人材委員会 研究開発イノベーションの創出に関わるマネジメント業務・人材に係るワーキング・グループ(第5回)議事録

2024/05/29  文部科学省 

人材委員会 研究開発イノベーションの創出に関わるマネジメント業務・人材に係るワーキング・グループ(第5回)議事録

1.日時

令和6年4月12日(金曜日)10時00分~12時00分

2.場所

文部科学省16F2会議室及び Web 会議(ZOOM)

3.議題

  1. 研究開発イノベーションの創出に関わるマネジメント人材等に関する実態調査、技術職員の雇用等に関する実態調査の結果について
  2. 研究開発マネジメント業務・人材に係るヒアリング
  3. その他

4.出席者

委員

小泉委員、稲垣委員、桑田委員、重田委員、杉原委員、高木委員、野口委員、正城委員

文部科学省

生田人材政策課長、髙見人材政策推進室長

5.議事録

科学技術・学術審議会 人材委員会 研究開発イノベーションの創出に関わる
マネジメント業務・人材に係るワーキング・グループ(第5回)

令和6年4月12日



【小泉主査】 では、定刻となりましたので、只今から科学技術・学術審議会人材委員会研究開発イノベーションの創出に関わるマネジメント業務・人材に関わるワーキング・グループの第5回を開催したいと思います。
本日の会議は、冒頭より傍聴者に公開しておりますので、よろしくお願いいたします。
本日は8名の委員に御出席いただいておりまして、定足数を満たしております。よろしいでしょうか。
それでは、議事に入る前に、まず、本日の委員会の開催に当たり、事務局から注意事項と資料確認をお願いいたします。
【大場人材政策推進室長補佐】 本日の会議は、対面とオンラインのハイブリッドでの開催となります。対面で御出席の委員は御発言の際には挙手または名立てなどで合図いただき、オンライン御出席の委員は挙手機能により挙手ボタンを押していただき、主査より指名を受けましたら、お名前をおっしゃっていただいた上で御発言いただきますようお願いいたします。
機材の不具合等がございましたら、対面で御出席の委員は会場の事務局にお声がけいただき、オンラインで御出席の委員はマニュアルに記載の事務局連絡先に御連絡ください。
資料につきましては、Zoom上で共有を行いますが、会場ではお配りしておりますので、各自お手元の資料を御覧いただければと思います。
それでは、資料確認をさせていただきます。事前に送付させていただきました資料としまして、議事次第、資料1から資料3、参考資料1でございます。議事進行の過程で不備等がございましたら、事務局までお知らせ願います。
以上でございます。
【小泉主査】 ありがとうございます。よろしいでしょうか。
それでは、早速ですけれども、議題1に入りたいと思います。
まず、研究開発イノベーションの創出に関わるマネジメント人材等に関する実態調査、技術職員の雇用等に関する実態調査の結果についてということです。多くの大学に御回答いただきました。どうもありがとうございました。
それでは事務局より御説明をお願いいたします。
【高見人材政策推進室長】 事務局でございます。資料1-1-1、それから1-2-1に基づきまして、2つの調査結果について御報告を申し上げます。
まず、資料1-1-1を御覧ください。こちらは、研究開発マネジメント人材等に関する実態調査でございます。
1.調査の目的でございますが、大学や研究機関における研究開発マネジメントに係る機能、それから人材の雇用環境や担当業務、課題、期待される役割等に関する実態を把握することを目的としております。
2.調査対象機関は、こちらに挙げました大学、高等専門学校、それから研究機関等でございます。時点といたしましては、2023年の12月1日現在ということで調査をいたしました。調査項目は大きく1ポツから4ポツまで挙げているとおりでございます。
3.本調査における研究開発マネジメント人材の種類ですが、大きく4つに分けました。リサーチ・アドミニストレーターということで、RAというふうに以下略しておりますが、それが1つ目。2つ目として、主として研究開発マネジメントに携わる教員・研究者。3番目として、主として研究開発マネジメントに携わる事務職員。そして最後がその他の専門職ということで、知財の特許事務に関する方や産学官連携で契約や法規、国際連携等の担当職員等の方々がこの中に分類されるといった結果になってございます。
4ポツの結果というところです。全部で1,241機関を対象に実態調査をいたしましたが、回答がおよそ7割の864機関で、研究開発マネジメント人材を配置していると回答した機関が365機関でした。事務局の当初の想定は、9割方配置しているという回答になると思っておりましたが、研究開発マネジメント人材の定義をあえてリサーチ・アドミニストレーターだけにしなかったことによって範囲の理解が難しかったという点もあったのではないかと認識をしております。
報告1、研究開発マネジメント人材の種類別の内訳です。
(1)に書きましたとおり、365機関に配置された人材の数は、無期雇用が56%、有期雇用が44%となっております。
下に表をつけておりますが、無期雇用といたしましては、教員・研究者、それから事務職員が比較的多い割合となっており、有期雇用としては、リサーチ・アドミニストレーターとその他専門職といった辺りが多くなっております。
(3)番でございますけれども、こちらは年齢層と職階にそれぞれスコアを付しまして、研究開発マネジメント人材の平均的なポジショニングを行ったという内容でございます。年齢層では、リサーチ・アドミニストレーターが最も高く、事務職員系が最も低くなっております。一方、職階では、教員・研究者系が最も高く、その他専門職が低いといった結果になりました。これはあくまで平均的なところでございますので、幅に関してはいろいろあるかと思われます。
(4)番では、企業経験の有無について聞きましたところ、全体といたしましては38.2%が企業経験ありと回答ありましたが、そのうち、リサーチ・アドミニストレーターが60.3%、その他専門職が54.8%と、この辺りが高くなっているという特徴がございます。
(5)番でございますが、博士号保持者の割合を確認いたしましたところ、リサーチ・アドミニストレーターは37.5%、教員・研究者系は46.5%と、やはりこの辺りが高くなっており、事務職員は3.9%だけが博士号ありというような結果になっております。
報告2でございますが、研究開発マネジメント人材の雇用財源、勤務形態ということで、(1)番では雇用財源について書いておりますが、全体の79%が「運営費交付金(自主財源を含む)」という定義で書きましたところに分類がされております。一部、リサーチ・アドミニストレーターの間接経費が比較的高くなっているということや、少し特徴的な分類がなされた、国の省庁の職員として雇用しているというのが教員・研究者系のその他財源に入っていたり、その他の専門職の「競争的研究費以外の外部資金」の割合も比較的高いんですが、ここも特定の大学の病院経費で雇われている方や、ファンディングエージェンシーの中で補助金により雇われている方等がこの辺りに分類をされていたりといった結果になってございます。
(2)番でございますが、勤務体系として、裁量労働制か、固定時間制か伺いましたところ、全体としては固定時間制が85%という結果になってございます。その中で、リサーチ・アドミニストレーターと教員・研究者系が比較的裁量労働制の割合が高くなっております。もっと高いかと思っていましたが、少し意外な結果だったと思ってございます。
報告3といたしまして、研究開発マネジメント人材の業務内容について、かなり細かく、どの業務にどれだけのエフォートを割いているかということを聞いた内容になってございます。
(1)番として書かせていただいたとおり、下の表の(1)の「研究戦略推進支援業務」、(2)の「プレアワード業務」、(3)の「ポストアワード業務」、この辺りは平成25年のスキル標準の業務分類に基づいた分類ということで上は構成しております。(1)から(3)の小計というところがどの職種に関しても比較的多くなっており、職種間の大きな差はありませんが、(2)のプレアワードに関してはリサーチ・アドミニストレーターがやや高く、ポストアワードに関してはその他専門職が高いといった特徴はあるかと思います。
(4)の「関連専門業務」のところは、特徴といたしまして、②産学連携と③知財を、産学連携コーディネーターを今回リサーチ・アドミニストレーターの枠に含めてくださいという整理にしたことから、RAのこれら業務に従事する割合が高くなっております。その結果、(4)の小計というところもRAのこの業務に従事する割合というのが高くなっているという状況でございます。
(5)「近年新たに求められつつある業務」ということで、これはスキル標準に載っていないような業務というのを書き起こして聞いたものになりますけれども、全体にそれほど高い割合、エフォートが割かれていないという状況ではありますが、3%以上のエフォートを割いているという回答のみを抽出しますと、①の機関経営への関与の教員・研究者系が3.4%、それから、③のスタートアップ支援のところはリサーチ・アドミニストレーターが4.1%ということで、比較的多いエフォートを割いているという結果になりました。
次に、報告4ということで、人材の育成について確認した内容になります。
(1)番、人材のための研修を独自に設けているかどうか確認しましたところ、全体としては7.7%が設けているということで、独自の研修の機会というのは全体を通じると比較的低いのかなというところでございます。
(2)番、こちらはURAスキル認定機構の提供する研修プログラムを受講することを業務として認めているかどうか確認しましたところ、「認めている」の計といたしまして47.9%、5割弱が業務として認めているということでした。そのうち、それにかかる費用の経済的支援を行っているかどうかというのを右側にまとめておりますが、経済的支援を「行っている」という回答は70.3%という結果になりました。
(3)番はURAスキル認定機構以外の提供する研修プログラムを受講することを業務として認めているかどうかという確認です。「認めている」との回答が69%で、経済的支援を「行っている」というのはそのうち71.4%という結果になってございます。
(4)番といたしまして、URAスキル認定機構の提供する認定の取得に当たって経済的支援を行っているかどうか確認しましたところ、23.3%は「行っている」という結果になってございます。
それから、各機関に、研究開発マネジメント人材のためのキャリアサポートといたしまして、セミナーの実施や公募情報の周知といったことを行っているか聞きましたところ、29.9%が「行っている」ということで、これも比較的低い割合かと思います。
(6)番、これはマネジメント人材と管理職の間で業績や評価をめぐる面談の機会を設けているかどうかという項目でございます。「設けている」との回答は71.8%で、本来、常勤、非常勤、有期、無期を問わず、職員であれば当然面談の機会というのはあってしかるべきであり、100%という回答があるべき姿なのかと思いますが、それが71.8%ということで、決して高い数字ではないというふうに認識しております。
(7)番、機関として研究開発マネジメント人材を表彰する仕組みがあるか聞きましたところ、全体としてあると回答した機関は15.6%と、低い割合となっていると思います。しかし、国立研究開発法人や国立試験研究機関については非常に高くなっており、機関間の差がかなり出ているところかなというふうに思います。
(8)番では他の機関、企業等との人事交流を行っているかどうかということを確認しました。人事交流を行っている機関は全体としては38.4%でしたが、これも国立研究開発法人が68.4%と比較的高い数字になってございます。
報告5でございます。マネジメント人材に対する機関の評価について伺った項目になります。
表を御覧いただきますと、4の「ある程度満足している」というのがボリュームゾーンになっており、リサーチ・アドミニストレーターに関しては、5の「たいへん満足している」、という評価も、他の職種に比べると高いという状況というふうに考えております。平均値は一番右側に書いたとおりになります。
