タカラトミーグループ「中長期経営戦略 2030」の策定について

2024/05/14  株式会社 タカラトミー 

2024 年5月 14 日
株式会社タカラトミー

タカラトミーグループ「中長期経営戦略 2030」の策定について

当社は、新たに「中長期経営戦略 2030」を策定しましたのでお知らせいたします。2022 年3月期よりスタートした中期経営計画において、「アソビで、世界はもっと良くなる。だからアソビで、未来のグローバル社会に大きくこたえます」をビジョンに、事業領域の拡大とグローバル化を進めてきました。多くの方々のご支援を得て中期経営計画期間中の 2024 年2月2日に創業 100 周年を迎えることができました。より長期的な視点から当社の将来を考え、「中長期経営戦略 2030」を策定しました。本戦略は、当社グループの存在意義に立ち返り、Purpose、Vision2030、事業戦略、コーポレート戦略を新たに策定し、当社の価値創造モデルを構築したものです。

具体的な「中長期経営戦略 2030」の内容は下記のとおりです。



1. 中長期経営戦略 2030

当社は創業 100 周年の節目に、社会における存在意義を改めて見つめ直し、新たにパーパスを策定しました。そして、経済価値を追求するビジネス・ビジョンと、社会価値の向上を追求するサステナビリティ・ビジョンを新たに制定しました。これらのビジョンに基づき、当社が持つ多様なブランドパレットは、統一されたビジョンのもとで事業戦略が実行されています。また、事業戦略を支えるコーポレート戦略によって、安全性と積極性を兼ね備えた事業運営を行っていきます。

価値創造モデル

2030 年までには、規模の大きな海外市場において、自ら商品開発~マーケティング~営業までを一貫して行える「グローバル・アソビカンパニー」を目指します。そのために、本中長期経営戦略においては、北米・中国市場へのローカライズによる参入の挑戦、及び世界同時展開を通じたグローバルマーケティング機能の整備に取り組みます。

Purpose/Vision2030

新たに Purpose、Vision2030 を策定し、さまざまな事業形態を持つ総合アソビメーカーとして一層世界で愛される企業を目指します。

◼ Purpose(存在意義)

創業 100 周年を迎えたこの節目に、国内外のグループ従業員のアンケートやワークショップ、パートナー企業や専門家の方々との議論を経て、パーパスを策定しました。

「アソビへ懸ける品質は、世界を健やかに、賑やかにできる。」

「アソビへ懸ける品質」というフレーズに、世界中の人々へ夢や希望、絆や感性、学びや成長を提供することへの想いを込め、世界を健全で活気に満ちた場所にしていくことへの決意を新たにするものです。過去 100 年にわたり提供してきた価値であり、次の 100 年に向けてより一層その価値を高めていきます。

◼ Business Vision 2030(経済価値の向上)

「高い品質とクリエイティブ性を持ち、世界中で愛される総合アソビメーカーに成長する。」

パーパスに裏付けられた高い品質と、新しいアソビの価値を生み出し続ける創造性をもって、日本を含む世界中でご愛顧いただけるような幅広いラインナップの商品やサービスを提供し、企業価値の向上に努めていきます。

◼ Sustainability Vision 2030(社会価値の向上)

「アソビへ懸ける品質は、持続可能なウェルビーイング向上にグローバルで貢献できる。」

従業員が惜しみなくアソビへ情熱を注ぐ環境を整備し、高品質のアソビを提供していきます。当社グループの責任は、お客様の安心・安全にとどまらず、地球環境への影響や、人権の尊重へ配慮し、健全な経営体制により、持続可能な社会の実現と当社グループの成長の両立を目指し、世界に向けて価値を提供していきます。また、サステナビリティ・ビジョンの実現に向け、今回新たに、5つの主題と 11 のマテリアリティを特定しました。

