「2017年度(第36回)米国進出日系企業実態調査」の結果について

2018年01月11日 

「2017年度(第36回)米国進出日系企業実態調査」の結果について

2018年01月11日

営業黒字を見込む企業は過去最長の6年連続で7割超
トランプ政権発足に伴い企業の生産戦略に変化、政策分野では税制やNAFTAに高い関心

ジェトロは、2017年10月3日から11月15日まで、米国に進出している日系企業に対し、経営実態に関するアンケート調査を実施しました。その結果を以下の通り発表します。
※製造業の生産会社と販売会社を対象としています。

調査方法・実施時期 アンケート調査・2017年10月3日~11月15日
アンケート送付先 米国進出日系企業(製造業のみ)1,200社(回答企業数793社、有効回答率66.1%)
質問項目 (1)企業業績、(2)今後の事業展開、(3)原材料の調達先および製品の販売先、(4)経営上の課題、(5)変化するビジネス環境への対応

米国進出日系企業実態調査の結果のポイント

トランプ政権発足による影響
米国市場向け製品の生産地として、メキシコでの拡大見通しが前年調査の68社(57.1%)から29社(25.0%)に減少した(資料-17頁)。それを除けば、米国進出日系企業の企業業績やビジネス活動について、前年調査の結果から大きな変化はなく、トランプ政権発足に際して、現地経営者は情勢を冷静に受け止めている様子が伺える。
業績・今後の事業見通し
営業黒字を見込む企業は6年連続の7割超(74.4%)で、調査史上最長を更新(資料-4頁)。景況感を示すDI値は、前年比9.6ポイント減の7.9と悪化したものの、2018年の見通しでは35.6と大きく上向いており、業績改善を見込む企業が多い(資料-5頁)。
過去1年間に現地従業員を「増加」と回答した企業は41.0%に達し、6年連続で4割を超えた(資料-7頁)。今後1~2年の事業拡大を視野に入れる回答企業も前年を上回る57.1%と、好調な米国市場で事業拡大する企業の姿を示す(資料-13頁)。
経営上の課題(コスト上昇要因)として、「労働者の確保」が前年から7.1ポイント増の70.6%で筆頭要因となり、「賃金上昇」が68.7%と続くなど、人材で苦労する企業が多い(資料-24頁)。
トランプ政権の政策に対する見方
トランプ政権の政策に対する関心分野として、8割以上の企業が「税制」に関心を示した(資料-27頁)。NAFTA再交渉により影響を受ける内容として、「通関・貿易円滑化・原産地規則」、「物品市場アクセス」、「労働・環境」が上位に挙がった(資料-29頁)。

米国進出日系企業実態調査の結果

1.営業利益見込み:黒字を見込む企業は74.4%。6年連続の7割超と高水準で、調査史上最長を更新

  • 米国進出日系企業の営業利益は、2017年は回答企業の74.4%が黒字を見込む。前年(77.5%)より微減となったものの、好調さは維持している。営業黒字を見込む企業は、2012年度調査以来、6年連続で7割を超えた。鉄鋼(87.1%)や業務用機器(85.2%)で黒字比率が高かったが、輸送用機器部品(自動車/二輪車)の黒字比率は前年に比べ低下(82.5→70.4%)した。特に南部においては、売り上げの減少により同分野の黒字比率は61.5%にとどまり、南部の黒字比率は前年(75.6%)から5.9ポイント低下した(資料-4頁)。
  • 景況感を示すDI値(前期と比較した営業利益の「改善」-「悪化」)は7.9となり、前年から9.6ポイント悪化。2017年の営業利益見込みが「改善する」と回答した割合(37.8%)は前年から3.4ポイント減少し、「悪化する」との回答(29.9%)は6.2ポイント増加した。一方、2018年の営業利益の「改善」を見込む企業は半数近く(46.2%)で、DI値も35.6ポイントと大きく上向くなど、業績改善を見込む企業が多い(資料-5頁)。業種別では、輸送用機器・部品の黒字比率は70.0%であるものの、DI値はすべてマイナスとなった(資料-6頁)。
  • 現地従業員数については、過去1年間に現地従業員を「増加」と回答した企業は41.0%に達し、6年連続で4割を超えた。今後についても44.6%の企業が「増加」を予定している。日本人駐在員は総じて「横ばい」との回答になった(資料-7頁)。
  • 人材採用の取り組みについて、「人材紹介会社の活用」が8割超(83.1%)に達し、次いで「派遣社員の正社員化」(45.8%)が挙がった。また、従業員100人以上の企業の半数近く(48.2%%)が「インターン受入」を行っている。最も有効な手段としても、「人材紹介会社の活用」が半数以上(55.4%)に達した(資料-9頁)。人材育成では、「社内能力研修プログラムの提供」(55.2%)と「社内トレーナー・トレーニー制度の導入」(52.6%)を行っている企業はそれぞれ5割を超えた(資料-10頁)。
  • 2017年の設備投資は、金額ベースで前年比を上回る企業が40.6%で、前年比横ばいは49.4%だった。設備投資の目的は、「工場の合理化・効率化」(54.3%)や「工場の拡張」(21.2)が上位を占めたほか、「技術・研究開発強化」(18.8%)や「情報関連(AI、IoT)投資による効率化」(17.9%)も挙がった(資料-11頁)。
  • 今後1~2年の事業拡大を視野に入れる回答企業は57.1%と、前年から3.7ポイント増加した。拡大する機能として、販売(62.5%)、生産(高付加価値品、49.9%)が主に挙がった。業種別では、食品・農水産加工(75.8%)や業務用機器(74.1%)などにおいて「拡大」と回答した割合が高かった(資料-13頁)。
  • 新たな州に移転・新設する場合に重視する点については、「顧客との近接性」(70.1%)に続き、「雇用コスト」(65.9%)、「物流・交通インフラ」(52.2%)が上位を占めた(資料-14頁)。