(2)番といたしまして、マネジメント人材を雇用したことの成果をどのように評価するかということで、平均値が高い順に並べております。雇用の成果の一番上の項目の11.「他機関との共同・受託研究(産学連携等)が増えた」というのが「11.」とありますが、これはアンケート調査をしたときの項目になりますので、あまりお気になさらないでいただければと思います。他機関との共同・受託研究が増えたといったこと、や外部研究資金の獲得額が増加したということ、広報が活性化した、地方公共団体との連携が進展した、他機関との組織的・包括的な研究連携が増えた、といった外部とつなぐ役割において成果を発揮されているというところが高い数値で回答されているのかなと思います。その中に1つ、「機関内での交流・情報共有が進展した」とあり、内部の連携の促進ということにも寄与しているというふうに読み取れるかなと思っております。下のほうですが、マネジメント人材の配置の狙いとして、研究成果、研究力を高めるというところがあると思いますが、5.「研究成果の質が高まった」、4.「研究成果の量が増加した」、それからその下の「研究者が今まで以上に研究に専念できるようになった」、こういったふうに回答した割合というのは比較的低くなっており、それよりも連携の促進といったところでの成果というのが発揮されているというふうに読み取れるかなというふうに思っております。
下の(3)でございます。一方の課題ということです。マネジメント人材の運用上の課題というところで、「新規雇用時の人材確保の難しさ」、「人材の量的不足」、「人材育成の難しさ」といったところが高い割合で回答されており、この辺りは外部研修の必要性にもつながってくるような結果と考えております。「人材の機関内キャリアパス確立の難しさ」にあるようにキャリアパスにも課題があるという点も見えております。「学内認知度の不足」や「当該人材と機関経営層とのコミュニケーション不足」といったところは比較的低い回答になっており、認知度は低くなく、経営層と距離があるわけでもないということで、少し前の状況とは大分変わってきている様子も読み取れます。
マネジメント人材の将来に向けた方針というところを聞きましたところ、「競争的資金の獲得を推進させたい」、「企業資金の獲得を推進させたい」といった外部資金の獲得に携わってもらいたいという希望が一番多く、その次には「研究プロジェクトを企画、牽引(けんいん)させたい」というところも重要なポイントかと思います。「機関の本部等に経営人材として配置したい」については、各機関の中で経営人材というところまで見据えてやっているのかというところはまだまだ時間が必要な状況ではということでございます。
(5)番といたしまして、マネジメント人材の雇用に係る今後の方針を聞いたところ、「当面は現状維持とするが、補助金があれば拡充する」というのが全体としては多く回答されており、56.4%となっております。一方で、「自己資金で拡充する」というところも12.6%ございますので、マネジメント人材のニーズというのがあるという状況が読み取れるかと思います。
最後、13ページですが、(6)番、研究開発マネジメント人材を雇用する子会社を設置しているかどうかということを聞いたところ、「設置している」という回答は2.2%、「設置していないが、構想している」というのが4.1%という結果になってございます。
以上が研究開発イノベーションの創出に関わるマネジメント人材に関する実態調査の報告になります。
続きまして、資料1-2-1、技術職員の雇用等に関する実態調査でございます。
資料1‐1‐1と同じく、2023年12月1日現在での実態調査で、技術職員の雇用等に関する実態を把握することを目的に実施しております。
2.調査対象とする技術職員でございますが、学部または研究施設等において、教育・研究に係る大学業務等の技術的支援を行う職務に従事する教育・研究系の技術職員という方々を対象として実施をいたしました。
3.の結果ですが、同じく1,241機関を対象に実施し、回収率は全体の56.8%である705機関から回答をいただき、1名以上雇用していると答えた機関は253機関という結果になってございます。
報告1の技術職員の内訳ですが、無期雇用が7,996名、有期雇用が10,868名と有期雇用のほうが若干多くなっており、全体としては18,864人の回答となっております。
男女の割合は同程度でございます。無期雇用の職員数が全体の42.4%で、その男女別を見ますと、男性職員が女性職員の倍以上という状況になってございます。
年齢層で見ると、40代、50代の順で職員数が多く、雇用形態のグラフをご覧いただきますと、40代、50代の割合が多いというのは男女とも同じですが、女性に関しては有期雇用のほうが多く、男性は無期雇用が多いというような状況になっております。
次に(5)番でございます。博士号取得者の割合を見ましたところ、「博士号あり」という回答は5.9%であり、うち男性は4.2%、女性が1.6%となっております。
(6)番の職階でございますが、これは機関種により差異が見られました。国立試験研究機関を除く機関においては准教授・課長以上は合わせて10%未満といった状況でございましたが、国立試験研究機関に関しては准教授・課長級以上で合わせて70%を超える結果ということで、機関ごとの差が出たという状況でございます。
技術職員の育成に関して聞きましたところ、機関独自の研修プログラムを設けているという回答は28.9%とあまり高くないという状況でした。
(2)番、大学共同利用機関法人の提供する研修プログラムを受講することを業務として認めているかどうかを聞きましたところ、59.7%が「認めている」との回答がございました。うち、経済的支援を「行っている」というのは84.8%という結果になってございます。
技術職員にキャリアサポートを行っているかどうかを聞いたところ、42.3%の機関がキャリアサポートを行っていました。キャリアサポートを行っている割合は、大学が比較的低く、他機関が大学以上に高いという状況になってございます。
(4)番、業績・評価をめぐる面談の機会を設けているかどうかという項目です。こちらは77.1%ということですが、本来100%となるべき数字なのかと思っております。
(5)番の人事交流ですが、13.0%の機関が大学と人事交流を行っているという結果になってございます。企業との人事交流を行っていると回答した機関も6.7%ございました。
(6)番、兼業を認めているかどうか確認しましたところ、57.7%が認めているという結果になっております。
最後ですが、中途採用を行っているかどうか確認しましたところ、85.0%が「行っている」という回答になってございます。
実態調査の結果につきましての御説明は以上ですが、こちらの内容も踏まえて、今後、この研究開発マネジメント人材、そして技術職員の、特に育成に係る部分に関する議論を進めていただけるとありがたいと思っております。
御説明は以上でございます。
【小泉主査】 高見室長、ありがとうございました。何となく、全体像を把握するというところはこれでできてきたのかなというふうに思っております。
御協力いただいた大学の関係者の皆様、ありがとうございました。
何か御質問等があれば、ぜひお願いします。
では、正城先生、野口先生の順で。正城さんからでいいですか。
【正城委員】 御説明どうもありがとうございました。
資料1‐1‐1の3ページですが、文部科学省産業連携・地域振興課の産学連携等実施状況の調査でURAの配置状況があり、2年前のデータでは約1,600名であったと思います。そうすると、この表の一番上のリサーチ・アドミニストレーターが1,755人に該当するのかなと思いつつ、全体で1万人ということなので、これまで産業連携・地域振興課の調査のURAのところをかなり超え、広い範囲を今回調査されたのかなという印象です。
質問の1つ目は、上記の差があるので、どこかの機関でかなり人数をカウントされているようなところとかがあると全体の数値が引っ張られたりするので、そういうところがなかったかということです。2つ目は質問ではなくてコメントですが、RA、教員、事務職員、その他という切り口と、大学、研究機関、試験研究機関等という切り口のいずれかで書かれているので、両方でカテゴライズしてみると、実際に関わっている者としての認識の数字に近づくような印象は持ちました。例えば、この表でいくと、大学と研究機関を分けていないので、大学ではこのような比率ではないのかなと思いますし、大学と研究機関を分けていると、RAとか教員系とか事務職員系を考えたときにこんな数字になるのかと、少しずつ違和感があったので、両方の軸を分けてさらに分析すると、それぞれの現場の感覚に近い数字になるのかなと思いました。
【高見人材政策推進室長】 ありがとうございます。御指摘のとおり、いわゆる外れ値というような回答をしてきた機関もございました。それを除くべきかどうかというところも議論しましたが、産業連携・地域振興課とも相談をした上で、今回は除かず全て集計するという方針でやっております。その意味で、一部これは研究開発マネジメント人材ですと回答してきたようなところもあるので、そういうところに引っ張られた数字になっている可能性があるというのは御指摘のとおりかなというふうには思います。
また、あえてURAだけでないところに広げた、狙いがあったわけですが、どこまでを含めたらいいのかというところが伝わりづらくて、例えば看護師まで含めてきたような機関もございましたし、そういう意味で、なかなかこちらのお願いとぴったり合致するような回答にはなっていないところもありますが、排除せず全部集計しているという方針です。
【正城委員】 分かりました。
【小泉主査】 野口委員、お願いします。
【野口委員】 先ほど狙いとぴったりという話があったと思いますが、それは多分非常に難しい点であったのではないかなと私は思いました。意見ですが、例えば3ページのところで、研究開発マネジメント人材の無期雇用が5,800名いらっしゃいます。多分その中には公立、私立、国立も含めた事務職員系列もたくさん含まれていると思います。そうすると、やはり3年ぐらいで異動します。学生部門や財務部門へ異動になるなどです。つまり、部門に応じた特定業務職、専門職のような形です。なので、研究開発マネジメント分野の方々の母数はこのあたりの数字だと確認することが重要と思います。割合を因数分解して分野区分したほうがより先ほど言った狙いにぴったりのところに結びついていくのではないのかなと思った次第です。
それから、資料1-1-1は重要な資料で、非常によく理解できます。例えば6ページのところの研究開発マネジメントのカテゴリーを、(1)、(2)、(3)に加え(4)の関連業務まで携わっているというところで、幅広く業務分野を捉えていると思います。非常に良いと思う一方で、関連業務の①に教育プロジェクト支援があります。例えば、人材政策課が主幹で担当している新SPRINGとかBOOSTの支援もこの範疇に入っていると思います。365機関で全体の3割です。ここまで業務分野を広げて良いということであれば機関数は間違いなく増えると思います。教育プロジェクト支援が表の一番上に来ているということは、多分プライオリティーの優先度合いは高く事務局で考えていられるのではないのかなと思いますので、今後、研究開発マネジメントに博士支援等の教育プロジェクト支援を入れるのであれば、次回はそのように定義付けすれば良いと思います。他にも②「産学」で、「官」が入っていないです。先ほど言いましたように、例えばいろんな大学で社会共創本部や社会共創機構などといった組織が増えてきています。そうなると、自治体との連携とかアウトリーチ活動というのが含まれてくると思うので、そこのカテゴリーも同様に次回は定義付けするのが良いと思いました。
また技術職員のところですが、やはりベテランのシニアでスキルの高い方が多いので、2つの難点があると思います。人材確保と雇用継続性です。例えばそのような観点から、業務委託のように某機関から派遣をしてもらうケースも多いのではないのかなと思います。なので、そこまで射程を広げると、技術職員についてはかなり連携のアライアンスで、技術職員数に差異が出てくるのではないかと思っておりますので、その辺も次回アンケートを取るときには検討を加えられた方が良いと思いました。