⚫ 我々の情熱

I. アソビを通じて“健やか”で夢のある社会づくりへの貢献
1. アソビを通した豊かな社会への貢献
II. 世界中で注目され愛されるアソビを作り出す仕事に夢中になれる職場
2. 従業員のウェルビーイングの向上
3. 従業員の成長

⚫ 我々の責任

III. 高い品質の確保
4. 安心・安全・高品質なアソビ
5. お客様とのつながり
IV. 地球環境との共存
6. 気候変動への対応
7. パッケージ・商品のエコデザインの推進
V. 健全な経営
8. 人権の尊重
9. 持続可能な調達
10. アソビづくりを支えるガバナンス
11. アソビづくりを支えるリスクマネジメント

2. 事業戦略

当社が次の 100 年も世界で愛される企業であり続けるために、事業戦略において事業の多様化と拡大を表現しています。地域軸の拡大や年齢軸の拡大を推進し、より多様な人々に対するアプローチを強化していくこと。さらにヒット商品の開発やブランド価値の向上にも注力し、玩具だけでなく広範なアソビ領域へのさらなる進出を図ります。この目標の達成に向けて、6つの重点戦略を策定しました。また、一連の事業戦略を実行に移す上で、バリューチェーンを強化します。

I. 6つの重点戦略

1)地域軸の拡大

当社が有する多様なブランドパレットを用いて、各ブランドに適した地域に集中的に投資していきます。特に世界的に人気を博する「BEYBLADE」「トランスフォーマー」「新幹線変形ロボ シンカリオンZ」で培ったフィギュア製品、ガチャといった当社の強み領域、及びパートナー企業様との強力なキャラクターとのコラボレーション領域については、日本に加えて、主に北米、東アジア、東南アジア地域へ TOMY International グループ、TOMY (Shanghai) Ltd.、TOMY Asia Limited を通じて集中的に投資していきます。TOMYInternational グループは、タカラトミーグループにおいて北米・欧州市場拡大を担う重要な拠点に位置付けています。収益体質改善・ガバナンス体制構築に取り組むとともに、タカラトミーアーツと連携し、フィギュア・ぬいぐるみの北米市場への拡大を実現していきます。一方、地域軸での機会獲得の仕方として、コア地域以外の国に展開していくこと以外に、例えばインバウンドのように日本にいながら海外のお客様とつながることも地域軸の拡大と考えます。キデイランドにおけるインバウンド需要は、それを象徴する一例です。

2)年齢軸の拡大

当社の製品は、100 年にわたり多くのお客様にご愛顧いただいてきました。「トミカ」「プラレール」「リカちゃん」といった製品は、現在では3世代のお客様にアソビを提供しています。また、トミーテックの鉄道模型「TOMIX」、原宿から世界へトレンドを発信するキデイランドは、アソビ心を持つ大人のお客様に多くご利用いただいています。当社は、お客様の人生を通じてライフタイムパートナーとして寄り添っていきます。こうした取組みを強化する一環として、Kidults(キダルト)の方々にもより価値のあるアソビを提供していきます。

Kidults×地域の 10 の成長分野

バトリングアクション、ビークル、フィギュア、ぬいぐるみ、ロボット、トレーディングカードゲーム(TCG)、コト価値、パートナーIP、アミューズメント、デジタルゲーム

3)コア地域でのヒットとシェア拡大

新たなヒット商品の創出は当社の強みです。例えば前中期経営計画中には、メタバース空間 Roblox で楽しめる「BEYBLADE X」、新触感液晶トイ「ぷにるんず」、キデイランドでは新しいキャラクターの発掘、タカラトミーアーツではポケモン周辺事業等により新しいアソビの価値を提供してきました。また、お客様視点での競合会社に対して優位に差別化されたマーケティング・ブランド戦略を通してシェアを拡大します。一例では、「くまのプーさん えらべる回転6WAY ジムにへんしんメリー」は日本の少子化にもかかわらず売上は増加しています。今後もお客様にワクワク、ドキドキを感じていただくため、他社を凌ぐ魅せ方・伝え方をもって商品を提供していきます。