2. 調達、生産、販売:米国での地産地消を一層強化へ

  • 米国で生産・販売活動を行う企業の原材料・部品の調達については、米国内からの調達比率は59.3%(現地日系企業18.8%、地場企業38.6%、その他外資企業1.9%)となり、前年から2.1ポイント増加した。次いで、日本(25.3%)からの比率が高かった。今後調達を拡大する先としては、米国地場企業(131社)、米国日系企業(67社)が高かった(資料-15頁)。一方、米国で販売活動のみを行う企業の米国内からの調達率は21.2%で、日本からの調達率は53.2%を占めた(資料-16頁)。
  • 米国向け製品の生産地について、米国の割合は前年から6.3ポイント増(76.3%)となり、日本の割合は5.0ポイント減(12.4%)となった。今後米国向けの生産を拡大する国としては米国が156社で最も多く、メキシコは29社で、前年(68社)の半数以下に減少した(資料-17頁)。
  • 米国で生産・販売活動を行う企業の販売先は、米国内が80.9%で、メキシコとカナダを加えたNAFTA市場向けが約9割(89.4%)、日本が4.0%を占めた。今後、販売を拡大する先としては、米国が154社、メキシコが80社で、前年よりも現状維持の割合が増えた。食品・農水産加工や化学品・石油製品などの業種を中心に米国内での販路拡大を目指す声が聞かれた(資料-18頁)。また、米国で販売活動のみを行う企業の販売先としては、米国内が77.6%、NAFTA市場向けが88.2%、日本が4.9%を占めた(資料-19頁)。

3. FTA利用:米国進出日系企業の3割超がNAFTAを利用

  • 全回答企業のうち輸出入いずれかでNAFTAを利用している企業は3割超(32.9%)であった(資料-20頁)。このうち、輸出/輸入を行っている企業に限ると、メキシコやカナダへの輸出にNAFTAを利用している企業は5割前後を占め、輸入では6割強の企業が利用している(資料-21頁)。

4. コスト上昇/販売抑制要因:「労働者の確保」、「賃金の上昇」、「価格競争の激化」などが引き続き課題

  • 経営上の課題(コスト上昇要因)としては、「労働者の確保」が前年から7.1ポイント増の70.6%で筆頭要因となり、「賃金上昇」が68.7%と続いた。また、日本人駐在員のビザ取得への懸念が前年(15.4%)から倍増(33.1%)。回答企業からは、米国の景気拡大に伴う失業率低下により、労働者の賃金上昇が顕著になり、労働者の確保が困難になってきているとの声が多数聞かれた(資料-24頁)。
  • 経営上の課題(販売抑制要因)については、「価格競争の激化」(77.5%)や「有力な競合製品の存在」(57.1%)が例年同様、上位に挙がった(資料-26頁)。

5. トランプ政権の政策に対する関心:「税制」、「通商」、「外交」への関心が上位、7割以上の企業が選択

  • トランプ政権の政策に対する関心分野として、税制(80.6%)、通商(76.5%)、外交(72.0%)が上位3項目に挙がった。税制に対する関心は前年(51.0%)から29.6ポイント増え、減税による利益増を期待する声が聞かれた。ただし、減税による追加投資には慎重な姿勢が目立った。通商ではNAFTA(55.2%)、外交では日本(57.5%)に対して、半数を超える企業が関心あると回答した(資料-27頁)。

6. NAFTA再交渉による影響:原産地規則見直しへの関心が目立つ

  • NAFTA再交渉により影響を受ける内容として、「通関・貿易円滑化・原産地規則」(68.3%)、「物品市場アクセス」(34.9%)、「労働・環境」(32.8%)が上位に挙がった。業種別にみると、「通関・貿易円滑化・原産地規則」では輸送用機器・同部品(鉄道車両/船舶/航空/運搬車両)(100%)、「物品市場アクセス」ではゴム製品(57.1%)、繊維(53.8%)、「労働・環境」では繊維(61.5%)の関心が高かった(資料-29頁)。

(注1)調査結果の構成比は、小数点第2位を四捨五入しているため、必ずしも合計は100とはならない。
(注2)回答比率は、各設問の回答者数を基数として算出した。

ジェトロ米州課(担当:秋山、中溝、飯沼)
Tel:03-3582-5545 Fax:03-3587-2485

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