あと、賞のところで言うと、文部科学大臣表彰で、研究支援賞はほとんど技術職員に限っています。それを、例えばURA等の研究開発マネジメント人材まで広げると、先ほどのアンケート結果でもあったように幅広い業態まで数が増え、結果として、URA等の研究開発マネジメント人材のモチベーションアップにも繋がると考えます。ぜひ、対象拡大の御検討を頂ければと思いました。
私の方からは以上です。
【小泉主査】 ありがとうございます。
高見室長から何かございますか。
【高見人材政策推進室長】 次回というか、次に向けた改善点を具体的に御教授いただいてありがとうございます。いただいたコメントを踏まえて、今後について考えていきたいなというふうに思っております。
あと、最後にコメントがございました研究支援賞の関係は、まさに御指摘のとおりかなと思いますので、国の表彰なりというところで工夫をするということも検討して、そうすると、機関の中で表彰というのも広がっていくというところを狙えたらありがたいというふうには考えているところです。ありがとうございます。
【小泉主査】 ありがとうございます。
僕のほうから1つだけ。野口委員にお聞きしたいのですが、全体の傾向として、大学としてURAの必要性は認めているところです。一方でキャリアパスをつくったり、雇用を確保したり、国立大学の場合は運営費交付金や自主財源での運営を頑張ろうとしているけど、なかなか苦労しているという状況が見えますが、私立大学の状況というのも似たような感じでしょうか。
【野口委員】 私立大学の経営原資の大半は学費です。よりまして、我々のように学費を原資に雇用するのが一般的な考えとしてベースにあると思います。その上で、例えばエンダウメント、いわゆる運用益で生まれたものについては学費ではなく、政策判断で投資可能なので、我々の大学でも進めていこうと思っています。国公立と比して、様々なリソースで劣る私立大学こそ、とりわけ考えていかねばならないのではと思っています。
加えて言いますと、間接経費の有効活用です。歴史的経過もあるかもしれませんが、間接経費というのは、言い方は悪いですが、設置法人が召し上げるというのが大半で、政策的にある部局につけるというのは非常にコントロールがしづらい部分があると思います。そのことは、先ほどのガバナンスのところにも依拠していると思います。もう一つ私立大学で言いますと、運営のトップ、つまり学長というのはやはり人文社会科学系の教員が就くことが多いので、従来の殻を打破するという意識が若干違うのかなとも思います。私どもの大学は理工系学部もありますし、研究高度化のため、そちらの方に向けて未来投資をするという考え方もあります。間接経費科通用を中心としたガバナンスの視点をどう考えるかというのが重要になってくると思います。それを促す何かがあれば変わってくるのではないかと思います。
結論として、エンダウメントと間接経費の使い方、この2点は非常に重要だと思います。
【小泉主査】 ありがとうございます。まさに私立大学もそうですけど、国立大学でもそういった点は重要なガバナンス改革だなと、今お話を聞いて思いました。
では、まだ御質問はあると思いますが、最後に時間があればまたディスカッションしたいと思います。
高見室長、どうもありがとうございました。
【高見人材政策推進室長】 ありがとうございます。
【小泉主査】 それでは、続きまして、本日のヒアリングのほうに移りたいと思います。本日は、研究開発マネジメント業務・人材のうち、特に技術職員等の在り方についてというところについて意見のヒアリングを予定しております。
まずは、高木委員のほうからお話をいただければと思っております。「大学における研究開発マネジメント人材に関する現状と課題、今後目指すべき方向性~トップダウン・アプローチによる政策策定~」と題して御発表いただきます。どうぞよろしくお願いいたします。
【高木委員】 ありがとうございます。日本工学会の高木でございます。
研究開発マネジメント人材は、大学における第3の職種とも呼ばれていますが、業務並びに必要とされるスキル、あるいは資質・能力が広範囲に及びます。また、カテゴライズも難しい点があるかと思います。本ワーキング・グループの第1回の会合で、ワーキング・グループの共通認識を議論いたしました。当日の資料で、「研究開発マネジメントにおいては、実施そのものが目的ではなく、それを通じて何を実現したいのか、その目的を明確にする必要がある」という記述があったかと思います。それに対して、その視点から、「ボトムアップに加えてトップダウンの議論も必要ではないか、あるいは視野に入れる必要がある」ということを申し上げました。そこで、この大学経営における課題、ミッションから、言わばトップダウンのアプローチで研究開発マネジメント人材について考えてみたいと思います。URA認定制度についても若干コメントさせていただきたいと思います。
大学の経営課題は、研究力向上、財務基盤強化、産学連携推進、さらにURAのスキル標準では明示されていないと思いますが、最近ではスタートアップ支援も重要になってきています。また、研究開発マネジメント人材を取り巻く検討事項も、運営体制、責任・権限・意思決定、それから資質・能力、育成、人件費・財源など、これも様々です。さらに大学内の組織における執行部、研究者・教員、事務職員との関係も重要です。そこで、ボトムアップだけではなくトップダウンのアプローチとして、経営課題の一例として、財務基盤強化ならびに産学連携を取り上げ、さらにその具体例としてオープンイノベーション機構の取組を参考にしつつ、トップダウン・アプローチによる研究開発マネジメント人材の検討をいたしたく思います。流れは大まかに、大学の経営課題、体制、責任・権限、人材の量・質、財源などになります。
一例として取り上げるオープンイノベーション機構を3ページに示しますが、これは文部科学省が整備事業として進められた取組です。この事業の位置づけ、狙いは、政策面についてはスライドの上半分に示します。『産学官連携による共同研究強化のためのガイドライン』の実践になります。そして、スライドの下半分には、Society5.0の実現を目指す産業界からの要望を示します。オープンイノベーション機構、略してOI機構と言っていますが、この特徴は大きく2つあります。1点目は、企業でのマネジメント実績を有するプロフェッショナル人材、これはクリエイティブ・マネージャーという名称で呼んでいますが、略してCMと呼んでいます。このCMを大学が雇用して、集中的マネジメント体制を構築すること。2点目は、オープンイノベーション機構の組織については自立的経営、つまり、プロフィットセンターを目指すということです。
4ページにマネジメント体制を示しますが、中央にオープンイノベーション機構、それから、従来の産学連携本部、そして部局があります。オープンイノベーション機構は、新規に採用された企業経験のあるクリエイティブ・マネージャーで構成されています。全体を統括する統括CMのほかに、業務ごとにプロジェクトCM、知財CM、法務CMなどで構成されています。そして、各CMの業務に対する責任・権限を明確にします。この表に示している業務と担当別CMは、事業開始前の、言わばひな形であり、実際には各大学でその大学の状況に応じて業務と担当別CMが決められています。
オープンイノベーション機構の機能と課題を5ページで簡単に紹介します。これらの資料は、オープンイノベーション機構の整備事業のシンポジウムで発表させていただいた資料を引用したものですので、かなり細かいですが、左上のマネジメント体制の下に、ビジョンの共有、それから「知」の価値の最大化、契約交渉、そして共同研究があります。また、右側の学内の部局、産学連携本部とも連携を行うということで、産学連携だけでもいろいろな活動、機能が必要になります。
6ページですが、オープンイノベーション機構では、共同研究による企業からの投資を増加させて、自立的経営を行い、大学の財務基盤強化を進めます。左側のグラフは、初年度を1.0としたときの資金調達の伸び率の計画値で、採択した12大学の平均値です。事業終了までに自立的経営を目指します。なお、このグラフはオープンイノベーション機構だけの収入の伸び率の数値です。大学全体の産学連携による収入の中で、オープンイノベーション機構が関与する収入の割合は大学により様々です。
また、右側のグラフは、産学連携のガイドラインの追補版に謳われている「知」の価値付けを示しています。従来の間接経費、直接経費に加えて、研究の「価値」を考慮した項目が加えられています。
その下の表は収入の学内配分についての表です。この表はひな形で、項目、配分の有無、その割合は各大学の実情、戦略に応じて異なります。括弧の中に「間接経費」とありますが、企業からの全体の収入と考えても結構です。
オープンイノベーション機構の自立的経営の財源の基本的な考え方は、間接経費を適切な割合に設定して、その一部分をオープンイノベーション機構の収入としてクリエイティブ・マネージャーの人件費に充てるものです。この間接経費の適切な割合というのは、概ね30%程度です。オープンイノベーション機構の事業開始前は、この割合が低い大学もありましたので、自立化のために適切な割合に引き上げていただいたというケースもあります。
更なる収入として、「知」の価値付けの図で、「研究マネジメントの価値」を赤い枠で括っています。現状は一部の大学に留まっていますが、オープンイノベーション機構のクリエイティブ・マネージャーの活動に対する対価としての人件費を間接経費とは別に獲得するケースが出てきています。この経費をこの図のように間接経費、直接経費と別出ししている場合もありますが、大学によっては直接経費の中に入れているという場合もあります。
「知」の価値の最大化、共創について7ページに示します。共同研究の成果を左側に示します。一方、企業はその成果を活用して事業化を行います。事業化には、研究成果だけではなく、様々な要素を検討する必要があります。これを表現した一例として、ビジネスモデルキャンパスというツールがあります。事業化では、研究成果をビジネスの価値に、変換する必要があります。この活動に大学のCMも深く関与し、産学で共創して、「知」の価値が最大化した場合、大学のクリエイティブ・マネージャーの「研究マネジメントの価値」が評価され、この活動に対する対価としての資金獲得が可能になります。
8ページのスライドは、産学連携の課題と、それが産学連携のガイドラインやオープンイノベーション機構により改善されることを示した図です。左側の課題は、平成28年(2016年)に、文部科学省主催の大学の知財マネジメントのシンポジウムで発表させていただいた内容です。その後、文部科学省の施策などで改善に向かっているということを示しています。期待される改善の図の中に共創と書きましたが、クリエイティブ・マネージャーがこの共創に大きな役割を果たしています。
9ページでは、研究開発マネジメント人材の業務の一つである知財マネジメントと契約マネジメントについて示します。イギリスに、ランバートツールという、共同研究契約書のひな形集があります。条件の違いにより、11種類の類型があります。これを基に日本版「さくらツール」を作成しました。これは文部科学省の事業で私も委員参加させていただきました。もともとのランバートツールは、この11種類の様式、契約書のひな形と、それを機械的に選択する方法がセットになっており契約の効率化を狙ったものでした。日本版「さくらツール」は、共同研究と成果が適切に事業化につながる可能性を高めることを目的に、併せてライセンス収入にも留意して、戦略策定、契約交渉の出発点とするツールと位置づけました。このような知財、契約マネジメントでも研究開発マネジメント人材の価値が問われることになります。
現状認識、課題と対応のための視点を10ページに示します。上側にありますグラフは、第1回のワーキング・グループ会合で文部科学省から配付いただいた資料の抜粋で、現状認識になります。結果は、URAの充足状況について、量・質とも十分ではないというものです。育成、質、それから量については、人数を増やす場合には人件費の財源の問題がありますので、大学の財務基盤強化が必要です。これについて、前半お話ししたオープンイノベーション機構にも立ち返りながらお話しさせていただきます。