4)ブランド価値の向上

地域・年齢の拡大には、高いブランド価値と、その価値を認めていただける継続的なファンの皆様の存在が不可欠です。「BEYBLADE」「トミカ」「プラレール」「リカちゃん」といった自社ブランドの価値を高め、幅広い年齢層と地域に向けてファンコミュニティを構築していきます。これに加えて、当社の開発力と商品ラインナップを活かし、パートナーブランドの価値を高めていくとともに、魅力ある商品を提供する場としてのキデイランドやガチャ売り場を通じて、新たなキャラクターを発掘し育てていきます。

ファンコミュニティの構築にあたっては、トミカ/プラレールショップや、トミカ/プラレール博、Kidults向けでは ZOIDS 博といった対面型のイベントを進化させ、皆様により満足いただけるブランドを確立していきます。また、海外のお客様に好評いただいているキデイランドの旗艦店舗、大人コレクターの皆様に好評の「TOMIX」といった、日本国内×子どもでのブランド確立にとどまらず、幅広い地域・年齢に向けてのブランド確立にも積極的に取り組んでいきます。

5)玩具外収入

玩具をはじめとする有形の商品とともに、ライセンスやデジタルコンテンツを通じたアソビにより事業の拡大を図っていきます。現在は、「トミカ」「プラレール」「リカちゃん」「トランスフォーマー」「BEYBLADE」等から生まれたキャラクターのライセンシング事業を展開しているほか、近年では、カードゲームアプリ「デュエル・マスターズ プレイス」、ロングセラー盤ゲーム「人生ゲーム」の Nintendo SwitchTM専用ソフトを発売するなど、新たなサービスの展開を本格化させています。また、トレーディングカードゲーム(TCG)の新 IP への展開や、ZOIDS 博をはじめとするイベントも積極的に開催していきます。

6)デジタルテクノロジーの活用

6つの重点戦略の実行において、デジタルサービスやインフラを活用していきます。これらには、「デュエル・マスターズ プレイス」や「人生ゲーム for Nintendo Switch(TM)」をはじめとするスマートフォンや任天堂ハード機器上でのデジタル化、タカラトミーモールや海外グループ会社である Fat Brain Holdings, LLC のDirect-to-Consumer(D2C)型販売チャネルとしての E コマース事業の拡大、SNS やファンの方々とのデジタルコミュニケーションが含まれます。また、メディア、アナリティクス、マーケティングオートメーション等のデジタル分野を最大限に活用し、最適な情報を最適なタイミングで最適な人に提供することで、購入機会を提供します。また、デジタルを活用して、業務生産性の向上や世界へのアクセスを高めるための言語翻訳等のデジタルツールを活用し、より効率的にアソビの世界を拡大していきます。

II. バリューチェーンの強化

一連の事業戦略を実行に移す上で、当社はデジタル技術を駆使して、バリューチェーンをより効率的かつ密接に連携させ、強化していきます。これにより、より迅速に、コストを抑えつつ、安定したサービスを提供し、作業の自動化を進めていきます。具体的には、事業のグローバル化を支えるサプライチェーンを効果的にマネジメントすること、当社の強みの源泉である IP の調達力を強化すること、そして安全に遊べるアソビ品質を確保することです。バリューチェーンを強化することで「グローバル・アソビカンパニー」としての当社の競争力と、戦略実現の可能性を高めていきます。

⚫ 開発

➢ 環境に配慮した素材の研究と製品への実装
➢ AI を利用した開発工程の効率化

⚫ サプライチェーン

➢ アジア・北米市場における競争力強化のための流通体制・生産体制の再構築・効率化
➢ 人権デュー・ディリジェンスの体制構築とその運用サプライヤーと連携し持続可能な調達を実現する体制構築とその運用
➢ D2C 関連ではお客様へのデリバリーを含めた体制作り

