス製薬は、他の複数の国と地域の規制当局にゾルベツキシマブの承認申請を提出しており審査中です。

本件によるアステラス製薬の業績への影響は、通期(2025年3月期)連結業績予想に織り込み済みです。

以上

ゾルベツキシマブについて
ゾルベツキシマブは、開発中の膜貫通型タンパク質CLDN18.2を標的として結合するキメラIgG1モノクローナル抗体です。ゾルベツキシマブは、がん細胞表面のCLDN18.2に結合することにより、抗体依存性細胞傷害(ADCC)と補体依存性細胞傷害(CDC)という2つの異なる免疫系経路を活性化し、がん細胞死を誘導します3
腫瘍細胞の75%以上において、細胞膜がCLDN18の免疫組織化学染色で中等度から強度の染色を示す場合、CLDN18.2陽性と判定されます。承認審査中の免疫組織化学染色コンパニオン診断薬(Companion diagnostics:CDx)または医療機器を用いて、十分な経験を持つ病理医または検査機関によってCLDN18.2陽性かどうか判定される必要があります。SPOTLIGHT試験およびGLOW試験において、スクリーニングされた患者の約38%が、CLDN18.2陽性と判定されました1,2
アステラス製薬は、VYLOYTM による治療が有益と考えられるCLDN18.2陽性の胃がん患者を同定するために、新たに承認審査中のVENTANA(R) CLDN18 (43-14A) RxDxアッセイについて、ロシュと提携してきました。本CDxはノーティファイドボディ(認証機関 )で審査中です。
*ノーティファイドボディ(認証機関):EU各加盟国当局より適合性評価実施の技術的能力と適格性を有していると判定され、実際に評価を実施する第三者機関

切除不能な局所進行性または転移性胃腺がんおよび食道胃接合部腺がんについて
胃腺がんと食道胃接合部腺がんは組織学的に類似していることが知られており、治療ガイドラインにおいて、同じ方法で管理・治療することが推奨されており、治療効果が一致するケースが多いことも知られています2,8 。2022年、欧州全体で135,000件を超える胃がんの新規症例が診断されました12 。胃がんは欧州においてがん関連死亡原因の第6位であり、2022年に95,431人以上が胃がんにより死亡しました9 。食道胃接合部腺がんは、食道が胃に結合する領域から発生する腺がんです14 。欧州の胃がん患者の平均5年生存率は全段階で26%であり、進行を遅らせ、寿命を延ばすことができる新たな治療選択肢が求められています12
早期胃がんの症状は、より一般的な胃に関連する疾患と重複することが多いため、進行期または転移期、つまり腫瘍の発生源から他の組織や臓器に転移した後に胃がんと診断されることが多いと言われています13
徴候や症状には、消化不良や胸やけ、腹部の痛みや不快感、悪心や嘔吐、食後の胃の膨満感、食欲不振があります13,14 。より進行した胃がんの徴候には、原因不明の体重減少、衰弱と疲労、吐血、血便などがあります13,14,15 。胃がんおよび食道胃接合部腺がんに関連する危険因子には、高齢、男性、家族歴、ヘリコバクター・ピロリ感染、喫煙、胃食道逆流症などがあります16,17

第III相SPOTLIGHT試験について
SPOTLIGHT試験(NCT03504397)は、CLDN18.2陽性、HER2陰性、切除不能な局所進行性または転移性の胃腺がんおよび食道胃接合部腺がんの一次治療として、ゾルベツキシマブ+mFOLFOX6療法(オキサリプラチン、ロイコボリン、フルオロウラシルを組み合わせた療法)群と、プラセボ+mFOLFOX6療法群を比較して有効性および安全性を検証する、グローバル、多施設、二重盲検無作為化第III相試験です。この試験には、米国、カナダ、英国、オーストラリア、欧州、南米、アジアの215カ所の医療機関で565人の患者が登録されました。主要評価項目は、プラセボ+mFOLFOX6療法群と比較した、ゾルベツキシマブ+mFOLFOX6療法群の無増悪生存期間(Progression Free Survival: PFS)です。副次評価項目には全生存期間(Overall Survival: OS)、客観的奏効率、奏効期間、安全性と忍容性、生活の質(Quality of Life: QOL)に関するパラメーターが含まれます1 。SPOTLIGHT臨床試験のデータは、2023年1月19日の口頭発表で2023年米国臨床腫瘍学会消化器癌シンポジウム(ASCO GI)中に発表され、その後2023年4月14日にLancet誌に掲載されました1