まず、①の育成に関する留意点ですが、オープンイノベーション機構のCMの育成について、大学側からは、今後育成していくというお話をよくお聞きします。もちろん、これは非常に重要ですし進めていただきたいと思いますが、注意すべき点は、全ての育成が大学で可能かという問題です。学外での実務経験などにより得られる資質・能力、これにはリテラシー、マインドセットなども含まれますが、自前で育成すると言われる大学もある一方で、「高度に専門化された実務家のリテラシーは、大学における大部分の教員や事務職員には理解の及ばない領域が多い」という感想もありました。先ほどの共創による「知」の価値の最大化などを含め、産学連携推進、あるいは大学発ベンチャー支援等で特にこのようなマネジメント能力が必要になると思います。まずはそのようなマネジメント能力の領域があるということの認識が重要だと思います。大学の中だけで全て完結しない能力があるという参考例として、国際エンジニアリング連合(IEA)という団体が国際標準として定めるGAとPCを例に挙げます。GAというのはGraduate Attributesといいまして、高等教育修了生、大学修了生としての知識・能力で、PCというのはProfessional Competencyで、技術者、専門職としての資質・能力です。国家資格である技術士は、このPCが十分獲得できたことに相当します。つまり、大学内での高等教育だけでは専門職としての資質・能力が得られないということが国際標準の基本的認識にあるということです。
②の人材の質については知財人材・知財業務を例に、資質・能力と業務内容について示しています。以前コンサルタントの方と議論した内容で、この結果は特許庁主催のシンポジウムでも発表させていただいた内容です。つまり、同じ知財人材、あるいは知財業務でも、コスト業務的なものと、アセット業務的なものがあるということです。例えば、先ほど御説明しました知財マネジメント、契約マネジメントにおいて、戦略策定、それから契約交渉など、さらにライセンスの高収入につなげる活動であれば、これは右側のアセット業務になります。
③の量的な充足、人件費の獲得については、ここでは財源の多様化のレベルを示しています。適切な間接経費を取らず、産学連携のマネジメント経費を学内財源で賄っている場合は、URAあるいは研究開発マネジメント人材を増やすことは難しくなります。先ほど御説明しましたように、オープンイノベーション機構では、基本的に間接経費を30%として、その一部をオープンイノベーション機構に配分して、クリエイティブ・マネージャーの人件費を賄うこととしています。さらに進んだ取組として、このクリエイティブ・マネージャーの活動の価値が企業に認められた場合、一部の大学では直接経費に人件費を計上している場合もあります。現状、我が国の研究費というのは総額20.7兆円、そのうち大学が3.8兆円、企業が15.1兆円ですので、大学が「知」の価値を提供できれば企業からの資金をさらに得られると考えてよいと思います。ちなみに、大学の3.8兆円というのは、この金額に含まれる人件費が、研究と教育で区分けできないので、研究だけの人件費は、もっと少ないはずで、大学の研究費は、3.8兆円より少ないというのが現状です。1990年代、日本企業の中央研究所は、廃止、縮小、あるいは研究内容が変容しましたので、当時でも産学連携のニーズやチャンスがあったのではないかと思いますが、当時の大学では産学連携にネガティブな考えもあったと聞いております。最近では、企業の人手不足の問題が表面化していますので、今後益々チャンスになるのではないかと思います。
④のコスト業務のプロフィット化・財務基盤強化ですが、先ほど御説明したオープンイノベーション機構は、大学の中の産学連携に関わるマネジメント業務を、コスト業務からその一部をプロフィット業務にした例です。従来企業でしかできなかった業務を大学に取り込んだとも言えます。また、大学の研究開発マネジメント人材を高度化したことで、大学にしかできない価値を生み出したとも言えると思います。その他、企業の研究拠点の大学内への設置も、企業業務の大学への取り込みとも言えると思います。逆に、先ほど②の人材の質で述べましたが、コスト業務のうち、付加価値の低い業務は外注を検討する余地もあります。
それから、⑤のURA認定制度ですが、政策の継続性ということで引き続き深化、活用、拡大に繋げていただきたいと思います。資格には、名称独占資格と業務独占資格があります。URAの認定制度というのは比較的、名称独占資格に近いと思います。名称独占資格の例として、技術士制度がありますが、先ほどもお示ししましたが、このProfessional Competencyのあるレベルに達して試験に合格すると技術士の資格を取得できますが、現実には、高度な技術的資質・能力を持っていても、みんなが技術士の資格を取得するわけではありません。技術士という資格を取るためのメリット、デメリットのバランスを留意する必要があると思います。URA認定についても似たことが言えるのではないかということで述べさせていただきました。
12ページはまとめになります。
まず、トップダウン・アプローチによる政策策定ですが、オープンイノベーション機構による産学連携を一例に、大学の経営課題、体制、責任・権限、人材の量・質、財源などを見てきました。スキル標準からのボトムアップ・アプローチに加え、目的を見据えたトップダウン・アプローチによる政策策定も必要ではないかと思います。
研究開発マネジメント人材の安定的確保については、人件費の確保・財務基盤強化が必要ですので、「知」の価値付けとして、研究者・研究成果に加えて、研究開発マネジメントの価値も高め、企業からの人件費を獲得する、さらにコスト業務のプロフィット化を進める必要があります。
研究開発マネジメント人材の質の向上では、学内での育成に加え、高度人材の確保も重要で、そのためにはまず初めに高度スキルの認識が必要で、研究開発マネジメント人材以外の場合でも、例えば大学の研究者のうち企業経験者あるいは米国留学経験者は、例外もありますが産学連携が比較的スムーズな場合が多いということを経験しています。これは必ずしも大学の研究者にそのスキルがあるか否かということだけでなく、高度スキルを認識しているという点もあると思います。
URA認定制度については、政策の継続性から、深化・活用を進めていただきたいと思います。
政策連携については、今回、一例として産学連携を取り上げましたが、産学連携はいろいろな政策分野が、言わばクロスしています。研究開発マネジメント人材も関わってきますが、産学連携の政策の中だけでは必ずしも十分に扱えない場合もあります。大学経営、大学改革のいろいろな政策の中でも研究開発マネジメント人材が関わってきますので、これらの中でも個別の政策として人材政策に着目する意味で、政策連携が重要になるということです。必ずしも簡単ではないということも認識しておりますが申し上げておきます。
最後に、政策の無謬(むびゅう)性からの脱却についてです。これは以前、当時の産業連携・地域支援部会でも申し上げましたが、世の中が変化し、大学を取り巻く環境も変化する中、予定調和の政策だけでなく、政策にトライアルの要素をもっと入れて、次の政策に繋がる適切な失敗は許容するくらいがいいのではないかということを申し上げております。
以上、御清聴ありがとうございました。
【小泉主査】 高木委員、どうもありがとうございました。幅広に御意見をいただきまして、とても分かりやすくまとめていただいてありがとうございます。
少しここで議論をしたいと思いますが、御意見、御質問等あれば、いかがでしょうか。
野口先生、お願いします。
【野口委員】 高木委員、大変示唆に富んだ分かりやすい説明、どうもありがとうございました。
特に私が思います点は、6ページの、共同研究のガイドラインもありましたように、「「知」の価値付けの具体化は進行中」の研究の「価値」を考慮した項目」というのは、先ほど御説明いただいて大変私は重要だと思いました。間接経費の割合については、大学にもよると思いますが、例えば私立の場合、人文社会科学系の研究者が多いので、間接経費は我々の大学では人文社会科学系は主に10%で、自然科学系は主に20%です。なぜかというと、外部資金獲得の規模感が異なるからです。例えば、人文社会科学系はどちらかというと企業から獲得する研究資金が自然科学系と比して小さいので、間接経費を大きくすると直接経費に影響が出るのではないか等、やはりいろいろ意見が出ます。ただ、先ほど高木委員がおっしゃった、共同研究のガイドラインでも触れて頂いた知的貢献経費を我々も入れるようにいたしました。教授、准教授は1時間3万円、講師、助教は1時間2万5,000円に設定し、それで積算をして直接経費に加えると結構企業側も納得してくれるケースが非常に増えてきています。質問は、「価値」を考慮した項目のカテゴリーは、私は教員の人件費にかかる積算かなと思いましたが、ここの費用の項目の企業への説明について、一番効果的なのは何なのかアドバイス頂ければ、我々も非常に勉強になると思いました。よろしくお願いいたします。
【小泉主査】 高木委員、お願いします。
【高木委員】 ありがとうございます。
ここで研究者の価値と研究成果の価値と研究マネジメントの価値があると思いますが、実は一番説得力があるのは研究成果の価値ではないかと思います。個別の共同研究の直接経費の正確な算出は難しいと思いますが、理屈の上では客観的に算出出来る数値のはずです。それに加えてある額の間接経費が加算されます。ただし、全体の研究成果の価値は、それよりはるかに高い場合もあります。アメリカの大学ですと、かなりの金額を取る場合もあります。間接経費という形で50%や60%を取ることもあるので、研究成果の価値は、もっとアピールされてもいいと思います。ただし、これは大学側にとっても厳しいことで、研究成果の価値がそれだけないといけません。極論すれば、原価割れもあり得るはずです。今回のテーマは研究開発マネジメント人材ですが、研究の質、あるいは独自性など、そこを十分高めるということは、当然、この背後の話としてあります。
それから、研究者の価値ですが、本来は直接経費との関係について、特に国立大学は運営費交付金があるので、少し難しい問題もあると思いますが、将来的には直接経費との関係を整理したほうがいいと思います。
また、研究マネジメントの価値ですが、大学によっても異なり、例えば包括連携協定をして、その中で個別の研究の契約を立ち上げるときに、その個別の研究契約の外で、包括連携の金額の中から研究開発マネジメント人材の人件費を獲得している場合や共同研究の契約前のプレアワード的な取組のときに、個別に獲得している大学もあります。ただし、全ての大学がやっているわけではありませんし、全ての共同研究でやれるわけでもないです。一部の共同研究で、それができる場合はやっているということです。この知の価値付けは大きな問題で、また、これから更に検討を進めていかなければいけない大変重要な課題だと思います。
どうもありがとうございました。
【野口委員】 ありがとうございました、よく分かりました。
【小泉主査】 ありがとうございます。
桑田先生から手が挙がっていますね。桑田先生、いかがでしょうか。
【桑田委員】 高木先生、ありがとうございます。包括的にオープンイノベーション機構の話を伺ったことがなかったので、本当にためになります。ありがとうございます。
それで、今の知の価値づけの話と少し連携する話だとは思いますが、資料の11ページ目④に、コスト業務のプロフィット化の話が載っていたと思います。ここが、私が特に興味をそそられるところで、いろいろなところに価値づけをしながら、プラス業務でプロフィットを出していくということにシフトしていくことによって自立化の道をたどりたいと切に願っているんですが、具体的にどんなことをプロフィット業務としているのかという事例をお教えいただければと思います。よろしくお願いいたします。