⚫ 安心・安全

➢ Kidults 向け商品の拡大、全世界販売に対して競争力を担保する安全品質基準・体制のさらなる改善

3. コーポレート戦略

コンセプト:自走的に Vision に向かい、適所適材を活かして持続的な成長を可能にする組織体へ。

コーポレート戦略は、事業戦略と相互に連携し、当社の新しい経営戦略の土台となるものです。財務・人財・知的財産・社会・自然の観点から経営を担い、当社は事業規模の拡大と経営の質の向上を目指していきます。財務の観点からは、収益性向上(資本コストを意識しつつ ROE を向上させる)や株主還元(配当・自己株式取得)を行い、健全な財政状態を維持し、株主価値の最大化を追求します。

I. 企業価値向上

a) 資本コスト・ROE

当社は、事業規模を拡大し、資本コストを上回るリターンを創出することで、2030 年3月期に売上高3,000 億円、営業利益率 10%を達成することを目指しています。また、収益性の向上、資産効率性の向上、健全な財政状態の3つの観点から、継続して自己資本利益率(ROE)11%以上を維持していきます。

当社の豊富なブランドパレットの強みを活かして、潜在力の高いブランドが強みを持つ地域、年齢層を考慮して、集中的に投資を行っていきます。グローバル市場では、グローバルパートナーとともに「BEYBLADE」のさらなる拡大を目指します。北米では、日本のポップカルチャーとして人気が高いフィギュア・ぬいぐるみの市場をグローバルパートナーと開拓するとともに、TOMY International グループが持つ農耕車両ブランドを伸ばしていきます。中国を含むアジア市場は特に重要な地域ととらえており、トミカ、アライアンスキャラクター玩具、デジタル筐体、ガチャ、フィギュア、ぬいぐるみ分野の拡大に投資していきます。また、オーガニック成長と高いキャッシュ創出力を活かした M&A の実行により新たな事業機会を獲得すべく注力します。より幅広い年齢層・地域の人々にアソビを提供することで、高い成長と高リターンを実現します。

b) 株主還元(配当・自己株式取得)

当社は株主価値の持続的な向上および株主に対する安定的な利益還元を実施していくことを経営の重要課題の一つとして認識しております。経営基盤の強化と利益率の向上に努めるとともに、配当や自己株式の取得を通じた株主還元策を実施していきます。2030 年3月期に向けて、次の具体的な指標を掲げ、株主の皆様への適正な還元策を講じ、健全な経営を維持していきます。

 営業利益率 10%目標
 一株当たり純利益(EPS)成長率 継続 10%以上
 自己資本利益率(ROE)は継続 11%以上
 自己資本比率 50%程度
 総還元性向 原則 50%
 株価純資産倍率(PBR) 3倍目標

II. 人財戦略

Vision:自走的に持続的な成長ができる組織として、「アソビ」づくりに夢中になれる環境を構築する。当社にとってアソビの創造に関わる国内外グループの人財は重要な人的資本です。パーパスとビジョンに基づき、従業員のウェルビーイングの向上を実現するとともに、企業としての持続的な成長を実現する組織風土を一層強固なものにしていきます。

 人財は、事業部門・コーポレート部門のそれぞれの機能を果たしつつも、既存の役割に囚われすぎず、機能横断的に課題解決にあたります。

 人財強化については、特に事業戦略の成否にかかわる人財として、グローバルでマーケティングを推進する人財を強化していきます。

 次世代の経営幹部候補は、中長期的な視点で経験の場を与えて育成していきます。加えて、外部の人財を迎え、活躍できる環境を提供していきます。

III.知的財産(IP)戦略

当社にとって IP は、重要な経営資本です。主力 IP である「トミカ」「プラレール」「リカちゃん」「BEYBLADE」「ガチャ」をはじめ、多くの主力ブランドは、知的財産権により積極的に保護しており、国内でも有数の登録件数を維持しています。当社は、「アソビ IP を守ること」「アソビ IP の侵害に備えること」「アソビ IP を育てること」の3つの方針の元で IP を最大限活用しています。

以 上

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