第III相GLOW試験について
GLOW試験(NCT03653507)は、CLDN18.2陽性、HER2陰性、切除不能な局所進行性または転移性の胃腺がんおよび食道胃接合部腺がんの一次治療として、ゾルベツキシマブ+CAPOX療法(カペシタビンとオキサリプラチンを組み合わせた療法)群と、プラセボ+CAPOX療法群を比較して有効性および安全性を検証する、グローバル、多施設、二重盲検無作為化第III相試験です。この試験には、米国、カナダ、英国、欧州、南米、アジアの166カ所で、507人の患者が登録されました。主要評価項目は、プラセボ+CAPOX療法群と比較した、ゾルベツキシマブ+CAPOX療法群のPFSです。副次評価項目には、OS、客観的奏効率、奏効期間、安全性と忍容性、QOLに関するパラメーターが含まれます2 。GLOW試験のデータは、2023年3月の米国臨床腫瘍学会(ASCO)プレナリーシリーズで最初に発表され、2023年6月3日の2023年ASCO年次総会においても口頭発表され、その後2023年7月31日にNature Medicineに掲載されました2

アステラス製薬株式会社について
アステラス製薬は、世界70カ国以上で事業活動を展開している製薬企業です。最先端のバイオロジーやモダリティ/テクノロジーの組み合わせを駆使し、アンメットメディカルニーズの高い疾患に対する革新的な医薬品の創出に取り組んでいます(Focus Areaアプローチ)。さらに、医療用医薬品(Rx)事業で培った強みをベースに、最先端の医療技術と異分野のパートナーの技術を融合した製品やサービス(Rx+(R) )の創出にも挑戦しています。アステラス製薬は、変化する医療の最先端に立ち、科学の進歩を患者さんの「価値」に変えていきます。アステラス製薬の詳細については、(https://www.astellas.com/jp/)をご覧ください。

注意事項
このプレスリリースに記載されている現在の計画、予想、戦略、想定に関する記述およびその他の過去の事実ではない記述は、アステラス製薬の業績等に関する将来の見通しです。これらの記述は経営陣の現在入手可能な情報に基づく見積りや想定によるものであり、既知および未知のリスクと不確実な要素を含んでいます。さまざまな要因によって、これら将来の見通しは実際の結果と大きく異なる可能性があります。その要因としては、(i)医薬品市場における事業環境の変化および関係法規制の改正、(ii)為替レートの変動、(iii)新製品発売の遅延、(iv)新製品および既存品の販売活動において期待した成果を得られない可能性、(v)競争力のある新薬を継続的に生み出すことができない可能性、(vi)第三者による知的財産の侵害等がありますが、これらに限定されるものではありません。また、このプレスリリースに含まれている医薬品(開発中のものを含む)に関する情報は、宣伝広告、医学的アドバイスを目的としているものではありません。