【高木委員】 はい。まず、大学の中の様々な業務のうち、どこをプロフィット化できるかということについては、全体を見ないとなかなか難しいです。例えば7ページですが、産学連携で、企業側は社会課題解決ということをよく言います。それは実はいろいろなやり方があり、研究の成果と社会課題の解決の間に、かなりギャップがあります。そのギャップは、今までは概ね、企業の企画部門や研究開発部門の人が埋めていました。これを例えば大学のクリエイティブ・マネージャーのように、大学にどういうリソースがあるかをよく理解し、大学のマネジメントにもある程度関与できる大学側の人も加わり、共創で研究テーマを設定していただく、あるいは研究をマネジメントいただくということは、その活動は企業側にとって非常に価値がある内容ですので、研究開発マネジメント人材の人件費を出すということは、あまり抵抗がないように思います。
これは工夫の余地があり、ケース・バイ・ケースでいろいろあると思いますので、全体的なことを申し上げるのは難しいですが、1つの例ということで申し上げさせていただきました。
以上です。
【桑田委員】 ありがとうございました。すごく助かります。
【小泉主査】 ありがとうございます。
重田先生、お願いします。
【重田委員】 高木先生、本当にありがとうございました。非常にまとまっており、うちの産学連携にもシェアさせていただき、勉強をさせていただければと思います。
10ページの育成に関する留意点についてお伺いしたいのですが、上の図で、大学で可能な育成というのと、外部研修が点線でカテゴライズされていて、右側の学外での実務経験等により得られる資質・能力というところが別建てになっているかと思います。こういった人材というのは、いわゆる企業等でそういった経験を持たれた方を大学に取り込むという意味でこういうふうに書かれているのか、あるいは企業の方を、例えば大学と企業の間の連携として一定期間派遣してもらったりとか、あるいは逆に、大学のこういったものに関する人を企業に派遣して人材交流をしたりするのかという2つの観点があるかと思いますが、こちらについては、高木委員はどういうふうにお考えでしょうか。
【高木委員】 この棒グラフはグラデーションにしていますが、企業での十分な経験を積んだ上で産学連携に携わっていただくというのは、この右側のほうになります。中間にあるのは、一時的に来ていただくという取組もあると思います。ただし、その場合にはリテラシーやマインドセットを大学側に引き継げるかについてはケース・バイ・ケースだと思います。更に、実際の大学の業務は、非常に高い能力が必要な業務と、必ずしもそうでもない業務もあるということで、雇用形態と業務、それから人材のスキルをケース・バイ・ケースで分けておく必要があると思います。
例えば、産学連携の一番ベーシックでプリミティブな考え方に、ニーズとシーズのマッチングという話がありますが、このニーズとシーズが非常に遠い場合でも繋げられる能力がある人がいるということをお聞きしたことがあります。それは大学以外の社会経験あるいは職業経験をいろいろ積んだ人だそうです。このお話しをされたのは、大学のマネジメント系の先生ですが、これは大学では絶対に教育できないそうです。大学で教育できるのは、そういうスキルを持った人をマネジメントすることであり、そのマネジメントスキルは教育できると言われていました。幾つかのパターンがあるという意味も含めてグラデーションを付けて表現させていただきました。
【重田委員】 はい、説明ありがとうございました。
【小泉主査】 ありがとうございます。
では、すみません。御質問等あると思いますが、最後にまとめてディスカッションしたいと思いますので、高木委員、ありがとうございました。
【高木委員】 ありがとうございました。
【小泉主査】 では、もう一つのほうになります。
続きまして、国立大学法人東京工業大学総括理事・副学長特別補佐/企画本部戦略的経営室教授の江端新吾先生からお話をいただきたいと思います。
研究力を向上させる研究環境改革のグランドデザイン構築に向けた技術人材の高度化と研究基盤マネジメントのあり方~東工大次世代人事戦略とオールジャパンの高度技術人材養成システムの構築というタイトルで、江端先生、どうぞよろしくお願いいたします。
【東京工業大学(江端様)】 東京工業大学の江端です。よろしくお願いいたします。
本日は、「技術職員」というキーワード、これは第5期科学技術基本計画、第6期科学技術・イノベーション基本計画等でフィーチャーしていただきまして、研究力を向上させるための必要な人材として取り上げていただいているわけですが、本ワーキングでは、研究開発イノベーションの創出に関わる人材に位置づけていただき、このような発表の場をいただきました。主査の小泉先生をはじめ、委員の皆様、また、文部科学省の生田課長、高見室長をはじめ、関係者の皆様に感謝を申し上げたいと思います。ありがとうございます。
私のテーマは、技術職員がメインになりますが、先ほど高木委員からお話しいただきました11ページの技術士というような資格制度というものも非常に関連がありまして、技術士と新たな職については、本日の私のプレゼン資料にはありませんが、高木委員の資料も拝借させていただきながら御説明をさせていただきたいと思います。
まず、簡単に自己紹介させていただきます。私はもともと宇宙化学を専門に研究者をやっておりました。2013年から北海道大学のURAになり、まさに本ワーキングで議論されている研究開発イノベーションの創出に関わるマネジメント人材として、現在まで従事してきました。2019年に東京工業大学に異動し教授という立場には変わりましたが、プロボスト(総括理事・副学長)の特別補佐として、大学経営の改革に携わるという立場で、こういった大学経営に関わるマネジメントの現場、そして執行部および各部局と連携をしながら、仕事をさせていただいております。また、全国的な取組も多方面で行っており、北海道大学をはじめ、複数の大学で客員教授を拝命し、一般社団法人研究基盤協議会の立ち上げ等も行いながら、一大学だけではできないこと、そして、各大学の連携、その横のつながりを意識して活動しております。
私自身は宇宙化学がベースになっておりますので、同位体顕微鏡という世界最先端でユニークな共用設備を使い、例えば、はやぶさのリターンサンプルを分析する等の最先端の技術を駆使した研究を行ってきましたので、こういった研究環境を整えるための設備、あるいはそこに携わる人材の必要性を実感しております。私が研究者時代にいろいろと助けていただいた技術職員の方々の非常に高度なスキル、そして、多くの知識を持った方々が大学にいるということは、多くの研究者の方々は認識されているわけですが、文部科学省等の委員会あるいは大学執行部での議論の中でも、これまで技術職員というのはなかなか取り上げてこられなかったということで、改めて、お話ができればと思っております。
文部科学省の皆様方の御尽力によって、研究基盤の共用という政策は、10年以上前から進めていただいておりまして、研究基盤を多くの方に使っていただく環境整備は、文化としても大分根づいてきておりますし、ヒトやモノが集まる場も整ってきていると思います。この図の横軸方向がまさにそれに当たるところで、国の多くの投資はこの横軸方向に、この共用事業を進めるためになされております。ただ、先ほど申し上げたとおり、最先端の研究を進めるためには、高度な技術者が必要で、そういった人材を組み合わせることによって、大学がまさにイノベーションを生み出す場になると私は確信しております。東京工業大学としましては、この縦軸の人財をより強調し、人財と研究環境を結びつけることによって、イノベーション創出につながってくるものと捉えております。これを東工大スタイルの次世代型の研究基盤戦略といって、2019年に確立し、多くの研究機関に先んじて組織的な取り組みを始めました。
東京工業大学は、経営に関する大改革において、技術職員、あるいはそれをベースにしたオープンファシリティセンターという組織の立ち上げ等も位置づけさせていただいております。この図は東工大における経営の好循環を示したものになっており、左手が卓越した教育・研究に関わる循環、右手が戦略的社会連携に関する循環を示しております。これはまさに高木委員の御説明されたところになります。これら緑の枠と赤い枠がぐるぐると回る好循環システムを構築するためにも、そういった研究基盤あるいはそれに関わる技術人財が必要だということを経営改革の中に明確に位置づけ、これを推進してきました。
特にそこに必要な人財についても改めて強調しており、私が所属している戦略的経営オフィス、プロボストオフィスの立ち位置としましては、大学にどれだけコストがかかるのかという構成員のコスト意識を高めていただくための分析、また、東工大初の統合報告書の作成等を通じてそれをしっかりと学内全体に浸透させるための取組を行っております。一方で、コストはかかっても、必要なものにいかに投資をしていくかという戦略的な投資の方法も考えていく必要があり、それは人、物、お金、スペース等に関する戦略的に資源配分をしていく仕組み作りについて、2019年、文科省の経営改革促進事業で提案し、これを推進しております。まさに、多くの大学の方々が大きな課題だと認識し、その課題を解決するために御尽力されていると思いますが、国立大学の改革の中で、なかなか進められない人事制度の様々な難題をクリアするための提案として、右手の次世代人事戦略に基づく人事制度の抜本的な改革を東京工業大学が先陣を切って行ってきたところです。
次のページがまさにキーになる図になります。マネジメント人材は、教員だけではなく、事務職員やURA、そして技術職員も含め、全構成員の中から出てくるべきだと考えています。そのために、現在の大学では人事制度の改革を行わなければならず、東京工業大学としましては、まず、技術職員の上位職である上席技術専門員、主幹技術専門員といった職階を新たに設けました。これまであった職の上位に職階を設ける取り組みは、文部科学省の共用事業であるコアファシリティ構築支援プログラムの中でも指摘されているところではありますが、構想はできても実行できている大学は数えるほどしかないというような状況であり、本学の上位職をつくる人事制度改革は大きな一つの改革だったと思っております。
また、この図のポイントは、背景に記載されている両矢印です。技術職員の方でもマネジメント職にキャリアチェンジができる、あるいは教員や事務職員の方からURAになれる、そういった横移動をしていくことを意識した人事制度改革を進めてきており、現在、多様なキャリアパスを実現するような、フリーでフラットな戦略的人事を実現していくということは、今後、10月に誕生する東京科学大学の基本理念の中にもしっかりと入っており、東京医科歯科大学と連携しながら、戦略的な人事を進めていこうと考えています。
東京工業大学では、マネジメント専門職も新たにつくり、こちらで専門的にマネジメントに従事している方々もいます。このような制度改革の中で、URAも活躍しており多様な人材が密にコミュニケーションを取りながら、相乗効果を生んでいるというのが東京工業大学の現在であります。
私は、技術人材の高度化ということも喫緊の課題だと考えています。東京工業大学も国際卓越研究大学というものを目指して、国際的に卓越した研究を進めていく上では、高度な技術者の支援が必ず必要であるという多くの研究者の先生方の声もありまして、その高度技術専門人材「テクニカルコンダクター(TC)」を養成するための新たな仕組みとして、TCカレッジを設置いたしました。
こちらはコアファシリティ構築支援プログラムの一環で行っており、今年度いっぱいでこの事業が終了しますが、テクニカルコンダクターの人材像を4つ特徴としてまとめております。1番目が高い技術力と幅広い知識、2番目が高い研究企画力、3番目が高いコミュニケーション力、交渉力、4番目が次世代後継者育成力ということで、これらの力をしっかりと兼ね備えた人材をつくっていく、それがTCカレッジの取組になっております。
