北里研究所と大日本住友製薬との共同研究 - カルバペネム耐性菌感染症治療薬として創製された新薬候補化合物のフェーズ1 試験を開始

2022/01/13  住友ファーマ 株式会社 

2022 年 1 月 13 日

学校法人北里研究所
大日本住友製薬株式会社

北里研究所と大日本住友製薬との共同研究
カルバペネム耐性菌感染症治療薬として創製された新薬候補化合物のフェーズ 1 試験を開始

学校法人北里研究所(本部:東京都港区、理事長:小林 弘祐、以下「北里研究所」)と大日本住友製薬株式会社(本社:大阪府大阪市、代表取締役社長:野村 博、以下「大日本住友製薬」)は、このたび、両者の共同研究を通じてカルバペネム耐性菌感染症治療薬を目指して創製された KSP-1007(開発コード、以下「本剤」)のフェーズ 1 試験を大日本住友製薬が米国で開始しましたので、お知らせします。

今後、大日本住友製薬は、複雑性尿路感染症および複雑性腹腔内感染症を予定適応症として本剤の開発を進める予定です。

本剤は、産学官の連携事業である国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の「医療研究開発革新基盤創成事業(CiCLE:Cyclic Innovation for Clinical Empowerment)」に係る研究開発課題において実施している共同研究で見出しました。

本剤は、カルバペネム系抗菌薬を分解する細菌由来の酵素である β-ラクタマーゼを広域かつ強力に阻害する作用を有しています。本剤は、世界的に汎用されているカルバペネム系抗生物質製剤メロペネム水和物(大日本住友製薬の国内製品名「メロペン®」)との配合剤とすることにより、カルバペネム耐性菌による感染症に対しても有効な治療選択肢となることが期待されています。

抗菌薬に対して耐性をもつ薬剤耐性(AMR)菌の出現と蔓延は、サイレント・パンデミックとも称される世界的な問題です。AMR はすでに私たちの経済と医療制度に重大な影響を及ぼしており、世界における AMR 菌感染症による死亡者数は年間 70 万人と推定され、世界保健機構(WHO)を中心とした国家・国際レベルでの対策が必要とされています。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大に伴う抗菌薬の使用量増加による薬剤耐性菌のさらなる増加も懸念されており、昨年の G7 サミットでは新たな抗菌薬開発が喫緊の国際課題であることがあらためて示されました。

北里研究所の感染症研究の伝統と実績と、大日本住友製薬の感染症領域の研究開発において蓄積された知見との融合による共同研究の成果を通じて、画期的な抗感染症薬を提供することによりグローバルヘルスに貢献することを目指します。

*北里研究所と大日本住友製薬との共同研究は、2017 年 10 月から 10 年間の予定で実施しています。
本共同研究事業の詳細については、2017 年 10 月 24 日付けのプレスリリース「薬剤耐性(AMR)菌感染症治療薬の創製を目的とした共同研究の実施について」および記者会見説明資料をご覧ください。
https://www.ds-pharma.co.jp/ir/news/pdf/ne20171024.pdf(プレスリリース)
https://www.ds-pharma.co.jp/press/pdf/pr20171024.2.pdf(記者会見説明資料)


(ご参考) カルバペネム耐性菌感染症について
カルバペネム耐性菌感染症は, 重症感染症治療において重要な抗菌薬であるメロペネムを始めとす
るカルバペネム系抗菌薬に対して耐性を示す腸内細菌科細菌、緑膿菌、アシネトバクター・バウマニ等による感染症の総称です。これらの耐性菌は、世界保健機関(WHO)が発表した「新規治療薬が緊急に必要な薬剤耐性菌」のリストにおいて「最高レベル(Critical)」のカテゴリーに分類されています。

複雑性尿路感染症および複雑性腹腔内感染症について
複雑性尿路感染症は、泌尿生殖器の機能的・構造的異常、カテーテルなどの人工物留置、基礎疾患
がある場合に発症する、慢性または再発性の尿路感染症とされています。また、膀胱炎、腎盂腎炎、ウロセプシス、カテーテル関連尿路感染症などに大別されます。

複雑性腹腔内感染症は、感染源の臓器から腹腔、腸間膜などの腹部の無菌領域に広がり、膿瘍形成または腹膜炎を引き起こす重篤な感染症です。

医療研究開発革新基盤創成事業(CiCLE)について
産学官連携により、我が国の力を結集し、医療現場ニーズに的確に対応する研究開発の実施や創薬等の実用化の加速化等が抜本的に革新される基盤(人材を含む)の形成、医療研究開発分野でのオープンイノベーション・ベンチャー育成が強力に促進される環境の創出を推進することを目的とする国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の事業です。

北里研究所と大日本住友製薬の共同研究「薬剤耐性(AMR)菌感染症治療薬を目的とした創薬研究」(代表機関:大日本住友製薬)は、2017 年に CiCLE の第 1 回公募の研究開発課題に採択されました。

北里研究所について
北里研究所は、「いのちを尊(たっと)び、生命の真理を探究し、実学の精神をもって社会に貢献する」を理念とし、学祖北里柴三郎からノーベル生理学・医学賞を受賞した大村智へと続く感染制御の伝統と実績をもって社会に貢献する使命を果たすべく、教育・研究・医療に注力しています。詳しくは、北里研究所のホームページ(https://www.kitasato.ac.jp/)をご覧ください。

大日本住友製薬について
大日本住友製薬は、人々の健康で豊かな生活のために、研究開発を基盤とした新たな価値の創造により、広く社会に貢献することを企業理念としています。この理念を実現するため、また、日本はもちろん世界の方々に革新的で有用な医薬品をお届けするため、新薬の研究開発に全力を注いでいます。詳しくは、大日本住友製薬のホームページ(https://www.ds-pharma.co.jp/)をご覧ください。

以上

◯本件に関するお問い合わせ先
学校法人北里研究所 総務部広報課
TEL: 03-5791-6422 E-mail:kohoh@kitasato-u.ac.jp
大日本住友製薬株式会社 コーポレートコミュニケーション部 (大阪)
TEL 06-6203-1407/(東京) TEL 03-5159-3300

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