参考文献

  1. Shitara K, et al. Zolbetuximab plus mFOLFOX6 in patients with CLDN18.2-positive, HER2-negative, untreated, locally advanced unresectable or metastatic gastric or gastro-oesophageal junction adenocarcinoma (SPOTLIGHT): a multicentre, randomised, double-blind, phase 3 trial. Lancet . 2023;401(10389):1655-1668.
  2. Shah MA, et al. Zolbetuximab plus CAPOX in CLDN18.2-positive gastric or gastroesophageal junction adenocarcinoma: the randomized, phase 3 GLOW trial. Nat Me d. 2023;29(8):2133-2141.
  3. Sahin U, et al. FAST: a randomised phase II study of zolbetuximab (IMAB362) plus EOX versus EOX alone for first-line treatment of advanced CLDN18.2-positive gastric and gastro-oesophageal adenocarcinoma. Ann Oncol . 2021;32(5):609-19.
  4. European Society for Medical Oncology (ESMO). Gastric Cancer Living Guidelines: Advanced/metastatic unresectable oesophageal, oesophagogastric junction and gastric adenocarcinoma - Metastatic Disease - First-Line Therapy. Available at: https://www.esmo.org/living-guidelines/esmo-gastric-cancer-living-guideline/metastatic-disease/metastatic-disease/first-line/advanced-metastatic-unresectable-oesophageal-oesophagogastric-junction-and-gastric-adenocarcinoma/article/first-line-therapy. Last accessed: September 2024.
  5. GOV.UK. News story: Zolbetuximab Approved to Treat Adults with Stomach or Gastro-oesophageal Junction Cancer. Available at: https://www.gov.uk/government/news/mhra-approves-zolbetuximab. Last accessed: September 2024.
  6. Astellas press release issued 26 March 2024: Astellas’ VYLOY(TM) (zolbetuximab) Approved in Japan for Treatment of Gastric Cancer. Available at: https://www.astellas.com/en/news/29026. Last accessed: September 2024.
  7. Astellas data on file.
  8. Barra WF, et al. GEJ cancers: gastric or esophageal tumors? Searching for the answer according to molecular identity. Oncotarget . 2017; 8(61):104286–104294.
  9. Ferlay J, et al. World Health Organization. International Agency for Research on Cancer. Global Cancer Observatory. Cancer Factsheet – Stomach. Available at: https://gco.iarc.who.int/media/globocan/factsheets/cancers/7-stomach-fact-sheet.pdf. Last accessed: September 2024.
  10. Digestive Cancers Europe. What are Gastric and Oesophageal Cancers? Available at: https://digestivecancers.eu/gastric-esophageal-what/. Last accessed: September 2024.
  11. American Cancer Society. About esophagus cancer (03-20-2020). Available at: https://www.cancer.org/content/dam/CRC/PDF/Public/8614.00.pdf. Last accessed: September 2024.
  12. Rawla P and Barsouk A. Epidemiology of gastric cancer: global trends, risk factors and prevention. Gastroenterology Rev . 2019;14(1):26-38.
  13. American Cancer Society. Stomach Cancer Early Detection, Diagnosis, and Staging (01-22-2021). Available at https://www.cancer.org/cancer/stomach-cancer/detection-diagnosis-staging/signs-symptoms.html. Last accessed: September 2024.
  14. National Cancer Institute. Stomach Cancer Symptoms (05-31-2023). Available at: https://www.cancer.gov/types/stomach/symptoms. Last accessed: September 2024.
  15. The Royal Marsden. Stomach cancer symptoms: What are the signs of gastric cancer? (May 2022). Available at: https://www.royalmarsden.nhs.uk/private-care/news-and-blogs/stomach-cancer-symptoms-what-are-signs-gastric-cancer. Last accessed: September 2024.
  16. American Cancer Society. Stomach cancer causes, risk factors and prevention (01-22-2021). Available at: https://www.cancer.org/content/dam/CRC/PDF/Public/8839.00.pdf. Last accessed: September 2024.
  17. American Cancer Society. Esophageal cancer causes, risk factors, and prevention (06-09-2020). Available at: https://www.cancer.org/content/dam/CRC/PDF/Public/8615.00.pdf. Last accessed: September 2024.

VYLOYTM (ゾルベツキシマブ) 局所進行性または転移性胃腺がんおよび食道胃接合部腺がんに対する化学療法との併用として欧州で承認取得

関連業界