この構想自体は、冒頭申し上げたとおり、一大学、東京工業大学だけで何とかできるという話ではなく、全国の産官学といった多くの関係者に支えられながら運営しています。例えば、右側に応援メッセージと書いてありますが、株式会社島津製作所の山本社長、日本電子株式会社の大井社長というような各社メーカーの方々からも、こういった人材育成、また、それをグローバル人材に育ててほしいというような期待をいただいていて、立ち上げ当初から御支援をいただいてきました。
このTCカレッジは、入学後、カリキュラムを受講し、規定の単位を取得した上で、TCの前にテクニカルマスター(TM)に認定させていただきます。TMは単位を取得するのみで認定されるもので、URA事業で言いますと認定制度に合致するようなものと考えております。そこから、TC論文を書いていただき、TC論文審査会を経てTCを取得できるという流れになっており、これはまさに博士論文を書いて、博士論文審査会を経てという、大学の重要な認定システムを模した形でさらに発展させているようなものになっております。
先ほど申し上げた人財像はここに書いてあるとおりですが、TC、TM取得に向けたKPIを単位としてセットしており、これはKPIの単位認定制度といって、カリキュラム認定と合わせた形で単位を取得できるような形になっております。技術職員の方々の通常の業務を指標において評価していて、例えば原著論文と書いてありますが、特に共著を評価するというところを強調しています。研究者が、この人のおかげでこの論文が書けたというところがしっかりと見える化できているというのは非常に重要だと考えています。また、科研費応募と書いてありますが、技術職員の方々でも奨励研究というカテゴリーに応募することができます。そこにしっかりと自らの企画を提案し、それが評価された・認められている、そういった点もTCとして重要な観点と考えています。さらに、学会発表と書いてありますが、何も学術的なところだけではなく、技術職員の方々に研究発表会等でお話をしていただく、そういったコミュニケーションがしっかりできる、自分のやってきたことがしっかりと発表できるところが重要で、こういったものにKPIをセットしております。そして各技術者のスキルによって、例えば国家資格を持っている方、あるいは御自身でテクニカルレポート等を書いている方など、多様な視点で評価をしながら、業務を行いつつ今までの経験をしっかりと単位として換算し、負担を減らしつつ、しっかりと評価し、認定していく制度という形を取っております。
カリキュラム自体は、TCカレッジだからといって、特別に全て開発しましたというようなものではなく、現状の大学の中あるいは、URA事業、多くの企業、学会等で行われているような研修会なども単位に含むようにしています。連携企業の方々と一緒に共同の開発を行うというプログラムもあり、そういったところも組み合わせて行っておりますので、TCカレッジと国内研究機関、海外研究機関、国内機器メーカー等、協働しながら運営しております。
先端研究基盤共用促進事業(コアファシリティ構築支援プログラム)の中間評価結果では、赤線で書いてあるように、地方大学も含めた他大学との連携が進んでいるというところ、そして組織を超えた技術職員の人材育成が進んでいるというところが評価されています。そして、テクニカルコンダクターカレッジというのは非常に優れた取組なので、一般化して、多くの人材の流動化や最適な配置につなげていってほしいという期待もいただいているというところです。この辺もオールジャパンの形をつくっていく上で、我々が行っている活動が間違っていなかったと、多くの方に御期待いただき、その成果としてつながってきているものがあると感じております。
右側の図を御覧ください。現在、東京工業大学を中心に、本WG主査の小泉先生にも非常に御協力いただきまして、協力機関として自然科学研究機構とも一緒にこの活動を進めています。特に全国のネットワークという意味では、自然科学研究機構により多くの方にこの情報を届けていく、技術職員の方々の横のつながりをつくっていくという点で、非常に御協力いただいているところです。また、こういった取組に賛同いただいております長岡技術科学大学、岡山大学、山口大学はサテライト校ということで、各大学独自のTCコースを立ち上げているところです。それぞれの大学の強みを生かした高度な技術人材を育成していくための仕組みづくりということで連携をしています。そのほか、北は北海道大学から南は琉球大学まで、多くの大学から受講生に来ていただいておりまして、昨年度の受講生は、学内で15名、学外で31名の計46名というような状況になっております。今年度の受講生は50名を超えておりまして、このTCカレッジの取組が多くの大学に浸透していると思っております。今のところTC取得者が4名プラス昨年度で1名認定され、計5名になりまして、今年度は初めて学外の方にもTC論文を書いていただく段階になっております。
次のページですが、これは活動の状況が見えるような形で配置をしました。日本電子株式会社の大井社長や、株式会社島津製作所の山本社長にも御協力いただき各機関のメーカーの執行部の方々、長の方々はどういったことにマネジメントの意識を持って経営を行っているのか、そういったところも含めて、多角的な視点で議論できる場をつくっています。
TM、TCということで、言葉だけでは分かりにくいと思い、図示させていただきました。下から箱が積み上がっていますが、初級、中級、上級という箱がTM課程で実施していただくプログラムになっています。これらの箱の一番上にTC論文と書いてある箱が乗っており、TC課程でやっていただくことです。色別に分けてあるところは、それぞれのコースになっています。例えばバイオ系TCといったら、バイオ系の研究開発に関するソリューション、課題解決型の技術職員を養成していくということで、そういった系統の技術者を育てるためのコースが初級の上に積み重なるような形で、このような単位設定をして認定をしております。
東京工業大学の場合は、先ほど次世代人事戦略の中で上位職を設けましたとお話をしましたが、このTCという称号は、上位職にキャリアップするための一つの大きな基準であるという位置づけをしていて、実際にTC取得者が既に上位職に昇格しているというような事例があります。多くの大学から、称号を取っても、なかなか自分の大学でキャリアップできないという問題点は御指摘いただくところで、人事制度をしっかりと丁寧に、好事例として多くの関係者に紹介していく、知っていただく機会が必要だと思っているところです。東京工業大学はこれを実現しておりますし、東工大に限らず、受講生の所属機関では受講する際にそのような申し合わせを行っており、キャリアアップできる仕組み作りが確立している好事例もあります。
私は一般社団法人研究基盤協議会を設立し、代表理事/会長を務めさせていただいています。これは先ほどから申し上げていますとおり、オールジャパンの取組を推進するために、一大学だけではできないことを多くの大学と連携して進めていこうとする取組であり、先ほど来、御紹介させていただいている機器メーカーの社長の方々や文部科学省の柿田局長からも激励のお言葉をいただいているところです。本法人は、研究基盤に関する知見を我が国全体で蓄積、共有を展開することによって、自立したサステナブルな研究基盤システムの構築と発展に貢献するということを目的に活動を進めております。
様々な活動をしておりますが、真ん中辺りにありますこれまでの活動実績では、文部科学省で進められていた研究設備・機器の共用推進に向けたガイドラインへの提言等を行ったこと、また、内閣府の研究時間の確保・振興パッケージ等に企画立案、実態調査への貢献をさせていただいたこと、また、研究基盤EXPOという非常に多くのステークホルダーが集まる場をつくってまいりました。
右下にありますアドバイザリーボードを設置し、そこでは各大学の研究担当理事の皆様に、アドバイザーとして入っていただいております。また、右上に記載があるように教員(現場・執行部)、技術職員、URA、公認会計士、行政書士などから構成される理事の皆様と共に活動を推進しております。
研究基盤EXPO2024では、1週間で延べ約2,800人と、多くの方に参加していただきました。先ほどのお話にもありましたとおり、技術職員の方々には、非常に多く参加していただいております。参加率としては50%~60%程度が技術職員だったと思いますが、こういった場で、これまでなかなか見えてこなかった技術職員の方々の活動、そして、研究基盤マネジメントに関わっているURAの方々にも参加していただけるようになったことは非常に大きな成果と思っております。先ほどの写真の真ん中辺りにいた女性は、日本学術会議の若手アカデミー代表の豊橋技術科学大学の小野先生です。私は25期で若手アカデミーに所属しており、「いま取り組むべき10の課題」という見解を発出にも関わっておりました。本見解では、若手の研究者ならではの視点で課題が整理されており、彼らの視点でも専門的な技術者、事務員の不足というところが大きな課題と認識され、博士号取得者を要するようなコアファシリティの拡充という1つの解決策が提案されました。冒頭申し上げた東工大次世代人事戦略においても、博士人材のキャリアパスとして、高度な技術専門人財を、研究環境マネジメントの専門人材として活用していくというキャリアパスもあるのではないかなと考えているところです。
我々は、グランドデザインとして、このTCカレッジをオールジャパンの形に持っていくのはもちろんのこと、TCカレッジにこだわるわけではないのですが、オールジャパンで取り組むべき高度な技術者の養成のシステムをしっかりと国に先導していただいて、整備・定着させる必要があると思っています。これは各大学のニーズだけではなく、協力企業として参画いただいている機器メーカーのコンソーシアム、協力いただける民間の方々のニーズでもあります。現在は、これまでの取組によって協働できるようなポテンシャルがあることは確認でき、そのネットワークの原型はできてきたというような状況です。これを横につないでいくための何らかの力が必要というところで、ぜひその点は、国際卓越研究大学や地域中核・特色ある研究大学強化促進事業など、その他いろいろな支援策を実行いただいていますが、研究環境を整えるための施策として、特にそういった専門人財を育成するための仕組みづくりというところに御支援いただければと思っております。
次のページは、TCとTMはこんな人財ですということが書いてありますが、時間もオーバーしていますので飛ばしまして、最終ページになります。今後は、TM課程の2年間の部分を標準化していくことが、今、多くの大学から求められております。一般社団法人研究基盤協議会の重要な活動の一環である、各大学の担当理事の方々、関係者の方々とのラウンドテーブルの中でも、技術者の標準化というのは、スキルの標準化や、スキルだけではなくその方々の評価をするための基準の標準化についても、ぜひ取り組んでほしいと期待していただいているところです。ただ、それをしっかりと進めるための事務局が必要で、その体制を整備すべき状況ですが、それだけでは、研究力向上につながるような仕組みづくりにはならないということで、各大学のTC制度を活用しながら、まさに博士人材が活躍できるような場として、このTC制度を活用していただくことで、このようなTCカレッジの連携校は今後また増えていく予定でありますので、それぞれの役割をしっかり明確化しながらやっていく必要があると思っています。特に技術者、技術の見える化というのは以前から課題として提起されておりますが、この辺の見える化というのも実際に必要ですし、技術者をしっかりとキャリアップできるような好事例の共有は、先ほど申し上げたとおり必要だと思っております。
最後に、先ほど高木委員から御紹介いただいた技術士との関連の話ですが、11ページにあります図の右上半分が、まさに我々がカバーしている領域だと思っています。東京工業大学においても、JABEEの運営や技術士の認定についてはかなりコミットしているところではありますが、東京工業大学の中で議論したときも、やはり技術士とTCの活動の違いというのは明確にあるだろうというところで、高木先生の図をお借りして恐縮ですが、高スキルの非技術士のような領域をしっかりカバーし認定していく形が求められていますし、私もそれを目指して取組んでいきたいと思っております。
以上になります。ありがとうございました。

【小泉主査】 江端先生、どうもありがとうございました。ますます、江端先生の活動、また、こうした技術人材に対する期待というのは大きいという現状かなと思っているところです。
せっかくですので、江端先生への御質問もそうですし、今日の全体を通じての御質問、御意見等、いただければと思います。
稲垣先生。
【稲垣主査代理】 議論に入る前に、そもそも私、技術職員のことをよく分かっていないので、今回の調査も含めてなんですけど、技術職員ってどういう人たちのことを言っているのかというのを確認したいんですが、国立大学だと、定員として技術職員の人たちがいらっしゃると思うのですが、その人プラス研究費とかで雇用されている、いわゆるテクニシャン的な業務に従事されている方を含めてのお話をされているということでしょうか。
【東京工業大学(江端様)】 はい、稲垣先生ありがとうございます。
今回のプレゼンテーションとリンクするという意味では、文科省で実態調査をしていただいた際の定義に合致するような方々が、メインのターゲットになっていると思います。したがって、有期雇用の方もそうですし、無期雇用の方も一緒に議論をさせていただいてります。もう少し付け加えさせていただくと、技術職員の定義とは何か?というのは、技術職員というカテゴリーを全てカバーできるような確かな定義がなかったのでものすごく迷走しており、実態調査を行うにしても、総務省統計をはじめこれまでの調査ではかなりのコンタミネーションがあり、純粋なる技術職員の方々をピックアップできていないという大きな課題がありました。つい最近、二、三年前から,内閣府CSTIのエビデンスグループで実態調査のベースをつくって議論を始め、それを踏まえて今回、高見室長を中心にこのような技術職員の実態調査を実施しさらに詳細な分析が進められているという状況です。したがって、どこをターゲットにするのかという議論は、まさに稲垣先生がおっしゃるように重要なポイントなのですが、まずは、根拠のある定義を明確にした上で、ある一定の範囲内で考えていくというところが妥当だと思っています。

【稲垣主査代理】 はい、分かりました。ありがとうございます。
【東京工業大学(江端様)】 はい、ありがとうございます。
【小泉主査】 僕のほうから関連する質問で、大学共同利用機関法人だと、国立天文台をはじめ、技術者がいないと動けないので、もしかしたら今の時点では大学より充実していると思います。ただ、その中にしても、今回の調査結果にも含まれるような本当に無期雇用している方もいらっしゃれば、現場レベルだと有期雇用で、女性で130万円の雇用の範囲で働きたいという方が結構、技術人材として研究現場を支えています。TCカレッジをはじめ、江端先生の取組ですばらしいと思うのは、やはり高みをつくっていこうと、キャリアパスをつくっていこうというところですが、一方で、いやいや、そんな高みでなくてもいいから、130万円の雇用の中でやりたいよという方がボリュームゾーンとしては結構多く、研究現場の技術を支えている人たちと思いますが、その人たちに対してのアプローチというのは何か、今、先生がやられている高みをつくるのはまた別のアプローチがあるという感じですか。
【東京工業大学(江端様)】 はい、小泉先生ありがとうございます。
まさに今、おっしゃった視点のエビデンスは、今回の実態調査の中でも2ページのところに出てきていて、女性は40代から50代含めて、有期雇用の方が非常に多いという結果になっております。私の感覚的にもそれは合っていて、有期雇用の方でも、非常に高度な支援を行っていただいている方々は多くいらっしゃるというのが研究現場で良く見られます。
ここで議論すべきことかどうか分かりませんが、少なくとも、そういった方々は、例えば旦那さんが大学関係者で、一緒に研究をやっていて、博士も持っているけれども、旦那さんの異動について行き同じ大学で仕事をされている方や、あるいは、子育てで一旦お休みをしたけれども、やっぱり自分の技術を研究に生かしたいということでお仕事をしていただいている方々も多くいらっしゃいます。特に、多くの大学の医学系の実態や統合する東京医科歯科大学の事例を見ても医学系の技術支援者は、無期雇用よりも有期雇用が非常に多いということがわかっています。それにすごく驚いていて、その方々は博士を持っていて高度な研究に資する取組をされている方もいらっしゃいました。もともとは無期雇用のテニュアの方だけを対象に事業を進めていこうと考えておりましたが、東京医科歯科大との統合によってやはりそこまで広げて考えなければいけないなという意識を強く持ったところです。そういった意味で、最後に御提案差し上げたページの下の部分、TMというところまでの取組に関しましては、多くの方に研究者を支援できる力量がある、そういった知見がある、経験があるという実態を踏まえた認定制度として使っていただけるかと思い、そこは少し別の事業として切り離して考えていっても良いのではないかという考えに至りました。
【小泉主査】 ありがとうございます。とてもよく分かりましたし、そういった広がりは一様ではなく多様で、雇用の形態も多様だけれども、こういったところまで含めてというところがすごくよく分かったところです。
【東京工業大学(江端様)】 ありがとうございます。
【小泉主査】 他にありますでしょうか。
杉原委員、お願いします。
【杉原委員】 江端先生、御講演ありがとうございました。
今、大学の中での技術職員に対する人材育成体制・待遇改善、また、全国でのTCカレッジ等の仕組みが進む中で、恐らく今後、技術職員の流動化という話が出るのではないのかと思っています。今日、流動化についてはあまりお触れにならなかったですが、現在、技術職員も、博士号を持つ方がかなり多くなっていく中で、技術職員の流動化について、何かお考えや知見があれば教えていただきたいです。
【東京工業大学(江端様)】 はい、杉原先生ありがとうございます。
将来的な構想としては、技術者の流動化についても活性化を目指して事業を進めていきたいと考えておりますが、まず、大きな問題として挙げられるのは、技術職員の方を新規雇用は、各地域で実施しているところにあります。新規の雇用者は、例えば関東近辺、北海道・東北地方、中国地方など、地域ごとで採用されるので、そもそもその方々の意識としては、雇用を希望する範囲内で働きたいという意識が最初にあると多くの方から聞いています。私自身は、高度な技術人財は全国あるいはグローバルに、研究者と同じように活躍していただきたいという思いはありつつ、実際に雇用されている方々の思いとしては、やはりその地域で働きたいという思いがありますので、最初にすべきは、地域の範囲内での流動化というところが、第一ステップとしてあると思っています。例えば、今、地域中核・特色ある研究大学強化促進事業というのがあって、その採択大学が地域としての連携を推進しますという形で申請していると思いますので、地域での技術職員の流動化を実際に進めていくための活動を我々がいろいろな形でフォローできないかと考えております。特に高専を巻き込んだ連携を提案されているような大学においては、高専の学生がまさに技術職員の卵になる――卵というか、技術職員になる前段階の人材として、それをしっかりと育成していく流れ、キャリアというところも考えていただく必要があるかと思いますので、その点は、まず全国的に広げていく前に、一歩あるかなと思っています。
【杉原委員】 ありがとうございます。
【小泉主査】 ありがとうございます。
正城先生、よろしくお願いいたします。
【正城委員】 御説明どうもありがとうございました。
このコアファシリティ、共用とか、御紹介いただいた人材が研究機関の広い範囲に貢献していくということは非常に重要だと思うので、ある研究機関でこれらを構築しようとしたときに、どういった視点を検討すべきかという観点でお伺いしたいです。1つは、市販の理化学機器をそのまま使うところから、特殊な前処理だったり、アタッチメントをつけたりして共用するケースとか、さらには一番初めにお話ししていただいた同位体顕微鏡は専用機器みたいなところもあると思います。そこに関わる人材も、同じように汎用的なところから、専門的なところまで、いろいろあると思います。汎用的なところから、より専門的なところ、といったときに、どういった観点で設計していくのが考えられるか、論点といいますか、そういったところを御示唆いただければと思います。
【東京工業大学(江端様)】 はい、正城先生ありがとうございます。
実際に、装置に対して、人が少ないというのは現在どこの現場でも起こっていることで、高度な装置でも、汎用性のあるような機器でも同様で全く足りていない状況です。したがって、まず一つ考えられるのは、汎用性のあるもの、あるいは最先端の機器をメンテナンスして活用できるような人材というのは、各機関の戦略に基づいて配置されるべきものであり、それに基づいて、文部科学省ほか関係機関がいろいろな形で支援をしていくというのがスムーズだと思っています。その議論は研究環境課の研究開発基盤部会などでも議論されていますが、少なくとも、どこを共用化して研究基盤を強化していくかという点と、その装置の可能性を最大限引き出す人材をどのような形で育成していくのかという点は、セットであって、その役割に応じた分類をしていく必要があると思っています。分類とはどういうことかというと、私の定義で説明しますと、今共有していただいている資料のTMかTCかという話だと考えています。高度な最先端機器を使って研究者の研究にかなりコミットできるようなお仕事をされる技術者というのは、まさにTCのレベルにある方々と定義していて、汎用性のあるような機器をしっかりとメンテナンスしていただくような技術者というのは、その機器に関するベーシックな技術や知見を持っている方々というところで、TMのレベルに位置づけられると思っております。そういう役割の異なる方々をそれぞれ体系的に育成するための仕組みというのは、やり方が異なる部分があると思うので、このような定義で分類していくという提案させていただきました。
【正城委員】 ありがとうございます。
【小泉主査】 ありがとうございます。
野口先生、お願いします。
【野口委員】 江端先生、御説明ありがとうございました。大変可視化されていて、よく分かりました。私も先ほど杉原先生が質問された点は少し気にかかっていました。流動性のところです。やはりURAと同様で、確保、育成、継続性、流動性の観点は非常に重要で、私の質問は、先ほどありました、地域中核・特色ある研究大学強化促進事業の関連補正予算で経済産業省や文部科学省の建物も数多く設置されると思います。その施設にいわゆる共同利用、共同研究ができる機器も導入して、それをオープンイノベーションしていかなければならないと思います。そのような観点から、今後の技術職員を核とした研究展開の方向性としては、共同研究拠点のさらなる促進を進めていくというのが一つのコアになっていくのかお聞きしたいです。もう1点は、大学以上に企業のほうが、我々が使いたい機材や施設というのを数多く保有しているケースがあると思うのですが、ただ、使わせてほしいといっても、秘密保持の関係とか、いろいろ障壁があるので使わせて頂けないのが実情と思います。
よりまして、企業とのオープンイノベーションを共同利用、共同研究拠点推進の観点からもよりコミットさせることが非常に重要ではないのかなと思います。オープンイノベーション促進と企業保有の機材・施設の共用利用という観点から御説明を頂ければと思いました。
以上です。
【東京工業大学(江端様)】 野口先生ありがとうございます。共同利用、共同研究拠点もそうですし、小泉先生がいろいろと御尽力されている大学共同利用機関法人の活動も非常に重要だと思っています。そこにどういった役割を担っていただくかという視点は、まさに別会議でも議論されていると思いますので、それは置いておきますが、少なくとも、そこに所属する人財はしっかりと確保しなければならないし、それなりのレベルの方でないと、うまく機能しないということになります。そういった意味で、共同利用、共同研究をメインに考えているような機関においては、先ほどご紹介したような高度な人材をしっかりと配置できるような流れをつくる。一方で、そのために育成するシステムをどうするのかという点は大きな課題として残っているので、それをしっかりと考えていただくことが必要かと思います。今回、その一つの解としてTCカレッジを提案させていただいているわけですが、今、TCカレッジ等の活動を通じて数百人の技術者の方々ともコミュニケーションを取らせていただいていますが、かなり研究にコミットする、そのような意識を持って活動されている方々も大勢いることがわかっています。大学の技術職員は研究だけでなく、産学連携、オープンイノベーションにコミットしていたりする方もいらっしゃいます。一方で、大学のインフラを維持管理していくために、運営側として仕事をされている技術職員の方々もいらっしゃいます。そこは細かく考えれば細分化されるので、2つに分けて考える。そして、インフラ整備のところは、純粋に技術職員の方々が活躍する場として捉える。研究活動を推進していくところ、あるいは産学連携活動、共同利用、共同研究を推進していくところは、そういった高度な技術者が仕事をしていく場であると同時に、冒頭申し上げた博士人材や研究者でも、研究環境を整えるために業務をされている方々の活躍の場でもあると思います。そのような研究環境を整える人材は任期つきの教員で、結構いらっしゃいます。それはまさに、研究開発イノベーションを支えるマネジメント人材という位置づけでもあると思いますので、そういった人材も技術職員と一体として、この高度な技術者の集団というような形で位置づけることができれば、人もある程度確保できますし、新たなキャリアパスとして、教員でPIになる道以外に、新たなキャリアパスを歩めるような流れもつくれるのではないかなと思っております。御質問に答えられたでしょうか。
【野口委員】 大変よく分かりました。ありがとうございました。
【小泉主査】 ありがとうございます。まさに大学共同利用機関法人だと、おっしゃっていただいたように、例えば天文台の望遠鏡のために特化した技術人材をかなり抱えていて、かなり高度な技術を持った方々が集まっていて、その分野に必要な高度な技術を磨いているんですね。本当に天文学のために必要な技術として超電導技術が磨かれていて、でも、周りからはそれは知られていない状況が生じていて、天文台の中で培った技術だけど、ほかのところにも活用できるとか、そういったものもあると思っています。まさに江端先生がおっしゃるとおり、横の連携が進んでいくと、野口先生もおっしゃったように、共同利用・共同研究拠点と、ほかのところの連携をうまく使っていくといいのかなというのはすごく思うところです。
ほかに、全体を通じてでも、感想でもいいですが。
重田先生、お願いします。
【重田委員】 江端先生、ありがとうございました。
やはりTCとか、あるいはTMというのは、ある種のブランディングというか、マイスター制度のようなものなので、こういったものをどんどん活用していくことで、技術職員の見える化というのがどんどん進むのかなと思いました。
今回、4名の方が新たに令和4年度にTC取得ということで、写真つきで載られているということはあると思うのですが、一方で、先ほどの委員がおっしゃっていた、この方がどういうような業績、あるいはどういうような措置で、どういうようなデータを取得する、あるいはガラス制作技術とか、そういったものもあると思うんですけど、そういった形で何か広報としてやっていく、あるいは大学の中で、経営層にもこういった技術職員が見える化するというプロセスについては、東工大では何か取組がなされているのか、あるいは今後それをどういうふうにほかの大学に展開していくのかについて、アイデアがあれば教えていただけますでしょうか。
【東京工業大学(江端様)】 はい、重田先生ありがとうございます。
東工大の事例でいきますと、TCを取られた方が、取られてから1年たっておりますので、今いろいろな形で活躍されています。共著論文がかなり多く出ているとか、研究者のCRESTや科学研究費助成事業等に分担者や協力者として入っていくというような活動を行っているという事例があります。そういった活躍されているTCの方々の顔の見える化と、それを発信していくためのホームページ等の整備は、今年度の事業計画の中に入っておりまして、それを進めていくとともに、30名いるTM取得者も同様に、可能であれば顔を出して見える化していくことを推進しようと考えています。技術者の皆さんは、非常に控え目で、あまり表に出たがらないので、顔写真を掲載することに対して、ノーと言われることが結構あるのですが、その点はTCカレッジに入学していただいて、これで自らのスキルや経験を磨いていただくような方々は、どんどん表に出していきますよというお話をさせていただいて、多くの方に協力していただける予定になっております。
【重田委員】 ありがとうございます。
URAへも同様ですが、やっぱり、こういったところもスタープレーヤーみたいなのがあって、そこに近づきたいというのがある種のモチベーションになって、人材育成にもつながっていくのかなと思いますし、実際に私がアメリカに留学していたときに、ガラスのすごくきれいな塔みたいなものをつくられて飾ってあったんですね。これはその当時で珍しかったのですが、日本人の技術職員がそういったものをつくって、それが大学の中で認められて、ある科学の建物のすごく目立つところに飾られており、見える化がされていたというのは非常に印象深かったので、やはりそういったところを日本全国で技術職員を目立たせるというのがやっぱり重要かなと思っております。
【東京工業大学(江端様)】 例えば、北海道大学の電子科学研究所の技術部では、まさにそういうことを積極的にやっていて、全部自分たちがこれをつくりましたという実績の見える化を行っています。ホームページに写真が載っているんですね。すると、それを見るだけで、どれだけすごい技術があるというのが見える形になっています。研究者が技術職員の方にするオーダーは適当で、ハードなことを簡単に依頼するのですが、それに対して技術者の方は、分かりましたと言って、自分でいろいろと勉強をして、それを何とか形にして研究者に返すということを日々行っています。これは一点ものとなり、研究者に納品してしまうと手元に残らないので、それを残すというような取組が必要で、まさに北海道大学電子科学研究所はその取組をしっかりやっていました。
また、部屋の棚や机の上にディスプレーすることは、結構、皆さん趣味レベルで、個人的にやっていたりするのですが、そのような場に、皆さん見に行く機会はないと思います。そういったところも、組織としてしっかりと技術力をアピールできるようなマネジメントが必要なので、技術者チームをしっかりと統括できるマネージャーが必要で、そこは今、抜け落ちているポイントなので、求められているところだと思っています。

【重田委員】 ありがとうございました。
【小泉主査】 ありがとうございました。まさにロールモデルがしっかり見えていくという形、そういう中で、URAもそうですし、技術人材もそうですし、やはりロールモデルが見えていく制度、例えば表彰制度のようなkoものは、すごく重要なことなのかなと思ったところです。どうもありがとうございました。
【東京工業大学(江端様)】 ありがとうございました。
【小泉主査】 では、最後に、事務局より事務連絡をお願いしたいと思います。
【大場人材政策推進室長補佐】 次回のワーキング・グループの開催日時等につきましては、メールにて御連絡しておりますとおり、4月26日金曜日を予定しております。
本日の会議の議事録につきましては、作成次第、委員の皆様にお目通しいただき、主査に御確認の上、文部科学省のホームページを通じて公表させていただきます。
以上でございます。
【小泉主査】 ありがとうございました。
それでは、本日はこれにて閉会といたします。どうもありがとうございました。

―― 了 ――

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科学技術・学術政策局人材政策課 人材政策推進室